2025年 2月 5日に第54回「県民健康調査」検討委員会(以下、検討委員会)が、 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された。
今回公表されたのは、5巡目と6巡目の 3ヶ月分のデータおよび、25歳時と30歳時の節目検査の6ヶ月分のデータで、すべて 2024年 9月末時点のものである。ここでは、新たに公表されたデータをまとめた上で、更新情報のない 1〜4巡目のデータも記載している。
甲状腺検査の結果について
今回報告されたのは 5巡目と 6巡目、および半年ごとに報告される節目検査(25歳時と30歳時)の 2024年 9月 30日時点のデータである。
その中で今回初公開されたのは、6巡目の二次検査結果と手術実施数、25歳時の節目検査での 1998年度生まれおよび 30歳時の節目検査での 1993年度生まれの対象者の二次検査結果である。新たに悪性ないし悪性疑いと診断されたのは 5巡目で 1人 、6巡目で1人、25歳時の節目検査で 2人、30歳時の節目検査で 1人の計 5人で、新たに手術が実施されたのは 5巡目で 4人と 6巡目で 5人の計 9人である。これまでの悪性ないし悪性疑いは 350人(うち良性結節 1人)となり、手術で甲状腺がんと確定したのは 293人となった。
各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数、平均年齢と平均腫瘍径、および各年度ごとの手術症例の人数は「参考資料 9 甲状腺検査結果の状況」にまとめられている。
以下の表でも示されているが、公式データに含まれていない集計外症例およびがん登録情報から取得された症例も加えると、現時点での悪性ないし悪性疑いは 432人(うち良性 1人)、手術で甲状腺がんと確定したのは 359人となる。
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現時点での結果
これまでに発表された集計外症例数を含む、現時点での結果をまとめた。
5巡目検査の結果
5巡目検査は 2020年度から開始され、COVID-19パンデミックによる遅延のため、通常の 2年間ではなく2022年度までの 3年間で実施されて来た。
2024年 9月 30日時点で一次検査では対象者と受診者が 1人減り、A2判定数も 1人少なくなっている以外、数字に動きはない。受診率は 45.1%のままで、4巡目の 7割ほどである。
二次査対象者も変わらず 1,346人のままだが、新たに 5人が二次検査を受診し、2020年度対象市町村から 2人が細胞診を受診した結果、女性 1人(事故当時 2歳で中通り在住)が新たに悪性ないし悪性疑いと診断され、5巡目での悪性ないし悪性疑いは 49人となった。この女性の 4巡目での判定はA2のう胞だった。
まとめると、5巡目の悪性ないし悪性疑いは 49人(4巡目より10人増)となり、4巡目での結果は、A判定が 37人(A1が 11人、A2結節が 1人、A2のう胞が 22人、A2結節&のう胞が 3人)、B判定が 6人、未受診が 6人だった。
2020年度対象市町村から1人、2021年度対象市町村から 3人の計4人で新たに手術が施行され、5巡目では 46人が甲状腺がんと確定された。このうち 45人が甲状腺乳頭がん、1人がその他の甲状腺がんだった。
6巡目検査の結果
2023年度から始まった 6巡目検査では、節目検査に移行する1998〜9年度生まれが外されたことで、 対象者は 5巡目から 41033人少ない 211,903人となっている。2024年 9月 30日時点での受診者は 7,674人増えて 45,348人となり、受診率は 3.6%増えて 25.0%となった。このうち 90.4%の 47,951人で結果が判定されており、新たに 76人がB判定を受け、結果判定数の 1.5%となる 706人がB判定となった。
新たに 109人が二次検査を受診し、受診者数 461人中 412人で結果が確定し、新たに 8人(2023年度対象市町村から 6人、2024年度対象市町村から 2人)が穿刺吸引細胞診を受診した。その結果、事故当時 7歳の女性 1人(前回検査はB判定)が悪性ないし悪性疑いと診断され、6巡目での悪性ないし悪性疑いは 12人となった。
まとめると、6巡目では 12人が悪性ないし悪性疑いとなり、5巡目での結果は、A判定が 6人(A1が 2人、A2のう胞が 3人、A2結節&のう胞が 1人)、B判定が 3人、未受診が 3人だった。
今回、6巡目の手術数が初公開され、5人が手術で甲状腺乳頭がんと確定したことが分かった。
