体内に取り込まれた放射性核種の神経精神的影響


Neuropsychiatric Effects of Ionizing Radiation
Chapter 6 Neuropsychiatric Effects of Chronic Irradiation


電離性放射線の神経精神的影響
第6章 慢性被ばくの神経精神的影響


142-143ページの表
表6.2 体内に取り込まれた放射性核種の神経精神的影響


亜鉛85 Zinc 65 (Zn-65)
ベータ線とガンマ線放出核種 半減期 57分

筋肉、骨格、皮膚、肝臓、脳下垂体、すい臓と生殖腺に蓄積する。
神経性精神系の症状には、脳の生体電気活動の障害の記述もある。


ストロンチウム89 Strontium 89 (Sr-89) ベータ線とガンマ線放出核種 半減期 50.5 日
ストロンチウム90 Strontium 90 (Sr-90) ベータ線放出核種 半減期 29.1年

集中的に骨格(主に骨の成長ゾーン)に、特に妊娠中と授乳中に沈着する。胎盤を通して胎児に入り込み、母乳に入る。1%以下が軟組織に蓄積する。

また、骨格への蓄積は、骨痛症候群と自律神経無力症候群を誘発し、同時に、中枢神経系の器質性損傷を引き起こす。


ヨウ素131 Iodine 131 (I-131) ベータ線とガンマ線放出核種 半減期 8日
ヨウ素133 Iodine 133 (I-133) ベータ線とガンマ線放出核種 半減期 20.8時間

放射性ヨウ素は、子供の甲状腺、脳下垂体、腎臓に特に重大な影響を及ぼす。胎盤と胎児にも沈着する。甲状腺癌、副甲状腺癌や乳癌、また、多発性内分泌腺疾患 等を誘発する可能性がある。局部的な多発性神経炎、特有な首の異常感覚や神経痛、ホルネル症候群、片頭痛発作やしゃがれ声なども見られる。
また、放射性ヨウ素の影響は、胎児・新生児・子供の甲状腺機能低下症の増加を引き起こし、最終的にはクレチン症や他の精神・神経疾患も引き起こす可能性がある。


セシウム134 Cesium 134 (Cs-134) ベータ線とガンマ線放出核種 半減期 2.1年
セシウム137 Cesium 137 (Cs-137) ガンマ線放出核種 半減期 30年

放射性セシウムは、比較的均等に体内に行き渡る。筋肉、肝臓、腎臓、肺や骨格に蓄積し、胎盤を通して胎児に入り、母乳にも入る。脳に蓄積するというデータも ある。他には、自律神経多発性神経炎を伴う中枢神経系の器質的損傷に至る、自律神経無力症候群やうつ病症候群も挙げられる。


金198 Gold 198 (Au-198)  ベータ線とガンマ線放出核種 半減期 2.7日

細胞内皮系、神経組織、特に脊髄に蓄積する。また、末梢性多発性神経炎と多発性不全麻痺等が挙げられる。


水銀203 Mercury 203 (Hg-203)  ベータ線とガンマ線放出核種 半減期 46.6日

特に、腎臓に蓄積する。また、甲状腺、脳下垂体と脳にも蓄積する。水銀中毒においては、電離性放射線と安定水銀塩は相乗的な反応と損傷をもたらす。


タリウム204 Thallium 204 (Tl-204)  ベータ線とガンマ線放出核種 半減期 3.8年

筋肉、骨格と実質臓器に蓄積する。皮膚においては主に毛嚢の成長ゾーンに沈着し、毛根内でのクレアチン生産の変化により脱毛症を引き起こすことがある。


鉛210 Lead 210 (Pb-210)  ベータ線とガンマ線放出核種 半減期 22.3年

骨に著しく蓄積する。しかし、ほぼ全ての臓器や組織にも蓄積する。生物学的に一番危険な放射性核種のひとつであり、特に神経系に、多発性神経炎や脳障害などの損傷を引き起こす。


ラジウム226 Radium 226 (Ra-226)  アルファ線、ベータ線とガンマ線放出核種 半減期 1600年

骨組織、腎臓と唾液腺に沈着する。ラジウム中毒は、骨組織の破壊に特徴づけられ、放射線性骨炎により、骨の脆性が増し、病的骨折を引き起こす。ラジウムによ る損傷に含まれる症状は、自律神経無力症、手や足の骨、胸骨、肋骨や、脊椎の痛み等の骨痛症候群の中の特定の症状、また、中枢神経系の器質性損傷や、放射線性白内障などである。


トリウム228 Thorium 228 (Th-228)  アルファ線、ベータ線、ガンマ線放出核種 半減期 1.9年

骨に蓄積する。造血の比較的軽い反応が、著しい神経症状と関連する可能性がある。


ウラン238 Uranium 238 (U-238) アルファ線、ベータ線とガンマ線放出核種 半減期 44億6800万年

非常に強力な原形質への影響を及ぼす。特に、骨は重大な影響を受けやすい。また実質臓器にも蓄積する。ウラン中毒は多くのさまざまな臓器に影響を及ぼすと伴に、症状を誘発し、自律神経無力症候群、自律神経失調症、中枢神経系の器質性損傷や、麻痺などはその特徴的な例である。

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メモ:2024年5月10日に公表された甲状腺検査結果の数字の整理

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