第11回 「県民健康調査」甲状腺検査評価部会(2018年10月29日開催)での議論の一部の書き起こし



2018年10月29日に福島県福島市で開催された第11回「県民健康調査」甲状腺検査評価部会の中での、「資料2 甲状腺検査対象者への説明・同意に関する部会員意見の集約」および、 「
資料3-2【髙野部会員・祖父江部会員資料】県民健康調査における甲状腺超音波検査の実施体制および検査方法の問題点と改善案」についての議論を書き起こした。

第11回甲状腺検査評価部会の全資料はこちらからアクセスでき、公式議事録も、後日、そのウェブページに掲載される。どうしても聞き取れないために空白となっている箇所については、公式議事録を参照願いたい。

部会員については、以下の出席者名簿に詳細が記述されているが、発言者として最初に登場する際に、どのような立場での発言か分かりやすいように専門分野なども記述した。

注:学校検査について、「学校検診」と言う言葉が出てくるが、2014年3月2日の第2回甲状腺検査評価部会で、福島県立医科大学の甲状腺外科医である鈴木眞一氏は、はっきりと、福島県の甲状腺検査は、死亡率を下げることが目的の「(がん)検診」ではなく「健診」であると述べている(議事録の31ページ目を参照)。2017年10月末の第50回日本甲状腺外科学会学術集会でのシンポジウム発表抄録(以下のスクリーンショットを参照)では、最初に「検診」と言及してはいるが、「今後放射線被ばくによる甲状腺癌発症の増加があるかないかを確認する目的で、直ちに超音波検診(健診)を開始した。」と説明した後は、「健診」としているため、「学校健診」と認識すべきであろう。しかし、この書き起こしでは、発言者が「検診」を用いていることが分かっていたり、発言の文脈から通常のがん検診と同様に考えていると思われるため、あえて「検診」としている。




以下の書き起こしは、資料2と資料3−2に関する議論で2部に分けてある。それぞれ、当日の動画も貼り付けてあるが、書き起こしを始めた箇所から再生されるように設定してある。

1. 資料2 甲状腺検査対象者への説明・同意に関する部会員意見の集約」に関する議論の書き起こし



鈴木 元 座長(国際医療福祉大学教授、日本放射線影響学会 推薦):資料の2、利益の方に移って。それぞれ箇条書きをしております。この部会の中で、利益がないという意見もありました。それに対して、特に外科の立場からは、吉田先生の方から、早期診断になった場合は手術侵襲も少ないというふうに、患者さんにとってはメリットのある術式になるということも説明がされました。一方、不利益としては、本来、手術しなくてもいいような甲状腺も手術してしまう過剰診断・過剰治療ということも起きると言うことで、その辺を避けるために、なるべく、成人の場合はアクティブサーベイランスと言われてまして、経過をみながら本当に手術が必要になる時期を慎重に選んで行くという作業がなされるわけですが、お子さんに関してはまだそういう臨床的な体制というのが必ずしも成立してない時期であるということを踏まえた上で、検査をやって行かざるを得ないというひとつの問題点があるかと思います。不利益に関しては、そういう所で、早めに手術してしまうことによる不利益ということがいくつか挙げられてまいりました。これに関して、一個一個の項目の議論を始めて行くとちょっと時間はありませんが、髙野委員、いかがでしょうか。

髙野 徹 部会員(大阪大学大学院 医学系研究科 内分泌代謝内科学講師、日本甲状腺学会 推薦):祖父江先生と共同でちょっと意見書を出させてもらったんですけども、この利益・不利益、メリットとハーム(harm)という言い方の方が正しいように思うんですが、漠然とこんな利益、こんな不利益がありますという形では、なかなか議論の集約ができないし、県民にイメージもしにくいということで、超音波検査をした場合、しなかった場合で、それぞれ、これだけの対象者にこんだけの利益があります、で、こんだけの対象者にこんだけの不利益がありますと数字でやっぱり出して、それを比較検討して、こんな通りですよということをお示しすると言うことが非常に重要な責務ではないかと思いますし、そういうことはこの部会でしかできないと思いますので、ぜひ、その方向でご議論いただきたいと思います。

鈴木座長:資料2の、たとえば利益の所の米じるし1、2、3、というような形で、この間、部会でも挙げて来たデータなんですが、数字を挙げて来ました。これに関しては、___になるでしょうか?安心があるというか、検査の結果、見つからないパーセント、実際に見つかるパーセント、それが実際に手術を受けた場合に、チェルノブイリの時の手術にくらべて、今現在の早期発見の場合の手術の副作用の頻度というのがここに書かれてます。

髙野部会員:そういう、たとえば、早く見つかった方が予後がいいとか、そういう数字じゃなくて、超音波検査の、つまりがん検診としての有効性の話になると思うんです。ですから、受けた場合と受けなかった場合での差というものが、どういう風に見えてくるかということが__なことだと思うんで、それを出す必要があると思うんですよ。

吉田 明 部会員(甲状腺外科医、日本内分泌外科学会および甲状腺外科学会 推薦):あの、甲状腺って非常に小さい臓器でですね、かつ、対象?としての非常に予後のいい甲状腺のがんですよね。そういうのを数値化するっていうのは、非常に難しいのではないかと思うんですね。だからほんの少しのわずかな差しか出てこないだろうと思うんですよね。ただし、要するに、そこで見つかったものに関しては、やはりその当人にとってはすごく大きなメリットがあると思っているんで、髙野委員の言うようなやり方だとですね、何をやっているのか良く分からない、と言うことになってしまうのではないかなと思うんです。

髙野部会員:吉田先生のおっしゃることは良くわかるのですけども、やはりそこは、がん検診の有効性というスタンスで、一回、資料をまとめる必要があるのではないかなと思います。