25歳時の節目検査の結果
2017年度から開始されている 25歳時の節目検査の結果は、通常の甲状腺検査とは別に、6ヶ月ごとに公表されている。今回の報告データは、1992〜8年度生まれの対象者における 2024年 9月 30日時点のものである。二次検査対象者数がB判定数と合致していないのは、前回二次検査結果に含まれていなかった 1998年度生まれにおけるB判定の 26人が、今回加算されているためである。(受診は対象年度にとどまらず、次回の 30歳時節目検査の前年まで可能で、追加の受診データも随時報告されていくことになっている。)
対象者 149,843人のうち 264人が新たに一次検査を受診し、受診者数は 12,867人(うち県外受診者 4,659人)となった。前回、1998年度生まれの追加により分母が増えたため下がっていた受診率は、8.4%から 8.6%に若干上がった。結果判定数は前回から 683人増えて 12,865人となった。なお、2022年度から 30歳時の節目検査の対象となる 1992〜3年度生まれからの受診者数は一次検査でも二次検査でも増えていないが、1993年度生まれから 1人が細胞診を受診している。B判定は 33人増え、前回の 1998年度生まれのB判定 26人を含め、二次検査対象者は 59人増えて 710人となった。(前回は 1998年度生まれの二次検査結果が公表されなかったため、B判定 26人が二次検査対象者数に含まれていなかった。)
新たに38人を含む592人(受診率 83.4%)が二次検査を受診し、575人で結果が確定(確定率 97.1%)している。新たに3人(1993年度生まれ、1994年度生まれ、1998年度生まれから1人ずつ)が細胞診を受診し、事故当時16歳の女性2人が悪性ないし悪性疑いと診断された。この女性2人の前回検査の結果は、A2結節とBだった。
まとめると、25歳時の節目検査における悪性ないし悪性疑い例は 25人となり、前回検査は、A判定が 6人(A1が 1人、A2結節が 2人、A2のう胞が 3人)、Bが 5人、未受診が 14人となる。
新たな手術症例はなく、25歳時の節目検査で手術で甲状腺がんと確定されたのは 18人のままである。このうち 17人は甲状腺乳頭がん、1人は濾胞がんである。
30歳時の節目検査の結果
2022年度からは、1992年生まれの 22,625人を対象として、二度目の節目検査となる30歳時の節目検査が開始されており、今回は 1993年度生まれの 21,864人を追加した 2024年 9月 30日時点での結果が報告された。
一次検査の受診者は 775人増えて 2,996人(うち県外受診者 1,147人)となり、分母が増えたせいで下がっていた受診率は 1.7%増えて 6.7%に戻った。新たに 1,347人( 1993年度生まれで 1,326人)で結果が判定しているが、そのうち 125人( 1993年度生まれで 120人)がB判定とされた。前回は1993年度生まれの二次検査結果が報告されず、B判定 4人が二次検査対象者数から除外されていたが、その4人も含んだ 129人が加わり、二次検査の対象者は 268人となった。
新たに 74人が二次検査を受診し、二次検査受診者は 192人となり、このうち新たに 51人で結果が確定し、結果確定数は 162人となった。穿刺吸引細胞診の受診者は 2人増えて 18人となり、女性 1人が新たに悪性ないし悪性疑いと診断された。30歳時の節目検査ではまだ悪性ないし悪性疑いの年齢・性分布が未公表であるが、震災当時の年齢範囲の下限が 16歳とされていることから、この女性の事故当時年歳が 16歳であることが 見てとれる。前回検査の結果は A1だった。
まとめると、30歳時の節目検査の悪性ないし悪性疑いは 7人となり、すべて女性である。前回検査の結果は、A判定が 3人(A1が 1人、A2のう胞が 2人)、Bが 1人、未受診が 3人である。
新たな手術例はなく、30歳時の節目検査で手術で甲状腺がんと確定しているのは 4人のままであり、4人すべてが甲状腺乳頭がんである。
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1〜6巡目と25歳時および30歳時節目検査の結果のまとめ
同情報は、「参考資料 9 甲状腺検査結果の状況」の 9ページ目にもまとめられている。
先行検査(1巡目)(結果確定版の2016年度追補版はこちら)
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例 102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん 100人、低分化がん1人)
