ウラジミール・ヴェルテレッキー 第2部「リウネのポリーシャにおける先天性奇形とチェルノブイリ事故」 (講演動画 書き起こし和訳)


 この記事は、2013年3月27日にFukushimVoiceオリジナルサイトに掲載されました。)
http://fukushimavoice.blogspot.com/2013/03/blog-post.html

カルディコット財団主催 国際シンポジウム「福島原発事故の医学的・生態学的影響」

講演動画より

Wladimir Wertelecki, Former Chair of the Department of Medical Genetics, University of South Alabama

Congenital Malformations in Rivne Polossia and the Chernobyl Accident

ウラジミール・ヴェルテレッキー

南アラバマ大学 医学遺伝子学部 前学部長


または


注:ここで使用した画像や情報の引用元は、W. Wertelecki et al., 2013, OMNI-Net reportsである。

                 ***


まず強調したいのは、この発表は、一番最初の観察結果ではなく、3度目の分析に基づいているということである。調査の開始後10年経って、やっと少しずつ結果を報告し始めている。なぜかと言うと、信憑性の問題はデータではなく、データの信憑性だからである。

一般的に、学生や若い研究者を指導する者にとって、WHOやIAEAのニュース発表というのは、言語操作の傑作であると思う。現在、IAEAは、実質、WHOの背後にいると言うことを、ここでお伝えしておきたい。IAEAの勧告は、若い人が信用するべきであるWHOを通して、現在は伝えられているからだ。WHOを信用できないなら他に何も信用できないだろうから、WHOを信用するしかない、と言うわけである。

2013年2月末のWHO(故にIAEA)の福島に関するニュース発表と、2005年のチェルノブイリに関するIAEAの勧告を比較すると、似ている部分もあるが、少し違うニュアンスもある。福島では低線量放射能が言及されており、「ゴールド・スタンダード」だった100 mSvが下げられている。そして、被ばくの軽減が重要だとされている。2005年勧告では、代表国全部がウクライナ政府に、250,000人の国民の被ばく量を最小限に留めていた措置を放棄するように通達した。

この調査には、OMNI-Net(オムニネット)を通して非常に多くの人達が関わっているが、これはウクライナおよび国際的な研究者達である。ここで述べておきたいのは、国際的な研究者達のほとんどはアルコールについての研究に関わっているが、それはアルコールが催奇形物質であり、催奇形物質とは、先天性奇形や発達障害を起こすすべての環境因子だからである。ウクライナでは、アルコールは割と良くみられる普遍的な催奇形物質であるために、アルコールの研究をしないと、また別の普遍的な催奇形物質である放射能の影響と混乱するからである。

チームの研究者は、他に、文化民俗学者、数学者、統計学者、栄養学者や心理学者など、様々な分野の研究者が関わっており、皆ができる限りの事をした。この活動は、ほとんどがプロボノ(代償なしの公益のための活動)である。プロボノでない場合でも,政府や原子力産業からの資金とは全く関わりがない。

また指摘しておきたいのは、データはデータであり、良いデータは良いデータであり、「ゴールド・スタンダード」は、ジェイムズ・ニール博士による広島・長崎の研究である。これは、癌の研究ばかりではなく、先天性奇形の研究でもある。しかしここで強調したいのは、広島・長崎の研究というのは、催奇形物質についてではなく、遺伝子突然変異についての研究であり、ゆえにこの講演の内容とは全く異なるということである。

また、我々の視点から見ると、広島・長崎の放射線モデルをチェルノブイリの状況に当てはめるのは不適切である、と言う事を指摘したい。なぜなら、リウネでの状況は、急性被ばくではなく慢性被ばくであり、一瞬の爆発でなく持続的であり、γ線や中性子でなく主にβ線であり、外部被ばくではなく吸入や飲食による内部被ばくだからである。また広島・長崎の生存者から生まれた子供は、親は被ばくしたかもしれないが、子供は放射能汚染がない状況で生まれた。

先ほど、IAEAの2005年勧告について話したが、実はIAEAのデータはその勧告の10年前である1995年に既にできており、それからずっと同じ事を言って来たのである。しかし、何も影響がないと言い切るのは僭越ではないか、とも言える。
そして、こういう状況で、我々が、あえて影響があるかもしれない、と言うことを調べたいというのは、冷ややかに受け止められるものだ。そこで、ウクライナ独立記念5周年の日に、人類遺伝子学の国際学術大会を開催した。そこには、ニール博士や催奇形学の父であるワーカニー博士などを招待し、何ができるかを模索してみた。