鈴木座長:はい、あの、多分ね、髙野先生と私自身、少し立場が違ってて、議論がかみ合わないのは、たとえば、IARCの、まったく検診も何もしてないような集団、それに対してこれから予算をつけてスクリーニングのプログラムを組みますかと言う時の議論と、それから、今、実際にがん対策として甲状腺検査が始まったわけですが、予算がついて動いてる中で、今、これからこれをどういう風に変えて行くか、あるいは方向性としてどういう方向性を向いて行くのかという議論、そこのスタンスが、立ってる位置が違っていて、なかなか議論がかみ合ってないような気がします。スクリーニングの有効性があるかどうかという議論でいうと、これはまた、一般には検診の有効性って言うのは、がん死亡率をどのくらい下げられるかというような所で議論をしていくわけですが、今、この甲状腺プログラム、死亡率を下げようという立場で始まったプログラムではないと思うんですね。だから、ちょっとその辺は、私は違うのではないかなと言う風に思うんです。

南谷 幹史 部会員(小児科医、日本小児内分泌学会 推薦):色々言われてるのは、今、鈴木先生がおっしゃられたように、死亡率なんですけど、甲状腺がん、良くない髄様がんにおいても、10年生存率は85%なわけでして、その予後が悪い髄様がんですら、アメリカですと、家族性の場合は、__的に温存せず取ってしまうと言われてるわけですね。ですから、エンドポイントとして死亡率と言ってしまうと、まったく、甲状腺がんに関しては予後が良いがんなので、それをエンドポイントとするとちょっとどうかな、と言う気がします。前、医大でまとめていただいた125例の手術例で、甲状腺外浸潤したものが4割くらいでしたが、その見つかったものが、手術したメリットがなかったかというのは、ちょっとどうなのかと感じます。

片野田 耕太 部会員(国立がん研究センター がん統計・総合解析研究部長):数字で示す場合に、福島県ではどうか。資料の3ページ目の(3)の1の3つ目の、「検査を受けた場合どのような割合でどのような結果が出て、どういう経過をたどるのか」というのが、おそらく、先行検査をやる前というのは、やってないと分からないということもあったと思うんですが、現状ではもう、本格検査の結果、先行検査の結果がある程度出揃っていますので、たとえば受けた人の1%弱にB判定以上の結果が出ますと。で、二次検査を受けた人の10%くらいの割合で細胞診の適用となります。そのうち何パーセントくらいに悪性または悪性疑いの人が見つかります。って言うことの説明をした上で、それぞれ、その検査結果に応じてどのような心情的な負担を生じるかと言うのを、きちっと説明すべきだという風に思います。
過剰診断の話が出ましたけど、過剰診断の割合って、現状のデータからは、決して実データとしては出せないので、欧米ではシミュレーションの結果とかで過剰診断の割合を出したりしていて、実例からは決して出てこないものなので、死亡率の減少効果についても同じだと思います。現状で分かってる範囲でこういう結果になりますという説明を十分にすべきではないかと私は思います。

祖父江 友孝 部会員(大阪大学大学院 医学系研究科 環境医学教授、日本疫学会 推薦):利益の部分で、死亡減少効果があるのはなかなか望みにくいと言うことは、その通りというか、専門家は分かってることかもしれませんけども、少なくとも受けてる人たちは、そのことをあまり分かっておられないと思います。ですから、説明文書に何を書くかと言うことなんですが、専門家が当たり前と思ってることでも、受診者の人たちがその理解にギャップがある場合は、きちんと記述すべきかと言う風に思うんです。その上で、どのようなものが利益であるのかということを列記する。それもできるだけ定量的に示すと言うことをした方がいいと思います。

吉田部会員:死亡率云々と言うのを利益の第一に考えていらっしゃると思うんですけど、甲状腺がんではQOLを上げると言うような部分が非常にが大きいんですね。浸潤してるのが40%であると言った所をですね、早期に超音波で発見してそれを治療に持っていくって言うのは、非常に大きいわけなんですね。そうすると、死亡率云々を言うのにはですね、まだ7年くらいしか経ってないわけですね、一番最初の先行検査から始めて。それにはあまりにも期間が短すぎると言うことが言えますので、今の議論の中では、なかなかちょっと、先生の言うようなことは言えないんじゃないかな、と言うふうに思います。

祖父江部会員:このデータから死亡減少効果を言うというのは、それは難しいです。何ができるかと言えば、個々の発見例の人が仮に放置されたらどのような結末になっていたのか、と言うことを想定して、どのような利益だったのかと言うことを記述すると言うのはできるかも知れない。

吉田部会員:どのような利益であるか想定してって言うのはですね、手術なさった先生方は、そのまま置いとくと危ないと言うように思って手術をされてるわけですから、それを否定するってことはなかなか難しいと思うんですね。

祖父江部会員:否定はしてません。ですから、どのような利益が想定されたのかと言うことをここに記述する、と。

鈴木座長:まああの、まずちょっと整理しますと、最初の予後の件については、一般に甲状腺がんは小児の場合でも予後は、たとえば10年生存率で99.5%とかという数字が出てるかと思いますんで、そういうのを入れると言う方向ですね。それから、あの、先ほどの片野田先生が言ったものに関しては、②ー2の米じるしの4の所に、ちょっと書き落してるんですけども、本格検査の実績では、B判定が大体0.5%ぐらいになってまして、今の状態ですと、そのうちの5%くらいの人に穿刺吸引がなされます、というような、今のデータを入れ込むというようなことでよろしいでしょうか。
それで、先ほどの祖父江先生の、えーっと、ご意見ですが、そのまんま放置して、要するにどの段階で臨床症状が出るかという議論だと思うんですね。で、要するに臨床症状が出るというのは、反回神経麻痺が起きるとか、気管の中に細胞浸潤が入って、そこで声がおかしくなる、呼吸がおかしくなるとか、あるいは、どっかにポンと飛んでそれによる症状が出るとかいうような所の、一番、どちらかと言うと昔の何もしない時の甲状腺がんが臨床的に発見された時の標準的な治療でどのくらいの成績だったかという話を「出せ」と言うことのように、今、理解したんですが、よろしいですか?

