メモ:2019年7月8日発表の甲状腺検査結果の数字の整理など


2019年7
月8日に、第35回「県民健康調査」検討委員会が開催され、2019年3月31日時点での3巡目(新たに3例が悪性ないし悪性疑いと診断、3例が手術により甲状腺がんと確定)と4巡目(新たに3例が悪性ないし悪性疑いと診断、1例が手術により甲状腺がんと確定)および25歳時節目検査(新診断数0、1例が手術により甲状腺がんと確定)の結果が公表された。

各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数、平均年齢と平均腫瘍径、および各年度ごとの手術症例の人数などは、「参考資料2 甲状腺検査の状況」にまとめられている。なお、3巡目まで公表されている年齢・性分布ヒストグラムは、4巡目と25歳時節目検査では公表されていない。25歳時節目検査は、症例数が非常に少ないために現時点ではヒストグラムで出す必要性がないかもしれないが、4巡目では事故当時年齢による分布が不可視化されてしまっている。

3巡目の結果
  2016年5月1日から開始されている3巡目では、新たに県外受診者9人を含む26人が受診し、157人で結果が判定された。一次検査受診率は前回と変わらず64.7%、結果判定率は前回より0.1%増え100.0%と安定しており、一次検査に関しては、ほぼ確定していると思われる。
  一次検査でB判定とされた二次検査対象者は前回より3人増えて1490人となった。2人が福島市、1人がいわき市の住民で、2巡目検査はA2が1人、Bが1人、未受診が1人だった。二次検査の受診者数は22人(2016年度対象市町村で5人、2017年度対象市町村で17人)増えて1081人となり、受診率は1.4%増えて72.6%となった。二次検査の結果確定数は、2016年度対象市町村で2人増えて570人、2017年度対象市町村で22人増えて449人と、全体的には1019人となり、全体的な結果確定率は0.3%増えて94.3%となった。
  細胞診受診者は2017年度対象市町村から3人で、3人とも新たに悪性ないし悪性疑いと診断され、3巡目での悪性ないし悪性疑いは24人となった。3人とも浜通りの住民で、男性が1人(事故当時年齢6歳)と女性が2人(事故当時年齢5歳と13歳)だった。2巡目での判定結果は、A1が1人、A2のう胞が2人だった。A2判定の内訳(結節、のう胞)については、悪性ないし悪性疑い24人中、現時点で2巡目結果がA2判定だった11人の内訳が報告され、8人がのう胞、3人が結節ということだった。手術症例は、2017年度対象市町村で3例増えて18例(甲状腺乳頭がん 18例)となった。
  3巡目以降、さまざまなデータが公開されなくなっており、細胞診結果の平均年齢と平均腫瘍径は、年度別ではなく合計のみでしか報告されていない。また、(2019年10月13日訂正)二次検査実施状況は、市町村別ではなく地域別でしか公表されなくなっている。「別表5 地域別二次検査実施状況」によると、二次検査受診率は、避難区域等13市町村と中通りでわずかに増えて75.8%と75.0%、浜通りと会津地方では、前回よりそれぞれ3.5%と2.5%増えて69.9%と68.0%となった。二次検査受診者22人中16人が15〜19歳、6人が20歳以上、22人中12人が浜通りの住民である。細胞診実施者は3人のみで、前述のとおり3人とも浜通りの住民である。 

4巡目の結果
  2018年4月1日から開始されている4巡目(25歳節目検査対象者は除外)では、一次検査対象者数294127人中、前回より受診者が27175人増えて104145人(2018年度対象市町村で2 (2019年10月13日訂正)98292人、2019年度対象市町村で5862人)となったが、2018年度締めのデータであるため、増加人数の9割以上は2018年対象市町村で、2019年度対象市町村での進捗はこれからである。受診率は前回の1倍半弱の35.4%となった。結果判定数は29030人増えて89807人(2018年度対象市町村で84781人、2019年度対象市町村で5026人)となり、受診者の86.2%で結果が判定されている。B判定者数は、前回より164人増えて591人(2018年度実施市町村で524人、2019年度実施市町村で67人)となった。
  二次検査対象者524人中、前回から168人が二次検査を受診し、合計311人(2018年度対象市町村で284人、2019年度対象市町村で27人)となり、受診率は19.1%増え、52.6%だった。結果確定数は134人増えて90人となり、結果確定率は72.0%だった。新たに2018年度対象市町村5人が細胞診を受診し、3人が悪性ないし悪性疑いと診断された。
  前回悪性ないし悪性疑いと診断された2人では細胞診結果が公表されなかったが、今回はその2人を含めた5人(男性2人、女性3人)の詳細が公表された。ただし、3巡目まで公表されてきていた年齢分布のヒストグラムは公表されていないため、性別・年齢別の詳細は不明である。しかし、公表された事故当時平均年齢「7.2 ± 3.3歳(4〜12歳)」から、5人の中に事故当時4歳の人がいることがわかる。この5人の3巡目の結果は、4人がA2のう胞、1人がB判定だった。手術症例は1人で、乳頭がんだった。
  この5人のうち2人は避難区域等13市町村、3人は中通りの住民である。細胞診受診者11人のうち、4人が避難区域等13市町村、7人が中通りの住民であるが、いずれも細胞診受診者の半数が悪性ないし悪性疑いと診断されたことになる。


