PSR/IPPNWによる「UNSCEARフクシマ報告書の批判的分析」:プレスリリース日本語版


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「UNSCEARフクシマ報告書の批判的分析」の英語原文はこちら。日本語版は準備中。

社会的責任を果たすための医師団(PSR/米国IPPNW)と核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部

医師団:UNSCEAR報告書はフクシマ大惨事の健康影響を
系統的に過小評価している

今日、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の19支部は、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)のフクシマ報告書の批判的分析を公表した。フクシマ原子力災害についての広範囲に渡る複雑なデータの評価に尽力されたUNSCEAR委員会のメンバーに感謝の念を表したい。この報告書は、フクシマ原子力災害が単一の事象ではなくて進行中の大惨事であり、福島県のみならず日本中および海外の人々に影響を与え、これまでの記録で最大の単独の海洋放射能汚染であることを示している。報告書内の日本国民の生涯線量の集団線量に基づくと、フクシマの放射能フォールアウトによって1,000件の甲状腺癌の過剰発症および、4,300件から16,800件の癌の過剰発症が起こるだろうと予期すべきである。しかし、予測というのは、それが基づく仮定とデータの妥当性に依拠するものである。UNSCEARは、大惨事の真の程度を軽視しようと試みている。この報告書の結論は、下記の理由のために、系統的な過小評価であるとみなされるべきである。

  1. UNSCEARのソースターム推定値の妥当性は疑わしい
  2. 内部被ばく量の計算に大きな懸念がある
  3. フクシマ作業員らの線量評価は信用できない
  4. UNSCEAR報告書は、フォールアウトの人間以外の生物相への影響を無視している
  5. 胎芽の放射線への特別な脆弱性が考慮されていない
  6. 非癌疾患と遺伝的影響はUNSCEARに無視されている
  7. 核フォールアウトと自然放射線との比較は誤解を招く
  8. UNSCEARのデータ解釈には疑問がある
  9. 政府によって取られた防護措置が誤って伝えられている
  10. 集団線量推計値からの結論が提示されていない
2013年12月31日までに、福島県の33人の子供達が甲状腺癌の診断を受け、さらに41人の細胞診の結果が癌性病変を疑わせるものである。癌には「原産地表示」というものがないので、この中の1症例でさえも放射線誘発性であるかどうかは判断できないが、これまで見つかった症例数は予想以上に多い。日本の癌統計によると、この集団で予想される甲状腺癌の発症率は1年で1人以下と示唆される。さらに、現時点では、被ばくした小児集団の約70%の検査結果しか出ておらず、二次検査が必要な何百人もの子どもたちがまだ検査を受けていないため、甲状腺癌の人数は今後増加すると見込まれる。原子力災害の影響が適切にモニタリングされ、放射能フォールアウトで被ばくした人たちが最善の医療を受けれるようにするためには、被ばく集団の一般健康診断および他の疾患(甲状腺癌以外の癌や非癌疾患)の調査が必要である。

日本政府は、安定ヨウ素剤配布を拒否し、被ばく許容量を年間20ミリシーベルトに引き上げ、実質、多くの子どもたちが放射能汚染区域に居住し続けることを強制し、子どもたちを守る事を怠った。学校関係者は、学校の敷地から1メートルも離れていない所にある放射能ホットスポットを無視し、給食に福島産の米を再導入している。日本政府は避難区域の住民の帰還を促し、汚染地域に戻る住民たちに賠償金の提供すらしているが、除染作業は期待されたような結果をもたらしていない。このようなことは、UNSCEAR報告書内で全く言及されていない。

フォールアウトによる放射線被ばくが「一般大衆とほとんどの作業員の間での将来のどの健康影響の原因となるとも考えにくい」と述べて、フクシマ原子力災害の何万もの家族への悲惨な影響を単なる統計学的問題に矮小化してしまうのは不適切であり、多数の個々の苦しみの体験談を無視することになる。

最後に強調されるべきことは、フクシマ事故が最悪のシナリオではなかったということである。もしも風が違う方向へ吹いていれば、東日本の都市部の何百万人もの住民らが核フォールアウトの影響を受けたかもしれないが、幸いにも、フォールアウトは代わりに太平洋に降雨として落ちた。これは、将来の原子力安全ガイドラインおよび公共政策提言を検討するにあたって重要な要因である。最終的に問題となるのは、独立した科学研究の、政治的および原子力産業の利益の影響に屈しないという信念だけでなく、健康と幸せを保てるような生活水準に対するすべての人間の普遍的権利でもある。これこそが、フクシマ原子力災害による健康影響の評価においての指針となるべきである。


このUNSCEAR報告書の批判的分析は、2014年6月6日に核戦争廃止国際医師会議の19支部により公表され、次のリンクからアクセス可能である。 http://www.fukushima-disaster.de/information-in-english/maximum-credible-accident.html

連絡先: アルフレッド・マイヤー、米国PSR(社会的責任を果たすための医師団) alfred.c.meyer@gmail.com
       アレックス・ローゼン、ドイツIPPNW(核戦争防止国際医師会議) rosen@ippnw.de
       平沼 百合、米国PSR yurihrnm@gmail.com(日本語)

おしどりマコ デュッセルドルフ講演「フクシマの隠された真実」動画書き起こし


2014年3月8日ドイツ・デュッセルドルフ ドイツ公益社団法人 さよなら原発デュッセルドルフ主催
おしどりマコ記念講演会「フクシマの隠された真実」動画書き起こし




司会者  皆さま、今晩は。まり子と申します。今日はおしどりマコさんの講演会に、ようこそおいでくださいました。皆さんご承知のとおり、2011年3月11日に東北大震災を日本人は経験しました。その後の大震災、そして津波、そして原発事故、私達日本人、世界の人たちがいまだ経験したことのない恐ろしい災厄となっております。そしてこの事故は、いまだに何もコントロールされていないばかりか、さらに危機的な状況が続いています。

皆さまご承知のとおり、この間行われた東京都知事選挙での色々な世論調査の関心度調査によれば、脱原発の問題は東京都民の関心事の第3番目のテーマですね。第1番目は少子化問題だとか、そういう問題で。ですから、どういうことかと言いますと、メディアが操作されているという事によって、こういう関心度が低く抑えられていることもあります。ただ、被災地の福島の声というのは、もう東京都民まで届かないという、そういう状況なわけです。

今日はしかし、おしどりマコさんの方から実際に福島で何がおきているのか、こういう事についてまず一番最初に当事者の声を伝えていただくということで、今日はお招きして、皆さんに来ていただいているわけです。これはもちろん、こういう声がまず外国に伝わっていくという事は非常に珍しいことであるので、その意味でも貴重な講演であると思います。
おしどりマコさんはフリー・プレス・コーポレーション・イン・ジャパン(日本自由放送協会)の代表? 