チェルノブイリ事故から5年後にウクライナは旧ソ連から独立を決め、旧ソ連が崩壊し、政権の交代があった。そのような混乱した環境の中、我々は国際的な基準に基づいた国際プログラムを施行し、生まれて来る子供全てと、診察される子供全ての人口登録を設立することにした。これが2000年だった。

ポリーシャとは、リウネ州の地域であり、ポリスチュークスは、ポリーシャの原住民である。リウネ州は、ウクライナの28州のひとつである。

我々は、調査の国際的基準を保つために、ヨーロッパの先天性奇形モニタリングシステムであるEUROCATに加入することにした。そして、迅速にデータを集めるために複数の州において集団モニタリングを始め、ウクライナ各地に広がり、そのモニタリングは今でも続いている。



この地図はチェルノブイリ事故後の放射能プルームを示している。リウネの北半分がポリーシャであり、その北にはプリピャチ川が流れている。




集団モニタリングを始めて間もなく、EUROCATとウクライナの先天性奇形の発症率に違いがあるのが分かった。神経管閉鎖不全も、無脳症も、小頭症も、無眼球症も、ウクライナの方が多かったのだ。


 

これで仮説が提示されたことになった。

そこで、何ができるかを考えてみた。非常に限られた財源を用いて、行動を起こそうと思った。まもなく、最も汚染がひどい州に集中すれば良いのではないかと気づいた。

ポリーシャには、ルイジアナ州のCajunのように、隔離された状況で暮らし、同族結婚の風習がある原住民のポリスチュークスが住んでいる。

リウネ州北部は、地質学的にリウネ州南部と異なる。土壌に粘度が含まれていないため、放射性物質を吸着するものがない。故に、放射性物質の降下量に加え、土壌から森や木や食物や草への移行係数が高い。実際、リウネ州北部は、チェルノブイリのすぐ傍のジトームィル州よりも汚染されている。リウネ州北部は、実質、ウクライナで一番放射能汚染がひどい地域なのである。また、一番北の3郡は最も隔離されているために最も興味深い特徴を持つことにも気づいた。

 


ポリーシャ地域は湿地帯であり、ルイジアナ州のように季節性の洪水があるため、放射性物質に「足ができて」動き回ることができる。ポリーシャは、生態学的に隔離され、人口的に隔離され、同族結婚が行なわれ、土壌から植物へのセシウム137の移行係数が最も大きい。食べ物を買いに行く場所がないため、地元で獲れた食物を食べないと餓死してしまう。どこかに暖を取りに行く場所がないので、放射能汚染された薪を燃やさないと、凍え死んでしまう。

要するに、ポリーシャは、特別の集団と特別の生態系と特別の放射能汚染という条件が揃い、あらゆるものからの健康への影響の、集学的な長期研究に理想的な集団ということである。言っておきたいが、我々は、放射能だけが特に問題であると主張しているわけでもない。いかなる理由であっても、子供が先天性奇形をもって生まれて来るのを望んでいないだけなのだ。





このような経緯で、我々の調査について報告を始めているが、今の所は、リウネ州のポリーシャ、そして2−3の先天性奇形のみに限定している。

過去の観察の確認によると、神経管閉鎖不全と小頭症の発症率が集団で増加し、女児の罹患率が高いことがわかった。また同時に、原因が何であるかを調べようとする調査も行ったが、これは供述的疫学調査であり、因果関係を証明するのではなく、何が起こっているかを証明しているにすぎない。この調査では、妊婦のアルコール摂取、放射能被ばくや、ウクライナ外での発症率について調べた。

ポリーシャでの神経管閉鎖不全は、ヨーロッパで最も多い。だが、EUROCATは、それに反論することができる。EUROCATは、まさにそのためにEUから資金供給を受けているからだ。そして、ポリーシャでは、小頭症と小眼球症もヨーロッパで最も多い。この3つの先天性奇形は偶然にも、アルコール、放射能、または両方と関連づけられている。

 


