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国際連合総会第4委員会でのUNSCEARへのステートメント:中国の強い指摘、および日本の言い訳とクレーム


UNSCEAR2013年報告書が提出された、2013年10月25日国際連合総会第68回セッション第4委員会の動画より、中国国連代表のステートメントで福島原発事故関連の部分と、日本国連代表のステートメント全文の書き起こし和訳をした。この委員会のプレスリリースはこちら

中国代表のステートメントには、外交辞令ながらも、日本政府への強い要望が含まれていると感じた。日本代表のステートメントは、日本政府の「意図」が良く表されているようであり、2013年10月11日にUNSCEARが最初に報告書を第4委員会に提出した直後の下記の報道以来、不自然なほどこの報告書についての報道がない理由が伺えるようである。



中国国連代表のZhao Xinli氏のステートメント
動画の1:05:54より:同時通訳のため、書き起こし中に、文章構成が不完全な部分が所々見られたが、極力意味が通るように和訳した。)

遺憾で痛ましいフクシマ原子力事故は、同様の事故が起こるのを防ぐための、より効果的な予防対策と、さらに包括的で徹底的および系統的な考察を求める視点を持ち、真剣な反省および注意深い調査と研究に携わることを促すものであります。

今でも、フクシマ原子力事故現場では二次的事象がまだ度々起こっており、世界中、特に近隣諸国の国民に大きな不安をもたらしています。当事国は、国際コミュニティー、特に懸念を持つ諸国の国民の不安が軽減されるように、誠実に責任を果たし、事故の余波と対応し、関連情報の透明性と信頼性を確保するために、時宜を得た効果的な対策を採用するべきであります。

(中略)

原子力放射線がもたらす課題を目の前に、国際連合は、原子力放射線の安全性を確保する役目を果たすべきです。これは、次の4つの分野で行なうことを示唆いたします。

最初に、大きな原子力事故(訳注:"the"とあるので、この場合はフクシマ事故のこと)の余波を適切に処理し、学ばれた教訓を復習すること。原子力大事故が、人間に生理学的、及び心理学的に及ぼす悪影響を考慮すると、将来的予防のために、悪影響を評価し、かつ学ぶべき教訓をまとめるために、国際コミュニティーの努力を統合するべきです。当事国は、人間の安全を最優先すべき問題と見なし、援助が可能であり、かつ提供する気がある国連関連機関や諸国との対応においてオープンで透明なアプローチを取り、事故の余波の処理に向けての協調した取組がなされ、様々な悪影響が最小限におさえられるようにするべきです。(訳注:最初の部分のみフクシマ事故関連のため、後略。)

書き起こし原文
The regrettable and harrowing Fukushima nuclear incident should prompt us to engage in serious reflections and careful investigation and research with a view to finding more effective, preventive measures, still comprehensive, in-depth, and systemic consideration to prevent occurrence of similar accident.

To date, secondary incidents still occur, now and again, at the site of Fukushima nuclear incident, causing widespread worries around the world, especially among the people of neighboring countries. The country concerned should genuinely fulfill its responsibility and adopt timely and effective measures to deal with the aftermath of the incident and ensure the transparency and credibility of relevant information so that international community, particularly the people of various countries concerned, are reassured.

(...)

In the face of challenges posed by atomic radiation, the United Nations should play a role in ensuring atomic radiation safety. I suggest we go about that work in the following four areas:

First, properly handle the aftermath of the major nuclear incidence and review the lessons learned. In light of the harmful effect of major nuclear incidence on human physiology and psychology alike, the efforts of the international community should be integrated to assess the harm done and sum up the lessons to be learned for future prevention. The country concerned should deem human safety the number one issue, take an open and transparent approach in working with relevant UN agencies and countries that are able and willing to help so that concerted efforts can be made to handle the aftermath of the incident and minimize various harmful effects.

(...)



日本国連代表のタカハシナオキ氏のステートメント
動画の1:18:52より:タカハシ氏が英語で読み上げた。)

議長、このトピックが非常にテクニカルな性質であるため、今日の私のステートメントが首都からの直接の指示に基づいている事を明白にしたいと思います。まずは、あなたの、国際連合第68セッション第4委員会での効果的な議長職に謝辞を述べたいと思います。

1955年に国連総会によって設立されて以来、原子放射線の影響に関する国連科学委員会、または略してUNSCEARは、電離放射線の供給源および影響の権威ある科学的レビューを提供するというきわめて重要な機能を果たしてきました。委員会の仕事は、世界に、放射線リスクを評価し、放射線防護と安全基準を設定するための科学的データを提供してきました。

原子力技術の安全性に完全にコミットする国家として、日本は、委員会の仕事から恩恵を受けました。2011年に、大地震と津波によって引き起こされた原子力事故の個人的かつ悲劇的な経験を通して、日本は、原子力安全に対する強いコミットメントをさらに強化し、この分野でのUNSCEARの重要な役割を、なおいっそう認識しています。