(マコ)理事です。

この組織はそもそも日本で大震災のあとに組織されたもので、今ちょっとお話ししましたように、メディアの操作がおこなわれている。そういうメディアの操作が起きないように、メディアの操作を受けないで正しい生の情報を伝える。そういう目的を元に結成されたジャーナリストの同盟です。 

(マコ)地震の少し前にできたんですけど。 まあ、そういう所で偶然ながら・・・ 

おしどりマコさんは福島の事故が起きてから、それまでは吉本の漫才を、おしどりマコ・ケンさんとして活躍していらしたんですが、これを機に脱原発について色々発言されるようになりました。すると、本業でもうおよびがかからなくなってしまった。その代わりに、でも、逆にジャーナリストとしての名前が知られるようになり、そしておしどりマコさんの質問があまりに鋭いので、東電の人達をたじたじとする。それで、有名になったという、そういう経歴を持っていらっしゃいます。マコさんはもちろんジャーナリスト。それだけではなく、あわせて福島を訪れて現地の人たちの声を伝えることもしていらっしゃいますし、それから東電に使われている人たちにインタビューもして、この人たちの色々な情報を聞き出したりもしています。では、これから、おしどりマコさんのお話をきいていただきますが、このひととき、皆さんと一緒に色々なことを考えてみたいと思います。

”My name is Mako Oshidori.  I am sorry I speak in Japanese.”(私の名前はおしどりマコです。すみませんが、日本語でお話させていただきます。)

今日皆さんにお会いできて、こうしてお話しする機会を与えていただいて、本当に感謝しています。そして、嬉しいです。今回呼んでいただいた(キリスト)教会の方々や、IPPNWという核戦争防止医師会議の方々にとても感謝しています。先ほどご紹介していただいたんですが、少しだけ訂正させてください。私はここに呼んでいただいたんですが、実は脱原発活動をしているわけではなく、取材をしているんですね。原発事故の取材や水俣病やアスベストなど日本には色々たくさんの問題があるのですが、それらの問題を取材をしています。

しかし、昨日まであったIPPNWの会議に出席していた医者や科学者たちも言っていたんですけれども、自分は脱原発のアクティビストではないのだけれども、原子力に対して都合の悪い事実を研究して発表すると、アクティビストと、脱原発の活動家と呼ばれてしまうと話していました。原子力のロビーに都合の悪い事実を研究したり、記事を書いたりすると、かなり圧力がかかるのですが、これに対してくじけずにずっと仕事を続けると、いつのまにか脱原発の活動家として見られてしまうようです。もちろん、私は原発は地球には必要ないと思っています。 



私はヨーロッパにきて驚いたことがひとつあります。それは日本がものすごく民主主義で、自由な国だと思われているということです。実は私は東京電力の記者会見に最も回数多く通っている記者なのですが、私が色々な事実を記事に書くと都合の悪いことが多いようで、さまざまな圧力がかかります。私が書いていた雑誌におしどりの記事を1回載せる毎に、原子力推進の記事を3回載せろと、電力会社の団体から編集長に圧力がかかったことがありました。それで、私の記事はマガジンに載らなかったのですが、その他にもテレビの番組で私が東京電力の事故について話すという企画があったのですが、スポンサーから東京電力と原子力、原発という言葉を一切使うなという指示が出て、出演がなくなったこともありました。
(間  ケンさんとのやりとり)



2011年と2012年は、東京電力側の圧力だったのですが、2013年に日本の政府が原子力を再稼動して行くと決めていったときから、政府側の監視もつくようになりました。2013年、去年の7月に参議院議員選という選挙が終わり、日本の国内では2つの院とも自民党が最大の与党になったのですが、その時にこの政権が原子力関係の技術者と研究者を秘密に集めて、秘密のミーティングをしたんです。福島第一原発をどうやって廃炉に持っていくか、そのアイディアはないかと研究者を集めたのですが、一枚のリストが配られました。そのリストには色々な人間の名前が書いていて、今の日本の政権はそのリストに名前が載っている人物に近づくなと研究者たちにリストを配っています。今の政権と敵対する政党の強い力を持った人たち、前の首相など、例えば菅直人とか小沢一郎に並んで、おしどりマコと書いてあったと聞きました。近づくなと言われて配ったリストなのですが、私はそこの研究者と仲が良かったので、リストに名前が載っていたよと教えていただきました。 

それから、しばらく謎の尾行する男性が来だしたんですが、公安調査庁という内閣府の、色々な事を調査する組織の一員のようです。私は隠し撮りが趣味なので、隠し撮りに成功した一枚をお見せします。




このように、私が誰かと喋っている場合、誰とどんな会話をしているのか聞こうとする人がぴったりついていた時期がありました。私は芸人なので、喋っている人はマネージャーさんですかと聞くのですが、いや私は彼のことを全然知らないので、私の追っかけだと思っていますと言います。福島県に行って、色々なお母さんたちを取材する時があるのですが、そうすると私が取材をしていて一緒にごはんを食べたりしているお母さんたちが帰る時に、別れる時に、1人1人お母さんたちの写真を撮って、そして車のナンバーを撮って帰って行った公安調査庁の人もいました。なので、福島県のお母さんたちは顔写真を撮られたり、車のナンバーを撮られたりすることを怖がって、もう取材を受けるのはいやがる人もいますし、記事に書くのもやめてほしいという人も出てきます。こういう公安調査庁の仕事に詳しい元公安の人に聞きますと、そういう見えるタイプの尾行は威嚇、おどしだそうで、1人いたらあと10人ぐらいいると思ったほうがいいよ言われました。まるで、ゴキブリのようだと思います。
 
このように、原発事故に関して少しシビアな取材をすると、いろいろな圧力がかかったり、取材ができにくくなったりします。でも、私のほかにもたくさん原発事故のことを取材している記者は、大手の新聞記者や大手のテレビ局にもいるのですが、なかなかその情報は外には出てきません。なぜなら出す段階で情報を発信しないようにという圧力もかかるからです。なので、皆さんにこれから話すことは、驚かれることがあるかもしれませんが、でも同じように私が日本の人たちに話すときにも、日本の人たちは驚かれます。聞いたことのない話であったり、新聞やテレビで見たことのない事実だからです。




それでは原発作業員の方についての話をしたいと思います。この方は東京電力の社員で、2012年に福島第一原発で看護士、医療室で看護士の仕事をしていた方です。2013年に東京電力を辞めた時に、彼にインタビューをしました。