祖父江部会員:あの、別に、成績とかのことを言ってるわけじゃ、全然ないんです。たとえば、反回神経に非常に隣接しているロケーションであって、何年か経つとこのようなことになるというのをここに検討するのはできると思うんです。

鈴木座長:はい、これはあの、臨床の吉田先生の方から。たとえば医者がなかなかそこまで放置したっていうのはないんで、ただ、昔だったらこういう症状で甲状腺がんが見つかったよ、というような書き込む形になるのかなと思うんですが、吉田先生、いかがですか?

吉田部会員:あの、そのまま放置したらどうなるかということはですね。やはり第一に、出血が起こります、気管の。それで出血による窒息死というものも起こりますし、それから、周囲臓器、頚部ってのは動脈・静脈、太い頸動脈・頸静脈がありますので、それを浸潤して大出血を起こす、と。そういうのを具体的にですね、われわれは経験しております。そういうことになるんじゃないかと想定されます。それが何年先に来るかということは、その腫瘍の浸潤の速度によって違ってくるだろうというように考えておりますので、何年ということは言えないんですけども、遠い将来、そういう恐れがあるということで、外科医はみな手術するんだろうというように思いますけども。

祖父江部会員:想定されるそういった害ですね、有害性ですね、個々の例について記述したらどうか、と。そういう意味です。

吉田部会員:あのー、それ非常に生々しくてですね、そういうことをこの場に書くということ自体どうかな、と。そういうことになりますよと言うのは、みなさん、暗黙のうちに分かってるんじゃないかなと思います。それから、あと、反回神経の麻痺っていうのがあります。そのまま置いとくと嗄声になってきます。そういうので一生苦しんでる人ってのは、かなりの数でいますので、そういうことをあえて書くということをしなくていいんじゃないかな、と言う風に思います。非常に生々しいことは、却って恐怖心を植えるような感じになると思いますので。その代わりに私は、この検査を受ける前にですね、小児甲状腺がんに言われている一般的なコースのことを書いてですね、手術した場合に何パーセントくらいの人が生きてられるというようなことを書いた方が、非常に予後がいいということを書いた方が、検査を受ける前の段階の人たちには有益じゃないかな、という具合に思いますけど。

髙野部会員:ちょっと全体像を俯瞰してみた方がいいと思うんですけども、現状、放射線による影響は少ないと県も見解を示しています。にも関わらず、200名以上に甲状腺がんが診断されています。この地域では、通常の臨床経過では数例しか甲状腺がんが出ないはずです。じゃあ、残りの差は何なのかということで、まあこれ、残りの200人近くが全員、甲状腺がんが見つかって良かった人だということになると、じゃあなぜ福島だけこんなに増えてるのかということを、これは県民に説明しないといけないんですよね。それをどう評価するかという所で、やはり、どれだけの人がメリットがあって、どれだけの人がデメリットだったのかということを示すべきなんじゃないでしょうか。これをどう説明するのか。

鈴木座長:論点がちょっとずれてるように思うんです。現実的に今、多く見つかっているというのは、その前の議論の中でも、スクリーニングをかけて小さいがんを一生懸命見つけているという現状を報告したかと思います。だから、そこで十分説明はついています。問題は、そういう小さいがんを見つけることが、はたしてメリットかデメリットかという議論になってくるんで、ちょっと論点が少しずれてるかなと思います。で、小さいがんのうちに見つけた方が手術侵襲は少ないですし、QOLはいい。で、甲状腺全摘をしないわけですから、そこでホルモン補充療法も、少ないかやらないで済む。そういうメリットがありますよということは、ここで書き込めるわけですね。私はそれで、かなり十分なんじゃないかという風に思います。

髙野部会員:あの、そこで仮にスクリーニングをせずに置いといた場合、どのようなデメリットがどのような人数の子どもに出るかというような議論が必要なんじゃないかと思います。

鈴木座長:はい、それは先ほど(苦笑)吉田委員の方からもあったんで。要するに、どの段階で臨床症状が出るかっていうことは、予見不能なわけですよね。で、ただほっとくと、少なくとも臨床がんに進展する人たちは、将来こういう臨床症状が起きて外来受診しますよ、と。で、そういう段階で手術した場合は、今のような部分的な手術ではなくて、より侵襲の大きい全摘になるでしょうし、また場合によっては放射線療法も一緒に併用するというような話になりますし、甲状腺ホルモンもずっと生涯、補充するというような、そういうふうな、要するに臨床、病気が遅れれば遅れるほど、そういう治療法が変わって行ってQOLが変わりますよということは、記述できるんだろうと思います。

髙野部会員:あの、ちょっとそこも視点が違うんですけど、要するに、あの、先生のおっしゃることも分かるんですが、そういう方が200人の中、何人おられるかということも重要なんじゃないかと思うんです。その__も疑問?ではないんでしょうか?(聞き取りにくい)

吉田部会員:200人のうち何人いるかというのはですね、ただその手術をする外科医がですね、小さいがんと言っても、甲状腺の表面にあるがんと、中の方にあって神経に接しているがんと、それから食道に接しているがん、気管に接しているがんと、色々あります。それで、それぞれの所でリスクを考えて、そのリスクが多少、多めになっている可能性は否定できませんけれども、100%その、治療したのがですね、一致しないんですね。私たち、あの、患者さんを前にしてですね、こういう可能性がありますということで、手術をしますか?と言うと、手術をお願いします、という患者さんがほとんどです。その段階で同意書を取っています。ですから、それが結果的に浸潤しなかったということもあり得るかと思います。現在の医療上においては、その可能性があれば何か処置するというのが外科医の立場ですので、それを否定してしまうことはできないだろうと思うんですね。たとえば、甲状腺がんは予後がいいので、今、髙野委員が言われるようなことの議論が出てくるんだろうと思うんですけど、私は乳腺と甲状腺やっておりましたけど、乳がんの方でもそのようなことはいくらでも言えると思うんですね。だからそのことを言ってしまうと、外科医の仕事とか全否定してしまう感じになってしまうだろうという具合に思ってます。

