福島県の小児甲状腺がん症例について現在わかっていること


福島県の県民健康調査の甲状腺検査により診断された甲状腺がん症例の詳細について、現時点で判明している情報をまとめた。
1)2014年11月11日に開催された第4回 甲状腺検査評価部会で鈴木眞一氏によって公表された手術の適応症例について。
2)2014年11月14日の日本甲状腺学会学術集会での鈴木眞一氏の発表「小児〜若年者における甲状腺がん発症関連遺伝子群の同定と発症機序の解明」の抄録テキストおよび口頭発表からの情報。学術集会の質疑応答時の長瀧重信氏の発言も。
3)2014年8月28日の日本癌治療学会学術集会での鈴木眞一氏の発表「福島における小児甲状腺癌治療」の抄録テキスト。

なお、同様の情報の英語版はこちら
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第4回 甲状腺検査評価部会 
資料3 手術の適応症例について

震災後 3 年を経過し、2014 年 6 月 30 日現在までの二次検査者 1,848 名からの細胞診実施者 485 名中、悪性ないし悪性疑いは 104 例であり、うち 58 例がすでに外科手術を施行されている。
58例中55例が福島医大甲状腺内分泌外科で実施され、3例は他施設であった。また、55 例中1例は術後良性結節と判明したため甲状腺癌 54 例につき検討した。
病理結果は 52 例が乳頭癌、2例が低分化癌であった。
術前診断では、腫瘍径 10 ㎜超は 42 例(78%)、10 ㎜以下は 12 例(22%)であった。また、10 ㎜以下 12 例のうちリンパ節転移、遠隔転移が疑われるものは 3 例(5%)、疑われないもの(cT1acN0cM0)は 9 例(17%)であった。
この9例のうち7例は気管や反回神経に近接もしくは甲状腺被膜外への進展が疑われ、残りの2例は非手術経過観察も勧めたが本人の希望で手術となった。
なお、リンパ節転移は 17 例(31%)が陽性であり、遠隔転移は 2 例(4%)に多発性肺転移を疑った。
術式は、甲状腺全摘 5 例(9%)、片葉切除 49 例(91%)、リンパ節郭清は全例に実施し、中央領域のみ実施が 67%、外側領域まで実施が 33%であった。出来る限り 3cm の小切開創にて行った。
術後病理診断では、腫瘍径 10 ㎜以下は 15 例(28%)かつリンパ節転移、遠隔転移のないもの(pT1a pN0 M0)は 3 例(6%)であった。甲状腺外浸潤 pEX1は 37%に認め、リンパ節転移は 74%が陽性であった。術後合併症(術後出血、永続的反回神経麻痺、副甲状腺機能低下症、片葉切除後の甲状腺機能低下)は認めていない。

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2014年11月14日 日本甲状腺学会学術集会

小児〜若年者における甲状腺がん発症関連遺伝子群の同定と発症機序の解明

鈴木 眞一、福島 俊彦、松瀬 美智子、平田 雄大、岡山 洋和1、大河内 千代1、門馬 智之2、水沼 廣1、鈴木 悟、光武 範吏3、山下 俊一3

福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座、福島県立医科大学器官制御外科学講座、長崎大学原爆後障害研究所社会医学部門放射線災害医療研究分野

超音波診断技術の進歩や小児甲状腺超音波健診の実施などで、小児・若年者甲状腺がんと診断される患者数が増加している。しかし、これらのがん発症・進展に関わるメカニズムは、未だ十分に解明されていない。今後、さらに症例数は増加するものと考えられ、これらのがんの生物学的特徴を明らかにするために癌発症関連遺伝子群の同定と発症機序の解明を行う。今回は、既知の甲状腺がん発症関連遺伝子につき検討した。

対象:小児〜若年者で手術が施行された24例(男女比、1:2、平均年齢17.9歳(9−22歳)である。23例は乳頭癌、1例は濾胞癌であった。(注:口頭発表では、1例は低分化癌だった。)

方法:切除された腫瘍組織から抽出したDNA・RNAからダイレクトシークエンスおよびRT−PCRにて、BRAF、K-、N-、H-RASの変異およびRET/PTC1、3のrearrangementにつき検討した。

結果:BRAFは67%に変異陽性であった。またRET/PTC1は12.5%にrearrangementを認めたが、RET/PTC3、K-、N-、H-RASの変異はすべて陰性であった。

考察:既知の遺伝子変異の検討では、小児に多いとされるRET/PTC rearrangementの頻度は低く、むしろ成人と同様にBRAF遺伝子変異を高率に認めた。通常成人型の乳頭癌と同様のパターンを示したことは、若年者小児甲状腺癌発症のメカニズムを考察する際に極めて重要な結果といえる。


日本甲状腺学会学術集会の口頭発表からの情報

23例は乳頭癌、1例は低分化癌。
23例の乳頭癌のうち、典型的なclassical typeの乳頭癌が19名、follicular variant(濾胞性)の乳頭癌が1名、cribriform-morular variant(篩状モルレ型)、いわゆる家族性大腸腺腫症の合併症が認められる乳頭癌が3名。
福島県民健康調査での手術は23名 通常入院は1名(22歳女性)