原発の作業員が亡くなる時、亡くなった時、その発表は仕事中に亡くなった人だけ東京電力は発表します。例えば、週末に亡くなったり、寝ている間に亡くなったり、そして3ヶ月働いて数週間の休みの時に亡くなったりする作業員は発表はされません。一応、彼の所に東京電力の医療班の所にまで報告はあがるのですが、元々の病気だろう、持病だろうということで、片づけられてしまいます。それが被ばくによる死かどうかは、判断がつかないと言っていますが、しかし、ものすごく過酷な状況で働いていることには間違いはないと、彼は話していました。彼のインタビューを私はさまざまな、本当は雑誌の媒体でも書きたいと思ったのですが、残念ながらこれはインターネットでスポンサーのついていないネットでしか私は書いておりません。

2012年の1月に原発作業員がひとり亡くなったのですが、彼について私達が警察の事情調書を手に入れることができたので、かなり細かい取材をしました。亡くなった作業員の身元引受人の住所を手に入れることができたので、そこの住所まで訪ねて行ってみました。その住所はマンションはアパートは存在しているのですが、日本では4という数字は縁起が悪いということで、古いマンションには4がつく個室はない場合があります。身元引受人の住所は、アパートの204号室だったのですが、足を運ぶと203の次は205しか存在はしませんでした。そのアパートの隣の近所の方にも尋ねたのですが、その身元引受人の名前の方は住んではいませんでした。なので、数字の書き間違えでもないようです。地図上ではその建物が存在するので、実際に行かないとその個室がないということもわかりません。これは架空の住所の身元引受人だったのかもしれません。原発事故の後に限らず、建築業界や原発業界の闇の部分ですが、身寄りのない方や身寄りのない高齢の方が、このような過酷な作業にあてられるれることが多いようです。

2011年に100 mSv浴びた作業員は、毎年のがん検診や手厚い健康のケアがあります。しかし、ほとんどの原発作業員は90 mSvや95 mSvや83 mSvや、100 mSvを超えないように作業をさせられています。なので、手厚いケアはありません。以前から事故の前から原発でずうっと働いていた作業員の人たちは、1年にどれぐらいの量を浴びるとどうなるのか、2時間で35ミリ浴びるという作業はどういう意味なのかよくわかって、もう自分は長生きをしないだろうと、そして子どもも絶対作らないし、5年後の命もどうなっているかわからないとよく話しています。 

今日本では、子ども達ですら守られていない状況ですが、でもそれでも子どもたちの健康を守らなくてはという人たちもいます。しかし、原発の今一番シビアな環境で作業をしている人たちを守ろうという団体や声はほとんどありません。それは私たちの本当に責任でもあると思います。私が2012年の1月に取材をした亡くなった作業員の記事ですが、週刊文春に載ったんですが、ちょうどその時に歌手の浜崎あゆみさんが電撃で離婚したので、申し訳ないが記事を4分の1にしてくれ、かなり削ってくれ言われてしまいました。なので、このような情報が出て来ないというのは、このような情報を知りたいと読者が思わない、私達の責任もかなり大きいと思います。




次に福島の母親たちの話をしたいと思います。彼女たちは福島県のいわき市という所に住んでいるお父さんやお母さんたちです。彼女たちは学校給食についての運動をしています。今、福島県では福島県の生産物が汚染されているんじゃないかということで、売れないのでそれを売るために学校給食で子ども達に食べさせて、安全性をアピールして福島県のものを売っていこうという政策がとられています。いわき市では元々大きい自治体なので、福島県のものではなく遠くから生産物を買っていたのですが、事故の後、子ども達に安全性をアピールさせるために、福島県の物を食べさせようという、学校給食で食べさせようということになってしまいました。彼女たちはそれに反対して署名運動をしています。検査を厳しくしたらいいのではないかという声もあるのですが、彼女達は現在の日本ではセシウムしか測っていないんですよね、なのでストロンチウムが入っていたらどうするのか、10数年後に実はプルトニウムが入っていましたと言われたらどうしようかと反対をしています。彼女たちの主張は安全かどうかではなく、子ども達に安全性のアピールをさせるというのは科学的な問題ではなく、倫理的な問題ではないかと怒っています。しかし、現在福島県の7割あまりの自治体では学校給食で福島県の物を安全性アピールのために子ども達が食べています。彼女達はとてもマイノリティーです。なので、とても圧力がかけられ、嫌がらせがあります。汚染を気にするなら福島から出て行け、そして色々な具体的な嫌がらせを私は取材して聞いているのですが、それを書いたり発信しないでほしいと言われます。なぜなら、どんないやがらせに自分達が参っているかということが知れると、余計それがひどくなるのではないかと恐れているのです。



これはベラルーシのベルラド研究所という所のネステレンコ所長と2012年の10月に福島県を一緒に取材した時の写真です。彼が一番驚いていたことは、これは伊達市の小国小学校という所ですが、校舎があってプールがあって、ここのあたりを測定した時のことです。





27.6 μSv/hrという数値が出ています。彼はこの時私にこの小学校の生徒はみんな避難しているのかと聞きました。私は授業を受けていますと答えました。これはベラルーシでは本当はすぐに強制避難する数値だと、日本は豊かな国だと思っていたけれど、そうではないのかと言われてしまいました。たまたまこの時にこの伊達市の市役所の職員達が来ましたので、ここにとても高いポイントがありますよと言いますと、知っていますと答えられました。これは本当に高いポイントなのですが、小学校の中はきれいに掃除をしていて低いから大丈夫だということになっていますが、しかし、所長は、ネステレンコさんは言うのですが、掃除はしているといってもフィルターになっているわけではないし、同じ空気だし、風は吹いているのにそれはどういう意味だと何度も聞いています。ここの小学校のお母さんに後ほど見せてもらったのですが、この2012年の9月、ネステレンコさんと一緒に見にいった1ヶ月前179 μSv/hrだったそうです。それを掃除をして、3.9に下がったから大丈夫ですよと、この学校の校長が保護者に配ったということです。



このプリントを見せてくれた彼女は179 μSv/hrという数値ならすぐに子ども達を避難させてほしいと言っていました。しかし、もう今はこの小学校は通常の状態になっているため、彼女はもう自分でお金を出して、引越しをしました。 私が取材をした2012年当時はこの小学校に200ファミリーがあったのですが、そのうち被ばくを気にしているファミリーはたった2つでした。今はもうそのファミリー2つとも引越しをして、避難しているんですが、いつも自分達が頭がおかしいのか、本当は安全なのに自分達が怖がりすぎているのか、どう考えていいかわからないと話しています。

ちなみに、このように高く放射性物質で汚染されている所は、今、土を剥ぎとって、ごみ袋に詰めてどこか近くの空き地に積んでおくという措置が取られています。そして、福島県に限らず近隣の東日本の茨城県や群馬県や宮城県や岩手県も汚染されている地域はたくさんあって、そこも同じように人々が住んでいるので、掃除をして放射性廃棄物を近所に積んであります。



