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IPPNWの共同代表ティルマン・ラフ医師の講演内容書き起こし和訳


131106 国連科学委員会(UNSCEAR)福島レポートをどう読むか~IPPNWの共同代表・ティルマン・ラフ博士を迎えて~
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動画はこちら(00:44:18〜1:30:00)
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ティルマン・ラフ氏は、オーストラリアの感染症・公衆衛生専門家の医師である。核戦争防止医師会議(International Physicians for the Prevention of Nuclear War、またはIPPNW)の共同代表であり、IPPNWオーストラリア支部である、戦争防止医師会Medical Association for Prevention of War、またはMAPW)オーストリア支部の国際顧問でもある。
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講演内容書き起こし和訳

こんにちは。今日は、皆さんと午後を一緒に過ごし、現在も進行している、大変重要な問題についての国際公衆衛生からの視点をお話するためにお招きして頂いて大変ありがとうございます。



フクシマの話をするにあたって私が最初に述べるべきだと思うのは、皆さんへのお詫びです。その理由は、非常に残念なことに、フクシマとそれ以外の地域を汚染しているフォールアウトはオーストラリアで採掘されたウランから来たものだからです。




そして、そのウランは、ウラン鉱山がある土地の伝統的な管理者たちの強くて首尾一貫した反対に反して採掘されたものです。なので、それについて本当に申し訳なく思っています。


そして、健康における技術的なトップ機関はWHOだとご存知だと思いますが、WHOの内部では、放射線と健康についての専門的知識はあまりありませんが、専門家の招集力は非常に大きいです。そして、WHOの健康リスク評価の報告書は、2011年9月までだけの推定被ばく量に基づいていますが、今年の2月に発表されました。もうご存知だと思いますが、特に、汚染が最もひどかった地域の子供たち、そして作業員において、固形癌と白血病のリスクがかなり増加すると推定されました。



健康についての世界のトップの技術的機関として、WHOの言葉は本当に最終勧告であるべきです。正直、この時点では、私はUNSCEARなどなければいいのに、と思います。どうしてそう思うか分かりますか?

最初に、WHO報告書にかなり保守的な傾向が見られるにしても、それは例えば、屋内退避を考慮していないというようなことですが、リスクがかなり過小評価されているという理由も、またあると思います。



もちろん、この報告書は、2011年9月までのデータしか含んでいないので、続行中の放出は除外されています。それ以降の作業員はこれからも福島第一原発での作業に従事しなければいけないかもしれませんが、その方たち全員の被ばく量は除外されています。消防士、警察官や自衛隊員などの緊急対応要員が除外されています。皆さんの方がご存知だと思いますが、かなり遅くまで避難されなかった方達がいるにも関わらず、強制的避難区域である20キロ圏内の住民が除外されています。そして、とても重要なことですが、WHOが推計した近隣5県の被ばく線量推測値の幅が、福島県の汚染があまりひどくなかった地域と実質あまり差がないにも関わらず、これらの県の住民の被ばく量が除外されています。そして、日本の残りの地域の住民の被ばく量が除外されています。

UNSCEARについて少しだけお話しますが、公表されている文書、すなわち、あの短いサマリーのみにコメントを留めます。理由は、実際の報告書(付属書)がまだ完成されていないと思われるからです。まず、UNSCEARとは何かについて、いくつかの側面を追加して強調する価値はあると思います。



UNSCEARは、随分前に設立され、国連総会に直接報告します。そして、放射線の被ばく量と影響についてかなり広範囲の権限を持っています。しかし、政府が設立したものです。そして、すべての国の政府が含まれているわけではありません。核保有国のほとんどが含まれており、原子力発電所があったり、ウラン鉱山を通して核連鎖にかなり関与している国々への強いバイアスがあります。したがって、各国の代表が、核活動に大規模かつ多額の投資をしている政府から推薦されるために、概して独立した意見が欠けています。半ばクラブのような感じです。



5月の会議に参加したカナダ代表団のメンバーの1人が、低線量放射線は体に良いという、過激としか言えないような見解の持ち主であり、その考えをオーストラリアで勧めるために、ウラン採掘会社によってオーストラリアに招聘されていたということに驚きました。

