メモ:2022年5月13日に公表された甲状腺検査結果の数字の整理など

   

*末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節、のう胞)が、まとめて公式発表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。

 2022年5月13日に第44回「県民健康調査」検討委員会(以下、検討委員会)が、7ヶ月ぶりに開催された。山下俊一氏が抜け外部委員が入り定例化された第11回検討委員会(2013年6月5日開催)からを第1期とすると、前回は第5期の新任期の委員構成での初開催だったが、今回、早くも委員の入れ替えがあった。広島大学の稲葉俊哉氏、放射線影響研究所疫学部長の小笹晃太郎氏、福島県医師会副会長の星北斗氏、双葉郡医師会長の堀川章仁氏の4人が辞任し、新たに、放射線影響研究所疫学部副部長の坂田律氏、福島県医師会常任理事の新妻和雄氏、双葉郡医師会副会長の重富秀一氏が委員として就任し、17人の委員構成となった。5期連続で座長を務めた星氏が辞任(昨年12月に2022年夏の参院選福島選挙区への出馬を表明した1ヶ月後に辞任)し、長崎大学の高村昇氏が新座長に選出された。意外だったのは、高村氏と同じく第1期から委員を務め、次期座長の有力候補ではないかと思われた副座長の稲葉氏が、5月1日付で辞任していたことである。

 前回の開催から7ヶ月の経過は、検討委員会史上最長となる。検討委員会の運営要領では、年4回開催されることになっているが、2019〜2020年には3回ずつしか開催されず、報告されるデータの集計日との乖離が大きくなっていた。2021年には4回開催され、データ報告もやっと追いついていたが、今回、「健康診査」や「妊産婦に関する調査」で年度末報告が行われる中、「甲状腺検査」で報告されたデータは昨年9月末時点に集計されたもので、わずか3ヶ月分のデータしか更新されなかったことになる。

 今回も、会場とオンラインのハイブリッド形式での開催となったが、県の県民健康調査課の人員にも入れ替えがあったためか、会場での音声のクオリティが良くなく、聞き取れない場面が多かった。

 甲状腺検査の結果として報告されたのは、進捗中の4巡目5巡目、そして25歳時の節目の検査2021年9月30日時点のデータで、4巡目と5巡目は前回から3ヶ月分、6ヶ月ごとに報告される節目検査は、第42回検討委員会での報告から6ヶ月分の結果である。数字の動きは大きくないが、前回初めて公表された5巡目の二次検査の結果に、年齢と腫瘍径、および血液検査と尿中ヨウ素の結果が追加され、25歳時の節目の検査では、悪性ないし悪性疑い13人の年齢・性分布グラフが初公開された。(5巡目では症例数がまだ一桁のためか、年齢・性分布グラフは未公開である。)

 4巡目で1人、5巡目で3人、25歳時の節目検査で4人が新たに悪性ないし悪性疑いと判定され、4巡目の3人、5巡目の2人で手術が施行され、すべて甲状腺乳頭がんと確定している。

 各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数、平均年齢と平均腫瘍径、および各年度ごとの手術症例の人数は、参考資料 3 甲状腺検査結果の状況」にまとめられている。 

 全体的には、前回の公表データ(第 43 回検討委員会で公表された参考資料 4 甲状腺検査結果の状況を参照)と比べると、悪性ないし悪性疑い例は8人増えて274人(良性1人含む)に手術で甲状腺がんと確定された症例は5人増えて226人となっている。


**********

現時点での結果

 これまでに発表された集計外症例数を含む、現時点での結果をまとめた。過去記事で説明したように、第16回甲状腺検査評価部会2021年3月22日開催で公表された、福島県のがん登録情報から見つかった24人と、甲状腺外科医の鈴木眞一氏が2019年から国内外の学会などで報告しており、ようやく福島県立医科大学における手術症例の報告」として公表された集計外症例35人(うち甲状腺がん19人)も含まれている。データが突合されていないので実証は不可能ながら、これまで公式に集計外症例と公表されている11人(福島医大の横谷進氏らによる英語論文で報告されており、すべて甲状腺乳頭がん)も、この19人に含まれていると推定される。

