福島県の放射線リスクアドバイザーであり、福島県立医科大学副学長(当時)の山下俊一氏は、2013年3月11日にメリーランド州ベテスダで開催された米国放射線防護測定審議会議会の年次総集会で基調講演を行なった。
NCRPのサイト
山下氏の基調講演の動画
山下氏の基調講演のパワーポイント講演資料PDF
山下氏の基調講演の完全書き起こしおよび和訳
山下氏の講演パワーポイント資料では、カーディス氏他による2005年の研究論文「子ども時代のヨウ素131への被ばく後の甲状腺癌のリスク」内のグラフが使用されていた。山下氏はこの研究論文の共著者の1人であり、使用されたグラフは、729ページ目の「図2: 11の線量区分で推定された区分別オッズ比の最適なリスクモデルによって予測されるオッズ比(ORs)の比較」である。
カーディス論文の727ページ目には次のように述べられている。
「図2では、被ばく線量を関数としたオッズ比の変動が表されている。強い線量反応関係(P<.001)が観測された。オッズ比は、1.5~2グレイの線量までは直線的に増加するようであったが、それ以上の線量では横ばいになった。統計的に有意なリスクの増加は、0.2グレイ以上の被ばく量区分すべてで見られた。
これらのデータを最適に表す統計モデルは、1グレイまでの過剰相対リスク線形モデル(注:カーブ③)、2グレイまでの過剰相対リスク線形モデル(注:カーブ②)、そして全線量域での過剰相対リスク線形-二次モデル(注:カーブ①)である。しかし、図2でみられるように、後者のモデル(注:カーブ①)は、2グレイ以下でのリスクを過小評価する傾向があった。」
これが、山下氏のパワーポイント講演資料スライド12「チェルノブイリ付近での小児甲状腺癌リスク」内のグラフである。
これがカーディス氏のグラフである。
山下氏は、最適のモデルのひとつだとみなされたカーブ①:全線量域での線形−二次線量反応モデル(過剰相対リスク線形-二次モデル)を除外した。このカーブが「2グレイ以下でのリスクを過小評価する傾向があった」からなのか?
山下氏の基調講演の動画では、このスライドに関しては次のように述べられていた。(山下氏の英語発言からの意訳)
「他のケース・コントロール共同研究によると、甲状腺癌が放射性ヨウ素の線量反応的に増加するのが明らかにわかります。このようなデータは、近年、米国・ベラルーシ、そして米国・ウクライナのコホート研究によって確認されています。甲状腺被ばく量の線量反応性を理解することは本当に大切です。」
このスライドは、甲状腺癌のリスクの線量反応を示すために使われたと思える。
チェルノブイリ事故後と福島事故後の出生率や死亡率のデータを分析してきたドイツの物理学者アルフレッド・ケルプラインは、山下氏のグラフのデータポイントを、元のカーディス氏のグラフのデータポイントと共に図示した。
山下氏がカーブ①を除外した理由は明らかではない。さらに、図自体を「改ざん」しているのに、スライド内で元論文を引用するのが適切なのかという疑問が残る。
これは研究者として倫理的だと言えるだろうか?
海外の研究者達とのメール交換では、倫理的とは言えないということで意見が一致した。カーディス氏には、この件について何度もメールを送ったが、返答はなかった。
山下氏が独自のグラフを作成しながらもカーディス論文を引用したことについてどのように思ったかをケルプラインに尋ねた。返事は、「これはごまかし、もしくは詐欺、と呼べると思う。」だった。
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