2011年ウクライナ政府報告書
ウクライナ政府がチェルノブイリ事故の25年後に出した報告書の英訳版より、事故処理作業員や住民とその子供達の健康状態に関する部分から抜粋和訳したものを、下記のように6部に分けて掲載する。また、他のサイトで和訳がされている部分もあるが、英訳版の原文で多く見られる不明確な箇所がそのまま和訳されていた。ここでは、医学的に意味が通るように意訳をした。
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4. 被ばくによる初期と長期の影響
●急性放射線症候群
●放射線白内障とその他の眼疾患
●免疫系への影響
急性放射線症候群
1986年に, 237人が急性放射線症候群(ARS)の診断を受けた。1989年に実施された綿密で遡及的な分析の結果、実際に急性放射線症候群が確認されたのは134人に減ったが、この内28人は事故後の最初の3ヶ月以内に亡くなっていた。ウクライナ国立放射線医学研究所では、当初、急性放射線症候群の診断を受けた239人のうちの190人を、事故後の25年間追跡調査しているが、1987年から2010年の間に、ウクライナ在住の39人が亡くなっている(図3.58)。
1986年に, 237人が急性放射線症候群(ARS)の診断を受けた。1989年に実施された綿密で遡及的な分析の結果、実際に急性放射線症候群が確認されたのは134人に減ったが、この内28人は事故後の最初の3ヶ月以内に亡くなっていた。ウクライナ国立放射線医学研究所では、当初、急性放射線症候群の診断を受けた239人のうちの190人を、事故後の25年間追跡調査しているが、1987年から2010年の間に、ウクライナ在住の39人が亡くなっている(図3.58)。
全体的に頻度が1番高い死因は癌(15症例)と心血管系疾患(12症例)であった。他の死因は、重度の肝硬変、進行性の肺結核、脳炎、足の骨折後の脂肪塞栓症、事故やトラウマであった(表3.37)。
25年の研究の間に、急性放射線症候群の診断を受けた人達の主要臓器とシステム、代謝とホメオスタシスの機能状態を調査した。この結果、このグループの健康、精神的、身体的性能が包括的に評価された。そして、リスク要因の発達と確率的・非確率的病態の特徴が確認され、急性放射線症候群になった患者のリハビリテーションのシステムが構築された(訳者注:文脈から、「リハビリテーション」は、ここでは「治療、回復と社会復帰」を意味すると思われる)。
急性放射線症候群を生き延びた患者は、内臓器官やシステムの慢性疾患をわずらっている(一度に5〜7、もしくは10〜12の診断)。
●事故後の最初の5年の間には、心血管系疾患、消化器系疾患、神経系疾患と肝胆道系疾患が急激に増加した。
●次の20年間の間には、増加のペースは落ちたが、身体的症状を持つ患者は85から100%に達した(図3.59)。
癌は、主に様々な部位の固形癌だった(表3.38)。事故後の最初の10年で悪性血液疾患は5症例見つかり、次の15年間では固形腫瘍が出始めた。悪性腫瘍と心血管系疾患によって死亡した患者の53%の年齢は、ウクライナの平均余命より低かった。
事故後、24人が典型的な放射線白内障を発病した。このうち、10人はARS3度、8人はARS2度、3人がARS1度で、3人がARS未確認(ARS NC)だった。放射線白内障のほぼ全症例(96%)は、被ばく後15年の間に発病した(図3.60)。水晶体の病理研究によると、放射線白内障は、放射線の確定的影響ではなく、確率的影響であるかもしれないことが示された。
放射線被ばくの晩発期の放射線白内障の罹患率は、被ばく線量と被ばく期間の対数に依存して増加した。
急性放射線症候群の患者の中で、被ばく線量が1 Gyから3 Gyだった人達の造血システムを事故後初期と後期に継続観察したら、骨髄と末梢血内の数値が徐々に正常化した反面、核と細胞質の細胞構成要素において多数の質的な不規則性が維持されているのが明らかになった(図3.61−3.64)。