ちなみに、この土が入った袋は小さく見えますがひとつ1トンです。かなり大きいです。これは茨城県の写真なのですが、おもしろいことに、端っこにゴミは持ち帰ろうと書いてあります。現在これはどのように処分していくかということは決まっておりません。



福島の事故とチェルノブイリの事故で私がかなり違うなと思うことは、インターネットがとても発達していることです。これは松本子ども留学というプロジェクトの見学会なのですが、長野県の松本市という所で、市長が福島県の子どもを10人、第一回目は10人預かって、学校を卒業するまでずっと松本市で寮を作って、そこで学校に通わせるというプロジェクトを始めました。



松本市の菅谷昭市長はお医者さまで、チェルノブイリの事故のあとベラルーシやロシアに通って、子どもたちの甲状腺の手術を何年もされた方です。なので、福島で原発事故がおこり、すぐに子ども達を避難させないといけないと主張しました。しかし、それは通らなかったので、松本に避難をしてきた市民たちと一緒にこのプロジェクトを立ち上げました。

福島では原発事故の汚染を怖がったり、被ばくを気にしたりすることはタブーとされていて、国が大丈夫、政治が大丈夫、研究者が大丈夫と言っているのに、何を怖がっているんだということになります。なので、このプロジェクトは避難や疎開という言葉は使わずに、留学という言葉を使っています。その方が福島の中で宣伝をしやすいし、参加しやすいからです。日本では4月から新しい年度に替わるので、今年の4月から福島の子どもたちが長野に来て生活を始めるのですが、これは去年の12月にこのプロジェクトに参加をしたいと思う子どもたちや家族が見学にくるという、テストのケースでした。このプロジェクトに参加を希望している子ども達に、お父さんやお母さんがいないところでこっそり話を聞きました。とてもショックでした。このプロジェクトに参加する子ども達の多くは、中学生の女の子です。 中学生になると自分でもうインターネットをさわって、情報を集めることができます。学校の先生やお父さんは原発事故は大丈夫というけれども、自分でインターネットで調べるととてもそうは思えない。原発事故の後、どうも自分は体調がおかしくなっている。しかし、汚染されていない地域に遊びにいくと、元気になるような気がする。なので、自分は親は反対しているけれども、汚染されていないところで勉強したいんだと話す子どももいました。自分は大きくなって子どもを産みたいので、できるだけ早く福島から出たほうがいいのでは、と話す中学生の女の子もいました。大学や高校で福島から出ようと思っていたけれども、中学のうちに出られるのならこのプロジェクトに参加したいと話す女の子もいます。汚染に対してはいろいろな考え方がありますが、こうして子ども達が自分でインターネットで情報をとって、それで考えようとして、子ども達が怖がっている。親には言えずに、学校の先生には相談できずに怖がっているという現実があることを知って驚きます。ある小学校では、PTAの集まりの中でインターネットを見て怖がる人がいるので、学校の情報だけに一本化しましょうという話し合いが行われ、それが恐ろしくて引越しを決めたファミリーもありました。 

(今、彼に時間の配分を聞いたので、次に福島第一原発の現状をお話ししたいと思います。)

これは1号機と2号機の後ろにあるスタックと呼ばれる煙突です。福島第一原発には今さまざまな問題があちこちにありますが、これは私が最も危険だと思っている場所のひとつです。これは120メートルあるのですが、2013年の12月にこの根元の部分に最も高い数字毎時25 Svの地点があることがわかりました。マイクロもミリも使わない25 シーベルトということは、人間が近づける場所ではありません。問題はここからです。この煙突の東西南北の4方向、120メートルの60メートルの地点に変形があることがわかりました。この写真の部分です。



完全に切れている部分もあります。




本来すぐに修理をしないといけないものなのですが、根元が毎時25 Sv、あともう1つ、毎時15 Svの地点もあります。そのため、何も手がつけられない。なので、現在、東京電力がこれに対してとっている対策といえば、監視員を置いて常に見ています。これは1号機と2号機に非常に近いため、今も福島では、そして東日本では地震が時々あるんですが、これが建屋に倒れてこないか、現場の作業員はとても心配をしています。これが1号機もしくは2号機に倒れてきた場合は、作業員は逃げるしかないでしょうし、逃げるのが間に合うかどうかはわかりませんし、そしてもう一度近くの住民が避難をしないといけないようなシビアなアクシデントに繋がるかもしれません。

あともう1つあまり知られていないことの1つに、今福島第一原発の原子炉から大気中や、そして地下水に放射性物質が出続けているという現実があります。これはちょっと私が急いで書いた絵なのですが、原子炉の圧力容器と格納容器です。

現在、圧力容器からおそらく燃料棒が溶け落ちて、底にたまっているものと考えられています。



なので、水で冷やしているのですが、そうすると水と放射性物質が反応して水素が大量に発生しています。



そうすると、また水素爆発をおこす危険性があるので、窒素を入れてフィルターを通して放射性物質をできるだけ取って、そして中の気体を外に出しています。



問題はここからです。これは1号機の場合ですが、1時間に35リューベ( 立法メートル)窒素を入れて、10 トン入れて、1時間に21リューベ、フィルターでキャッチして、外に出しています。



つまり、1時間に14リューベ、どこかわからないところから漏れ続けています。




これは1号機も2号機も3号機も同じ状態で、今も放射性物質が大気に漏れ続けています。それはトータルで1時間に1000万ベクレルといわれています。

地下水ももちろん汚染されています。これは安部総理がオリンピックを東京に呼びたい時に言った、汚染水は完全にブロックされていますと言ったエリアです。

この赤いあたりに非常に高い地下水の汚染水がみつかって、そしてこの部分は汚染水が大量に漏れているということは、もう東京電力も認めています。安部総理はこの港湾とよばれる所で完全にブロックされているといったのですが、記者会見に通っている記者達は何もブロックはされていないことはもちろん知っています。


なので、安部さんの発言のあと記者会見で、記者達が何人も、本当に汚染水は港湾でブロックされているのですかと質問があいつぎました。それと、東京電力は安部さんのご発言を聞いて、東京電力としても国に主旨を確認しましたといいました。つまり、東京電力もかなり驚いたようです。東京電力はブロックはしてないとはとても言いませんでしたが、影響は少ないとは考えるという答え方を終始しています。 