片野田部会員:過剰診断はスクリーニングを受けなければ、生涯臨床的に発見されないと定義?されてますけど、個々の症例をそれを示すことって不可能なので、一般論として検診、精密検査では過剰診断というものがあって、生涯、臨床的に症状が発生しないようながんが見つかることがありますよというくらいの説明は、一般論としてはできると思うんです。で、現状では、それしかできないんだと思います。定量的に何か、どのくらいの割合で過剰診断で、という数値が、この検査の結果から?言えるわけではありませんので、ただ、一般論として過剰診断があり得るというのは、ちょっと説明することはできると思います。

加藤 良平 部会員(病理医、伊藤病院 病理診断科 科長、日本病理学会 推薦):過剰診断の問題にまた入ってしまったんですが、今、問題になってるのは、アメリカとか韓国とか過剰診断が問題になってます。で、これは事実なんですね。ただ、彼らが問題にしているものと、日本での診療と診断のシステムというのはかなり違うので、一概に、日本でやってることが過剰診断という言葉でまとめられるのは、少し違うんじゃないかというふうに思ってるわけです。過剰診断というと、初めからもう過剰の診断ですので、これはあの、患者さんにとっては非常に大きな問題になって、その言葉を使うこと自体が、非常に良くないんじゃないかと。実際に言われている、overdiagnosisという、アメリカで言われてるのと、それから韓国で言われている過剰診断というのは、かなり日本と立場が違うんです。それから、手術の方法、手術の範囲も、見つかった場合も、それも日本と大きく違いますので、そこは注意して扱われた方がいいと思います。

鈴木座長:はい、あの、オーディエンスのみなさんに多分、アクティブサーベイランスという、私たちは当たり前のように今、甲状腺がんで使っている言葉なんですが、ちょっともう一度説明した方がいいと思うんで。これは、吉田先生、お願いできますか。

吉田部会員:あのー、小さい甲状腺がんを手術した方がいいかどうかというのですはね、私が医者になった頃、40年くらい前から日本の外科医は議論してまいりました。初めの20年間はですね、やはりなんだかんだ言ってもがんなんだからと言うことで、手術をしてまいりました。ところが、今から20年くらい前からですね、ぽちぽちと、こう、手術をしないで様子を見ようと。特に1cm以下のものを、日本の外科医は微小がんと呼んでおりました。それでじゃあ、微小がんというようなものをどうやって扱うかということで、隈病院とがん研とその2つの病院で先行的に患者さんに同意書を渡して、3mm以上に大きくなったら手術しましょうとか色々細かい取り決めをして、ずっとフォローアップするというふうに。半年に一回、あるいは一年に一回のフォローアップをすると、積極的にフォローアップしていくと言うのを、アクティブサーベイランスと言う。で、今かなりそうやって、微小がんの扱いについては、そうやってみていく日本の施設が多くあると思います。だからそれをこの福島でも取り入れて、すぐに手術をする必要のないものは手術しないでアクティブサーベイランスというような格好で医大の方でみているんだろうという具合に私は思っておりますけど。

髙野部会員:アクティブサーベイランスなんですけども、それは大人と福島の子どもで大きく状況が違うと思います。まず、子どもの場合は、がんと診断されることが非常にその子にとって大きなデメリットになります。要するに、われわれ専門家は甲状腺がんは非常に予後がいいと言うふうに知ってますけども、世間一般では、その子たちは、診断されたその時から小児がん患者です。それから、もうひとつ、私自身も経験したことですけども、その世代の子どもたちをアクティブサーベイランスしようと思っても、結局、進学があり、就職があり、結婚したり、子ども産みたい、もう絶対に迷います。で、結局、何年か経ってから手術しようとなって手術しました。じゃあこれはアクティブサーベイランスはどうだったんだろう(?聞き取りにくい)という話になってしまいます。だからもともと大人と子どもは非常に違うと。特に福島の子どもは、今、福島の子どもたちは将来どんどんがんになるという風評被害が出ています。そんな中で子どもたちにがんという診断をつけるアクティブサーベイランスは非常に残酷なことだと私は思います。

祖父江部会員:あの、ちょっと提案なんですけど、利益・不利益の中身をですね、何を記述するかということについてちょっと議論があるとこなんですけど、一方で、今のIC(注:インフォームドコンセント)の説明文書できちんと説明できてるかという、それを補足するであろうというのが前回のコンセンサスだったと思います。ですから、待ってはおれないわけで、きちんと部会の間もですね、作業をして、ICの文書を、その説明文書の中における利益・不利益の検討をどうするのかの案を作らないとですね、なかなか進まないと思うので、何かワーキンググループをですね、あるいは福島医大の先生方にも入っていただいて、その案を作っていただいてこの部会で検討するという形にした方が、私はいいと思います。

鈴木座長:それは私も、あの、なかなか限られた30分くらいの間で議論が出尽すわけではありませんし、はっきりした文書を仕上げて行くためには、やはりそういう下準備で少しICを作る図案を作る必要があるだろうと思います。それから、もうひとつ、あの、こういう文章で伝えるって言うだけではやはりうまく伝わらない可能性がある。今、髙野先生も、そういう診断を受けること自身が非常に精神的なダメージが大きいんじゃないかというようなこともありましたし、まあ、現在も、がんと診断されたあとのケア体制というのは県立医大でしっかり取ってもらっていると思いますが、あの、その辺も含めてですね、少し再整理してみた文面を、まあこの次は準備していきたいと思います。よろしくお願いします。