骨髄内の赤血球生成の(赤芽球)島では、マクロファージの周囲の赤芽球の不足という異常がみられた。造血の巨核球系統では、血小板成熟障害、空洞化とムコ多糖体の喪失という変化がみられた。
骨髄の回復には1年から3年かかり、その動態を追跡するのは、今でも科学者にとって非常に興味深いことである。回復への移行期には、骨髄内で若い世代の細胞の数が増え、骨髄生体検査では形成不全と過形成の部分が交互にみられる。このような骨髄の再生は、形態機能的な指標の総合的な分析も含めて、複数の過程で発現する可能性がある。
1)末梢血液の正常化を伴う完全な回復
2)血球減少が残存する形成不全
3)汎血球減少と将来的な血液腫瘍疾患の発症を伴う骨髄抑制
事故後の時期には、急性放射線症候群の患者や急性放射線症候群未確認(ARS NC)の人達で、様々な血液症候群がみられたが、ほとんどが成熟した末梢血液細胞の分化の末端部分と関連していた。汎血球減少の頻度は、急性放射線症候群1度〜3度での方が、急性放射線症候群未確認のグループよりも高かった(図3.68)。被ばく後の最初の5年間の汎血球減少の高頻度は、5年以降は減少傾向がみられた。25年間でみられたすべての血液症候群の頻度は、急性放射線障害症候群の患者においての方が、急性放射線症候群未確認の人達よりもかなり高かった(図3.69)。
ドイツの研究者との協力の下、チェルノブイリ事故や他の放射能事故の被ばく者の調査のための国際コンピューターデータベースが作られた。このデータベースには、2,390人の急性放射線症候群の患者および急性放射線症候群未確認の人達の病歴が含まれている。 放射線白内障とその他の眼疾患 チェルノブイリ事故以前には、放射線白内障は線量負荷が2 Gy以上でのみ起こるのだと思われていた。しかし、1990年にはこれよりも低い線量での白内障の発現が報告されていた。1992年には、放射線白内障の特定のピークが1997年に起こるであろうと予測された。これは、チェルノブイリの被害者における放射線白内障の2つの独立した研究によって証明された。これらの研究機関は、ウクライナ国立放射線医学研究所(Research Center for Radiation Medicine、略称RCRM)の「臨床疫学的登録」(Clinical-Epidemiological Registry、略称CER)と、国際研究組織の「ウクライナ・アメリカ合同のチェルノブイリ眼研究 」(Ukrainian/American Chernobyl Ocular Study、略称UACOS) である。
現在、典型的な臨床像を持つ放射線白内障は223症例が知られている。 ●UACOSの最初の結果は、2 Gyよりもっと低い線量の閾値の可能性を示した。年齢グルー プによっては、閾値がおよそ0.1 Gyだった。閾値は白内障の種類に依存し、0.7 Gy以上にはなり得なかった。
●CERの調査結果の分析によると、典型的な放射線白内障は0.1 Gy以下の線量で起こった。5年間被ばくのリスクを受けた後の、被ばく線量による放射線白内障の絶対リスクは、図3.70に示されている。
放射線白内障のモデルによると、放射線による集積相対リスクは1 Gyあたり3.451(1.347, 5.555, p<0.05)だった。白内障の発達は、また、放射線被ばくの期間にも影響された。この研究での放射線白内障の閾値は定められなかった。潜伏期間は22年以上であり得る。これらの研究と数学的モデルにより、放射線白内障が放射線被ばくの確率的影響であると証明される。
国際”ピッツバーグ・プロジェクト”の結果と、それと並行して実施されたイヴァンキフ長期研究によると、小児における水晶体の最初の変化は、土壌の放射能汚染が非常に低い濃度で起こる。
