メモ:2024年11月12日に公表された甲状腺検査結果の数字の整理


*末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節、のう胞)が、まとめて公式発表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。


 2024年11月12日に第53回「県民健康調査」検討委員会(以下、検討委員会)が、 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された。

 今回公表されたのは、5巡目と6巡目の 3ヶ月分のデータで、2024年6月末時点のものである。このブログでは、議事録などの公式情報のみでは察することが困難な「その時のリアルな印象」なども含め、備忘録的に記録することを目的としているが、今回は個人的事情からオンライン中継の視聴が叶わなかったため、簡略化した記録に留めることにする。今回の記事では、新たに公表されたデータをまとめた上で、更新情報のない1〜4巡目のデータも記載している。


220人の手術症例報告

 2024年11月15日に開催された第23回甲状腺検査評価部会において、220人の手術症例について報告された(資料)。これは、2024年10月14日にThyroid誌でオンライン公開された有料論文に出たデータからの抜粋であり、久しぶりの臨床データの報告となる。これについては、こちらの記事で詳しく説明している。


甲状腺検査の結果について

 今回報告されたのは5巡目6巡目の 2024年630日時点のデータである。

 今回は6巡目の悪性・疑い例の年齢・性分布および前回検査の結果が初めて公開された。新たに悪性ないし悪性疑いと診断されたのは 5巡目で 2人 、6巡目で5人の計7人で、新たな手術症例はない。これまでの悪性ないし悪性疑いは 345人(うち良性結節 1人)となり、手術で甲状腺がんと確定したのは 284人に留まった。

 各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数、平均年齢と平均腫瘍径、および各年度ごとの手術症例の人数は参考資料 3 甲状腺検査結果の状況」にまとめられている。 

 以下の表でも示されているが、公式データに含まれていない集計外症例およびがん登録情報から取得された症例も加えると、現時点での悪性ないし悪性疑いは427人(うち良性1人)、手術で甲状腺がんと確定したのは350人となる。

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現時点での結果

 これまでに発表された集計外症例数を含む、現時点での結果をまとめた。


 註1:篩状モルラ型乳頭がん(Cribriform-morular variant of PTC)は、2022年のWHO分類で篩状モルラ甲状腺がん(Cribriform-Morular Thyroid Cancer, CMTC)と再分類されている。ここでは、それに従い、1巡目での4例を再分類した。
 註2:がん登録データの47人は、2024年11月15日に開催された第23回評価部会において、2019年分の全国がん登録情報を追加して公表された資料にもとづいている。集計外症例 35人(うち甲状腺がん 19人)は、甲状腺外科医の鈴木眞一氏が 2019年から国内外の学会などで報告し、「福島県立医科大学における手術症例の報告」として公表されている。データが突合されていないので実証は不可能ながら、これまで公式に集計外症例と公表されている11人(福島医大の横谷進氏らによる英語論文で報告されており、すべて甲状腺乳頭がん)も、この19人に含まれていると推定される。 

5巡目検査の結果

  5巡目検査は 2020年度から開始され、COVID-19パンデミックによる遅延のため、通常の 2年間ではなく2022年度までの 3年間で実施されて来た。

 2024年6月30日時点での一次検査受診者は9人増えて 113,960人(うち 7,971人が県外受診)で、結果判定数は10人増えて 113,960人、結果判定率 100%なので、一次検査は実質終了している。受診率は45.1%から変わらず、4巡目の 7割ほどにとどまっている。

 二次査対象者は 1,346人のままだが、うち新たに3人が二次検査を受診し、2021年度対象市町村の4人が細胞診を受診した結果、男性1人(事故当時3歳)と女性1人(事故当時2歳)が新たに悪性ないし悪性疑いと診断され、5巡目での悪性ないし悪性疑いは 48人となった。この2人はどちらも浜通りの住民である。4巡目での判定は1人がA2のう胞、もう1人がA2結節&のう胞だった。

 まとめると、5巡目の悪性ないし悪性疑いは 48人(4巡目より9人増)となり、4巡目での結果は、A判定が36人(A1が 11人、A2結節が1人、A2のう胞が 21人、A2結節&のう胞が 3人)、B判定が 6人、未受診が 6人だった。

 新たな手術症例はなく、5巡目では42人が甲状腺がんと確定しており、41人が甲状腺乳頭がん、1人がその他の甲状腺がんだった。

6巡目検査の結果

 2023年度から始まった6巡目検査では、節目検査に移行する1998〜9年度生まれが外されたことで、 対象者は5巡目から 41037人少ない 211,901人となっている。2024年6月30日時点での受診者は 45,348人で、受診率は1.4%増えて 21.4%となった。このうち 94.8%の 42,987人で結果が判定されており、新たに48人がB判定を受け、結果判定数の 1.5%となる630人がB判定となった。