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志村氏が「資料3−1 学校における甲状腺検査について」を読み上げ、現在の実施状況と開始の経緯について説明。
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2.「資料3-2【髙野部会員・祖父江部会員資料】県民健康調査における甲状腺超音波検査の実施体制および検査方法の問題点と改善案」に関する議論の書き起こし



鈴木座長:この資料3−1を準備してもらったのは、あの、この後、髙野先生・祖父江先生の意見書の中で、一番最初に、学校検診というのはどうしても強制性があるから倫理的に大問題であるという強い部分があったためです。あの、私自身は、きっちり同意の取れた人だけが受けるという形になってますし、現実に100%の受診率を達成してるわけではなくて、きっちりと受診しないことを選ぶ人もいるという現実。それから、まあ、ここにあるように、決してこれ、検査のやり方として最初からこういう形を取ったということがある。学校、あるいは父兄との同意のもと、現在の形になっていると理解しておりますんで、この資料を準備していただきました。 

では、続けて資料の3−2。これは「県民健康調査における甲状腺超音波検査の実施体制および検査方法の問題点と改善案」ということで、髙野先生・祖父江先生から出されていますが、髙野先生、簡単に説明をお願いします。

髙野部会員:県民健康調査の問題点の改善案としまして、1番として検査実施体制上の問題点、2番として検査方法の問題点としてリストアップさせていただきました。検査体制上の問題点につきましては、さきほど学校検診の件が出ましたけども、あの、超音波を行うには強制性があってはいけないということが大原則なんですが、現時点では授業の合間に検査が実施されており、検査拒否の意思を示しにくいため強制性を持つと言うことが言われています。実際あの、授業の合間に行われてしまうと、検査を受けない子どもたちは、授業中教室でポツンと残っている現状をうかがっています。ですから、原則、放課後あるいは休日に限定して検査すべきではないかと考えます。それから、これは補足的な事項ですけども、学校で検査を実施していることで、対象者に健康改善を目的とした他の健康診断と同様な検査であると誤解される可能性がある。多分、おそらく、たとえば先ほど祖父江先生も言われましたアンケートを取ると、そういう意識の保護者の方が非常に多いんじゃないでしょうか。ですからこの辺は、説明文の内容と、特に健康改善を目的とした検査ではないことを学校関係者に周知する必要があるんじゃないかと思います。

それから2番目は検査方法の問題点。これはさきほどのメリット・デメリットの話にも繋がりますけども、検査の対象者に対する有害性を提言するための検討をすべきである、ということで、別紙の方で参考文献が書いてありますけども、JAMAのUS Preventive Services Task Forceによれば、利益・不利益のバランスの上で不利益の方が勝ってしまっているということで、まあこれは問題であろうと言うことが言えると思います。また、がんの治療等に伴い、要するに頭頸部に大量に被ばくした症例についてどのようにフォローするかということでいくつかガイドラインが出ておりまして、こちらも参考文献に載せていますけども、今出ているガイドラインの方、参考文献からご覧になれますけども、③ー5になります。まず、後ろの方で3つの団体から推奨が出てますけども、いずれもUSではなくて触診の方を推奨しているということで、それから、アメリカ甲状腺学会の方からガイドラインが出てますけども、こちらの方も、まず診察すべきだと。診察して異常があった場合、画像検査を考慮すべきということをリコメンドしています。ですから、このような国際的な背景もあるということから改善案を提案しますけども、最初から超音波をするのではなくて、触診をした上で超音波検査による精査の必要性を判断する。あと、過剰診断を減らすためには超音波検査の件数を減らすしかありませんので、超音波検査の対象年齢を制限する、超音波検査の実施頻度を下げることを提案させていただきたいと思います。以上です。

鈴木座長:はい、あの、まず、問題点の1の方は、今、(説明が)あったように、決して強制性を持って始めてるわけではなくて、きっちり、あの、検査当日になって同意しますかどうかって言うと強制性ってのが十分あるかと思いますが、事前に、これはあの、意思表示をしてもらった上でやってるということになってます。私はこれは、かなり髙野先生の危惧しすぎかなと言う風に思っています。

で、②の方ですね。これは現在、説明と同意書を書き換えてる最中ですので、その中で十分書き込めば解決する問題ではないかと。決して一般の健康改善を目的にしたものではないと言うのは、ここで十分書き込めるんではないかと思ってますので、ここはICの方の話に継続?して行くのかな、と。

で、検査方法の問題点で、これは私、あの、髙野先生、文献の読み方、少しバイアスがかかっていらっしゃるかと非常に不安に思ってます。まずあの、子どもに関するガイドラインとしては、『JAMA』ではなくて『Thyroid』の方ですよね。これは、たとえば、リコメンデーション4(B)、一番下のところに、”Therefore, routine screening US in high-risk children can neither be recommended for nor against until more data become available.”と言うことで、あの、このリコメンデーションが書かれた段階(注:2015年)での文献調査では、積極的な支持も積極的反対もできないというのが、このリコメンデーションなんです。実は、この後のリコメンデーションとして、3つ目の『Cancer Treatment Review』、これがクレメントたちの論文なんですが、ここの中では、はっきりと、どちらかと言うと、超音波を使った場合のベネフィットとdisadvantage、まあリスクをしっかりと説明して、本人と医者が話し合った上でちゃんとUSを使いましょう、というようなリコメンデーションになってるかと思います。で、先生があげた所は、まずこれまでどうだったかという所の、一番最初の文献のサーチしたところでの表をたまたまポッと出してきただけで、実際の中身を読んでいただくと、そういう内容になってて、その精神?というのは、今回のIARCのリコメンデーションの中の、どちらかと言うとアクティブサーベイランスも含めたような形での、スクリーニングじゃなくてモニタリングというような概念に入って来てるかと思いますんで。決して、国際学会が超音波じゃなくてpalpation、触診でやりましょうと言うふうなのを子どもに対して今、積極的に勧めているわけではないと言うふうに理解してます。で、特に今、吉田先生の方からもご意見あったかと思いますが、小さいがんで、本当に今、手術しないで、アクティブ・サーベイランスの対象でいいのかどうかということを判断するのは、触診ではできないですよね。ですから、なんかその辺も少し、あの、髙野先生とまあ、私の意見はあまり強く言ってもしょうがないんですけども、国際的な流れと少しズレがあるような気がしております。