遺伝子変異の分析結果。
RET/PTC13例(12.5%)で陽性(平均年齢17.8歳)
ETV6/NTRK31例(4.2%)で陽性(16歳女性)
成人に多いとされているBRAFは、18例(67%、3分の2)で陽性。(平均年齢18歳)
小児に多いとされているRET/PTC30、その他、K-N-H-RASTRK0
これらの遺伝子変異すべて陰性が5例(平均年齢16.7歳で全例女性)
通常入院の22歳女性はRET/PTC1陽性。

BRAFRET/PTC1ETV6/NTRK3すべて、典型的なclassical typeの乳頭癌。
すべて陰性の5例は、1例は濾胞性乳頭癌、1例は低分化癌、3例は篩状モルレ型乳頭癌。篩状モルレ型乳頭癌はAPC遺伝子変異によることが知られるため、現在検査中)。陰性5例は腫瘍径がやや大きく、この陰性5例のみ全摘。

篩状モルレ型乳頭癌の3例は、家族歴・本人歴あり。

BRAFaggressiveな症例と言われている。RET/PTC1は、非被ばくでやや年齢が高い人で見られ、RET/PTC3は、若年で見られ、放射線誘発性の乳頭癌の原因遺伝子とは言われていないが、チェルノブイリで良く見られたが、今回は検出されなかった。遺伝子再配置は小児で多く、点変異は成人で多いのが定説とされてきた。

結論として、通常成人型乳頭癌同様の変化であり、今回の症例が福島における原発事故後の小児超音波検診で発見されたものであり、通常であれば成人で発見された可能性のある癌が、検診によって小児あるいは若年の段階で発見された可能性が強い。

質問1BRAF変異は予後が悪いと言われていて、その根拠のひとつに、小児で検出率が低いからとずっと言われているが、この発表はそれを覆すものになるのか。

鈴木氏:これは発見動機がスクリーニングなので、前倒しなので、この人たちがスクリーニングされないで成人で発見されたとしたらどうだったか、というのをもう少し踏まえなければいけないけど、そこはもう少し見ないとわからない。

質問2BRAFが多かったということは、福島の放射線による影響というのはほとんど考えにくいのか?

鈴木氏:なんらかの原因で小児に甲状腺がんが発症してくるというメカニズムが、今まで知られているもののパターンよりも、むしろ成人型でよく見つかる変異を、こういう検診をするということで少し早めに見つかっている。決して早過ぎるというわけでもないが、きわめて予後が悪いというわけでもない。

学術集会の質疑応答時の長瀧重信氏の発言など

阪大・岩谷教授の質問:放射線で甲状腺癌が増えているというデータを持っておられる方がおられるのか?これまでの演題では目につかなかったが。

長瀧氏:ちょうど今、環境省会議をやっていて、会津地方との地域差があること、今までの罹患率とスクリーニングの罹患率が大きく違うことの2点を理由にエビデンスを提示して増加していると声高に発言されている方がいて、その方に同調する市民団体も存在している、と申し上げておく

岩谷教授?:それを信じるかどうかは別にして、そういう方がおられるということですね。では、鈴木先生に質問だが、RET/PTC3がないから放射線影響がないと言う印象を私は持っておりますが、それでよいのか。

鈴木眞一氏:RET/PTC3が放射線影響の証拠というわけではないが、今回見つかったのが通常成人型でよく見られるBRAFなので、スクリーニングによって前倒しで見つかっていると思われる。
(中略)
長瀧氏:甲状腺癌が増加していると発言されている方には専門家会議にも来ていただいたが、会津地方の検査結果が出ていない中で言われているので、全く根拠に欠ける。これだけの甲状腺の専門家が多く集まる中で増えたと言われてないことを大きく受け止めます。ありがとうございます。

長瀧氏:アメリカ甲状腺学会で、要請をされて、Meet-the-Professorというので、「福島原発事故と甲状腺がん」というタイトルで講演してきた。内容はオープンにされたもので、鈴木先生と相談してスライドを作った。これは30万人のスクリーニングという前代未聞のことで、それで結果は、結節の大きさが何ミリという話だけなのか、一体バセドウ病は何人いたんだ、自己免疫疾患の患者はどれくらいいたんだ、あるいはgoiter(甲状腺腫)はどうだったんだ、という質問をされた。これはプライバシー(個人情報保護)であると言ったが、プライバシーとは個人の名前などであって、何人のうち何人がバセドウ病ということは全然プライバシーと関係ないんだ、しかも、専門家がスクリーニングしたのなら、当然甲状腺疾患の見当はついたのだろうと、後でしつこく聞かれた。書いて返事をすると言ったが、そこはどう考えたらいいのか。志村先生?
志村氏:検診目的は結節を見つけることで、それよりさらに診るとなると保険診療をして診て行く場合もある。数は多くないがデータをまとめて発表していきたいと思っている。

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第52回 日本癌治療学会学術集会
2014年8月28−30日
8月28日 10:00〜12:00
臓器別シンポジウム03
「甲状腺がんの治療戦略のUp to Date −小児甲状腺がんの治療戦略−」(プログラムpp.127−128)


OS3-5「福島における小児甲状腺癌治療」
鈴木眞一
福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座

