2018年12月27日に、第33回「県民健康調査」検討委員会が開催され、2018年9月30日時点での3巡目(新たに3例が悪性ないし悪性疑いと診断、2例が甲状腺がんと確定)、4巡目、そして25歳時の節目検査(2016年度実施)の結果が公表された。
各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数・年齢・性分布、および各年度ごとの手術症例の人数などは、「参考資料1 甲状腺検査の状況」にまとめられている。
3巡目の結果
2016年5月1日から開始されている3巡目では、新たに20人が受診し、41人で結果が判定されたが、一次検査受診率も結果判定率も前回と同じ64.6%、100.0%に留まった。1巡目と2巡目での受診率はそれぞれ81.7%と71.0%だったので、それよりも低いことには変わりない。検査年度4月1日時点での年齢が18歳以上の受診率は、前回と同じ16.4%である。
二次検査対象者は前回より3人増えて1485人となり、受診者数は111人(2016年度対象市町村で15人、2017年度対象市町村で96人)増えて1024人になり、受診率は7.4%増えて69.0%となった。1巡目と2巡目の二次検査受診率(92.9%と84.1%)よりまだ低い。二次検査の結果確定数は、2016年度対象市町村で13人増えて560人(94.3%)、2017年度対象市町村で94人増えて373人(86.7%)と、全体的には933 人となり、全体的な結果確定率は、わずか0.6%増えて91.1%になった。
2016年度対象市町村から3人、2017年度対象市町村から6人の計9人が新たに細胞診を受診し、2016年度対象市町村から1人(女性1人)、2017年度対象市町村から2人(女性2人)の計3人が、新たに悪性ないし悪性疑いと診断された。1人が避難区域等13市町村、2人が浜通りの住民である。この3人の事故当時年齢は、6歳、6歳、11歳だった。2巡目での判定結果は、1人がB判定、2人がA2判定だったが、A2判定の2人の内訳(結節か、のう胞)は、報告されなかった。(この内訳に関して記者会見で問われた際、志村氏は、個人情報の観点から、A2判定の内訳を報告して良いものなのか確認の必要があると述べた。今回、志村氏が本年度に甲状腺検査部門長に就任してから初めて、前回検査結果がA2だった例が報告されたことになるため、単にA2内訳が報告すべき情報だと認識していなかっただけかもしれないが、公開データの継続性が保たれることが望まれる。)手術症例は、2017年度対象市町村で2例増えて13例(甲状腺乳頭がん 13例)となった。
3巡目以降の二次検査実施状況は、市町村別ではなく地域別でしか公表されなくなっている。「別表5 地域別二次検査実施状況」によると、二次検査受診率は、避難区域等13市町村と中通りでは73〜74%、浜通りと会津地方では、前回よりそれぞれ18.2%と13.1%増えて59.5%と62.9%になったが、特に浜通りで夏休み中の受診が多かったと思われる。またこの別表によると、細胞診実施者9人中、2人が避難区域等13市町村、1人が中通り、2人が浜通りの住民である。
2018年4月1日から開始されている4巡目(25歳節目検査対象者は除外)では、今回初めて、二次検査の進捗状況が公表された。一次検査対象者数293865人中、受診したのは41537人(2018年度対象市町村で39946人、2019年度対象市町村で1591人)と、前回より25175人増え、受診率は前回の2倍以上の14.1%となった。結果判定数は25029人と大幅に増えて25982人(2018年度対象市町村で25146人、2019年度対象市町村で836人)となり、受診者の62.6%で結果が判定されている。B判定者数は、前回の8人から大幅に増えて151人(2018年度実施市町村で142人、2019年度実施市町村で9人)となった。
3巡目結果との比較では、3巡目を未受診だった2824人の受診者中15人が4巡目でB判定となっており、現時点で、4巡目でのB判定151人の1割が3巡目を未受診だったことが分かる。
二次検査対象者151人中、39人(2018年度対象市町村で37人、2019年度対象市町村で2人)が二次検査を受診(受診率25.8%)し、結果が確定(結果確定率17.9%)している7人(全員が2018年度対象市町村)のうち6人がA1・A2相当以外となっているが、細胞診受診者はまだいない。
25歳時の節目検査の結果
前回の第32回検討委員会(2018年9月5日)で、25歳時の節目検査の結果については半年ごとに公表されると報告されていた通り、今回、1992年度生まれの人たちの25歳時節目検査の2018年9月30日時点での実施状況が公表された。これは実質、第30回検討委員会(2018年6月18日)の資料3-3(3巡目結果)の 最後の2ページに掲載された、2018年3月31日時点での結果の追加データである。なお、25歳時の節目検査は、次回の節目検査の前年まで受診可能とされているので、実質、「25〜29歳時」節目検査ということになる。
1992年度生まれの対象者22653人中2005人が一次検査を受診している。前回より103人増えているが、受診率は8.9%と、非常に低い。約3分の1にあたる659人が県外で受診している。1989人(99.2%)で結果が判定しており、前回より8人多い88人がB判定となった。B判定率は4.4%で、1〜4巡目の0.6〜0.8%よりもはるかに高い。
前回検査結果との比較の表(表3)によると、一次検査受診者1989人の約3分の1が前回検査を未受診だったが、これは、2巡目(8.8%)、3巡目(6.9%)、4巡目(10.9%)のいずれよりもかなり高い。また、B判定88人の35%である31人が前回検査を未受診だったことと、B判定率の高さから推測すると、何らかの症状が受診動機に繋がっている可能性は否めない。ちなみに、B判定88人中、また別の31人は前回もB判定だった。
二次検査対象者88人中67人(前回より26人増)が受診しており、受診率は76.1%だった。58人で結果が確定しており、A2相当の3人を除いた55人がA1・A2相当以外で、うち3人が細胞診を受診し、2人が悪性ないし悪性疑いと診断された。この2人に関しては、性別(男性1人、女性1人)以外の情報は公表されなかった。
(注:前回検査との比較表における「前回検査」とは、前回検査での一次検査の結果であり、二次検査後の再判定が反映された結果ではない。)
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現時点での結果
前回発表された集計外症例数と、今回発表された25歳時節目検査の結果も含む、現時点での結果をまとめた。
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以下は、1〜4巡目と25歳時の節目検査の結果であるが、同情報は、「参考資料1 甲状腺検査の状況」の5ページ目にもまとめられている。
先行検査(1巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例 102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例 14人
本格検査(2巡目)
悪性ないし悪性疑い 71人(前回から変化なし)
手術症例 52人(甲状腺がん 52人:乳頭がん 51人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例 19人
本格検査(3巡目)
悪性ないし悪性疑い 18人(前回から3人増)
手術症例 13人(前回から2人増)(甲状腺がん 13人:乳頭がん13人)
未手術症例 5人
本格検査(4巡目)
悪性ないし悪性疑い 0人
手術症例 0人
25歳時の節目検査
悪性ないし悪性疑い 2人
手術症例 0人
合計
悪性ないし悪性疑い 207人(良性結節を除くと200人)
手術症例 167人(良性結節 1人と甲状腺がん 166人:乳頭がん 164人、低分化がん 1人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例*** 38人
注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第7版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。
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2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された71人の1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人
3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された18人の2巡目での判定結果
A1判定:2人
A2判定:8人(結節2人、のう胞4人、未報告により不明2人)
B判定:5人
2巡目未受診:3人