南谷部会員:小児科の立場からしますと、教育委員会というのは非常に強い力を持っていますよね。で、教育委員会、あるいは父兄からの要請があるというのは、かなり強いことだと思うんで、それに関して色々、僕らがどうかという立場じゃないかなと言う気がちょっとしますね。で、あとはですね、まあスクリーニングに関してですけど、福島県の「外」ですよね。たとえば私が住んでいる千葉県はですね、柏とかホットスポットがある地域がたくさんあるんですよね。そういう地域は、NPO団体が色々、もう勝手に甲状腺の検査とかしてるわけですね。で、そういう検査に殺到するわけですね。それから、ちょっと定かではないんですけども、市町村がその検診の費用を、まあ半分負担するとか、そういう自治体が絡んでやってる所も結構あったりしますんで。ですからまあ、ちょっと大阪と千葉と、なんて言いますかね、放射線に対する受け止めが違って、かなり千葉県の人は福島県から離れているけども、福島から避難した人じゃないですけども、そういうことでかなり気にしている人は多いと思いますんで、そういう状況で福島県が今の体制を改めてしまうと、要は、スタンスとしては、髙野先生は被ばくの影響はないっておっしゃってましたけども、まあその最初の政府の発表をみんな信じなかったというのが原点で、みんなまあ、隠蔽してるんじゃないかと、そういうことから始まっているわけですから、今の状況で想定外の甲状腺がんが見つかったということで、それで検査体制を縮小すると言うと、また何か色々言われるような気がします。

祖父江部会員:今の髙野先生の説明でですね、『Cancer Treatment Review』の方で触診を勧めている。まあ、これ、私も専門ではちょっとないのではっきり断言はできませんけども、少なくとも、放射線治療を受けた子どもにおいて、甲状腺がんのサーベイランスをする時に、超音波ではなくThyroid palpationですね、触診を推奨するというガイドラインが、3つの団体それぞれでconcordance、まあ一致して主張してるという。ですからまあ、超音波検査をすることと同様というかそれ以上に、触診ということは結構、あの、モニタリング、サーベイランスの手法としては採用されてるんじゃないかということが、僕は言えるんじゃないかと思うんです。で、その上で、学校検診の際にですね、あの、まあ、授業の合間部分にですね、まあ、やられていると。強制性はないかもしれませんけども、まあ、やらないと判断した保護者の方、あるいは本人ですね。教室に残って非常に居づらい感じだと言うようなことを聞いたりします。で、その際にですね、ま、一緒に検査を受けるんだけども、選択肢のひとつに触診、超音波に加えて触診があるということであればですね、検査を受けるということも可能だし、ま、たとえば、触診というものをですね、選択肢のひとつに設けるというのも本気で考えたらどうかと思ったりします。

吉田部会員:あの、甲状腺の触診っていうのはですね、ほとんど分かんないです。ですから、いわゆる、ほとんど、その、放射線を受けた子どもたちに触診をするというのはですね、radiation thyroiditisというのがあります。そちらの方で、それをdetectするのはいいのかもしれませんけど、それからがんが出てきた時に、その触診で見つけるってことはほとんど不可能ですので、やはりあの、甲状腺の超音波ってのは非常に無害ですし、いい方法だという具合に私は思っております。

南谷部会員:私も吉田先生の意見に最も賛成で、スクリーニングをする場合はかなり多数の医師が甲状腺を触るんですけども、私も甲状腺が腫れてると言われて紹介される患者さんいっぱいいますけども、ほとんど甲状腺じゃなかったりします。甲状腺を専門にしてない医者が触って、甲状腺が分かるどころか、結節が分かるとはとても思えないです。そういう意味では、超音波でないと客観性は保てないような気がしますよ。

祖父江部会員:ですから、超音波で見つけるようなnoduleを見つけようとしていないんですね、触診というのは。ですから、しない、ということでしょうか。

鈴木座長:あの、よろしいでしょうか。これも前回、ちょっと議論したんですが、結局、大きい甲状腺がんは、素人でも見つけられます。あの、5センチとか、そんな大きさだったら、誰でもって言うか、一応、その目で見れば見つけられますし、もうちょっとちっちゃいやつでも、慣れた人だと見つけると思います。ただ、その段階で見つけた時に、どういう手術方法になるかって言うと、一般のスタンダートは両側の甲状腺摘出になりますし、結構広い郭清になって、で、アメリカのこのJAMAなんかのリコメンデーションとか、あの段階のですとね、放射性ヨウ素の治療を一緒に組み込むわけです。要するに、そういう治療を前提にした触診法なんですよ。だからやっぱり、今、日本でやろうとしてる、早期発見でなるべく手術野の少ない治療を選択しよう、なるべくQOLを残したものにしようって時は、触診法では相当問題があるんだろうと私は思ってますが。

祖父江部会員:なぜこの『Cancer Treatment Review』でですね、Thyroid palpationというのが推奨される方法だと書いてあるんですか?