なので、一般的に、国連機関や、他の機関がその意見に従う傾向の強いIAEAについては、必要以上に、政府と原子力産業の利害関係に対して、原子力推進目的のバイアスがあると思います。

それでは、この国連総会への短い報告書の中のいくつかの点で、私が懸念を持つ、または整合性がないと思ったことを指摘させて下さい。



最初の方で、非常に大量の放射性物質が放出されたと述べられていますが、どういうわけか、この非常に大量の放射性物質の公衆への影響は、低い、または非常に低い被ばく量です。そして、「識別し得る発症率の増加」というような表現に一番良く当てはまる言葉というのは、英語だとdisingenuous(不誠実)、というのだと思います。影響がないと言っているのではありません。恐らく影響を見つけることができないだろうと言っているのです。そして、もちろんそれは、どれくらい良く物事を見ることができるかによります。さらに、甲状腺癌のリスクの増加は予期されると述べられています。これはあまり整合性がありません。

広島と長崎のデータに基づいた予測を見ると、何十ミリシーベルト(ここではミリグレイ)の範囲だと、健康影響を見るのには、何百万人という、非常に大人数のデータが必要となります。しかし、注意深く探せば、もっと小規模の研究でもかなりの影響を見る事ができます。



米国のスリーマイル島事故では、1ミリシーベルトという比較的少量の放射線が周辺に放出されたと思われています。



しかし、その地域での癌の発症の調べた注意深い研究では、肺癌の発症率と汚染の度合いに非常に明らかな相関性が見られました。それは、大変強い、そして統計学的に非常に有意である相関性でした。




チェルノブイリに関しては、推定被ばく量に基づいて、どのような影響も識別するのが困難であると、(フクシマと)似たようなことが言われました。そしてもちろん、あまり計画的に行われなかった追跡調査をもってしても、小児甲状腺癌が劇的に増加したのが分かりました。


また、最近の、廃炉作業員における白血病のリスクの増加についてのかなり説得力のあるデータを含む、様々な他の影響の証拠も増えています。


原子力産業労働者において実施された最大規模の研究は、国際がん研究機関によって行なわれた15ヶ国研究です。40万人以上の労働者の研究で、そのほとんどにおいて、原子力施設での労働からの被ばく量は、推奨最大被ばく限度よりかなり少なく、平均年間被ばく量は19.4ミリシーベルトでした。しかし、推奨職業被ばく限度内のこれらの被ばく線量において、とても明らかで、かつ統計的に非常に有意な増加が、すべての癌と白血病で見られました。






通常運転されている原子力発電所周辺の住民もまた、非常に低い線量の放射線に被ばくすると推定されている。しかし、実際には今ではかなりの量の証拠があり、その中で一番優秀な研究は、原子力発電所から5キロ以内に住む小児での白血病のリスクが倍であることを示した、このドイツの研究です。



そして、もしも多くの人々が少しの線量に被ばくしたら、その影響は些細ではないかもしれない。日本の人口が大雑把に1億だとして、1ミリシーベルトにつき1万人に1人に癌が過剰発生するという非常に標準的で保守的なリスク推計を用いたら、日本全体で1万人に癌が過剰発生することになります。これを検出することはできないでしょうが、1万人が癌になるということは、些細な事ではありません。



物事は、探そうとしなければ、見つからないものです。そして、これについては、皆さんの方が私より詳しいはずですが、最近発表された日本の専門家による権威のある報告書によって、癌登録の状況があきらかになりました。日本のほとんどの都道府県では癌登録がなく、福島県では2010年に設定されたばかりです。なのでこれは、長期的な癌の影響を見つけようとしているのなら、問題となる可能性があります。すなわち、長期的な発癌の影響をみつけることができるほど敏感なシステムが存在しないかもしれないということです。



私が特に必要だと考えることのひとつは、国際がん研究機関が今でもチェルノブイリでも実施されるべきであると推奨しており、日本でも推奨を待たずに行うべきことですが、被ばくした住民の、推計被ばく量の適切な人口登録です。大まかな推計値でも構いません。そうすれば、どこに住んでいても、推計被ばく量の情報を癌や死亡や出生時の影響などの長期的な健康影響と結びつけることができます。