先ほど説明した、ここのとても高い地下水の汚染がある所ですが、実は今年の2月6日にここの地下水の1つの井戸から、ストロンチウム90が1リットルに500万ベクレルあるということが発表されました。しかし、その地下水を、穴を掘って、そして水を採って測定したのは去年の7月です。なぜ、その数字が出て来なかったのか、セシウムや他の放射性物質の数字は出ていましたが、ストロンチウム90の値だけ出てきませんでした。なぜ、高い数字を発表しなかったのか。東京電力の説明ではあまりにも高すぎる数字のため、何か測定に間違いがあったのではないかと調べていたという回答でした。この地下水の観測孔は、掘って初めて、第1回の測定だったため、その地下水がいつからどれくらい汚染されていたのかということは、現在まったくわかりません。現在汚染を調べるために、たくさん地下水を調べるための井戸を掘って測定をしているのですが、今わかっていることは、どこから何が漏れているのか、おそらく1箇所だけではなくたくさんの場所から、色んなものが漏れているということだけがわかっています。地下水がいつから、何がどれだけ漏れていたのかということはわかっていません。そして、今まで測定していた数字を小さく見積もっていたという発表が、今年の2月にありました。

このように、空気にも水にも、現在も放射性物質は漏れ続けている上、人間が近づけないけれども、すぐに対処をしなくてはいけない壊れそうな場所も何箇所かあります。しかし、このような情報を知っている日本の方々はとても少ないと思います。みんなが見るようなテレビや新聞では、こういう記事は載らないからです。そして、国や研究者が言うから大丈夫だということで、どんどん汚染地域に避難している人たちを戻そうという計画がとられています。これが自由で民主主義のすばらしい国だと思われている、豊かな日本の現状です。でも、このような状態になっているのは、本当に私達自身の責任だと思います。どうやったら、何が変わるのかということをいつも考えています。日本では選挙の時に一票を入れるだけで政治に参加していると思う人が多いです。以前の私もそう思っていたかもしれません。しかし、私たちは何を買うか、何に時間を使うか、何に足を運ぶかに、常に一票を何かに投じているということに気づきました。ですから、こうして皆さんが皆さんの時間を使って足を運んで、ここに来てくださったことにとても私は感謝しています。なので、日本の現状はこのようですが、でも、それでも私達が知りたいと思って、メディアに変わってもらいたいと思って、政治に変わってもらいたいと思って、自分で何を買ったり、何かに時間を使ったりすることで、自分の人生を変えていくことで、すぐに変わると思います。

私は芸人の師匠、ドイツではなんと言うんでしょうね、マイスターと言うんでしょうかね、に、時々、まあ直接の師匠ではないですけど、長い物に巻かれておけと、怒られる時もあります。一方で、第二次世界大戦を経験した私の別のマイスターは、国のために喋るな、目の前のお客さんの幸せのために喋れという人もいます。別の師匠には、私一人でがんばっても、世の中が変わるには100年かかると言われました。しかし、私みたいなのが100人いたら1年で済みますね、と言いました。今日、皆さん100人以上はいらっしゃると思うので、もう1年で世の中変わると思います。原発事故だけでなく、さまざまな問題は本当に世の中にあると思うんですけれども、自分の人生や自分の生活を何に使うかということに、私は本当に色んな事を考えて、丁寧に生きて行きたいと思います。今日は本当にありがとうございました。

Transcription by Takashi Mizuno

掲載拒否されたエディターへの手紙:マンガノ、シャーマン&バズビー共著のフクシマ事故後のカリフォルニア州での先天性甲状腺機能低下症論文について


この英語記事内で言及されている筆者からエディターへの手紙の和訳を掲載する。Open Journal of Pediatrics (OJPed)のエディターは、手紙は掲載できないし、一旦掲載された論文を下げることもしない、と述べた。過去にも著者らの関連論文に対しての手紙の掲載を拒否された例があったので想定内ではあった。理由を尋ねると、手紙は掲載しないが、ケース・スタディーなどを投稿するなら掲載する、と言う答えが返って来た。その後のやり取りから、無料では何も掲載しない、という意図が明らかになった。

著者らの承前の関連論文を批評したスティーブ・ウィング氏によると、「『Open Journal of Pediatrics』は、実は、営利目的を持つPredatory journal、すなわち、『(研究者を)食い物にする雑誌』として知られており、真剣な科学的ピアレビューの過程を持たないようである。」

コロラド州の司書であるジェフリー・ビオール氏は、そのような『研究者を食い物にする雑誌』の調査を随時行っており、この手紙掲載拒否の件も記事にしている。

また、手紙の内容および、著者らのフクシマ事故後に米国での死亡率が上昇したという論文に関してのイアン・ゴッダード氏のビデオはこちら(英語)である。



なお、共著者の1人で統計担当らしいクリストファー・バズビー氏は、論文に記された所属機関であるJacobs Universityに実際に所属していないことが分かっている。

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2014年4月14日

オープン・ジャーナル・オブ・ピディアトリックス(オープン小児科ジャーナル)のエディターへの手紙

「フクシマ核メルトダウン由来の環境フォールアウトの相関関係としての、カリフォルニアでの先天性甲状腺機能低下症の確定およびボーダーライン症例数の変化」という論文で、マンガノ、シャーマンとバズビーは、調査集団における先天性甲状腺機能低下症の確定診断数を、間違っている上に選択的なデータ解釈に基づいて結論づけている。

著者らは、カリフォルニア州公衆衛生局(CDPH)の先天性甲状腺機能低下症の新生児スクリーニングデータを入手した。これには、2009年から2012年の診断確定数およびスクリーニングを受けた新生児の人数が含まれており、新生児の人数は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって分類されていた。著者らの結果を再現する試みのため、同じデータをカリフォルニア州公衆衛生局に要請した。

カリフォルニア州では、先天性甲状腺機能低下症のスクリーニングのTSH値のカットオフ値は29 mIU/Lであり、これは、2013年9月11日付けの「新生児スクリーニングのカットオフおよび基準値範囲」に記載されている。

しかし、著者らは、「このプログラムでは、29 μIU/ml以上のTSH値だけに基づいて先天性甲状腺機能低下症の診断を確定する。この基準を超えた子どもには全員、普通の身体的・精神的発達を促すために、甲状腺ホルモンが処方される。2011年1月1日に、カリフォルニア州は、TSHを算出する分析方法を変えた。ほとんどの新生児で数値が上がったため、先天性甲状腺機能低下症の症例数も増加した。」と誤った供述をしている。(注:μIU/mLは、mIU/Lと同等である。)

著者らはこの論文で、前述の供述を筆頭に、いくつかの間違いをした。

まず最初に、新生児スクリーニングプログラムによって検出されるのは、TSH全血値の上昇であり、これにより先天性甲状腺機能低下症が診断されるわけではない。先天性甲状腺機能低下症の診断には、さらに臨床的検査が行われる。29μIU/ml以上のTSH値は、スクリーニングが「陽性」という意味しかない。故に、この基準を超えた子ども全員がホルモン補充療法を受けるのではない。