鈴木座長:えっと先生、これ、もう一回先生に文献を送ったと思いますが、これは一番最初に既存のものをレビューしたんです。その中で、じゃあ、彼らはどういうふうなリコメンデーションにしようかって言って、その後、ズルズルズルといっぱい書いてまして、たとえば、palpationの、触診法のメリット・デメリットも書いてますし、超音波のメリット・デメリットも書いてます。で、そういうのを理解した上で、医者と患者さんと親御さんとで話し合って、USを使うんだったら、超音波を使いましょうと言うのがリコメンデーションになってます。決して、あの、これで全部やるべきだと言うようなリコメンデーションではないですが、あのそういう、USを否定するようなリコメンデーションではないです。

祖父江部会員:否定はしていません。選択肢のうちにpalpationも入れたらどうですか、ということです。(注:発言後に髙野氏が座ってる方向をちょっと向いたように見えた。)

鈴木座長:はい、ですから、palpationを入れるという議論は、さきほど言いましたけども、今の日本の術式の考え方とはあまり合ってないと言う所だと思います。

髙野部会員:あの、この『Thyroid』の論文、それから『Cancer Treatment Review』の論文ですけど、いずれも触診とか超音波検査について議論をしてて、結局、超音波検査はリコメンドしてないんです。その理由というのはやはり、overdiagnosis、これが__を下げるという理由に違いありません。で、もしも超音波検査が非常にいいもの、有益なものであって、無症状の若年者に超音波をあてていいものだったら、もっと世界的に広まっているはずです。それがされないと言うことに、ちょっとわれわれ、神経を尖らす必要があると思います。

吉田部会員:あの、超音波ってのは、日本で非常に早くから発達しててですね、欧米というのは、非常に日本の方に引っ張られてやったものなんですね。ですから、その影響がかなりあるだろうと思いますし、今、触診、触診って言われましたけど、たとえば乳がんの世界で、乳がんの検診をする場合にですね、触診はもう今、根拠がないと、客観性がないということで、否定されています。それでマンモグラフィーしましょうと言うことになっております。それと同様にですね、超音波で見つけることが悪いという、超音波検査そのものが悪いんではなくてですね、もし悪いとしたらですね、見つけたがんをどういう具合に取り扱うかという、その方法の部分で、みんな手術してしまうとかって言うような、韓国みたいなことが取られるのが悪いのであってですね、それに対してアクティブ・サーベイランスなり、色々解決案がありますので、その精度をもっと高めようというような努力をする方が正しいんじゃないかな、というふうに思いますけど。

加藤部会員:髙野委員とか祖父江委員の意見の、一般的な甲状腺がんのスクリーニングとか、この福島の原発事故後の調査を一緒にして扱っているところが、うーんどうかな、と言うふうに思いますね。今までそんな子どものスクリーニングとかやった所はひとつもないですので、実際に出たきたデータで、そういうふうな話になってきてるんだと思いますけど。だからやはり、原発事故後、やる時にですね、やはりロールモデルだったのはですね、チェルノブイリなんですよね。で、チェルノブイリの甲状腺って言うのは、子どものがんが多かった。それが非常にみなさん危惧していると思うんです。それで始めたことなんですけど。今の話というのは、一般的な甲状腺がんの話を、大人の話をしてると。で、実際われわれがやってるのは、__の、将来がある子どもたちのために何とかしようと言うふうなことですので、それに対するデータと言うのは、ほとんどないんです。どこの大学に出しても?ないと思います。わたくしもかなり甲状腺の子どものがんをやってますけど、子どもの甲状腺がんは特殊です。ただし、それに対する臨床的なフォローアップデータとかそういったものは非常に限られておりまして、今出してるJAMAとか色んなものってのは、大人の甲状腺がんに対してのものなので、やはり、それと分けて考えていいんじゃないかと言うふうに思います。

阿美弘文部会員(甲状腺外科医、福島県病院協会 推薦):わたし、市内で甲状腺外科をやってまして、その立場からしますと、あまりその、反回神経麻痺とか出血が起こってという契機で発見される甲状腺がんって実際に少ないって___、自然に見つかる甲状腺がん__がほとんどだなっていう印象なんですね。___、触診って本当に不十分なのかって言うのはちょっと何とも言えないかなと思いますし、超音波で過剰診断が出るんじゃないかなという意見も__、僕自身ちょっと、どう言うことが一番正しいのかと言うことを決めかねている状況ではあります。(注:非常に聞き取りにくかった。)

鈴木座長:触診法、あるいは超音波を使った検査、それぞれメリット・デメリットがあると言うのは、クレメントたちの論文にも書いてあります。今までの小児甲状腺がんに関するリコメンデーションで、超音波を使った方が間違いなくいいと言うようなデータってのはまだまだ少なくて、実際は日本の、この部会の中でも前々回になりますか、吉田委員の方に、小児の時期に診断した症例の日本の報告をお示しいただきましたけど、まあ、ステージが早いほど再発率が少ないというようなデータが少し出てきたくらいで、非常に大規模な調査の中で、早期診断と言うのがどの程度のメリットがあるのかって言うエビデンスは、まだまだ蓄積が足りないってのが現状だと思ってます。その辺が、あの、超音波を使うことに対して積極的反対もしないし賛成もしないという、中立的なリコメンデーションになってたと言う所だろうと思います。現実に今、この福島では、超音波を使った検診を続けてるわけなんでして、そこの中で間違いなく色んなエビデンスが今、集まってきている。大体どういうふうな、で、また手術した症例も増えて来てますんで、それがどういうふうな予後をたどって行くのかって言うのも、従来、小児の場合ですと、非常に大雑把に病理分類をしてやってたんですが、より細かい病理分類をした上での解析も将来可能になって来るんじゃないかと思います。で、その辺が出ないと、本当の意味で今、髙野先生の疑問に対して答えるエビデンスと言えるだけのデータってのは出て来ないのかもしれませんが、現在それがないからと言って、じゃあまったく早期発見の、間違いなくそれ自身はQOLを改善する利点はあるわけですが、それを_した上でもう一回、palpationに戻るのかという疑問は、私は、なかなか受け入れられないんじゃないかと言うふうに思っております。