我々は、幸運にも、国立衛生研究所から最も長く資金供給を受けている研究に携わっていたが、これは、胎児性アルコール症候群をできるだけ早く、出生前にさえも、診断するという研究だった。そういうわけで催奇形リスク要因としてのアルコールの調査をした。その結果、結論としては、ポリーシャでの小頭症の発症率増加の主原因は、アルコールではなさそうだ、ということだった。

一苦労して何千人もの妊婦の調査をした結果、ポリーシャの妊婦では、他の地域に住む妊婦よりもアルコール摂取率が少ないことが判明した。
 

2番目の理由は、胎児性アルコール・スペクトラム障害の発症率は、実はポリーシャ外での方が大きかったということである。



そこで、放射能が原因かどうかを調べてみる事にした。しかし、我々には予算もなければ、専門知識や技術もなかった。ごく普通の、通行人の小児科医にすぎなかった。

だが、放射能には足があって、定期的に動き回るのは分かっている。毎年夏には山林火事がある。ある種の木には、また別の木の20倍の放射性物質があったりするから、一般化しても意味がない。松が燃えるのと柳が燃えるのとでは、わけが違う。そもそも、平均化ということ自体にも意味がない。平均化と言うのはただのトリックであり、このトリックは、先天性奇形の子供を持つ母親にとっては全く不十分で受け入れ難いものである。

ポリーシャの人々の76%は、暖房のために薪を燃やし、調理にも薪を使っている。その灰を自家菜園で肥料として使っているから、放射性物質が濃縮されてしまう。実際、15年前よりも今の方が、放射能濃度が増加している。生物濃縮には時間がかかるからだ。



ポリーシャの妊婦達は、「楽な作業」を振り分けられ、乾いたジャガイモの茎を燃やす。ジャガイモの収穫というのは、「やるか死ぬか」である。ジャガイモは、ポリーシャの生活に不可欠な要素であり、栄養素である。

 

そして年を取っている女性は、家で座って、放射能汚染された薪を燃やして暖房にし、ポテトパンケーキを作る。ちなみに余談だが、ここニューヨークのカーネギーデリでもポテトパンケーキを注文できるが、すごくまずかったので、やめておいた方がいい。 


では、実際に、放射能が原因かどうかを調べてみるには、どうすればいいのか?

女性が放射性物質を取り込めるなら、ジャガイモも取り込めるのだろうと仮定し、ジャガイモを採取して分析してみた。すると驚いた事に、ストロンチウム90が検出された。信じられないので、もう一度検査をした。すると、また検出された。ストロンチウム90とセシウム137の比率は1:2であったが、公衆衛生局は一般にセシウムしか測定していない。ストロンチムは無視されている。

しかし、胎児にとって、ストロンチウムはもっと重要である。セシウムはカリウムに似ているから体内の色んな場所に行くが、ストロンチウムは目や骨や歯など特別な場所に蓄積し、その子供が死ぬまでずっとそこに留まり、放射能を出し続ける。セシウムはカリウムのように尿から排泄されるが、ストロンチウムは一旦体内に入ると、そこに留まり続けて放射能を出し続けるのだ。

 

次に、2万人ほどの人にホールボディーカウント検査を行なった。2万人というのは、なかなか大変だったので、もう一度やるつもりはない。すると、リフネ州北部のその3郡の妊婦のホールボディーカウントは、保健省が安全だと設定している標準値よりも高かった。

胎児の放射能感受性は何なのか?妊婦のホールボディーカウントは成人用でいいのか、それとも胎児を考慮して小児用にするべきか?胎児の放射能感受性が何なのかを示している文献はひとつも見た事がない。もしも知っている人がいたら、教えてほしい。小児では3,800ベクレル、成人では11,453.75ベクレルが上限になっているが、胎児の場合はどうなのか?