小児甲状腺癌は全甲状腺癌の約1−2%と稀なものとされてきた。発見時には肺転移や広範なリンパ節転移を認め、一見進行している様に見えても長期予後は極めて良好である。

2011年3月11日、東日本大震災後に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故後、福島県では長期にわたる放射線の健康影響と向き合わなければならなくなった。福島県では県民健康調査が開始され、その1つとして事故当時の小児甲状腺超音波検査が開始されている。すでに先行調査が終了し、甲状腺癌も発見されている。この、従来の有病状甲状腺癌とは異なり、超音波スクリーニングで発見された無症状の小児甲状腺癌に対する治療経験について報告する。

対象は2011年10月から2013年12月31日までに一次検査が施行された269,354名(受診率80.8%)である。そのなかで二次検査が必要とされた1796名のうち75名が穿刺吸引細胞診によって悪性ないし悪性疑いとなった。34名がすでに手術が施行され、33名に甲状腺癌が確定した。うち当科で手術を実施した31例につき報告する。

手術時平均年齢は16.4歳(9−20歳)、男女比14:17、23年度(国指定の避難地地域等の13市町村)施行例9例、24年度施行例22例である。

手術時平均腫瘍径14.9mm(6−31mm)である。術前診断でT1 22例(T1a7例、T1b15例)、T2 7例、T3 2例、N0 19例、N1 12例(N1a 4例、N1b 8例)、M0 29例、M1(肺)疑い2例であった。手術は片葉切除28例、全摘3例、リンパ節郭清は中央区域郭清19例、外側区域郭清12例であり、術後病理診断では、乳頭癌(通常型)24例、濾胞型乳頭癌3例、びまん性硬化型乳頭癌3例、低分化癌疑い1例であった。pT 21例(pT1a 9例、pT1b 12例)、pT2 3例、pT3(EX1)7例、pN0 7例、pN1 24例(pN1a 12例、pN1b 12例)であった。術前M1(肺)疑いが2例あり、全摘術後血中Tgが感度以下に低下したため、後日肺CTないし131Iシンチグラフィを予定している。

全例術中NIMによる反回神経モニタリングを行い、中央区域郭清では3cm、外側区域郭清では3−5cmの皮膚小切開にて実施した。反回神経麻痺、副甲状腺機能低下症は認めていない。




国連第4委員会の議長とUNSCEAR事務局長に手渡された、UNSCEARフクシマ報告書の改訂を求める要請書の和訳


2014年10月24日にニューヨーク市で開催された国際連合第69セッション第4委員会で、国際核戦争防止会議(IPPNW)の米国支部である社会的責任を果たすための医師団(PSR)の代表と特定非利益活動法人ヒューマンライツナウの代表が、第4委員会の議長およびUNSCEAR事務局長のクリック氏に手渡した要請書の和訳。43の市民社会グループが賛同し、署名した。

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20141024

国連総会69会期第4委員会の委員各位
UNSCEAR委員各位
国連総会メンバー各位


議題:  市民社会グループは、4月に公表された原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)報告書:「東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」の改訂を要求する。

2011年の福島災害により、国連による電離放射線の悪影響の監視が、世界的に最重要な問題となった。監視の目的と基準は、健康と福祉への人権の保護と促進であるべきで、これは、人工電離放射線への被ばくが可能な限り存在しない環境をも含む。われわれ下記署名者は、 UNSCEAR報告書[i]の科学的結論、そして報告書から除外された科学的証拠を、第4委員会が批判的に調査することを要請する。

国際核戦争防止医師会議(IPPNW)の、社会的責任を果たす医師団(米国支部:PSR)とIPPNWドイツ支部を含む19ヶ国支部の医師らは、UNSCEAR報告書の批判文書[ii]を作成・発行・公表し、UNSCEARによって使われた仮定とデータ、そしてそれから帰結した解釈と結論に疑問を呈した。この批判文書は、UNSCEARが福島災害による健康影響をどのように系統的に過小評価し、軽視したかを論証している。

われわれは、UNSCEAR委員会メンバーらが、福島原子力大惨事に関する広範で複雑なデータの評価にかなりの努力を費やしたことには感謝する。しかしながら、現在も将来も「識別可能な影響がない」というUNSCEARの結論は、常識に反し、かつUNSCEARの信頼性を台無しにするものである。批判文書は、UNSCEAR報告書そのものに基づくと、福島放射能フォールアウトにより、日本で、約1000件の甲状腺癌症例、および4,30016,800件のその他の癌症例の過剰発生が予期されると記している。これらの癌を経験する個人、その家族とコミュニティー、そしてその他の放射線誘発性疾患に罹患する個人にとっては、それは非常に識別可能な影響である


そして「識別可能な影響がない」とすることによって、追加被ばく回避や健康影響対策を実行しない方向へと日本政府を誘導し、重大な人権侵害状況を生んでいる。

この大惨事は、すでに収束した単一の事象ではなく、いまだ展開中で終わりが見えない事象である。放射性物質は生物圏に漏れ続け、汚染地域に住む人々は、汚染された食物や水の摂取と汚染された空気の吸入により、電離放射線に被ばくし続けている。さらに、福島由来の健康影響のほとんどは、何十年も何世代も先まで現れない。ゆえに、今手元にあるUNSCEAR報告書は、福島健康影響の予備的あるいは初期評価とみなされるべきである。この評価のモニタリングを継続して改善し、アップデートして行くことが、これから長期間必要となる。UNSCEAR2014年報告書は、終わりではなく、始まりなのである。

