スキップしてメイン コンテンツに移動

安倍首相の京都の国際会議での発言に対するロバート・アルバレズ氏の疑問


米国の政策分析研究所の上級学者で、使用済み核燃料の専門家であるロバート・アルバレズ氏から松村昭雄氏への2013年10月8日付けのメールが転送されてきたので、原文と和訳を掲載する許可を頂いた。

和訳

親愛なる昭雄様、

安倍晋三首相が京都の国際会議で、福島原発事故の放射能の余波と対応するにあたり、「我が国はあなた方の知識と専門的技術が必要です。」と述べたのを興味深く拝見しました。

これは、もしも、必要である国際的支援の本質と範囲についてのいくつかの重要な問題に答えが得られるのであれば、肯定的な一歩であると言えます。

例えば、首相の言葉を受け、そのような支援と協力を確立するプロセスというのは、実際にはどのようなものなのですか?

この支援というのは、専門的な検討と評価に留まるものなのでしょうか?米国エネルギー省の上級の役職に携わった経験から、私は、専門家のパネルは有益であり得る反面、追跡調査やある程度の進歩がなければ、儀式的な役割で終わってしまう可能性があるという結論に至りました。

これは、余分の人員や用具の労力が必要となりますか?もしもそうなら、このような前例のない仕事の予算はいくらなのですか?福島原発事故の余波は、未知の領域にあり、東京電力株式会社(TEPCO)は、その能力を超えた困難な挑戦に直面しているように見えます。あいにく、国家としての日本にも同じ事が言えるかもしれません。核兵器生産後に残された使用済み原子炉燃料の安定化においての米国の経験を考えてみて下さい。1993年に、エネルギー省のハンフォード地区で、人間の環境に重篤なリスクの可能性を持つ、保管の重大な脆弱性が見つかりました。ハンフォードでの使用済み核燃料の安全な取り出しと安定化においては、以前にはなかったような技術の開発と配備が必要であり、それには、10年以上かかり、数十億ドルの費用が必要でした。それに反して、福島原発での原子炉の残骸と破壊された炉心の中での使用済み核燃料の処理というのは、私達がハンフォードで直面したよりも、あるいは、世界の他のどの場所でよりも、はるかに大きなチャレンジです。

何卒宜しくお願い致します。

ロバート・アルバレズ
政策分析研究所 上級学者

*****

英語原文

Dear Akio,

I noticed with interest that Prime Minister Shinzo Abe spoke at an international conference in Kyoto in which he was reported to have said, 
"My country needs your knowledge and expertise" to address the radiological aftermath of the Fukushima nuclear accident.  

This can be a positive step if several key questions are answered about the nature and extent of the international assistance that is required. For instance:

Beyond Prime Minister's statement, what exactly is the process to establish such assistance and cooperation?

Is this assistance limited to expert reviews and assessments? Having served in senior positions at the U.S. Department of Energy, I have concluded that expert panels can be helpful, but also can become ceremonial functions, if there is no follow-up and measurable progress being made.

Will this involve the efforts of additional personnel and material? If so, what is the budget for such an unprecedented undertaking? The aftermath of the Fukushima nuclear accident remains in uncharted waters, and it appears that Tokyo Electric Power Company (TEPCO) faces a daunting challenge that exceeds its capabilities. Unfortunately, this may also be the case for the nation of Japan. I draw your attention to the the U.S. experience with stabilizing spent reactor fuel left over from the production of nuclear weapons. Major storage vulnerabilities were identified at the Energy Department's Hanford site in 1993, which posed potentially serious risks to the human environment. Safe removal and stabilization of the spent nuclear fuel at Hanford required the development and deployment of first-of-a-kind technologies, and took well over a decade at an expense of several billion dollars. By contrast, coming to terms with the spent nuclear fuel amidst the reactor ruins and destroyed reactor cores at the Fukushima site pose a far greater challenge than we faced at Hanford; or anywhere else in the world.

Best Regards,

Robert Alvarez
Senior Scholar
Institute for Policy Studies

コメント

このブログの人気の投稿

岡山大学・津田敏秀教授 日本外国特派員協会での記者会見の動画と読み上げ原稿

2015年10月8日に、岡山大学の津田敏秀教授が、日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を行った。米国時間の2015年10月6日午後に、国際環境疫学会(International Society for Environmental Epidemiology)が発行する医学雑誌「Epidemiology(エピデミオロジー)」に福島県民健康調査・甲状腺検査1巡目の結果を疫学的に分析した論文がオンラインで先行発表されたので、その論文の内容を説明し、質疑応答を行った。下記に、記者会見告知の和訳、記者会見動画(日本語、英語通訳)、そして会場で英語版が配布された、記者会見の読み上げ原稿の日本語原文(津田氏の許可あり)を掲載する。会見では、実際の読み上げ原稿よりも詳細な説明がされており、スライドを見せながらのミニ・レクチャーも展開されたので、ぜひ、動画の視聴をお勧めする。なお、同内容の英文記事はこちらである。

FCCJウェブサイトの会見告知の和訳

福島第一原子力発電所のトリプル・メルトダウンから約5年が過ぎようとしている今、注目されているのは、放射線被ばくが周辺住民、特に子どもに及ぼし得る長期的な健康影響である。

福島県では、事故当時18 歳以下だったおよそ370,000 人の子どもたちを対象に、大規模の甲状腺超音波スクリーニング検査が行われている。

福島県での小児甲状腺がんの発見率が事故前の発症率よりはるかに高いにも関わらず、福島県の医療当局と日本政府は、その原因は福島事故ではないと主張している。

事故直後に何万人もの住民が避難したこと、そして、福島県で生産された牛乳や他の農産物の販売が禁止されたことがその理由として挙げられている。当局は、国際的に著名な専門家らの支持のもと、甲状腺がんの発症率の増加は、福島県の子どもたちの検査に用いられている超音波機器の精度が高いためであると主張している。

