メモ:2018年6月18日発表の甲状腺検査結果の数字の整理など


2018年6月18日に、第31回「県民健康調査」検討委員会が開催され、2018年3月31日時点での3巡目の結果(新たに2例が悪性ないし悪性疑いと診断)が公表された。1巡目は、結果概要が、2巡目では、2017年度追補版が公表された。4巡目の検査は2018年5月1日から開始されており、次回の検討委員会で実施状況が報告される見込みである。

1〜3巡目の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数・年齢・性分布、および各年度ごとの手術症例の人数などは、「参考資料3 甲状腺検査の状況」にまとめられている。

今回、甲状腺検査部門長が大津留晶氏から志村浩巳氏に変わっていることが判明した。なお、当日朝の大阪での地震の影響のため、大阪大学の髙野徹委員は急遽、欠席となった。

1巡目の結果
今回公表された結果概要は、一次・二次検査結果、B・C判定数と悪性・疑い数の地域別データ、悪性・疑い判定数と手術症例データをまとめた3ページにわたる。2016年度追補版とほぼ同内容ではあるが、なぜか、一次検査では対象者数が12人減って、結果判定数が1人減り、二次検査では結果確定数が1人増えている

2巡目の結果
2巡目の2017年度追補版では、第8回甲状腺検査評価部会での確定版の公表後に口頭発表された2例の手術症例(甲状腺がんの診断が確定)が追加された。

3巡目の結果
2016年5月1日から開始されている3巡目では、一次検査受診率が前回より7.4%増えて64.3%となり、結果判定率は0.8%増えて94.2%になった。1巡目と2巡目での受診率(それぞれ81.7%と71.0%)よりも低く、特に、検査年度4月1日時点での年齢が18歳以上の受診率は、前回より2.2%増えて15.9%となったものの、かなり低いままである。

二次検査対象者は前回より168人増えて1367人となり、受診者数は144人(平成28年度対象市町村で30人、平成29年度対象市町村で114人)増えて803人、受診率は3.7%増しの58.7%となった。結果確定数は平成28年度対象市町村で23人増えて517人(92.0%)、平成29年度対象市町村で93人増えて172人(71.4%)と、全体的には689人となり、全体的な結果確定率は1.1%減って85.8%になった。平成28年度対象市町村から3人、平成29年度対象市町村から1人の計4人が新たに細胞診を受診し、平成28年度対象市町村から2人(男性1人、女性1人)が悪性ないし悪性疑いと診断された。この2人の事故当時年齢は、女性が11歳、男性が16歳である。また、この人の2巡目での判定結果は、1人がA1で、2人が2巡目を未受診だった。手術症例は2例増えて9例となった。

3巡目以降の二次検査実施状況は、市町村別ではなく地域別でしか公表されなくなっている。「別表5 地域別二次検査実施状況」によると、二次検査受診率は、避難区域等13市町村と中通りで70%前後、浜通りと会津地方ではそれぞれ33.2%と34.0%であり、1巡目(92.9%)と2巡目(84.1%)と比べて低くなってはいるが、少なくとも、浜通りと会津地方での二次検査は続行中と思われる。またこの別表によると、細胞診実施者4人はすべて中通りの住民であることがわかる。

25歳節目検査の結果

今回、3巡目結果概要の末尾で、平成4年度生まれの対象者22653人における25歳節目検査の結果が公表された。
注:2巡目対象者数には、甲状腺検査未受診の25歳節目検査対象者が計上されたが、3巡目では、25歳節目検査対象者(平成4年度、5年度生まれ)は別途計上となるために対象者に入っておらず、3巡目の一次検査対象者数は、2巡目よりも44576人少なくなっている。

一次検査の受診率は、わずか8.4%とかなり低い。うち、97.1%にあたる1846人で結果が判定されており、A2判定が1012人(5.0mm以下の結節が38人)、B判定は80人(5.1mm以上の結節が79人、20.1mm以上ののう胞が1人)だった。一次検査受診者1846人の約3分の1である577人が甲状腺検査を未受診だった。B判定80人の前回検査結果は、A1判定が3人、A2判定が21人、B判定が28人、未受診が28人だった。B判定80人の35%が前回検査未受診だったことになる。