 二次検査の対象者630人中352人が受診、298人で結果が確定し、10人(2023年度対象市町村から7人、2024年度対象市町村から3人)が穿刺吸引細胞診を受診し、5人(男性1人、女性4人)が悪性ないし悪性疑いと診断され、6巡目では11人が悪性ないし悪性疑いとなった。今回、悪性・疑い数が10人を超えたためか、年齢・性分布と前回検査の結果が初公開された。11人中3人の男性の事故当時年齢は0歳、1歳と5歳、8人の女性の事故当時年齢は、1歳、3歳、4歳、5歳(2人)、8歳(2人)と9歳である。

 まとめると、6巡目では11人が悪性ないし悪性疑いとなり、5巡目での結果は、A判定が6人(A1が 2人、A2のう胞が 3人、A2結節&のう胞が 1人)、B判定が 2人、未受診が 3人だった。手術は未実施である。

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1〜6巡目と25歳時および30歳時節目検査の結果のまとめ

同情報は、「参考資料 3 甲状腺検査結果の状況」の 9ページ目にもまとめられている。

先行検査(1巡目)(結果確定版の2016年度追補版はこちら
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例      102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん 100人、低分化がん1人)
未手術症例      14人


本格検査(2巡目)(結果確定版の2020年度更新版はこちら、手術症例更新版はこちら
悪性ないし悪性疑い 71(前回から変化なし)
手術症例      56人
(前回から 1人増)甲状腺がん 56人:乳頭がん 55人、その他の甲状腺がん**1人)                                   未手術症例     15人 


本格検査(3巡目)(結果確定版の2020年度追補版はこちら
悪性ないし悪性疑い 31(前回から変化なし)
手術症例      29人(前回から変化なし)(甲状腺がん 29人:乳頭がん 29人)
未手術症例       2人


本格検査(4巡目)(結果確定版はこちら
悪性ないし悪性疑い 39(前回から 変化なし)
手術症例      34人(前回から 変化なし)(甲状腺がん 34人:乳頭がん 34人)
未手術症例      5人

本格検査(5巡目)(実施状況はこちら
悪性ないし悪性疑い 48(前回から 2人増)
手術症例      42人(前回から 変化なし)(甲状腺がん 42人:乳頭がん 41人、その他の甲状腺がん1人)
未手術症例       6人

本格検査(6巡目)(実施状況はこちら
悪性ないし悪性疑い 11(前回から5人増)
手術症例        0
未手術症例     11人

25歳時の節目検査(実施状況はこちら
悪性ないし悪性疑い 23前回から 変化なし)
手術症例      18
人(前回から 1人増)甲状腺がん 18  人:乳頭がん 17人、濾胞がん 1人)

未手術症例       5人

30歳時の節目検査(実施状況はこちら
悪性ないし悪性疑い 6人前回から 1人増

手術症例      4人前回から 1人増)甲状腺がん 4人:乳頭がん 4人)

未手術症例     2人

合計
悪性ないし悪性疑い 345人(良性結節を除くと 337人
手術症例      285人(良性結節 1人と甲状腺がん 284人:乳頭がん 280 
人、低分化がん 1人、濾胞がん 1人、その他の甲状腺がん**2人)

未手術症例***    60人(7人増)

注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年 11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第 7 版    内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。

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前回検査の結果

2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 71人の 1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞 25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低 2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人


3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 31人の 2巡目での判定結果 
A1判定:7人
A2判定:14人(結節 4人、のう胞 10人)
B判定:7人
2巡目未受診:3人


4巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 39人の 3巡目での判定結果  
A1判定:6人
A2判定:20人(結節 6人、のう胞 13人、結節&のう胞 1人)
B判定:9人
3巡目未受診:4人

5巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 48人の 4巡目での判定結果  
A1判定:11人
A2判定:25人(結節1人、のう胞 21人、結節&のう胞 3人)
B判定:6人
4巡目未受診:6人

6巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 11人の 5巡目での判定結果  
A1判定:2人
A2判定:4人(のう胞 3人、結節&のう胞 1人)
B判定:2人
5巡目未受診:3人

25歳時節目検査で悪性ないし悪性疑いと診断された 23人の前回検査での判定結果  

A1判定:1人
A2判定:4人(結節 1人、のう胞 3人)
B判定:4人
未受診:14人

30歳時節目検査で悪性ないし悪性疑いと診断された 6人の前回検査での判定結果  

A1判定:0人
A2判定:2人(結節 0人、のう胞 2人)
B判定:1人
未受診:3人







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