あの、どうしましょうか。なかなか議論は収束はしない。こういうふうに立場の違いと言うのは残るんだろうと思ってます。で、そういう意味では、クレメントたちと同じようにですね、インフォームドコンセント、同意書を取る時に、超音波検査でどういうことが、実際、早期診断のメリット・デメリットと同じ話になるんだろうと思いますが、それをきっちり書き込んだ物を作って行くというような、形になるのかと思います。あくまで判断してそれを受けるかどうかと言うのは、やっぱり親御さんと子どもさんが判断する話なんで、それに対して十分説明を尽くすと。ただまた、早期発見された場合の、まあアクティブサーベイランスというような考えも出されましたが、いま、医者の側ではそういうようなことをスタンダードとして考えながら、みなさんをフォローして行きますというようなことを、ある意味、書き込むのかと思っています。その辺をこの次までに、文章にもう少しまとめて準備していきたいと思っています。そんなところでいかがでしょうか。

髙野部会員:この資料ってのはわれわれ、元々、倫理問題として出してるものですので、特にこの学校検診に関しては、倫理委員会とかで検討しただく必要があります。ですから、現在、福島県立医大の倫理委員会がその役をしていると思います。そちらの方で学校検診の問題についても、これで__、是とするか否とするかは、判断していただきたいと思います。

鈴木座長:これについては、すでに、今の研究計画書は倫理委員会にかかってて、その中にこの検診の体制も含まれているんではないかと私、推察するんですが?

安村 誠司 氏:(福島県立医科大学医学部 公衆衛生学講座教授):鈴木先生の仰られたとおりです。(注:安村氏は、県民健康調査の研究プロトコル論文の筆頭著者であり、検査体制設定に最初から関わってきた。)

鈴木座長:一応、倫理委員会で、この方式は認められてるというふうになってるかと思うんですが。

髙野部会員:それはあの、県が開始当初の審査ですか?

安村氏:そうです。

髙野部会員:この学校検診は、その後で始まったのではないでしょうか?

安村氏:このやり方での倫理審査を受けて、承認されています。

髙野部会員:了解しました。

祖父江部会員:学校検診のことだけでなくてですね、16歳以上の未成年に関しての同意の取り方に関しては、どうですか? 倫理審査でこのやり方で認められてるわけですか?

志村 浩己 氏(福島県立医科大学医学部 臨床検査講座教授、放射線医学県民健康管理センター 甲状腺検査部門長):現在、あの、二次検査に関しては16歳以上は本人の同意も得ている方針。一次検査は20歳以上で本人の同意、20歳までは保護者の同意という同意書の書式で承認はいただいています。で、前回、お答えさせていただきましたように、段々、指針も移り変わっておりますので、今回の議論を踏まえて、また書式を見直したりと言うことで、もう一回、修正申請をすることになると思いますので、その時また、一緒に検討させていただきます。(注:志村氏は、28年度より、前任の大津留晶氏から甲状腺部門長を引き継いでいる。)

髙野部会員:今思い出したんですけども、あの、超音波検査の実施に関する提案についての審査と言うのは、されてるんでしょうか?

志村氏:あの、前回お示しさせていただきました同意のお知らせの文章とその同意書を提出して、あの、最初は承認から色々移り変わりがございますので、その都度、修正審査をしていただいて、追加したものを受診者の方に報告しているという(状況です?)。

鈴木座長:髙野委員、今、同意書の文面を変えて、そこの中に甲状腺検査のメリット・デメリットもきっちり書き込んだものが出てきて、それが倫理委員会に再度かかって、と言うふうに私は理解しておりますんで、髙野先生の懸念はその段階で解消されるのではないかと思ってます。

髙野部会員:ちょっと、私が福島県の方に書類__してみたところでは、超音波検査の利益・不利益という所、そこには、超音波検査については、基本的には侵襲性はないと__されてなかったような気がするんです。そこがもし、今の現状のままだとしたら、そこはやはり、審査を再度する必要があるのではないかと思います。

志村氏;研究計画書は__はそうかもしれませんけど、同意書は、あの、その都度提出してますので、先生が求められてるように出してるかちょっと分からないんですけども、まあ、その都度、可能な範囲で修正が__しております。で、まあ今回、前回は先行検査の評価部会・検討委員会の結論を踏まえた出ておりますので、今回また、本格検査2回目の評価部会・検討委員会のご決定を踏まえて、また_____。

鈴木座長:はい。では、どうもありがとうございました。あの、今日はかなり突っ込んだ議論がされました。あの、必ずしもこの部会の中で、ハーモナイスされるというのは期待はしておりません。やはり色んな意見があるというのを、いかに県民の皆さんにもちゃんと伝えた上で、検査を受けてもらう体制を作っていくことが一番重要であると思っておりますんで、あの、ぜひこの次までに具体的な文面として、今の検査のメリット・デメリット、その辺を分かりやすく書いた書式、もしそれで足りないんであれば付属のパンフレットようなものも使うと言うような形で準備を進めて行きたいと思ってます。その他、ございますでしょうか?特にないようでしたが、第11回の甲状腺検査評価部会、これで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

(書き起こし、以上)

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参考:「資料3−2」の「参考文献からの抜粋」に出てくる3つの論文についての解説ツイート
https://twitter.com/YuriHiranuma/status/1058386397801762816












注:最後のツイートで言及されている「4つめの文献」とは、鈴木部会長の、「髙野先生、文献の読み方、少しバイアスがかかっていらっしゃるかと非常に不安に思ってます。」「決して、国際学会が超音波じゃなくてpalpation、触診でやりましょうと言うふうなのを子どもに対して今、積極的に勧めているわけではないと言うふうに理解してます。」と言う発言について、髙野部会員がブログで、「4つのガイドラインにおける議論のいずれも超音波検査を使用するかどうか議論しており、結論として4つのいずれも超音波検査を推奨する方法として最終的に採用していないという点は重要である。」と述べていることに言及している。

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