とにかく、困ってしまった。何も見つけるつもりはなかったのに、ただヒントを追っていただけなのに、アルコール摂取が原因でない小頭症を見つけてしまったのだ。原因は、アブラカダブラから月まで、何でも有り得る。これは、供述的疫学調査であるが、それでも論理的でなくてはいけない。



何か些細な効果を、例えば、頭のサイズの些細な減少などを見逃していないだろうか、と考えてみた。小頭症の厳密な定義は、頭のサイズが3標準偏差分小さいということだ。知能が非常に遅れていて、てんかんを起こし、頭のサイズが非常に小さくても、3標準偏差分小さくないと、小頭症とはみなされない。

そこで、新生児全員の頭のサイズを測ることにした。驚いたことに、北ポリーシャでは、出生時体重には差がないのに、頭のサイズが統計学的に有意に小さかった。




これはただ潜在性なのかもしれないが、放射能が神経系に影響を及ぼすのは知られている。そこで、ウクライナの外で何が起こっているか調べてみた。

大変信頼できる疫学研究者が米国疾病対策センターに勤めていた時に、ハンフォードで最初の疫学調査をした。神経管閉鎖不全の発症率が高いのを見つけたが、その結果を却下した。理由は分からないが、多分良い理由だろうとは思う。この疫学研究者は、良い科学者なので、もう一度異なるアプローチで調査をし、最初の結果を確認した。そしてまたこの結果を却下した。その根本的な理由は、広島・長崎の研究と矛盾するからだった。調査そのものの欠点のせいではない。単に、「ゴールド・スタンダード」にそぐわないからだ。

しかし、この「ゴールド・スタンダード」は、催奇形と全く関係ない。「ゴールド・スタンダード」は、遺伝的な小頭症と関連している。ポリーシャの小頭症は、環境因子によって誘発されている。遺伝子が「脳を作るのをやめておけ」と言いに来たわけではない。遺伝子は何も悪くない。放射能が、「死ね。そして、サイズを減らせ。」と言ったのだ。リンゴと梨を比べているようなものだ。

次がセラフィールドの調査である。神経管閉鎖不全が統計学的に有意に増加した。しかし、訴訟などの諸事情があり、空気に緊迫感があった。結局、この調査は再調査されなかった。

EUROCATの調査は、チェルノブイリの近くでない、遠くの西ヨーロッパで実施され、何も見つけなかったと言う。

これは、チェルノブイリの放射能プルームの軌跡だが、英国の上をぐるっと回っている。

    

そして、EUROCATの報告を見ると、驚いた事に、ポリーシャでの先天性奇形の発症率は最も高いが、英国でも高かった。これは我々の調査ではなく、英国によってEUROCATに報告されたものだ。我々もポリーシャの結果をEUROCATに報告している。同じ基準を使っているはずだが、それでも他の交絡因子も存在すると思われるため、ポリーシャと英国の結果を統計学的に比較するのは、軽卒である。この結果は、ただの情報にすぎない。



ヤブロコフ博士や他の専門家や研究者達が言うように、精神衛生は放射能被ばくについての大きな問題であり、放射能症候群の一部である。ノルウェーとスウェーデンで別々の調査がされ、胎内で被ばくした人の認知能力が低いことがわかった。これは、先ほど言及した、潜在的な頭のサイズの減少と合致する。

ここで基本的には、放射能が原因かどうかを調べてみるという「旅」の終わりに来る。では、どうすれば良いのか?

この調査からは因果関係はわからない。この調査は供述的な調査であり、因果関係を解明するための土台を作るものにすぎない。この調査の有利な点は、特定の集団、特定の先天性奇形と特定の地理的地域である。走り回って清掃作業員を集め、様々なランダムな因子や人種的な差などを考慮しながら推定しなくても、我々は、過去10年に生まれた子供全員の登録データ詳細を持っている。

この調査からどういう結論を導き出すことができるだろうか?

これは現実の話をしているのではない、という可能性がある。

でもそれなら私は今日、ここにいない。我々は、データを3回分析するまで待ったので、我々の視点から見ると、現実でないわけはない。もしもIAEAなり、これが現実でないと言う人がいるのなら、我々のデータを見に来れば良い。

もしくは、先天性奇形は存在するが、それは放射能のせいではない、という可能性がある。

妊婦のホールボディーカウントや、ジャガイモの測定値などが全て関係ないと言うのなら、その無関係さを証明するといい。証明しようではないか。これは、十分に重要なことだから、透視的なケースコントロール研究や、疫学調査により、関係性を否定するべきである。だが、我々のこの調査は、それには使えない。我々の調査は、そのような調査を容易にして促進するドアを開ける鍵である。