私が懸念している次の問題は、UNSCEAR報告書内で、被災者を責めるような傾向が見られるということで、少し不穏に感じます。被ばく量が平均より多かった住民は、食べるのを止めるように言われた食べ物を食べたとか、避難区域に住み続けたというようなことが示唆されています。その人達が悪いのだと示唆しています。また、健康への悪影響の中には、放射線への根拠のない不安に関連しているものがあるとも示唆しています。とてもひどいことが起きたというより、ちゃんと理解していないからだということです。放射線が問題でないということを分かっていない、というのです。自分自身の問題だというのです。何かとてもひどいことが起こってしまったという事の理解が欠けているのです。崎山医師が委員を務められた国会事故調査委員会のとても優れた報告書が結論づけたように、事故への対応と管理においては、うまく行なわれなかったことがたくさんあります。そういうことは、UNSCEAR報告書では、少なくともサマリー版では、まったく認識されていません。



次にお話したいのは、子供たちについてです。

少し矛盾を感じます。サマリー版の同じページ内で、一方では、6年前に、小児の放射線の発癌影響への感受性は、一般大衆の2−3倍だと結論づけたと述べてあります。しかし同じページの後の部分では、小児期における放射線被ばくの影響を一般化しないようにと述べてあります。これらの供述はちょっと整合し難いと感じます。



また、少なくともサマリー版では、住民の防護のための行動という、肝心なことに関しての勧告がありません。

国会事故調査委員会の報告書でも使われていましたが、ここに、米国科学アカデミーからの大変有効な証拠があります。すべてのデータを合わせたら、長期的な発癌リスクは、小児においてよりずっと多く、また、男児よりも女児においてよりずっと多いということが明らかに示されています。



さきほどCTスキャンの研究が言及されていましたが、私はちょっとこの研究を誇りに思っているのでお話したいと思います。この研究の研究者は、年を取っています。退職するべきような年齢です。なのに、この、まったくすばらしい研究を行ったのです。これは、これまで行なわれた小児におけるCTスキャンの研究、あるいは、実際のところ、小児における低線量被ばくでの最大規模の研究と言えるでしょう。69万人と言う、非常に大人数のCTスキャンを受けた小児を平均して9年間追跡調査しました。並外れた統計的正確さにより、CTスキャンを一度受けたあとの9年間での発癌リスクが24%増加したことが示されました。CTスキャンの回数が1回増える度に、発癌リスクが16%増加しました。注意深く推計された平均被ばく量は、福島県の多くの住民の推計被ばく量と大変近いのです。もちろん、この人達(福島県の住民?)の生涯リスクはその数倍となります。また興味深いことに、1ミリシーベルトごとの相対リスクは、広島と長崎の研究よりもほぼ10倍高く、統計的パワーもより大きかったのです。





UNSCEAR報告書について私が非常に嬉しくない問題があるのですが、実質、とても無関心を示しているような感じがしたので、怒りを感じました。報告書は確かに短いのですが、動植物への影響について、とても無関心です。もちろん、そんなに多くの研究が行われていないので、証拠が多いわけではありません。しかし、研究でわかっていること自体は、非常に説得力があります。


これは事故後、2011年の夏のものですが、赤で表示されているのは、植物の光合成活性の減少で、放射能汚染が多い区域とまったく整合しています。福島県の汚染区域の植物全部の活性が、あの夏には減少していたのです。




また、ティム・ムソーという並外れた教授が、汚染が最もひどい地域のいくつかで、鳥と昆虫の調査をされました。



そして、チェルノブイリとまったく同じような傾向が見られたのですが、このグラフでは変化があまり分からないかもしれませんが、対数グラフなので見た感じよりもずっと大きな影響を表しています。チェルノブイリ、そして同様に福島県で、汚染度が増すにつれて、鳥の数が明らかに減少するのが見つかりました。


皆さんは良くご存知かもしれませんが、この、特定の種の蝶の研究では、広範囲に及ぶ異常が、複数の世代にわたる影響として見つかっています。



昆虫の放射線感受性は人間よりずっと少ないのです。多くの様々な異常が、蝶の羽根や眼や色々な部位で見られました。



もちろん、福島原発の現在の状況は安定しておらず、一般に、何かがニュースの話題になるたびに、状況が悪化しているように見えます。私は特に、作業員の方達の事が心配ですが、これは皆さんもご存知のことと思いますが、UNSCEARやWHOは、初期の推計被ばく量をが作業員の被ばく評価に用いたであろうと思われますが、2−3ヶ月前に、実は甲状腺被ばく量が100ミリシーベルトを超える作業員の数が、当初の10倍であると報告されました。