カリフォルニア州公衆衛生局の遺伝的疾患スクリーニングプログラム内の、「プログラムと対策部門」のチーフ代理であるRobert J. Currier氏とのメールのやり取りの中で、Currier氏は次のように述べた。

「(先天性甲状腺機能低下症)陽性だと推定される乳児は、血清TSH検査および、主治医により任意に選択される、遊離T4(遊離チロキシン)のような他の検査を受ける。乳児はまた、州が認定する内分泌科クリニックに紹介され、内分泌専門医に受診する。必要に応じてフォローアップを繰り返す。乳児で先天性甲状腺機能低下症の診断が確定されたら、毎年、内分泌科クリニックで再診することになる。」

この供述から分かるように、著者らの「先天性甲状腺機能低下症の診断確定症例」の定義は間違っている。それにも関わらず、著者らは、スクリーニング「陽性」を診断確定数として間違って数えている。

2番目に、2011年1月1日に始まった新分析法の結果増加したのは、著者らの主張の「先天性甲状腺機能低下症の診断数」ではなく、TSHのカットオフ値である。Currier氏は続いて次のように述べた。

「2011年以前は、先天性甲状腺機能低下症の陽性推定のカットオフ値は25 μIU/mlだった。我々のラボでは、2011年初めに新しいTSH検査法を取り入れた。その結果、人口ベースでTSH値が変わったため、2011年4月にカットオフ値を29 μIU/mlに調整した。すなわち、2011年4月以前には、スクリーニングのTSH値が25 μIU/ml以上であれば先天性甲状腺機能低下症陽性であると認識された。この(新検査法の)情報も、ジョー・マンガノに提供された。」

3番目に、著者らはさらに、「注意深く選んだ範囲である19.0−28.9 μIU/ml」を「ボーダーライン症例」と定義しており、その「ボーダーライン症例」を先天性甲状腺機能低下症全体の推定に加えている。しかしながら、そもそも先天性甲状腺機能低下症の診断は、フォローアップ時の臨床的観察および追加検査の後にしか確定されないので、この定義は無意味である。

実際、Currier氏は次のように述べている。

「『ボーダーライン症例』の定義というものは、皆無である。TSH検査は単にスクリーニング法であり、臨床的に診断された先天性甲状腺機能低下症の症例のみが、『先天性甲状腺機能低下症』とみなされている。」そしてCurrier氏は、「滅多にないことだが、確定症例のTSHがカットオフ値以下であり、後日臨床的に診断されたという可能性もある。」と付け加えた。

著者らが、カリフォルニア州では「この疾患の定義に一貫性がある」と宣言しながらも、「ボーダーライン」という間違った定義のカテゴリーを生み出し、単なるスクリーニング「陽性」症例と合わせたということは、バイアスを実にひどい形で導入したことになる。

これにより、2011−2012年の先天性甲状腺機能低下症全症例が、658症例から4670症例に増え、統計的分析でのp値が誇張されたようである。(「確定症例数とボーダーライン症例数の合計」のp値 < 0.00000001) 「ディスカッション」のセクションで、著者らは、「ボーダーライン症例を恣意的に定義しなければいけなかったにも関わらず(中略)カリフォルニア州では、ボーダーライン症例数(TSH値が19.0−28.9 μIU/ml)を確定症例数(TSH値が29.0 μIU/ml 以上)に加えると、症例数が7倍以上になる。」と考察している。この供述は、データ選択にバイアスがあり、著者らが「ボーダーライン」とスクリーニング「陽性」が先天性甲状腺機能低下症の「確定症例」であるとみなしていることの確証になる。

Currier氏は、また、著者らが受け取ったのと同じ2セットのデータ(表1と表2を参照のこと)および、先天性甲状腺機能低下症スクリーニングプログラムの追加詳細情報を提供してくれた。

Currier氏は、確定症例数の表のデータは、著者らが受け取ってからアップデートされたと述べた。それは、「滅多にないことだが、診断ミス、もしくは診断にある程度の不確実さがあった赤ちゃんが、後日、本登録から削除される可能性がある。」からだと言う。しかしながら、Currier氏は、それでも著者らが当初受け取ったデータにとても近いはずだと請け合った。Currier氏は、また、「マンガノ氏は記事内でこの表(注:表2)のデータを使わなかった。」と言及した。

表1:カリフォルニア州の最初の新生児スクリーニングのTSH値分類表、2009年−2012年



表2:カリフォルニア州の一次性先天性甲状腺機能低下症の診断確定症例数、2009年−2012年




ドイツの元物理学者で、独立した疫学コンサルタントであるアルフレッド・ケルプライン氏が、先天性甲状腺機能低下症の10万人あたりの「確定」症例数をグラフ化した。(図1)この図から、2011年3月17日から12月31日の期間の確定症例数増加には、他の時期と同様の変動が見られるのが分かる。

図1:先天性甲状腺機能低下症の確定症例数の発生率、2009−2012年




4番目に、著者らは、「結果」のセクションの最後で、「単なる確定症例数よりもっと大きなサンプルサイズがあれば、真の変化をもっと良く理解することが可能になる。」と述べている。この論文の著者らがより大きなサンプルサイズを欲していること自体が、著者らがカリフォルニア州での先天性甲状腺機能低下症スクリーニングプログラムを良く理解していないことを示唆する。

結論として、マンガノ氏、シャーマン氏とバズビー氏による研究には重大な欠点がある。

1)スクリーニング陽性(29 μIU/ml以上のTSH値)の生データを先天性甲状腺機能低下症の確定症例数として誤用し、カリフォルニア州公衆衛生省から送付された、先天性甲状腺機能低下症の実際の確定症例数の正しい数字を無視している。 
2)スクリーニングプログラムにも医療現場にも根拠のない、「ボーダーライン」症例という無意味な診断カテゴリーを定義している。
3)自分達が作り出したニセの発症率(スクリーニング陽性の結果プラス「ボーダーライン」スクリーニング結果)が、正当なものであると主張している。
4)2011年の(著者らの定義による)先天性甲状腺機能低下症の増加が統計的に有意であると主張しているが、実際に臨床的に確定された2009−2012年の症例数のグラフ化では有意な増加がみられていない。

誠意を込めて、

ユリ・ヒラヌマ、 D.O.
社会的責任を果たすための医師団、放射線と健康委員会委員

UNSCEAR 2013 報告書:付録E セクションII.C. 公衆の健康影響についての委員会のコメント内の甲状腺癌関連パラグラフ和訳

原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の2013年報告書(フクシマ報告書)が、2014年4月2日に公表された。日本国民の関心度の高さのためか、過去のUNSCEAR報告書とは異なり、今回のフクシマ報告書の公式日本語版は2014年4月末に公表予定だと記者会見時にアナウンスされた。