しかしこの主張への大きな反論として、岡山大学・環境疫学教授の津田敏秀氏は、福島で起きている小児甲状腺がんの過剰発生が単なるスクリーニング効果ではなく、放射線被ばくの結果であると述べている。

津田氏の論文は、国際環境疫学会が発行する医学雑誌「Epidemiology(エピデミオロジー)」に今月掲載される予定で、津田氏は10 月8 日に FCCJ で記者会見を行い、研究結果について説明し、質問に答えること…

福島県の小児甲状腺がん症例について現在わかっていること

福島県の県民健康調査の甲状腺検査により診断された甲状腺がん症例の詳細について、現時点で判明している情報をまとめた。 1)2014年11月11日に開催された第4回 甲状腺検査評価部会で鈴木眞一氏によって公表された手術の適応症例について。 2)2014年11月14日の日本甲状腺学会学術集会での鈴木眞一氏の発表「小児〜若年者における甲状腺がん発症関連遺伝子群の同定と発症機序の解明」の抄録テキストおよび口頭発表からの情報。学術集会の質疑応答時の長瀧重信氏の発言も。 3)2014年8月28日の日本癌治療学会学術集会での鈴木眞一氏の発表「福島における小児甲状腺癌治療」の抄録テキスト。
なお、同様の情報の英語版はこちら。 ***** 第4回 甲状腺検査評価部会  資料3 手術の適応症例について
震災後 3 年を経過し、2014 年 6 月 30 日現在までの二次検査者 1,848 名からの細胞診実施者 485 名中、悪性ないし悪性疑いは 104 例であり、うち 58 例がすでに外科手術を施行されている。 58例中55例が福島医大甲状腺内分泌外科で実施され、3例は他施設であった。また、55 例中1例は術後良性結節と判明したため甲状腺癌 54 例につき検討した。 病理結果は 52 例が乳頭癌、2例が低分化癌であった。 術前診断では、腫瘍径 10 ㎜超は 42 例(78%)、10 ㎜以下は 12 例(22%)であった。また、10 ㎜以下 12 例のうちリンパ節転移、遠隔転移が疑われるものは 3 例(5%)、疑われないもの(cT1acN0cM0)は 9 例(17%)であった。 この9例のうち7例は気管や反回神経に近接もしくは甲状腺被膜外への進展が疑われ、残りの2例は非手術経過観察も勧めたが本人の希望で手術となった。 なお、リンパ節転移は 17 例(31%)が陽性であり、遠隔転移は 2 例(4%)に多発性肺転移を疑った。 術式は、甲状腺全摘 5 例(9%)、片葉切除 49 例(91%)、リンパ節郭清は全例に実施し、中央領域のみ実施が 67%、外側領域まで実施が 33%であった。出来る限り 3cm の小切開創にて行った。 術後病理診断では、腫瘍径 10 ㎜以下は 15 例(28%)かつリンパ節転移、遠隔転移のないもの(pT1a pN0 M0)は 3 例(6%)であった。甲状腺外浸潤 pEX1は 37%に認め、リンパ節転…

ランセット・ヘマトロジー誌に掲載された論文「放射線モニタリングを受けた作業者(INWORKS)における電離放射線と白血病およびリンパ腫の死亡リスク:国際コホート研究」の部分和訳とフェアリー氏解説

低線量の放射線でも白血病リスクが上昇する、と最近話題になっている新研究がある。英医学誌「ランセット・ヘマトロジー」に掲載された、"Ionising radiation and risk of death from leukaemia and lymphoma in radiation-monitored workers (INWORKS): an international cohort study"(邦題仮訳「放射線モニタリングを受けた作業者(INWORKS)における電離放射線と白血病およびリンパ腫の死亡リスク:国際コホート研究」)である。

この論文についてのツイートまとめはこちら 関連新聞記事のツイートまとめはこちら
2015年7月2日掲載の共同通信の記事「放射線低線量でも白血病リスク 欧米作業員30万人を疫学調査」
ここでは、この論文の一部(「要旨」と「研究のコンテクスト」)および、英国のイアン・フェアリー氏による解説の和訳を記す。
「放射線モニタリングを受けた作業者(INWORKS)における電離放射線と白血病およびリンパ腫の死亡リスク:国際コホート研究」

要旨
背景:職業的、環境的、および診断医療の状況下で典型的に見られるような、間欠的あるいは長期におよぶ低線量放射線被ばくにおける白血病とリンパ腫のリスクには、大きな不確実性がある。われわれは、長期にわたる低線量放射線被ばくと、フランス、英国と米国で雇用されている放射線モニタリングを受けた成人における、白血病、リンパ腫と多発性骨髄腫の死亡率との間の関連性を定量化した。
方法:フランスの原子力・新エネルギー庁、 アレヴァ原子燃料部門、またはフランス電力会社、米国のエネルギー省と防衛省、そして英国の放射線業務従事者登録に含まれている原子力産業作業者で、最低1年間雇用され、被ばく線量の個人モニタリングをされた308,297人の作業者のコホートを構築した。コホートは、計8,220,000人・年に達するまで追跡された。白血病、リンパ腫と多発性骨髄腫による死亡者を確認した。ポアソン回帰を用いて、骨髄吸収線量推計値と白血病とリンパ腫の死亡率との間の関連性を定量化した。
結果:線量は非常に低い率で累積した(平均 年間 1.1 mGy, SD 2〜6)。白血病(慢性リンパ性白血病を除く)による死亡率の過剰相対リスクは1 G…