メモ:2021年5月17日に公表された甲状腺検査結果の数字の整理など

 

*末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節かのう胞)が、一箇所では公式に公表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。

 2021年5月17日に第 41 回「県民健康調査」検討委員会が開催された。前回から4ヶ月ぶりの開催となり、昨年に続き、運営要領で決められている「年4回」ではなく、年3回の開催となることが危惧される。公表された結果は2020年9月30日時点のもので、前回の公表データに3ヶ月のデータが追加されただけである。2019年以降は、4ヶ月ごとに開催される検討委員会で3ヶ月ごとの結果が公表され続けており、開催日とデータ日の乖離が深まる一方である

今回、報告されたのは、4〜5巡目に加え、6ヶ月ごとに結果が報告される25歳時節目検査である。4巡目では新たに3人が悪性ないし悪性疑いと診断され、9人が手術で甲状腺乳頭がんと確定した。進捗が遅い5巡目では、二次検査の結果は、実施数が極めて少ないために公表されなかった。25歳時節目検査では、新たに1人が悪性ないし悪性疑いと診断され、2人が手術で甲状腺乳頭がんと確定している。

 各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数、平均年齢と平均腫瘍径、および各年度ごとの手術症例の人数は、参考資料 7 甲状腺検査結果の状況」にまとめられている。 

 全体的には、前回の公表データ(第40回検討委員会で公表された参考資料 4 甲状腺検査結果の状況を参照)と比べると、悪性ないし悪性疑い例は4人増えて256人(良性1人含む)に、手術で甲状腺がんと確定された症例は11人増えて214人となっている。


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現時点での結果

 これまでに発表された集計外症例数を含む、現時点での結果をまとめた。今回は、2021年3月22日に開催された第16回甲状腺検査評価部会で公表された2つの情報も追加した。ひとつは福島県のがん登録情報から見つかった24人で、もうひとつは、「福島県立医科大学における手術症例の報告」で報告された集計外症例35人(うち甲状腺がん19人)で、甲状腺外科医の鈴木眞一氏が2019年から国内外の学会などで報告しているものである。データが突合されていないので実証は不可能ながら、これまでの11人(福島医大の横谷進氏らによる英語論文で報告されており、すべて甲状腺乳頭がん)も、この19人に含まれていると推定する。



4巡目検査の結果

 2018年4月1日から開始されている4巡目(25歳節目検査対象者は除外)では、新たに 1,851人が一次検査を受診し、受診率は 0.6%増えた 62.1%となった。二次検査対象者は 12人増えて 1,374人となり、うち109人が新たに二次検査を受診し、10人が細胞診を受診した結果、3人が新たに悪性ないし悪性疑いと診断された。

 この 3人は事故当時年齢が7歳の男性と、同じく5歳と9歳の女性2人である。2人が浜通り、1人が会津地方の住民で、3人とも2019年度対象市町村の住民である。この 3人の 3巡目の結果は、A2が 2人(結節 1人、のう胞&結節1人)と、未検査が 1人である。

 4巡目の悪性ないし悪性疑いは 30人となり、前回結果は、A1が 5人、A2のう胞が 12人、A2結節が 5人、A2のう胞&結節が1人、Bが 5人、未検査が 2人となる。
 
 手術症例は、2018年度実施市町村で2人、2019年度実施市町村で 7人増え、4巡目で甲状腺がんと確定されたのは合計 25人となった。この 25人全員が甲状腺乳頭がんだった。
 
5巡目検査の結果

 2020年度から開始されている 5巡目検査の進捗は、COVID-19パンデミックのため、一学期の学校検査が見送られ、医療機関での検査も制限されていることから、で大幅に遅れている。そのため、通常の 2年間での実施が困難となり、小学校、中学校と特別支援学校では 3年間(2020年度分を 2年間、2021年度分を 2022年に繰り越し)、高等学校では 2021〜2年度の 2年間(2020年度実施校を除く)で実施されることになっている