25歳時節目検査の結果
 2017年度から開始された25歳時節目検査の結果は、通常の甲状腺検査とは別に、6ヶ月ごとに公表される。1992年度生まれの対象者22653人における甲状腺検査の実施状況は、第33回検討委員会(2018年12月27日)に公表されており、ここにまとめてある。
 今回公表されたのは2019年3月31日時点(2018年度末時点)での結果で、2018年度の検査対象である1993年度生まれの対象者での受診状況が報告されている。また、受診は対象年度にとどまらず、次回の30歳時節目検査の前年まで可能で、追加の受診データも随時報告されていくことになっており、1992年度生まれの対象者の追加情報も含まれている。
 一次検査は、1991年度生まれの対象者
22653人からは今回の171人を追加した2176人が、1992年度生まれの対象者21889人からは985人が受診しており、受診率は、1991年度生まれで9.6%、1992年度生まれで4.5%、合わせて7.1%と、かなり低い。2288人で結果が判定されており、二次検査対象となるB判定は1991年度生まれから新たに6人、1992年度生まれからは11人と、合計17人出ている。この17人の前回検査結果は、A1が1人、A2が3人、Bが7人、受診なしが6人である。
 二次検査は、1991年度生まれからは前回から6人増えた73人、1992年度生まれから10人と合計83人が受診(受診率79.0%)し、うち80人で結果が確定している。4人がA2相当と再判定、76人がA1・A2相当以外となり、1991年度生まれの3人が新たに細胞診を受診したが、新たに悪性・疑いと診断された人はおらず、25歳時節目検査の悪性・疑い数は、前回野2人(男性1人、女性1人)のままである。この2人に関しては、腫瘍径データや市町村の公表は、今回もなかった。また、2人のうち1人は手術を受け、乳頭がんと確定診断されている。

受診率の推移
 一次検査の受診率は、1巡目が81.7%、2巡目が71.0%、3巡目が64.7%、4巡目が35.4%、25歳時節目検査が7.1%である。二次検査の受診率は、1巡目が92.9%、2巡目が84.1%、3巡目が72.6%、4巡目が52.6%、25歳時節目検査が79.0%である。
 最初から県民健康調査外での受診、あるいは二次検査から甲状腺検査実施機関以外の医療機関を受診という可能性もあると思われるが、完全な症例把握は困難な状況である。検討委員会および甲状腺検査評価部会では、全国・地域がん登録データからの拾い上げによる症例把握について言及されているが、これは理論的には可能ではあるもの、実情としては、がん登録データの精度という問題が存在する。(がん登録制度の問題点については、岩波『科学』電子版2019年7月号「第13回甲状腺検査評価部会で公表された部会まとめ案について」の11〜12ページを参照のこと。PDFリンク

前回検査結果との比較
  表4の前回検査結果との比較によると、前回検査が未受診だった人の受診者に対する割合は、2巡目で8.8%、3巡目で7.0%、4巡目では10.7%、25歳時節目検査では33.5%である。前回検査でB判定だった人がまたB判定となる割合は、2巡目で53.4%、3巡目で61.5%, 4巡目では78.9%、25歳時
節目検査では69.1%である。
  (注:前回検査との比較表における「前回検査」とは、前回検査での一次検査の結果であり、二次検査後の再判定が反映された結果ではない。)

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現時点での結果
これまでに発表された集計外症例数と、前回発表された25歳時節目検査の結果も含む、現時点での結果をまとめた。

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以下は、1〜4巡目と25歳時の節目検査の結果であるが、同情報は、「参考資料2 甲状腺検査の状況」の5ページ目にもまとめられている。

先行検査(1巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例      102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例      14人

本格検査(2巡目)
悪性ないし悪性疑い 71(前回から変化なし)
手術症例      52人(甲状腺がん 52人:乳頭がん 51人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例     19人 

本格検査(3巡目)
悪性ないし悪性疑い 24(前回から3人増)
手術症例      18人(前回から3人増)(甲状腺がん 18人:乳頭がん18人)
未手術症例       6人

本格検査(4巡目)
悪性ないし悪性疑い 5人(前回から3人増)
手術症例      1人(前回から1人増)


25歳時の節目検査 
悪性ないし悪性疑い 2人(前回から変化なし)
手術症例      1人(前回から1人増)

合計
悪性ないし悪性疑い 218人(良性結節を除くと217人
手術症例      174人(良性結節 1人と甲状腺がん 173人:乳頭がん 171人、低分化がん 1人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例***      44人

注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第7版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。
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2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された71人の1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人

3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された24人の2巡目での判定結果
A1判定:5人(前回より1人増)
A2判定:11人(結節3人、のう胞8人)(前回よりのう胞2人増)
B判定:5人
2巡目未受診:3人

4巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された5人の3巡目での判定結果
A1判定:0人
A2判定:4人(のう胞4人)
B判定:1人
2巡目未受診:0人

メモ:2024年2月2日に公表された甲状腺検査結果の数字の整理、およびアンケート調査について

  *末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節、のう胞)が、まとめて公式発表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。  2024年2月22日に 第50回「県民健康調査」検討委員会 (以下、検討委員会) が、 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された。  ...