われわれは、UNSCEAR報告書に関して、第4委員会に下記の2つの行動を要請する:

1)批判文書で挙げられた留意事項を考慮し、批判文書に基づいた改訂がなされるように、UNSCEARに報告書を返すこと。そして、UNSCEARが、委員会の委員構成を広げ、原子力活動に批判的な科学者らを、十分な資格を持った委員として迎え入れること。

2)また、 UNSCEARの一義的な科学ミッションが、公衆衛生、そして最も脆弱な人々の健康への権利の促進および保護であることを確保するために、 1955年のUNSCEAR設立時に設定された権限を見直す決議を可決するようにと、第4委員会が国連総会に強く要請することを要求する。 現在と将来の世代と環境への、短期的および長期的な電離放射線の影響に対処するためには、予防原則が用いられるべきである。同様に予防原則は、原子力災害後の被ばく、浄化と除染の規制や活動の決定、個人の被ばくリスクを最小限に抑え、かつ軽減するための教育的対策の決定、そして汚染サイトの長期的モニタリングを定める際にも用いられるべきである。UNSCEAR委員会のメンバーらがその専門知識を世界コミュニティーの命と健康を守るために十分活用することを可能にするためには、新たな国連権限が必須である。



この要請書は、下記のグループに賛同されている:

Physicians for Social Responsibility, USA
International Physicians for the Prevention of Nuclear War - Germany, Germany
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ
Peace Boat - US, USA
虹とみどりの会
緑ふくしま
反原発労働者行動実行委員会
風下の会 福島
福島県自然保護協会
国際環境NGO FoEジャパン
全石油昭和シェル労働組合
「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク
原発災害情報センター
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)
脱原発の日実行委員会
脱原発福島ネットワーク
ハイロアクション福島
原発いらない福島の女
福島原発30キロ圏ひとの会
福島につながり続ける新潟避難の会
手をつなぐ3.11信州
子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク
The Civil Forum on Nuclear Radiation Damages (CFNRD), Japan
高木学校
AEEFG - Association de l'Education Environnementale pour les Futures Generations, Tunisia
NGO of “Ecolife”, Azerbaijan
Women in Europe for a Common Future International, Netherlands
Women in Europe for a Common Future, Germany
Women in Europe for a Common Future, France
Irish Doctors' Environmental Association (IDEA), Ireland
Nuclear Information and Resource Service, USA
Nuclear Age Peace Foundation, USA
Nuclear Age Peace Foundation, New York, USA
Nukewatch/The Progressive Foundation, USA
Nuclear Watch New Mexico, USA
Georgia WAND - Women's Actions for New Directions, USA
Physicians for Social Responsibility – Kansas City, USA
Gray Panthers, USA
Center for Safe Energy, USA
Nuclear Energy Information Service, USA
Shut Down Indian Point Now, USA
International Society of Doctors for the Environment, Switzerland
Beyond Nuclear, USA



[i] UNSCEAR report “Levels and effects of radiation exposure due to the nuclear accident after the 2011 Great East-Japan Earthquake and tsunami” at: http://www.unscear.org/docs/reports/2013/13-85418_Report_2013_Annex_A.pdf
(先行和訳: 「東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」 http://www.unscear.org/docs/reports/2013/14-02678_Report_2013_MainText_JP.pdf)

[ii] Critical Analysis of the UNSCEAR Report “Levels and effects of radiation exposure due to the nuclear accident after the 2011 Great East-Japan Earthquake and tsunami: www.fukushima-disaster.de/information-in-english/maximum-credible-accident.html 公式和: UNSCEAR報告書「2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響の批判的分析http://fukushimavoice2.blogspot.com/2014_06_01_archive.html






国際連合総会第69セッション第4委員会での日本代表のステートメントの和訳 


2014年10月24日の国連総会第69セッション第4委員会で、議題項目48「原子放射線の影響」についてステートメントを述べた13ヶ国のリストから、午後4時21分から25分の間に口述された日本代表のステートメントを和訳した。動画へのリンクはこちら。 ちなみに、昨年のステートメントの一部はこちら


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日本代表によるステートメント
国際連合第69セッション第4委員会
議題項目48:原子放射線の影響

2014年10月24日


議長、

   まずは、国際連合第69セッション第4委員会での、特にこの重要な議題項目、「原子放射線の影響」においての、あなたの効果的な議長職に心からの謝辞を述べたいと思います。

   原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、日本が1955年以来の設立メンバー国でもありますが、電離放射線への被ばくの影響について科学的評価と報告を提供するという極めて重要な役割を果たしています。委員会の仕事は、われわれが放射線リスクを評価し、皆が恩恵を受ける放射線防護と安全基準を確立する助けとなっています。

   特に東京電力株式会社(TEPCO)の福島第一原子力発電所での2011年の事故に照らして、原子力技術の安全性に長年コミットしてきている国として、われわれは、委員会の仕事を高く評価しています。この点では、2013年4月に出版された報告書「電離放射線の線源、影響およびリスク」とその附属書「2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」を賞讃、そして感謝いたします。