未手術症例 14人
本格検査(2巡目)(結果確定版の2020年度更新版はこちら、手術症例更新版はこちら)
悪性ないし悪性疑い 71人(前回から変化なし)
手術症例 56人(前回から 1人増)(甲状腺がん 56人:乳頭がん 55人、その他の甲状腺がん**1人) 未手術症例 15人
本格検査(3巡目)(結果確定版の2020年度追補版はこちら)
悪性ないし悪性疑い 31人(前回から変化なし)
手術症例 29人(前回から変化なし)(甲状腺がん 29人:乳頭がん 29人)
未手術症例 2人
本格検査(4巡目)(結果確定版はこちら)
悪性ないし悪性疑い 39人(前回から 変化なし)
手術症例 34人(前回から 変化なし)(甲状腺がん 34人:乳頭がん 34人)
未手術症例 5人
本格検査(5巡目)(実施状況はこちら)
悪性ないし悪性疑い 49人(前回から 1人増)
手術症例 46人(前回から 4人増)(甲状腺がん 46人:乳頭がん 45人、その他の甲状腺がん1人)
未手術症例 3人
本格検査(6巡目)(実施状況はこちら)
悪性ないし悪性疑い 12人(前回から1人増)
手術症例 5人(初出)
未手術症例 7人
25歳時の節目検査(実施状況はこちら)
悪性ないし悪性疑い 25人(前回から 2人増)
手術症例 18人(前回から変化なし)(甲状腺がん 18 人:乳頭がん 17人、濾胞がん 1人)
未手術症例 7人
30歳時の節目検査(実施状況はこちら)
悪性ないし悪性疑い 7人(前回から 1人増)
手術症例 4人(前回から変化なし)(甲状腺がん 4人:乳頭がん 4人)
未手術症例 3人
合計
悪性ないし悪性疑い 350人(良性結節を除くと 349人)
手術症例 294人(良性結節 1人と甲状腺がん 293人:乳頭がん 289人、低分化がん 1人、濾胞がん 1人、その他の甲状腺がん**2人)
未手術症例*** 56人( 4人減)
注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年 11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第 7 版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。
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前回検査の結果
2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 71人の 1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞 25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低 2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人
3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 31人の 2巡目での判定結果
A1判定:7人
A2判定:14人(結節 4人、のう胞 10人)
B判定:7人
2巡目未受診:3人
4巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 39人の 3巡目での判定結果
A1判定:6人
A2判定:20人(結節 6人、のう胞 13人、結節&のう胞 1人)
B判定:9人
3巡目未受診:4人
5巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 48人の 4巡目での判定結果
A1判定:11人
A2判定:26人(結節1人、のう胞 22人、結節&のう胞 3人)
B判定:6人
4巡目未受診:6人
6巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 12人の 5巡目での判定結果
A1判定:2人
A2判定:4人(のう胞 3人、結節&のう胞 1人)
B判定:3人
5巡目未受診:3人
25歳時の節目検査で悪性ないし悪性疑いと診断された 25人の前回検査での判定結果
A1判定:1人
A2判定:5人(結節 2人、のう胞 3人)
B判定:5人
未受診:14人
30歳時の節目検査で悪性ないし悪性疑いと診断された 7人の前回検査での判定結果
A1判定:1人
A2判定:2人(結節 0人、のう胞 2人)
B判定:1人
未受診:3人