4巡目検査の結果

 2018年4月1日から開始されている4巡目(25歳時の節目検査対象者は除外)では、新たに 31人が一次検査を受診したが、受診率の62.3%に変化はない。二次査対象者は 1人だけ増えて 1,392人となり、うち新たに10人が二次検査を受診し、2人が細胞診を受診した結果、1人が新たに悪性ないし悪性疑いと診断された。

 この 1人は、事故当時年齢が8 10歳の男性で、2018年度対象市町村の住民で、中通りに居住していた。3巡目ではB判定だった。

 4巡目の悪性ないし悪性疑いは 37人となり、前回結果は、A1が 6人、A2結節が 5人、A2のう胞が 13人、A2のう胞&結節が1人、Bが 9人、未検査が 3人となる。


 
2018年度対象市町村で2人、2019年度実施市町村で 1人の計3人が新たに手術を受け、4巡目で甲状腺がんと確定されたのは合計 32人となった。この 32人全員が甲状腺乳頭がんだった。

 
5巡目検査の結果

 2020年度から開始されている 5巡目検査は、COVID-19パンデミックのために県内学校での検査が一部延期、医療機関での検査も一部制限されたことから、通常の 2年間での実施が困難となり、小学校、中学校と特別支援学校では 3年間(2020年度分を 2年間、2021年度分を 2022年に繰り越し)、高等学校では 2021〜2年度の 2年間(2020年度実施校を除く)で実施されることになっている

 2021年9月30日時点での一次検査受診者は前回から13,456人増えて45,860人(うち 6,028人が県外受診)で、受診率は、前回から5.3%増えた 18.1%となった。年齢階級別受診率は、8〜11歳で前回の 24.2%から 31.3%、12〜17歳で 13.1%から 20.1%、18歳以上で 5.2%から 7.4%に上がった。

 二次査対象者は 167人増えて 458人となり、うち新たに63人が二次検査を受診し、10人が細胞診を受診した結果、3人が新たに悪性ないし悪性疑いと診断され、5巡目での悪性ないし悪性疑いは6人となった。今回は、年齢と腫瘍径のデータは公表されたが、年齢・性分布はいまだ未公表で、新たに診断された 3人については、男性1人と女性2人で、3人とも2020年度対象市町村の住民であることしか分かっていない。しかし、年齢範囲が事故当時は2〜12歳と記されており、6人の中には、事故当時2歳だった人がいることが分かる。また、二次検査の結果では、今回から、血液検査と尿中ヨウ素の結果も公表されている。

 前回検査の結果が初めて公表され、5巡目の悪性ないし悪性疑い6人では、A判定が3人(A1が1人、A2のう胞が1人、A2結節&のう胞が1人)、B判定が2人、未受診が1人だったと判明した。しかし、今回の 3人の前回結果がどれなのかは不明である。

 2020年度対象市町村の住民である2人が新たに手術を受け、5巡目では3人が甲状腺がんと確定したことになる。3人とも甲状腺乳頭がんだった。

25歳時の節目検査の結果

 2017年度から開始されている25歳時の節目検査の結果は、通常の甲状腺検査とは別に、6ヶ月ごとに公表されている。今回の報告データは、1992〜5年度生まれの対象者における、2021年9月30日時点のものである。(受診は対象年度にとどまらず、次回の30歳時節目検査の前年まで可能で、追加の受診データも随時報告されていくことになっている。)なお、2021年度から1996年生まれも対象となっているが、集計日時点での実施数が少ないため、今回の集計には含まれていない。また、2022年度からは、二度目の節目検査となる30歳時の節目検査が、1992年生まれを対象として開始されている。

