メモ:2023年3月22日に公表された甲状腺検査結果の数字の整理など


 *末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節、のう胞)が、まとめて公式発表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。

 2023年3月22日に、第47回「県民健康調査」検討委員会(以下、検討委員会)が、会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された。検討委員会および記者会見の動画は、Ourplanet-TVのウェブサイトから視聴できる。

 今回報告されたのは5巡目および25歳時節目検査2022年9月30日時点のデータで、5巡目は前回(2022年12月2日開催)から3ヶ月分、6ヶ月ごとに集計・報告される25歳時節目検査は第45回検討委員会での報告以降 6ヶ月分のデータだった。開催日とデータ集計日の乖離は6ヶ月のままであり、「最新データ」は依然として5ヶ月前のデータである。なお、年度末という時期のためか、3月20日には、第20回「県民健康調査」検討委員会「甲状腺検査評価部会」(以下、評価部会)が7ヶ月半ぶりに開催された。ここで公表された4巡目結果の確定版は、2日後の検討委員会での配布資料には含まれておらず、検討委員会で正式に公表されなかったゆえに公式英訳が存在しない2巡目結果の確定版と同じ道を辿るのか着目すべきであろう。とは言え、中身は第46回検討委員会で公表された結果概要と同一であるため、同内容の情報の公式英訳はそのうち出てくることになる。

 5巡目では3人が新たに悪性ないし悪性疑いと判定され、9人が手術で甲状腺乳頭がんと確定した。25歳時の節目検査でも新たに3人が悪性ないし悪性疑いと判定されたが、手術で甲状腺乳頭がんと確定されたのは1人だった。

 各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数、平均年齢と平均腫瘍径、および各年度ごとの手術症例の人数は参考資料 5 甲状腺検査結果の状況」にまとめられている。 

 全体的には、前回の公表データ(第 46回検討委員会で公表された参考資料 3 甲状腺検査結果の状況を参照)と比べると、悪性ないし悪性疑い例は6人増えて302人(良性1人含む)手術で甲状腺がんと確定された症例は10人増えて237人となっている。

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現時点での結果

 これまでに発表された集計外症例数を含む、現時点での結果をまとめた。がん登録データの43人は、2018年までの地域・全国がん登録データとの突合で見つかった人数第19回評価部会 資料2で、第16回評価部会で公表されて前回の記事に収録された24人資料に、第18回評価部会で判明した3人資料と第19回評価部会で2018年データから追加された16人資料が加わっている。集計外症例35人(うち甲状腺がん19人)は、甲状腺外科医の鈴木眞一氏が2019年から国内外の学会などで報告し、福島県立医科大学における手術症例の報告として公表されている。データが突合されていないので実証は不可能ながら、これまで公式に集計外症例と公表されている11人(福島医大の横谷進氏らによる英語論文で報告されており、すべて甲状腺乳頭がん)も、この19人に含まれていると推定される。

 

5巡目検査の結果

 2020年度から開始されている 5巡目検査は、COVID-19パンデミックのために県内学校での検査が一部延期、医療機関での検査も一部制限されたことから、通常の 2年間での実施が困難となり、小学校、中学校と特別支援学校では 3年間(2020年度分を 2年間、2021年度分を 2022年に繰り越し)、高等学校では 2021〜2年度の 2年間(2020年度実施校を除く)実施されている。なお、6巡目検査は、2023年4月から、従来の2年間で開催される予定である。

 2022年9月30日時点での一次検査受診者は、前回から8,889人増えて89,094人(うち 7,727人が県外受診)で、受診率は前回から3.5%増えて35.2%となり、4巡目の受診率の半分は超えたが依然として低い。年齢階級別受診率は、8〜11歳で前回の 52.7%から58.4%、12〜17歳で 38.1%から43.3%、18歳以上で 10.6%から10.8%と変化しており、学校検査の進捗と18歳以上での受診率の低迷を反映している。

 二次査対象者は 62人増えて 1,001人となり、うち新たに101人が二次検査を受診し、6人が細胞診を受診した結果、3人が新たに悪性ないし悪性疑いと診断され、5巡目での悪性ないし悪性疑いは26人となった。この 3人はすべて女性で2020年度対象市町村の住民、そして事故当時年齢は1歳、4歳と9歳だった。4巡目の判定は、1人がA1、1人がA2のう胞、1人がBだった。

 今回、細胞診の結果で腫瘍径の最大値が 46.7 mmと、前回より32.0 mm増大している。これは必ずしも過去3ヶ月での変化ではなく、個別の症例についての情報提供はできないながら、過去に未受診の人もいるという言及に留められた。

 まとめると、5巡目の悪性ないし悪性疑いは26人となり、4巡目での結果は、A判定が20人(A1が8人、A2のう胞が11人、A2結節&のう胞が1人)、B判定が4人、未受診が2人だった。