IPPNWは、フクシマについて色んなステートメントを出しましたが、ここにその情報を入れてあります。そして、お手元には、国際支部の多くが賛同した論評の概要があると思います。今、それについて詳しくは説明しませんが、最後に、何が優先されるべきであるかという私のまとめの概要を紹介してこの講演を終わらせて頂きたいと思います。実際、このような報告書というのは、証拠をもってして何らかの結果をもたらすことを助長するべきなのですから。



まず最初に申し上げたいのは、明らかに、原子力産業の擁護や賠償金額の低減、あるいは他の利害関係ではなく、公共衛生と安全および環境保護が第一義的事項であるということです。福島県だけのアプローチでなく、全国でのアプローチが必要です。先ほど登録制度についてお話しましたが、これは、影響を検出するためだけではなく、実際に、一番必要な人が医療を受けれるようにするためにも重要だと思います。多くの国々では、原子力労働者の放射線被ばくの生涯登録制度があります。どこで仕事をしても、被ばく量が登録システムに加算されるのです。それがなぜ日本で実施されていないのか理解できません。そして、皆さんの方が良くご存知だと思いますが、今、この「子ども・被災者支援法」の実施と予算確保について重要な問題があるようです。「子ども・被災者支援法」が全国規模で実施され、十分な予算を受けるように求めることを私達が推奨するのは、重要なことです。



UNSCEAR報告書の中で我々に対して警告を鳴らしていることがひとつあると思うのですが、それは、子どもの推計被ばく量がずっと多いということです。そして、子ども達を守る事は、本当に不可欠な優先順位を持ち、まだまだやらなければいけないことがあります。

2番目に、明らかに、損傷を受けた原発からの放射能漏えいおよび汚染の漏えいがひどくなるリスクをコントロールするために必要なことを実行するということです。そして、もちろん、他の原子力施設全部からのさらなる漏えいを防ぐことは、これらの原子力施設が停止したまま、そして廃炉にされるのであれば、とても効果的になります。

では、最後に、簡単で現実的な提案をしたいと思います。

国会事故調査委員会は大変すばらしい仕事をしたと思いますが、解散してしまったのは本当に残念です。このような委員会は、私から見ると、現状および何が必要であるかについて定期的なモニタリングとレビューを行なうという、非常に有益な役割を果たします。国連機関に調査を一度依頼するのでなく、再度モニタリングとレビューを行い、継続した注意を払い、フクシマ事故がまだ収束しておらず、安定していないと言う事実に焦点を当てることもまた重要です。フクシマ事故についての独立した研究結果を定期的に発表できる場所も大変役立つと思います。



この2−3年間、かなり定期的に日本に来て、福島県を訪問し、これらの問題の話をしてきましたが、医師の多くが、この問題に関して、言わば静かにさせられ、また沈黙するように脅されているということにとても懸念を持っています。国会事故調査委員会は、非常に不穏なことに、原子力産業が日本のICRPメンバーの旅費を援助していたと述べていました。これは明らかに汚職であり、利益相反です。電事連が、放射線と健康について独立した勧告を出すことになっている立場の人達に資金援助していたのです。残念ながら、日本の原発ムラは、また、その影響を大学および医師や科学者にも及ぼしていると思います。そのようなことをもっと包括的に記録に残していくのはとても役立つと思います。

そして、日本に決定したオリンピック誘致に対して、安倍首相が、フクシマの状況は安定しており、放射能汚染も限られていると述べたことが正直でなかったとしても、この際、オリンピックを利用するといいと思います。オリンピックのために、これから7年間、日本と安全とフクシマで何が起こっているかということについて国際的な注目を受け続けるわけであり、それは実際に安定化させる外圧となり得ると思うので、使わない手はありません。

長く話し過ぎたので最初に続いて最後にもまた謝らなければいけませんが、遠方から話をしにきたので、どうぞお許しください。





和訳:Yuri Hiranuma
和訳校正:




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