 2020年9月30日時点での一次検査受診者は 564人(うち 80人が県外受診)に留まり、うち 487人が 18歳以上(315人が 2020年度実施対象市町村、172人が 2021年度実施対象市町村)の住民だった。結果はまだ 41人でしか判定されておらず、うち 1人がB判定だった。二次検査については、実施数が極めて少ないため、結果は報告されなかった。

25歳時節目検査の結果

 2017年度から開始されている25歳時節目検査の結果は、通常の甲状腺検査とは別に、6ヶ月ごとに公表されている。今回公表されたデータは、1992〜4年度生まれの対象者における、2020年9月30日時点のものである。(受診は対象年度にとどまらず、次回の30歳時節目検査の前年まで可能で、追加の受診データも随時報告されていくことになっている。)

 一次検査の受診者は376人増えたが、受診率は8.9%と極めて低い。二次検査対象者は37人増えて281人となり、新たに53人が加わった221人の受診者中221人で結果が確定している。細胞診受診者は3人増えた16人となり、うち女性1人が悪性ないし悪性疑いと診断された。この女性の前回検査の結果はB判定だった。

 25歳時節目検査における悪性ないし悪性疑いは8人となり、前回検査は、A2(のう胞か結節かは未公表)が1人、Bが2人、未受診が5人である。

 手術症例は、甲状腺乳頭がんが2人追加されて6人となり、うち5人は甲状腺乳頭がん、1人は濾胞がんとなる。


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1〜5巡目と25歳時節目検査の結果のまとめ

同情報は、「参考資料 7  甲状腺検査結果の状況」の5ページ目にもまとめられている。

先行検査(1巡目)(結果確定版の2016年度追補版はこちら
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例      102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例      14人

本格検査(2巡目)(結果確定版の2017年度追補版はこちら、手術数を追加した2019年度末時点の結果概要はこちら
悪性ないし悪性疑い 71(前回から変化なし)
手術症例      54人(甲状腺がん 54人:乳頭がん 53人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例     17人 

本格検査(3巡目)(結果確定版はこちら
悪性ないし悪性疑い 31(前回から変化なし)
手術症例      27人(前回から変化なし)(甲状腺がん 27人:乳頭がん 27人)
未手術症例       4人

本格検査(4巡目)(結果概要はこちら
悪性ないし悪性疑い 30(前回から 3人増)
手術症例      25人(前回から 9人増)(甲状腺がん 25人:乳頭がん 25人)
未手術症例     5人

本格検査(5巡目)(結果概要はこちら
悪性ないし悪性疑い 0人
手術症例      0人
未手術症例     0人

25歳時の節目検査(結果概要はこちら
悪性ないし悪性疑い 8(前回から1人増)
手術症例      6人(前回から2人増)甲状腺がん 6人:乳頭がん 5人、濾胞がん 1人)
未手術症例     2人

合計
悪性ないし悪性疑い 256人(良性結節を除くと255人
手術症例      214人(良性結節 1人と甲状腺がん 213人:乳頭がん 210 
人、低分化がん 1人、濾胞がん1人、その他の甲状腺がん**1人)

未手術症例***      42人

注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年 11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第 7 版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。

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前回検査の結果

2 巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 71人の 1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞 25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低 2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人

3 巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 31人の 2巡目での判定結果 
A1判定:7人
A2判定:14人(結節 4人、のう胞 10人)
B判定:7人
2巡目未受診:3人

4 巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 30人の 3巡目での判定結果  
A1判定:5人
A2判定:18人(結節 5人、のう胞 12人、結節&のう胞1人)
B判定:5人
3 巡目未受診:2人

25歳時節目検査で悪性ないし悪性疑いと診断された8人の前回検査での判定結果  
A1判定:0人
A2判定:1人(結節かのう胞の内訳は未公表)
B判定:2人
未受診:5人


メモ:2024年2月2日に公表された甲状腺検査結果の数字の整理、およびアンケート調査について

  *末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節、のう胞)が、まとめて公式発表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。  2024年2月22日に 第50回「県民健康調査」検討委員会 (以下、検討委員会) が、 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された。  ...