チェルノブイリ事故の被災者では、新しいタイプの放射線網膜症が2つ見つかっている。 ●”チェスナッツ症候群”(初期と後期)[“Chestnut Syndrome” (early and late)] ●”放射線格子症候群” (“The Syndrome of Radiation Grating”)
また、確定的影響の徴候を持つ、新たな放射線の影響もある。
●レセプター複合体としての目の機能は、網膜の永久電位の発生が伴う。放射線被ばくは、この網膜電位の発生を妨害する。閾値は200 mSvである。
●放射線被ばくは、線量と相関した視力調節の低下を引き起こす。閾値は150 mSvである。
免疫系への影響
ウクライナ放射線医学研究所で1987年に開始された免疫系の調査は、世界的な放射線生物学の既存の経験に基づいていた。人間の免疫系への低線量の電離性放射線の影響の研究においては、放射線の影響を、様々な負の環境因子、放射性同位体の割合への病理変化の依存性、放射性物質への被ばく期間と被ばくルート、体組織・臓器・個人の放射線感受性の特徴などと区別するのが大変困難である。
免疫機能の調査(図3.71)によると、165,000人以上の色々なカテゴリーの被災者においての、晩発期の免疫機能障害の頻度には著しい増加が見られ、事故処理作業員においての増加が最も際立っていた。急性放射線症候群の患者における免疫系の変化は、放射能被ばくの5年後には、Tリンパ球とBリンパ球の機能抑制と非特異性の抵抗メカニズムの機能不全を伴う、放射線誘発性の複合型免疫不全症に特徴づけられた。
事故後10年で、急性放射線症候群の患者の32%に免疫系の代償性変化が発現し、37%は免疫調節異常の変化を示した。細胞免疫欠陥は31%でみられた。被ばくから15〜25年後には、前駆細胞分化の障害のために、末梢血中での前駆細胞の量が増加し、CD123w抗原(IL-3レセプター)の表現が減少した(図3.72)。
急性放射線症候群の患者では、晩発的に、細胞傷害性Tリンパ球(キラーT細胞)を含むTリンパ球、Bリンパ球と、系統的に一番古いナチュラルキラー細胞のように、免疫細胞の中で回復したものもあった。細胞亜集団とその機能活性は線量に依存して妨害され続けており、それは、細胞亜集団の中には代償的予備の消耗がみられるものがあることを示す。CD34+ 細胞の全集団の相関係数は−0.48と、かなり大きかった。この結論は、図3.73でみられるように、初期の前駆細胞の分析によって確認されている。
低線量と中線量の放射線による晩発的影響の研究は、(訳者注:放射線との因果関係が不明な)身体的および心身症的な疾患の存在のため、非常に難しい。
低線量の放射線による免疫系への影響は、次のような主要因に左右される。 ●非致死的な放射線誘発性の細胞損傷(機能的欠陥を持つの増殖) ●液性因子による拡散効果 ●免疫反応の変化(神経免疫要因と脂肪代謝の変化およびそれに伴う障害)
●適応システムの反応(細胞周期の放射線抵抗性段階への移行。未成熟細胞の段階的かつ線量依存的な生産と非特異的な活性化。) この調査の結果は、慢性閉塞性肺疾患、慢性肝炎や脳血管障害などの晩発的な慢性身体性疾患を持つチェルノブイリの事故処理作業員においての、非特異的な有糸分裂促進因子および組織と微生物の抗原に対する白血球、特にリンパ球の反応の変化を示すものである。CD25やCD71、そして程度は低いがHLA-DRなどのリンパ球の表面活性抗原の発現の変化により、明確な影響が現れた。疾患によっては、反応の減少と増加の両方が発見された。このような変化の機序の可能性としては、放射線誘発性の損傷が未修復のままであることと、抗原反応性細胞の抗原活性化に誘発されるアポトーシスや非特異性の免疫抑制などの一連の二次的効果などが最初に考えられるべきである。
事故処理作業員と30キロ圏内の作業員のグループでは、テロメアの長さがかなり短いのがわかった。そして、テロメアの長さと、アポトーシスの初期段階に入る細胞数および被ばく集団の被ばく年数とには、反比例の関係がみつかった(図3.74)。