ここでは、付録E「作業員と公衆への健康影響」内の、「公衆の健康影響についての委員会のコメント」の中から、甲状腺癌に関連したいくつかのパラグラフを和訳した。

ちなみに、付録C「公衆被ばくの評価」は、study2007氏によって仮訳されている。また、2013年10月に国連に提出されたサマリー報告書の部分和訳はこちら、PSRとIPPNWによる注釈付き論評の和訳はこちらである。

UNSCEAR 2013 Report: "Sources, effects and risks of ionizing radiation"
Volume I
Scientific Annex A: 
Levels and effects of radiation exposure to the nuclear accident after the 2011 great east-Japan earthquake and tsunami

APPENDIX E. HEALTH IMPLICATIONS FOR THE PUBLIC AND WORKERS
II. HEALTH IMPLICATIONS OF RADIATION EXPOSURE OF THE PUBLIC RESULTING FROM THE FDNPS ACCIDENT
     C. The Committee’s commentary on health implications for the public 
          1. Population of Japan and of Fukushima Prefecture

UNSCEAR 2013 報告書「電離放射線の線源、影響とリスク」
第1巻 
科学的付属書A:東日本大震災と津波の後の原子力事故による放射線被ばくの程度と影響

付録E:公衆と作業員における健康影響
II. 福島第一原発事故の結果の放射線被ばくによる公衆における健康影響
     C. 公衆の健康影響についての委員会のコメント
          1. 日本の住民と福島県の住民

p.253(253ページ)

E29. Thyroid cancer. During the first year, incorporated radioiodine from the accident led to higher absorbed doses to the thyroid than to other organs and tissues. For adults in areas that were not evacuated, the district-average absorbed doses to the thyroid were less than 20 mGy in the first year after the accident (table C10). Available evidence indicates that the thyroid is not particularly sensitive to such doses during adulthood. 

パラグラフE29
甲状腺癌。1年目には、事故により取り込まれた放射性ヨウ素が、他の臓器や組織によりも、甲状腺により高い吸収線量をもたらした。非避難区域の成人における事故後1年目の地域平均の甲状腺吸収線量は、20mGy以下だった。(表 C10)入手できる証拠によると、成人期の甲状腺は、そのくらいの線量には特に感受性が強くないことが示されている。


(注:表C10の和訳版は、study2007氏による付録Cの和訳より転載)

E30. In contrast, for 1-year-old infants who were evacuated after the accident, the Committee estimated settlement-average absorbed doses to the thyroid to be up to about 80 mGy (table C12). In the areas that were not evacuated, district-average doses to the thyroid were up to about 50 mGy (table C10). For example, the Committee estimated that about 35,000 children in the age range of 0−5 years lived in districts where the average absorbed dose to the thyroid was between 45 and 55 mGy.

パラグラフE30
その反面、事故後に避難した1歳児においては、委員会は、市町村平均の甲状腺吸収線量は最大で80 mGyであると推計した。(表 C12)非避難区域では、地域平均の甲状腺吸収線量は最大で50 mGyだった。(表 C10)例えば、委員会は、0−5歳の子ども約35,000人が、甲状腺の平均吸収線量が45−55 mGyである地域に居住していたと推計した。


(注:表C12の和訳版は、study2007氏による付録Cの和訳より転載)

E31. The Committee previously evaluated the risk of thyroid cancer from an absorbed dose to the thyroid of 200 mGy at age of ten years [U14]: the lifetime risk of thyroid cancer was estimated to be approximately doubled by the exposure. However, even for a hypothetical exposure of 10,000 children with such a dose to the thyroid, the uncertainty of the risk estimate is large, ranging from a relative risk of about 1.15 to about 4.0. The WHO estimates of the risk of thyroid cancer due to radiation exposure [W12] were consistent with those of the Committee, if the risk dependence on dose to the thyroid were assumed to be linear from several hundred milligrays down to the levels of dose received after the accident. 

パラグラフE31
委員会は、過去に、年齢が10歳での甲状腺吸収線量が200 mGyの場合の甲状腺癌リスクを評価した。甲状腺癌の生涯リスクは、被ばくにより大体2倍になったと推定された。しかし、仮に10,000人の子どもがそのような甲状腺線量に被ばくをしたとしても、リスク推定の不確かさは大きく、相対リスクは1.15から4.0の幅を持つ。WHOの放射線被ばくによる甲状腺癌のリスク推定は、もしもリスクの甲状腺被ばく線量への依存性が数百mGyからそれ以下の事故後の被ばく線量まで直線的であると仮定されるのであれば、委員会のものと一致していた。


E32. From an estimate of absorbed dose of 50 mGy to the thyroid of infants, and assuming that the risk of thyroid cancer could be extrapolated down to these dose ranges using a linear dose–response function, a relative lifetime risk of thyroid cancer due to the exposure over the baseline risk could be inferred to be about 1.3. Such an increase in principle ought to be discernible if the effect of increased detection rate due to sensitive screening and other factors could be isolated, although most of the increased incidence would be expected to appear several decades after the exposure. Furthermore, direct measurements of radioiodine content in the thyroid have suggested that actual doses to the thyroid for some individuals might be lower than the average doses estimated by the Committee using environmental measurements and modelling, although there are some questions about how representative the thyroid measurements generally were. A detailed re-evaluation of the absorbed doses to the thyroid taking into account all available information relevant to thyroid exposure including the thyroid measurements, their quality assurance and information on individual protective measures is highly desirable. 

パラグラフE32
乳児の甲状腺吸収線量推計値の50 mGyから、甲状腺癌のリスクが直線線量反応関数を用いてその線量域まで推定可能であると仮定し、被ばくによる甲状腺癌の生涯相対リスクがベースラインリスクの約1.3倍であると推測できる。そのような増加は、原則としては、増加のほとんどが被ばくから数十年後まで現れないと予期されるにしても、感受性の高いスクリーニングによる検出率の増加や他の要因の影響を分離することができるのであれば識別可能であるべきである。さらに、甲状腺内の放射性ヨウ素の実測値は、その甲状腺測定値が一般的にどれほど代表的と言えるのかについての疑問がいくつかあるにしても、個人の甲状腺の実際の被ばく線量が、委員会が環境測定値とモデリングを用いて推計した平均被ばく線量よりも低い場合があるかもしれないことを示唆している。甲状腺実測値およびその精度保証と、個人の防護対策についての情報を含む、甲状腺被ばくに関して入手できる情報をすべて考慮した上での甲状腺吸収線量の詳細な再評価が非常に望ましい。


E33. The Committee estimated that the doses to the thyroid varied considerably among individuals, indicatively from about 2 to 3 times higher or lower than the average for a district. It considered that fewer than a thousand children might have received absorbed doses to the thyroid that exceeded 100 mGy and ranged up to about 150 mGy. The risk of thyroid cancer for this group could be expected to be increased. However, it would be difficult, if not impossible, to identify precisely those individuals with the highest exposure, and risks at these low doses have not been convincingly demonstrated; moreover, as noted above, the lower dose values suggested by direct thyroid measurements on some populations should be reviewed, as well as their associated uncertainties. Information on dose distribution and uncertainties was not sufficient for the Committee to draw firm conclusions as to whether any potential increased incidence of thyroid cancer would be discernible among those exposed to higher thyroid doses during infancy and childhood. 