二次検査は、対象者80人中41人が受診し、うち31人で結果が確定している。細胞診実施者数は0人で、31人全員がA1&A2相当以外と判定され、「概ね6ヵ月後または1年後に診療(予定)となる方およびA2の基準値を超えるが次回検査となる方」だった。31人すべてで細胞診が実施されなかったことから、甲状腺がん以外の何らかの甲状腺疾患であると思われる。

志村氏によると、25歳節目検査対象年度に検査を受診しなかった場合は、希望すれば、次回の30歳節目検査の前であっても節目検査を受けることが可能であるということだが、対象者にもその事実が周知されているかどうかは不明である。

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以下は、「参考資料3 甲状腺検査の状況」の4ページ目にも、まとめられている。

先行検査(1巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人
手術症例      102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例      14人

本格検査(2巡目)
悪性ないし悪性疑い 71(前回から変化なし)
手術症例      52人(甲状腺がん 52人:乳頭がん 51人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例     19人 

本格検査(3巡目)
悪性ないし悪性疑い 12(前回から2人増)
手術症例      9人(前回から2人増)(甲状腺がん 9人:乳頭がん9人)
未手術症例     3人

合計
悪性ないし悪性疑い 199人(良性結節を除くと198人
手術症例      163人(良性結節 1人と甲状腺がん 162人:乳頭がん 160人、低分化がん 1人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例       36人

(**「その他の甲状腺がん」とは、2015年11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第7版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。)

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2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された71人の1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人

3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された12人の2巡目での判定結果
A1判定:2人
A2判定:6人(結節2人、のう胞4人)
B判定:1人
2巡目未受診:3人

*なお、2巡目以降は、一次検査結果の表4で前回検査との比較が示されているが、この表における「前回検査」とは、前回での一次検査の結果であり、二次検査後の再判定が反映された結果でないことが、志村氏の理解であると説明された。

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「別枠」データについて

今回の検討委員会では、二次検査後に通常の保険診療に移行してから甲状腺がんと診断された、いわゆる「別枠」データについての調査報告は、まだ行われなかった。しかし、「資料4 県民健康調査甲状腺検査サポート事業の実施状況について」によると、少なくとも3人が「別枠」に相当することが判明した。

2015年7月10日から開始されたサポート事業については、昨年6月5日の第27回「県民健康調査」検討委員会でも2015〜6年度の実施状況が報告されている。今回は、2017年度の情報が追加されているが、支援金の交付件数は述べ313件、交付された実人数は233名と、前回よりもそれぞれ88件と41名増えており、増加人数はすべて2017年度のものである。手術を含む交付件数は実人数82名で、前回報告された67名に、2017年度の15名が追加されている。82件の病理診断結果は、77件が甲状腺がん(乳頭がん76件、低分化がん1件)、5件が甲状腺がん以外(濾胞腺腫等)である。2017年度に追加された15名は、すべて甲状腺乳頭がんである。

77件のうち、72件が二次検査で悪性ないし悪性疑いと判定され、5件がそれ以外となることが、福島県職員から説明された。この5件の内訳は、「二次検査では悪性ないし悪性疑いと診断されず、別疾患等で通院された後に甲状腺がんと診断された方が3件、二次検査の対象となったが二次検査を受診せず、他の医療機関を受診し甲状腺がんと診断された方が2件」ということであった。この3件が、「別枠」に相当し、残り2件は、甲状腺検査の「枠外」で診断されたことになる。この説明での「他の医療機関」とは、福島県立医科大学と連携している医療機関以外であると思われるが、「県民健康調査甲状腺検査サポート事業支援金申請確認表」によると、他の医療機関での受診であっても、サポート事業開始前に受診した場合は、支援金申請が許可されるようである。

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