また、アポトーシス抑制タンパク質のBcl-2を表現している細胞の多くが保存され、アポトーシス誘発物質であるベラパミルの生体外実験でも、これらの細胞の平均指標に著しい変化は起こらなかった。これにより、細胞集団の中で、テロメアの長さとアポトーシス開始に関して多様性があるのではないかと考えられる。
放射能と活性酸素の影響により、サイトメガロウイルス(CMV)の遺伝子発現が増加することがある。これが、チェルノブイリの事故処理作業員と急性放射線症候群の患者におけるサイトメガロウイルス血清陽性やサイトメガロウイルス再活性化の増加の理由かもしれない。サイトメガロウイルスの感染力の増大は、サイトメガロウイルス陽性の患者においての慢性胃炎や気管支炎、そして諸タイプの関節炎などの身体的疾患の発生率の増加と関連づけられている。
慢性リンパ性白血病(CLL)の患者のリンパ系細胞のIgHV遺伝子と抗菌性抗体や抗ウイルス性抗体の間にはかなりの相同関係がみつかっている。ウイルスや細菌感染は、自己抗原やアポトーシスした細胞との相乗効果により、慢性リンパ性白血病を誘発する可能性がある。チェルノブイリで被災した慢性リンパ性白血病の患者における抗体が、ウイルスや細菌の構成部分と反応する抗体と一致するという所見は、チェルノブイリ事故の四半世紀後でさえも、感染症が慢性リンパ性白血病の病因に貢献しているかもしれないことを証明する。
過去24年間の研究により、低線量被ばくにおいての免疫系の細胞反応があるのがわかったが、この反応は初期の免疫系の回復時と晩発時どちらの時期でもみられる。チェルノブイリ事故の被災者の調査結果は、実験的な放射線生物学のデータを拡大すると同時にそのデータと合致するものであり、免疫系への影響において放射線が主な要因であることを証明するものである。
チェルノブイリ事故の被災者では、新しいタイプの放射線網膜症が2つ見つかっている。 ●”チェスナッツ症候群”(初期と後期)[“Chestnut Syndrome” (early and late)] ●”放射線格子症候群” (“The Syndrome of Radiation Grating”)
また、確定的影響の徴候を持つ、新たな放射線の影響もある。
●レセプター複合体としての目の機能は、網膜の永久電位の発生が伴う。放射線被ばくは、この網膜電位の発生を妨害する。閾値は200 mSvである。
●放射線被ばくは、線量と相関した視力調節の低下を引き起こす。閾値は150 mSvである。
免疫系への影響
ウクライナ放射線医学研究所で1987年に開始された免疫系の調査は、世界的な放射線生物学の既存の経験に基づいていた。人間の免疫系への低線量の電離性放射線の影響の研究においては、放射線の影響を、様々な負の環境因子、放射性同位体の割合への病理変化の依存性、放射性物質への被ばく期間と被ばくルート、体組織・臓器・個人の放射線感受性の特徴などと区別するのが大変困難である。
免疫機能の調査(図3.71)によると、165,000人以上の色々なカテゴリーの被災者においての、晩発期の免疫機能障害の頻度には著しい増加が見られ、事故処理作業員においての増加が最も際立っていた。急性放射線症候群の患者における免疫系の変化は、放射能被ばくの5年後には、Tリンパ球とBリンパ球の機能抑制と非特異性の抵抗メカニズムの機能不全を伴う、放射線誘発性の複合型免疫不全症に特徴づけられた。
事故後10年で、急性放射線症候群の患者の32%に免疫系の代償性変化が発現し、37%は免疫調節異常の変化を示した。細胞免疫欠陥は31%でみられた。被ばくから15〜25年後には、前駆細胞分化の障害のために、末梢血中での前駆細胞の量が増加し、CD123w抗原(IL-3レセプター)の表現が減少した(図3.72)。