パラグラフE33 
委員会は、甲状腺被ばく量が、直接法で地域平均よりも2−3倍高いか低いかと、個人によってかなり異なったと推定した。委員会は、1000人弱の子どもたちが、100 mGyを超え、約150 mGyまでの甲状腺吸収線量を被ばくしたかもしれないと認識した。このグループでの甲状腺癌のリスクは増えると予測できる。しかし、被ばく量が最大である個人を正確に同定することは、不可能でないにしても困難であり、これらの低線量でのリスクは、説得力を持って証明されていない。さらに、承前のように、甲状腺の実測値測定で示唆される、より低い線量の値が、それと関連した不確定さと共に再検討されるべきである。線量分布と不確定さは、乳児期と小児期の間により高い甲状腺被ばく量を受けた人たちの間で起こり得る甲状腺癌発生率増加が識別可能であるかについて、委員会が確実な結論を導くには不十分だった。

マルコ・カルトーフェン「日本のハウスダストの中の高放射能粒子」ポスタープレゼンテーションの和訳


ウースター・ポリテクニック研究所 原子力科学・工学部のマルコ・カルトーフェン氏の博士論文 ”High Radioactivity Particles in Japanese House Dusts”「日本のハウスダストの中の高放射能粒子」のポスタープレゼンテーション

英語オリジナルの画像




仮説
福島第一事故は、非常に高濃度で吸入可能で埃の粒子を放出し、この粒子は長距離を移動した。

はじめに
2011年の日本北東部での地震とその後の津波は、福島第一原子力発電所の原子炉6基のうち4基の損傷を引き起こした。放射性物質は、原発の原子炉から汚染されたガス、エアロゾルと粒子の大気プルームとして、そして汚染廃棄水として放出された。

大気ダストは、高濃度の放射性同位体を含む、単離した個々の粒子として、放射性物質を輸送することができる。核反応廃棄物や撒き散らされた核燃料粒子と関連したアルファおよびベータ放出体は、吸入または経口摂取すると危険である。放射性物質で汚染された環境ダストは、室内空間で蓄積可能であり、吸入、皮膚とのコンタクト、そして経口摂取により、かなりの放射線被ばくを起こす可能性がある。これらの不均一に分布されたホットパーティクルは、検出して測定するのが困難な可能性があり、汚染地域の住民の被ばく量を計算するのも困難である。

方法
福島関連の核反応生成物で汚染されたダストの検体が、ガンマ線スペクトロメトリを用いて同定された。高濃度のホットパーティクルがオートラジオグラフィーとエアフィルター媒体で同定されたホットスポットの物理的分離により、ハウスダストから単離された。単離後に、ホットパーティクルは、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析 (SEM/EDS)により分析された。

東京の車のエアフィルター(左)とそのオートラジオグラフィー(右)


結果
日本のハウスダスト84検体の放射能量の中央値は2.5k Bq/kgで、平均値は71.6 kBq/kg(σ=339 kBq/kg)だった。検出された放射能のほとんどは、セシウム134、セシウム137、コバルト60、ラジウム226によるものだった。短命核種のヨウ素131は、ガンマ線スペクトル測定後に、ホットパーティクルの分析が完了する前に崩壊した。セシウム同位体の濃度比は、フクシマ放出を確定するものだった。

平均値と中央値の大きな違いは、放射能濃度が1.0 MBq/kg以上の2検体(訳者注:そのうちの1検体はこの記事で言及)および、1.0 PBq/kg以上のミクロンレベルの粒子ひとつの寄与によるものだった。この粒子は、福島原発事故現場から460 km離れた、日本の名古屋の家屋から採取されたものだった。ガンマ線スペクトロメトリで測定された放射能は310 Bqだった。ベータ放射能は285 Bqだった。核反応生成物とウラン238の崩壊物質の両方がパーセントレベルで含まれていた。X線微量分析では、最大48.0%の様々な濃度のテルル、セシウムが最大15.6%、ルビジウムが最大1.22%、ポロニウムが最大1.19%、ジスプロシウムが最大0.18%と、微量のスズ、鉛、ニッケル、鉄とクロムが見られた。この高濃度のホットパーティクルの容積は、最大で0.0012 mm3だと計算される。走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析 (SEM/EDS)により測定された構成に基づくと、密度は約3.6 g/cm3である。

名古屋ホットパーティクルの走査電子顕微鏡画像

名古屋ホットパーティクルのスペクトル分析


NaIガンマ線スペクトロメトリとエネルギー分散型X線分析(EDS)によると、ホットパーティクルから最もよく検出されたγ線放出核種は、ラジウム226、セシウム134、セシウム137、アメリシウム241とトリウム230だった。オートラジオグラフィーによるγ線スペクトル分析と、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析 (SEM/EDS)の結果によると、ダストの検体25%に、質的に似通った粒子が含まれていた。この25%の検体には原子炉事故に特有の放射性汚染物質であるセシウム134も含まれており、また、オートラジオグラフィーによってホットパーティクルも検出された。走査型電子顕微鏡の分析によると、これらのホットパーティクルのほとんどのサイズは10μmかそれ以下なので、吸入可能であるということになる。

結論
吸入可能なサイズの放射性ホットパーティクルは、日常的に検出されており、ひとつは放出場所から460kmも離れた所でも検出された。
*****

研究サポート:Safecast、D.C. Medich, Ph.D.、C.H.P.、Microvision Labsと、日本の茨城県の大西淳氏(訳者注:浪江町の道路ダストの検体提供者。原文には「浪江町」と間違って掲載。)
このポスタープレゼンテーションは、ウースター・ポリテクニック研究所で2014年3月19日に発表、ルイジアナ州ニューオーリンズ市の米国公衆衛生学会の2014年定例学会での講演に招聘。(カルトーフェン氏のメールによると、米国公衆衛生学会誌にアクセプトされたとのこと)

220人の手術症例とこれまで報告されてきた臨床データについて

   2024年11月12日に開催された 第53回「県民健康調査」検討委員会 (以下、検討委員会)および3日後に開催された 第23回「県民健康調査」検討委員会「甲状腺検査評価部会」 (以下、評価部会)で、 220例の手術症例 について報告された。これは、同情報が 論文 として20...