   9月に、UNSCEAR委員長のカール=マグナス・ラーソン氏とそのチームが来日されました。福島で、訪問団は、最近出版された報告書についてのパグリック・ダイアログのイベントを開催されました。報告書は、他の点と共に、全体的には事故後の発がん率には変わりがないだろうと示しました。UNSCEARのこの報告書とパグリック・ダイアログは、科学的知識に基づいた知見を提供したために、歓迎されました。また、それらは、経験と学んだ教訓を国際コミュニティーと共有するにおいても役だっています。

議長、

   これらは、UNSCEARが原子力の安全性において果たしている極めて重要な役割の例のごく一部です。その重要な役割を認め、日本はこれまでも、そしてこれからもUNSCEARの活動を支援し続けます。これに関連して、今年の2月に、日本政府はUNSCEARに、全額$863,000の自主的な寄付を貢献したことを謹んでご報告いたします。

   結論として、私は、UNSCEARの重要な仕事に対する日本のコミットメントと支援が続くことを再確認したいと思います。

   議長、ありがとうございました。


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原文


Statement by Japanese Delegation 
At the Meeting of the Fourth Committee
69th Session of the United Nations General Assembly 
On agenda item 48:
Effects of atomic radiation 

24 October 2014

Mr. Chairman,

At the outset, I would like to express our sincere appreciation for your Excellency’s effective chairmanship at the Committee during the 69th session of the United Nations General Assembly, in particular under this important agenda
item “Effects of atomic radiation.”

The United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation (UNSCEAR), to which Japan has been a founding member since 1955, plays a vital role in providing scientific assessments and reports on the effects of exposure to ionizing radiation. The work of the Committee helps us evaluate radiation risk and establish radiation protection and safety standards from which we all benefit.

As a country long committed itself to the safety of nuclear technology, particularly in light of the accident of 2011 at the Tokyo Electric Power Company (TEPCO)’s Fukushima Daiichi Nuclear Power Station, we highlyvalue the work of the Committee. In this regard, we commend and appreciate the publication in April of the 2013 Report “Sources, Effects and Risks of Ionizing Radiation” and its annex “Levels and effects of radiation exposure due to the nuclear accident after the 2011 great east-Japan earthquake and tsunami”. 

In September, we welcomed the visit of Mr. Carl-Magnus Larsson, Chair of UNSCEAR, and his team to Japan. In Fukushima, the visiting delegation held public dialogue events on their recent published report. The report indicated, among other points, that overall, cancer rates would remain stable following the accident. This report by UNSCEAR and their public dialogues were well received as they provided the findings based on scientific knowledge. They have also been useful in sharing the experiences and the lessons learnt with the international community.

Mr. Chairman,

These are just some of the examples of the vital role that UNSCEAR plays in the safety of nuclear energy. In recognition of their important role, Japan has and will continue to support the activities of UNSCEAR. In this context, we are pleased to inform you that in February of this year, the Government of Japan made a voluntary contribution totaling 863,000 USD to UNSCEAR.

By way of conclusion, I would like to reaffirm Japan’s continued commitment and support to the important work of UNSCEAR.

I thank you, Mr. Chairman.

甲状腺検査の偽陽性について:岡山大学・津田敏秀教授の説明「診断学の基礎知識と甲状腺がん議論の整理」(第4.41版)


(注:2014年10月31日に、現時点での最終版の第4.41版に差し替えられた)


2014年10月20日午後2時より、環境省の「第12回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」が開催された。その前日の2014年10月19日午前5時00分付けで、大岩ゆり記者による朝日新聞デジタル記事『甲状腺検査の問題指摘「がんの疑い」判定、福島の子に負担 専門家会議』が公表された。この記事は、環境省会議資料のリーク記事であった。その証拠に、会議冒頭で、環境省の得津馨参事官がこのように述べている。「それから、昨日、本会議の資料の一部と思われる内容が報道され、大変失礼致しました。今後とも引き続き科学的・医学的な見地から議論を続けてございますけれども、事務局と致しましては、資料の管理等、さらに気をつけて行きたいと思っております。」(動画

この記事では、会議で公表された「中間とりまとめのたたき台」に言及しており、中でも目を引いたのは次の記述であった。1,744人が「偽陽性」だとは初耳だったからである。

『たたき台では、無症状のまま問題にならないがんを見つける可能性や、がんではないのにがんの疑いがあると判定される「偽陽性」の増加、手術で合併症が起きる可能性などの問題点も指摘。これまで検査を受けた約30万人のうち1744人が偽陽性だったと認定した。うち381人は、超音波検査などを経て、甲状腺に針を刺す検査も受けたとしている。』

そしてこの供述は、環境省事務局配布資料3「中間とりまとめに向けた論点整理等(線量評価部分以外)」の10ページ目(画像)から引用されていたようだった。




「ここで言う偽陽性 とは、がんが無いにも関わらずがんがあるかもしれないと判断されることを指す。 」と定義した上で、「一次検査で B 又は C 判定とされて二次検査を受診し結果が確定した 1,848 人のうち 1,744 人が、穿刺吸引細胞診を受けた 485 人のうち 381 人が、いずれも偽陽性であったと言える(悪性ないし悪性疑いと診断されたのは 104 人)。」と述べられている。
会議中に、福島県立医科大学副学長の阿部委員がこの供述に関して異議を唱え、福島医大としては、手術後に良性だと判明した1名のみが偽陽性だと考えている、と述べた。

会議を中継していたアワープラネットTVの白石草氏によると、会議終了後、得津参事官は「公衆衛生の世界では、一次検査で異常が見つかり、最終的に異常なしは全て偽陽性というんです」とコメントされたそうだ。

しかし、「がんが無いにも関わらずがんがあるかもしれないと判断される」偽陽性が381人や1,744人となると、スクリーニングのデメリットが非常に大きくなってしまうが、そもそもこのような偽陽性の定義は正しいのか?