議長、放射線と核エネルギーを使用するにあたっての人類と環境の安全と保障を確保することの重要性は、誇張できません。公衆衛生においてそれを促進することは、医学目的での放射線使用においてと同様に欠かせないものです。UNSCEARは、2011年の東日本大震災と津波の後の原子力事故による被ばくと放射線リスクの程度に関する科学的評価を2年以上行なっている唯一の組織です。評価の結果は、我々が人類と環境内での安全を確保し続けるために適切な対策を取るために、確実に役立つでしょう。この点では、科学委員会のコミットメントと活動的な仕事に感謝します。

議長、日本政府は、悲劇的な事故以来、福島第一原子力発電所の作業員および周辺住民における被ばく量を把握することを最大に重要だと考慮していると言及させて下さい。

残念なことに、今月、UNSCEARがこの委員会に報告書を提出した直後に、福島第一原子力発電所の作業員の内部被ばく量評価の間違った認識に基づいた記事がいくつか報道されました。日本メディアのいくつかは誤解をして、UNSCEARは日本政府が発電所の作業員の内部被ばく量を過小評価したと結論づけたと、間違って書きました。UNSCEARが、被ばく量推計において、過小評価だけでなく、過大評価の要因もあると理解しているのを我々は認識しています。しかし、UNSCEAR報告書には、内部被ばく量の過小評価しか書かれていないため、公衆が、報告書のメッセージを誤って解釈してしまう可能性があります。この点では、日本は、UNSCEARに、近日発表予定の評価報告書で、内部被ばくの全体的評価のバランスを取って頂くことを求めたいと思います。日本政府は、UNSCEARに必要な証拠とデータを提出する準備ができており、委員会にそれを考慮して頂けたら大変感謝致します。

議長、前述致しましたように、科学委員会の役割の重要性を誇張することはできません。最後に、UNSCEARの重要な仕事に対しての日本の継続したコミットメントと支援を再度断言したいと思います。議長、どうもありがとうございました。

書き起こし原文
Mr. Chairman, due to the nature of this very technical topic, I would like to make it clear that my statement today is based on instruction directly from our capital. As the outset, I would like to express my appreciation to you for your excellency's effective chairmanship in the Fourth Committee during the 68th session of United Nations General Assembly.

Since its establishment by General Assembly in 1955, the United Nations Scientific Committee for Effects of Atomic Radiation, or UNSCEAR in short, served the vital function of providing authoritative scientific review of sources and effect of ionizing radiation. The work of the committee has provided the world with scientific data for evaluating radiation risk and establishing radiation protection and safety standards. 

As a country fully committed to the safety of nuclear technology, Japan has benefited from the work of the committee. Through the personal and tragic experience of the nuclear accident caused by the massive earthquake and the tsunami in 2011, Japan further enhances its strong commitment to nuclear safety, and recognizes, all the more, the critical role played by UNSCEAR in this field.

Mr. Chairman, the importance of ensuring the safety and security of human beings and the environment in the use of radiation and atomic energy cannot be overstated. It is as indispensable to promote in public health as in use of radiation for medical purposes.  UNSCEAR is the only organization that has been carrying out the scientific assessment for more than two years regarding the levels of exposure and radiation risks attributable to the nuclear accident following the Great East earthquake and tsunami in 2011. The results of assessment will definitely be useful for us to take appropriate measures to continue ensuring the safety of human beings and in the environment.  In this regard, we appreciate the commitment and active work of the scientific committee.

Mr. Chairman, allow me to mention that the Government of Japan has been attaching the utmost importance to grasping the amount of exposure of workers at Fukushima Daiichi nuclear power station and the residents in the region since the tragic accident. 

To our chagrin, some articles were published based on misperceptions of the evaluation of the internal exposure on workers at the Fukushima Daiichi nuclear power station in Japan right after UNSCEAR submitted its report to this committee this month. Some Japanese media misunderstood and incorrectly wrote that UNSCEAR has come to a conclusion that the Government of Japan underestimated the amount of internal exposure of workers at the plant. We are aware that UNSCEAR understands there are factors of underestimation as well as overestimation in exposure estimation.  But only underestimation of internal exposure is written in the report of UNSCEAR, which would possibly lead the public to misinterpret the message of the report. In this regard, Japan would like to kindly request UNSCEAR to give balance to the overall evaluation of internal exposure in the incoming assessment report. The Government of Japan is ready to submit the necessary evidence and data to UNSCEAR and would be most grateful if the committee would take them into consideration.

Mr. Chairman, as previously mentioned, I cannot exaggerate the importance of the role of the scientific committee. To conclude, I would like to reaffirm Japan's continued commitment and the support for the important work of UNSCEAR. I thank you, Mr. Chairman. 


和訳:Yuri Hiranuma
和訳校正:

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