 新たに542人が一次検査を受診したが、受診率は 9.3%と依然として低い。二次検査対象者は55人増えて414人となり、89人が受診し、計328人の受診者中 304人で結果が確定している。8人が細胞診を新たに受診し、細胞診受診者は25人となった。うち、男性2人と女性2人の計4人が、新たに悪性ないし悪性疑いと診断された。この 4人の前回検査の結果は、A2のう胞が1人、Bが1人、未受診が2人だった。今回は、年齢・性分布のグラフが初公開されている。

 25歳時節目検査における悪性ないし悪性疑い例は13人となり、前回検査は、A2結節が1人、A2のう胞が1人、Bが3人、未受診が8人となる。

 新たな手術症例はなく、手術で甲状腺がんと確定したのは 6人のままで、5人は甲状腺乳頭がん、1人は濾胞がんである。

 また、今回の細胞診の結果における最小腫瘍径は6.2mmと、前回から3.2mmも減少していることから、小さながんが検出されていることがみて取れるが、手術症例数に変化がなかったことからも、20代後半でのアクティブ・サーベイランス症例として、非手術経過観察の対象となっていると思われる。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

1〜5巡目と25歳時節目検査の結果のまとめ

同情報は、「参考資料 3  甲状腺検査結果の状況」の5ページ目にもまとめられている。

先行検査(1巡目)(結果確定版の2016年度追補版はこちら
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例      102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例      14人

本格検査(2巡目)(結果確定版の2020年度更新版はこちら
悪性ないし悪性疑い 71(前回から変化なし)
手術症例      55人
(前回から 1人増)甲状腺がん 55人:乳頭がん 54人、その他の甲状腺がん**1人)                                   未手術症例     16人 


本格検査(3巡目)(結果確定版の2020年度追補版はこちら
悪性ないし悪性疑い 31(前回から変化なし)
手術症例      29人(前回から変化なし)(甲状腺がん 29人:乳頭がん 29人)
未手術症例       2人

本格検査(4巡目)(結果概要はこちら
悪性ないし悪性疑い 37(前回から 1人増)
手術症例      32人(前回から 3人増)(甲状腺がん 32人:乳頭がん 32人)
未手術症例     5人

本格検査(5巡目)(実施状況はこちら
悪性ないし悪性疑い 6(前回から 3人増)
手術症例      3人(前回から2人増)(甲状腺がん 3人:乳頭がん 3人)
未手術症例     3人

25歳時の節目検査(実施状況はこちら
悪性ないし悪性疑い 13(前回から4人増)
手術症例      6人(前回から変化なし)甲状腺がん 6人:乳頭がん 5人、濾胞がん 1人)
未手術症例     7人

合計
悪性ないし悪性疑い 274人(良性結節を除くと273人
手術症例      227人(良性結節 1人と甲状腺がん 226人:乳頭がん 223 
人、低分化がん 1人、濾胞がん1人、その他の甲状腺がん**1人)

未手術症例***      47人

注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年 11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第 7 版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

前回検査の結果

2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 71人の 1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞 25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低 2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人

3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 31人の 2巡目での判定結果 
A1判定:7人
A2判定:14人(結節 4人、のう胞 10人)
B判定:7人
2巡目未受診:3人

4巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 37人の 3巡目での判定結果  
A1判定:6人
A2判定:19人(結節 5人、のう胞 13人、結節&のう胞 1人)
B判定:9人
3巡目未受診:3人

5巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 6人の 4巡目での判定結果  
A1判定:1人
A2判定:2人(のう胞 1人、結節&のう胞 1人)
B判定:2人
4巡目未受診:1人

25歳時節目検査で悪性ないし悪性疑いと診断された 13人の前回検査での判定結果  

A1判定:0人
A2判定:2人(結節 1人、のう胞 1人)
B判定:3人
未受診:8人


メモ:2024年2月2日に公表された甲状腺検査結果の数字の整理、およびアンケート調査について

  *末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節、のう胞)が、まとめて公式発表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。  2024年2月22日に 第50回「県民健康調査」検討委員会 (以下、検討委員会) が、 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された。  ...