疫学の教授である、岡山大学の津田敏秀氏に問い合わせ、その返事を簡潔にまとめた。詳細は、この下に貼付けてある、津田氏の詳細な説明のPDFファイルを参照願いたい。


”結論から言うと、いずれもあっているし、いずれも舌足らずで間違っていると言えます。試験の記述式なら、バツにするかお情けの部分点でしょう。

阿部氏が福島医大での穿刺吸引細胞診の偽陽性例のことを言っているのであれば、正解です。もちろん、何の検査での偽陽性は明示した方が良いですが、この場合言わなくても分かるでしょう。環境省資料の、「穿刺吸引細胞診を受けた485人のうち381人が偽陽性」というのは、この検査陽性が「(穿刺吸引細胞診で)がんが無いにも関わらずがんがあるかもしれないと判断される」と定義されていることが間違いなので混乱の元となっています。この場合の本来の485人は、「医師により穿刺吸引細胞診が必要と判断される」と定義されるからです。穿刺細胞診の話であれば、381人は偽陽性ではなく単なる陰性です。(下記の「診断学の基礎知識と甲状腺癌議論の整理」p. 11の表5の③を参照)穿刺吸引細胞診で陽性とされた者のうち「がんが無いにも関わらずがんがあるかもしれないと判断される」が検査陽性の定義であれば、偽陽性は正しくは阿部氏が言うように1人です(p.11の表5の③とp.12の表5の④を参照)。診断学の基礎として学ぶ、偽陽性というのは、検査毎に出てきます。偽陽性をどの検査について問題にしているのかを定義することが必要です。原則的に、1つの検査に感度と特異度があり、それぞれの検査に対して偽陽性例などを論じる必要があります。

隠されていた情報:ハンフォードでの何十年にもわたる欺瞞


”Decades of deception at Hanford”(「ハンフォードでの何十年にもわたる欺瞞」)は、ワシントン州シアトルのTV局、KING5のサイトに、2014年6月23日に掲載されたインベスティゲティブ・リポートである。一読してその重要性に感銘を受け、ただちに和訳を開始した。しかし、諸事情により、半分以上終えた所で中断したままになっていた。数日前に、残りの和訳をやってしまおうと、元記事に引用されていた関連文書を確認しに行ったら、記事そのものが削除されていた。(URLはこれである⇒http://www.king5.com/news/investigators/Decades-of-deception-at-Hanford-264328171.html)(アーカイヴはこちら

幸い、記事本文はコピーしてあったが、非常に残念なことに、引用されていた重要関連文書はダウンロードしておらず、記事が転載されているサイトの記事内のリンクもデッドリンクとなっていた。

ニュース記事の筆者は、KING5のチーフ・インベスティゲティブ・リポーターSusannah Frame氏である。




彼女がこの記事内容をリポートしているニュース動画(英語)はこちらである。



ここでは、削除されている記事の完全和訳を、この動画内の該当部分のスクリーンショットと共に紹介する。


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ハンフォードでの何十年にもわたる欺瞞



ハンフォードサイトで毒性化学物質、あるいは放射性物質に曝露される作業員は、サイト内の診療所で直ちに処置を受けることができ、またそこでは通常の健診を受ける事もできる。この診療所は、これまで様々な民間会社によって運営されてきたが、全米で最も汚染されているサイトをクリーンアップする責任を持つ全作業員にとって、重要なリソースである。



しかし、「KING5 インベスティゲーター」によると、診療所を受診する作業員は、必ずしも毒性化学物質の影響についての真実を知らされるわけではないことが分かった。これは、1940年代のプルトニウム製造の初期の頃にさかのぼる欺瞞のパターンである。

ハンフォードで24年間勤務したベテランであるドン・スラウ氏のケースは、エネルギー省から雇われている医療供給者がどのようにして作業員から重要な情報を隠してきたか、という例である。



スラウ氏は健康物理学技術者で組合の安全委員でもあるが、作業中に2度、有毒な蒸気の曝露を受けたことがある。スラウ氏は、1996年に起こった最初の曝露の時には、立っていることもできなかったと述べた。

「要するに、化学物質に圧倒されたのです。そして、同僚がその場から引きずって移動させてくれたのを覚えています」とスラウ氏は最近のインタビューで述べた。


スラウ氏は、サイト内の診療所に連れて行かれたが、診療所のスタッフは、後に、その曝露による長期的な影響はなかったと説明した。

「この蒸気の吸入により私の肺にいくつかの点ができたと決定はされましたが、その当時は、大丈夫だと言われました」とスラウ氏は述べた。


しかし、スラウ氏は大丈夫ではなかった。吸入した化学物質のせいで、反応性気道疾患という不治の肺の病気になっていた。現在、スラウ氏の肺機能は50%しか残されておらず、就寝時には酸素吸入が必要である。