 2020年度対象市町村から7人、2021年度対象市町村から2人の計9人が新たに手術を受け、5巡目では16人が甲状腺がんと確定し、16人とも甲状腺乳頭がんだった。

25歳時の節目検査の結果

 2017年度から開始されている25歳時の節目検査の結果は、通常の甲状腺検査とは別に、6ヶ月ごとに公表されている。今回の報告データは、1992〜6年度生まれの対象者における、2022年9月30日時点のものである。受診は対象年度にとどまらず、次回の30歳時節目検査の前年まで可能で、追加の受診データも随時報告されていくことになっている。)2022年度からは、二度目の節目検査となる30歳時の節目検査が、1992年生まれを対象として開始されているということである。

 対象者108,711人のうち新たに399人が一次検査を受診し、前回、分母の拡大により9.3%から若干低下した受診率は 9.1%から 9.4%となったが、依然として低い。県外受診者は3,699人である。B判定は46人増えて550人となったが、増加数のほとんど(35人)は2016年度生まれ対象者である。第45回検討委員会では、2016年生まれの二次検査対象者は二次検査結果から除外されていたが、今回は含まれている。新たに83人が二次検査を受診し、計436人の受診者中 416人で結果が確定している。5人が細胞診を新たに受診し、細胞診受診者は36人となった。うち、女性3人が新たに悪性ないし悪性疑いと診断された。この 3人の前回検査の結果は、A1が1人、Bが1人と未受診が1人だった。

 まとめると、25歳時節目検査における悪性ないし悪性疑い例は19人となり、前回検査は、A1が1人、A2結節が1人、A2のう胞が3人、Bが4人、未受診が10人となる。

 新たに1人で手術が施行され、甲状腺乳頭がんと確定診断された。25歳時節目検査の手術症例は11人となり、うち10人は甲状腺乳頭がん、1人は濾胞がんである。


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1〜5巡目と25歳時節目検査の結果のまとめ

同情報は、「参考資料 5  甲状腺検査結果の状況」の7ページ目にもまとめられている。

先行検査(1巡目)(結果確定版の2016年度追補版はこちら
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例      102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例      14人


本格検査(2巡目)(結果確定版の2020年度更新版はこちら、手術症例更新版はこちら
悪性ないし悪性疑い 71(前回から変化なし)
手術症例      56人
(前回から 1人増)甲状腺がん 56人:乳頭がん 55人、その他の甲状腺がん**1人)                                   未手術症例     15人 


本格検査(3巡目)(結果確定版の2020年度追補版はこちら
悪性ないし悪性疑い 31(前回から変化なし)
手術症例      29人(前回から変化なし)(甲状腺がん 29人:乳頭がん 29人)
未手術症例       2人


本格検査(4巡目)(結果確定版はこちら
悪性ないし悪性疑い 39(前回から 変化なし)
手術症例      34人(前回から 変化なし)(甲状腺がん 34人:乳頭がん 34人)
未手術症例     5人

本格検査(5巡目)(実施状況はこちら
悪性ないし悪性疑い 26(前回から 3人増)
手術症例      16人(前回から9人増)(甲状腺がん 16人:乳頭がん 16人)
未手術症例     10人

25歳時の節目検査(実施状況はこちら
悪性ないし悪性疑い 19(前回から3人増)
手術症例      11人(前回から1人増)甲状腺がん 11人:乳頭がん 10人、濾胞がん 1人)
未手術症例     8人


合計
悪性ないし悪性疑い 302人(良性結節を除くと301人
手術症例      248人(良性結節 1人と甲状腺がん 247人:乳頭がん 244 
人、低分化がん 1人、濾胞がん1人、その他の甲状腺がん**1人)

未手術症例***      54人

注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年 11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第 7 版    内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。

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前回検査の結果

2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 71人の 1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞 25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低 2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人


3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 31人の 2巡目での判定結果 
A1判定:7人
A2判定:14人(結節 4人、のう胞 10人)
B判定:7人
2巡目未受診:3人


4巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 39人の 3巡目での判定結果  
A1判定:6人
A2判定:20人(結節 6人、のう胞 13人、結節&のう胞 1人)
B判定:9人
3巡目未受診:4人

5巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 26人の 4巡目での判定結果  
A1判定:8人
A2判定:12人(のう胞 11人、結節&のう胞 1人)
B判定:4人
4巡目未受診:2人

25歳時節目検査で悪性ないし悪性疑いと診断された 19人の前回検査での判定結果  

A1判定:1人
A2判定:4人(結節 1人、のう胞 3人)
B判定:4人
未受診:10人

メモ:2024年2月2日に公表された甲状腺検査結果の数字の整理、およびアンケート調査について

  *末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節、のう胞)が、まとめて公式発表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。  2024年2月22日に 第50回「県民健康調査」検討委員会 (以下、検討委員会) が、 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された。  ...