またもしくは、胎児は一般に思われているよりも、はるかに感受性が高いかもしれない、という可能性がある。

最後に、実際の被ばく線量が、報告されているのと違ってもっと多いのかもしれない、という可能性もある。

そしておそらく、他の色々な因子である、アルコール摂取、栄養失調、葉酸不足なども関連しているかもしれない。

先天性奇形が起こるためには2つの事が同時発生しなければいけない。発達を妨害する複数の因子と、損傷の修復を妨害する複数の因子である。人体には細胞の再生能力があるが、もしも損傷と修復のバランスが取れなくなったら、胎児の形成発生に変化が起こる。この結果起こるのは、今回言及しなかった結合双生児や奇形種や、少し言及したが多くのサブカテゴリーが存在する神経管閉鎖不全、そしてここで話した小頭症や、これも今回言及しなかった小眼球症などである。こういう先天性奇形に関しては、もっと多く知られなければいけない。なぜなら、これは中国やインドネシアやインドでも起こっており、知っていれば知っているほど、予防ができるからである。

医師として言いたい事は、疫学よりも先に予防をするべきである。

ひとつの薬で神経管閉鎖不全を50%減らすことができ、タバコ1パックを買うお金で、そのひとつの薬を60錠、60日間分購入することができるほど安価なものである。(注:妊婦60人の2ヶ月分ということ)ただちに行動を起こすべきであり、政府にもそう言っているが、なかなか実行されない。小麦粉の葉酸添加か葉酸サプリメント摂取によって神経管閉鎖不全を予防するべきである。そして、妊婦の被ばくを減らすべきである。妊婦が飲食から内部被ばくする必要はない。汚染されてない場所から、牛乳やジャガイモや小麦粉などの食べ物を運ぶべきである。そして、妊婦のアルコール摂取を減らすべきである。

政府は、これらを直ちに実施するリソースを十分に持ち、やり方も知っている。だが、国際パートナーシップが協力したら、実際に実施される可能性が大きくなり、もっと効率良く実施がされるだろう。

既存のモニタリングは、ウクライナだけでなく世界に、予防の意味について提示できることがある。例えば、放射能被ばくしている人達において、葉酸摂取は、神経管閉鎖不全を防ぐ事ができるのか。完全に無効なのではないか。もしも効果があるなら、福島において二部脊椎が起こっているかどうかに関わらずにも、葉酸から効果が得られるだろうか。福島で被ばくした妊婦は、葉酸を摂るべきか。こういう質問は、ウクライナが国際的な団結を求める理由にもなる。西ヨーロッパは、もっとウクライナから学ぶべきである。我々のモニタリングシステムは、ヨーロッパで存在する39の先天性奇形モニタリングシステムの中で、唯一、EUから資金調達を受けていない。もしもチェルノブイリが、ヨーロッパの先天性奇形モニタリングにとって重要でないというのなら、残念ながら、私はどう思ってよいか分からない。

「やればできる」というのが得意な人もいる。

この講演は、この小さな子供に捧げたい。



この子供は、誕生前から奇形児であると判明していた。私は、この子が病院に置き去りにされているのを見つけた。この子の母親は、自分が産んだ子が生きていると知らされていなかったのだ。

母親は、「あなたが産んだ子は化け物で、もう死んでいた。家に帰って、この事は忘れてしまって、また妊娠しなさい。」と言われたのだ。母親は落ち込んだあまり、ウクライナから去った。

この子供は、股関節も、性別も、卵巣も、子宮もない小さな孤児でありながら、生きることの喜びで満ち溢れていた。この子は孤児院に引き取られたが、そのうち祖母が見つかり、祖母が引き取りにきた。祖母が母親を連れ戻してこの子と引き合わせた。

今は、高校から卒業し、西ヨーロッパのどこかに住んでいる。

この子供は2つの事を証明した。

まず最初に、やればできると言うこと。

2番目には、こういう奇形は初期に起こるために、脳には影響がないと言うこと。死に至らなかったら、奇形でない部分は、胎児として正常に発達した人と同じように育つと言うこと。もしも損傷が後期に起こったら、再生機能も減少し、初期に起こった場合と同じ程度に元に戻せない。双子を考えてみるといい。一卵性双生児は全て、先天性奇形なのである。完璧なではあるが、それでもやはり、奇形なのだ。これは典型的な、「ひとつのものから完璧なコピーを作る」と言うことである。「私は『自分』を再生する」、ということである。



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