「酸素ボンベなしにはどこにも行けません」とスラウ氏は述べた。

スラウ氏は、ずっと後まで、自分が曝露を受けた蒸気が、体に永久的な損傷を与えたことを知らなかった。しかし、サイト内の診療所は知っていたが、その事を10年間隠していた。

スラウ氏は、シアトルのハーバービュー・メディカルセンターの医師が自分の医療カルテを見直すまで、自分の病状がどれほど酷いのかを知らなかった。


スラウ氏のケースに関する2005年のカルテ記述で、当時ハーバービューの職業・環境医学部の部長だったジョーダン・ファイヤーストーン医師は、「当時(1996年)、彼(スラウ氏)は、最初の曝露の後の(肺への)残存影響について認識していなかった。しかし、後述のように、後の職業検診時に、ハンフォードサイトのメディカルディレクターによって、(業務に戻るための)呼吸器機能のメディカルクリアランス(訳註:医師による健康状態の確認)のための肺活量測定(呼吸検査)が行われた所、ちょうどその頃に、彼の肺活量測定値が悪化した(肺疾患を示した)ことが明らかである。」

「私は、この医師らが責務を果たさなかったと感じます。(医師としての)誓いを破ったのです」とスラウ氏は述べた。「慢性の肺感染症や気管支炎を患っていた間ずっと、何が起こっているのか全然分かりませんでした。裏切られた気持ちです。これは冗談のようです。でたらめです」

作業員はまだ危険にさらされている

今年の3月中旬以来、37人のハンフォード作業員が、核廃棄物入りの巨大タンクから漏れた化学物質の蒸気に曝露された後で、サイト内の診療所、あるいはリッチランド市の最寄りの病院へ送られた。



政府の調査では、タンク内には、第二次世界大戦と冷戦時代のプルトニウム生産という汚染業務の残物である、約2,000の有害化学物質が見つかっている。




ハンフォードサイトの原子炉のウラン燃料棒を溶かすために苛性化学物質が使われ、そして少量のプルトニウムが溶かされた燃料から取り除かれたのである。




このプロセスから生じた廃棄物は、177のタンクに入れられた。それから何十年も経った今、この廃棄物は極めて有毒なままであり、技術が発達して永久廃棄が可能になるまで、有毒でありつづけるだろう。この廃棄物は、放射性崩壊による放射能を帯び、不規則な間隔で有毒な蒸気を発生する。特別なフィルターのおかげで放射能はタンクから漏れないが、有毒ガスが漏れ、何にも止められずことなく、タンクファームの周囲の大気中に拡散するのである。


情報は最初から隠されていた

プルトニウム生産プロセスによる危険は最初から知られていた。しかし、文書によると、連邦当局は、作業員を心配させて生産を遅らせることへの懸念から、安全リスクを過小評価するように勧められた。

1948年に書かれたとあるメモでは、もしも作業員らが自分らの安全を「疑うかなりの理由」があると知ったら、「士気を打ち砕くような影響」があるかもしれないと言う事で、ある放射線影響の研究を秘密にすることを主任らに促していた。もしも研究が公表されたら、従業者らが「特別危険手当」を要求し、全作業員の間の恐怖が政府に対しての「苦情の数を増やす」可能性があるとメモに述べられていた。

「士気を打ち砕くような影響」

「疑うかなりの理由」

「特別危険手当」「苦情の数を増やす」

1947年に書かれたまた別のメモは、主任らが健康リスクについての文書を改ざんすることを推奨していた。(メモの)著者は、政府に対しての「苦情を奨励する」可能性を持つ情報は、「言い回しを変えるか削除すべきである」と述べていた。


もっと最近では、ハンフォードサイトでの毒性物質への少量の曝露でさえも癌や他のを引き起こす可能性があると警告した1997年の科学研究論文が、政府によって隠されていた。その研究論文は、米国エネルギー省下請け業者によって運営されている、リッチランド市パシフィック・ノースウェスト国立研究所の科学者らによって執筆されたものだった。

放射性廃棄物政策に関する元大統領顧問のボブ・アルバレズ氏は、この1997年の研究論文は、自分の元に届けられ、そして作業員らと共有されるべきだったと述べた。1997年当時、アルバレズ氏は、エネルギー省本部のシニア職員としてハンフォード問題に直接取り組んでいた。


「我々は、この研究論文について何も知りませんでした。隠されていたのです。」とアルバレズ氏は述べた。「(前略)これらの有毒な蒸気への曝露の結果、作業員らの潜在的な疾患のリスクが驚くほど高くなると述べている研究論文があるということは、今やっていることをすべてを中断してこの問題を直さなければいけない、という本当に強いシグナルのようなものです。」

エネルギー省は、研究結果が公表されなかった理由は、他の科学者が研究に欠点があることを見つけたからだと述べている。「報告書の利点を考えたとしても、概念と過程における重大なエラーがあるため、その価値が疑わしくなってしまう。」と、メルビン・ファースト氏は、ハーバード大公衆衛生学部のレターヘッドに記述した。KINGは、ファースト氏が随分前にハーバード大から退職しており、パネルの他のメンバーの中でもハーバード大と関連を持つ人はいなかったことを突き止めた。また、ファースト氏は、タバコ業界での雇われ人としても知られており、受動喫煙が無害であるという記事を書いたこともある。