急性放射線症候群の患者では、晩発的に、細胞傷害性Tリンパ球(キラーT細胞)を含むTリンパ球、Bリンパ球と、系統的に一番古いナチュラルキラー細胞のように、免疫細胞の中で回復したものもあった。細胞亜集団とその機能活性は線量に依存して妨害され続けており、それは、細胞亜集団の中には代償的予備の消耗がみられるものがあることを示す。CD34+ 細胞の全集団の相関係数は−0.48と、かなり大きかった。この結論は、図3.73でみられるように、初期の前駆細胞の分析によって確認されている。
低線量と中線量の放射線による晩発的影響の研究は、(訳者注:放射線との因果関係が不明な)身体的および心身症的な疾患の存在のため、非常に難しい。
低線量の放射線による免疫系への影響は、次のような主要因に左右される。 ●非致死的な放射線誘発性の細胞損傷(機能的欠陥を持つの増殖) ●液性因子による拡散効果 ●免疫反応の変化(神経免疫要因と脂肪代謝の変化およびそれに伴う障害)
●適応システムの反応(細胞周期の放射線抵抗性段階への移行。未成熟細胞の段階的かつ線量依存的な生産と非特異的な活性化。) この調査の結果は、慢性閉塞性肺疾患、慢性肝炎や脳血管障害などの晩発的な慢性身体性疾患を持つチェルノブイリの事故処理作業員においての、非特異的な有糸分裂促進因子および組織と微生物の抗原に対する白血球、特にリンパ球の反応の変化を示すものである。CD25やCD71、そして程度は低いがHLA-DRなどのリンパ球の表面活性抗原の発現の変化により、明確な影響が現れた。疾患によっては、反応の減少と増加の両方が発見された。このような変化の機序の可能性としては、放射線誘発性の損傷が未修復のままであることと、抗原反応性細胞の抗原活性化に誘発されるアポトーシスや非特異性の免疫抑制などの一連の二次的効果などが最初に考えられるべきである。
事故処理作業員と30キロ圏内の作業員のグループでは、テロメアの長さがかなり短いのがわかった。そして、テロメアの長さと、アポトーシスの初期段階に入る細胞数および被ばく集団の被ばく年数とには、反比例の関係がみつかった(図3.74)。
また、アポトーシス抑制タンパク質のBcl-2を表現している細胞の多くが保存され、アポトーシス誘発物質であるベラパミルの生体外実験でも、これらの細胞の平均指標に著しい変化は起こらなかった。これにより、細胞集団の中で、テロメアの長さとアポトーシス開始に関して多様性があるのではないかと考えられる。
放射能と活性酸素の影響により、サイトメガロウイルス(CMV)の遺伝子発現が増加することがある。これが、チェルノブイリの事故処理作業員と急性放射線症候群の患者におけるサイトメガロウイルス血清陽性やサイトメガロウイルス再活性化の増加の理由かもしれない。サイトメガロウイルスの感染力の増大は、サイトメガロウイルス陽性の患者においての慢性胃炎や気管支炎、そして諸タイプの関節炎などの身体的疾患の発生率の増加と関連づけられている。
慢性リンパ性白血病(CLL)の患者のリンパ系細胞のIgHV遺伝子と抗菌性抗体や抗ウイルス性抗体の間にはかなりの相同関係がみつかっている。ウイルスや細菌感染は、自己抗原やアポトーシスした細胞との相乗効果により、慢性リンパ性白血病を誘発する可能性がある。チェルノブイリで被災した慢性リンパ性白血病の患者における抗体が、ウイルスや細菌の構成部分と反応する抗体と一致するという所見は、チェルノブイリ事故の四半世紀後でさえも、感染症が慢性リンパ性白血病の病因に貢献しているかもしれないことを証明する。
過去24年間の研究により、低線量被ばくにおいての免疫系の細胞反応があるのがわかったが、この反応は初期の免疫系の回復時と晩発時どちらの時期でもみられる。チェルノブイリ事故の被災者の調査結果は、実験的な放射線生物学のデータを拡大すると同時にそのデータと合致するものであり、免疫系への影響において放射線が主な要因であることを証明するものである。