作業員らは、化学物質の測定値が高いことを知らされていなかった

長年の間、ハンフォードの放射性廃棄物の処理を任された下請業者は、作業員らに、化学物質の蒸気が突然放出されるのは避けられないが、放出された蒸気に含まれている毒性物質はごくわずかであり、「許容曝露限度よりずっと少ない」と言って安心させてきた。



しかし、KING5は、2005年から2009年の蒸気の測定データを入手したが、そこには、蒸気内の危険な化学物質の濃度が曝露限度よりずっと高いことが示されていた。


その期間中、脳損傷の原因となる可能性を持つ毒性金属である水銀は、

* 2009年に、作業曝露限度を473%超えていた。 
* 2006年に、作業曝露限度を342%超えていた。
* 2006年に、作業曝露限度を223%超えていた。

肺への損傷と緑内障の原因となる可能性を持つアンモニアは、

* 2005年に、作業曝露限度を1,856%超えていた。
* 2005年に、作業曝露限度を1,595%超えていた。 
* 2005年に、作業曝露限度を643%超えていた。

そして、発癌物質であることが知られているジメチルニトロソアミンは、

* 2005年に、作業曝露限度を3,731%超えていた。
* 2006年に、作業曝露限度を4,880%超えていた。 
* 2006年に、作業曝露限度を13,866%超えていた。

ハンフォード・サイトで26年間勤務した後に2013年に退職したマイク・ゲフリー氏は、このような数値は見た事ない、と述べた。




「なんてこった!私は、この測定日に、これらのタンクファームで作業をしていました。ここに出て来るタンクファームの測定日に、ひとつのこらず、そのタンクファームで作業をしていました。」と驚愕した。「『一体誰が、この情報を手にしていたのに作業員から隠していたのか?』と、ただひたすら考えています。」とゲフリーは述べた。



「誰かがこの情報を見て、作業員に知らせないでおこうと決めました。その人は、牢屋にぶちこまれるべきです。いいですか?作業員には話さないでおこうと決めた人物は、文字通り、犯罪者として裁かれるべきです。」とゲフリ氏ーは述べた。



政府からの返答

月曜日の午後、エネルギー省のメディア担当者が、KING 5 に、測定値について、そして測定値が作業員と共有されなかった事実についての文書を送って来た。




「KINGがエネルギー省への質問内で引用した統計は、作業員への曝露の可能性を持つレベルを表しているのではなく、タンクのヘッドスペースや排気筒内のように、作業員にはアクセスできないエリア内でのレベルである。このエリアに近接して作業が行われる場合、事前に、曝露の可能性を低減するための詳細な計画が立てられ、作業員の防護のために個人防護装備一式の使用が考慮される。

2005年以降、59,700以上の個人の検体および、作業員が実際に曝露を受ける可能性があるエリアの検体が採取されてきたが、作業曝露限度(OELs)を超えたものはない。この検体採取プロセスは、米国内で適用される業界の標準と同じものである。さらに、タンクファームの作業曝露限度は、学術界と政府の専門委員会が行った、詳細な毒性学研究に基づいている。」

しかし、長年の間ハンフォードで作業に従事してきて、サイトでの大気サンプリングについて何十年もの専門的知識を持つ人物は、実際、その測定値は作業員へのリスクを示している、と述べた。

「『ソース』内でこのような測定値が存在すること自体、これらの同様の化学物質が、作業員が呼吸するエリアに存在する絶対的な可能性があるということを意味する。このレベルが作業曝露限度より少ないとエネ省が言うのは間違ってはいないが、一度の検体採取で測定された数値が、最悪のシナリオを代表すると言う仮定はできない。別の検体採取で、これと同じ化学物質や蒸気でもっと高い数値が見られるかもしれない。」と、その専門家は述べたが、仕返しを恐れて匿名を希望した。

ドン・スラウ氏は、作業から肺へのダメージを受けたにも関わらず、まだハンフォードで雇用されているが、タンクファームで作業していた際、化学物質のガスの危険性について聞いた覚えがないと言う。




スラウ氏の妻ヴァーナさんは、スラウ氏のような作業員が、危険の可能性を知らされずに作業場に送り出されていたのは不公正である、と言う。



「何も知らない人を作業場に送り出すのは不公正です。」とヴァーナさんは述べた。「そのようなエリアで作業をすることがどれほど危険なのかと言う情報を入手する必要があります。」

ヴァーナ・スラウさんは、「ハンフォード関係者は、作業員が人間であることを考える必要があります。そして、作業員にどんな影響を与えているのかを考える必要があります。お金でなく、人間のことを考える必用があります。」と付け加えた。

ドン・スラウ氏は、ハンフォードでの作業による体調の悪化後、他の作業員の代弁者となった。スラウは、現在、サイトの安全委員である。「他の人が自分のような経験をするのを見たくないですが、しかし、残念なことに、もっと多くの人の体調が悪くなってきています」とスラウ氏は述べた。



220人の手術症例とこれまで報告されてきた臨床データについて

   2024年11月12日に開催された 第53回「県民健康調査」検討委員会 (以下、検討委員会)および3日後に開催された 第23回「県民健康調査」検討委員会「甲状腺検査評価部会」 (以下、評価部会)で、 220例の手術症例 について報告された。これは、同情報が 論文 として20...