甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会の議事録より


*非公開コンテンツ

「甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会」(以下、診断基準検討部会)は、日本甲状腺学会、日本甲状腺外科学会、日本内分泌外科学会、日本超音波医学会、日本超音波検査学会、日本小児内分泌学会、日本乳腺甲状腺超音波会議(現在は日本乳腺甲状腺超音波医学会と改名)を総括した「甲状腺7学会」により構成されており、第1回議事録からわかるように、県民健康調査の甲状腺検査の診断基準などの設定に関わった検討部会である。2011〜2013年はいずれも2度づつ開催されており、2013年の2回目(第6回)以降は、県民健康調査検討委員会(以下、検討委員会)の2〜3週間前に開催されるようになった。

診断基準検討部会は、もともとは、「甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会」という名称だったが、途中から「等」が抜けている。

検討委員会の初期座長を務めた山下俊一氏は、2012年度で座長を辞任し、2013年6月5日開催の第11回検討委員会からは星北斗氏が座長を後任した。その後、山下氏は表舞台から去ったように見えたが、実は、検討委員会や甲状腺検査評価部会よりも甲状腺検査に一番近い診断基準検討部会を通して、深く関わってきているのである。(当時は、まだ甲状腺学会の会長でもあった。)診断基準検討部会では、本来なら甲状腺検査評価部会でされるべきような、甲状腺の専門家らでの間の議論がされていることが、議事録からうかがえる。

議事録は、「福島県立医科大学  放射線医学県民健康管理センター デジタルアーカイブ」からアクセス可能である。委員名簿は真っ黒に塗りつぶされているものの、少なくとも第1・2回の委員名簿は、以下のツイート(ツイート内リンクはデッドリンク)のように、2012年1月31日付けの福島県医師会への講習会資料内に掲載されていた。なお、隈病院の宮内昭氏は、2015年8月5日に開催された環境省の第9回 東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議(通称:長瀧会議)において、この検討部会の委員であると自己申告されている。(議事録はこちら

スクリーンショットを抜き出しておく。


こちらは、名簿の拡大版のスクリーンショットである。

検討委員会での流れを振り返ると、甲状腺検査開始から11ヶ月後の2012年9月11日に開催された第8回検討委員会で二次検査結果が公表され始め、初めて甲状腺がん1例が診断されたと口頭発表された。2013年2月13日に開催された第10回検討委員会では、計10例の甲状腺がん・疑いが診断され、うち3例は手術で確認済みであると口頭発表された。2013年6月5日開催の第11回検討委員会では、初めて、二次検査での細胞診結果が公表された。

2013年11月12日開催の第12回検討委員会の9日前には第6回診断基準検討部会が開催され、検討委員会の前に情報共有されたことがうかがえる。2014年1月19日開催の第7回診断基準検討部会以降は、2〜3週間後にせまる検討委員会で発表予定の甲状腺検査結果が協議・議論項目として議事次第に挙げられている。

鈴木眞一氏の検討委員会での発表は、2015年2月12日開催の第18回検討委員会が最後の舞台となり、2015年5月18日開催の第19回検討委員会からは、大津留晶氏が後任となった。しかし、鈴木眞一氏は診断基準検討部会に初回からずっと関わっており、表には出なくとも、内部での深い議論に関わっていると思われる。検討委員会での大津留氏の説明は、その直前の診断基準検討部会での議論(黒塗りでない場合)と照らし合わせると、理解が深まる部分もある。

2014年4月29日開催の第8回診断基準検討部会では「病理診断コンセンサス会議」が発足した。議論内容は非公開で、2015年10月17日に開催された第9回病理診断コンセンサス会議以降は、会議が開催された様子がない。また、第8回診断基準検討部会の資料には、県内・県外の検査機関用の一次検査・二次検査マニュアルが含まれており、検査内容や問診票の詳細がわかる。

2014年8月3日開催の第9回診断基準検討部会からは、協議内容が議事録に少し反映されるようになり、第11回診断基準検討部会以降の議事録には、かなりの議論内容が記述されている。

以下は、第1〜19回診断基準検討部会の議事録より抜粋してテキスト化したものである。第10回以降は、議論内容や前回の概要記録の内容の記載が増えて充実し始めたため、その部分は全文テキスト化したが、それ以前は、議論項目が抜粋のみだったり、個人的に興味深い資料への言及にとどまっていることが多い。また、議論内容で興味深い箇所は、赤色で示してある。

❇なお、福島県で行われている甲状腺検査は「がん検診」と思われがちだが、第2回甲状腺検査評価部会の議事録では、鈴木眞一氏が、「福島医大の健診は検査の『検』を使っていません。健康診断の『健』です」と述べている。(「検診」と「健診」の違いについてはこちらを参照のこと)


第1回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2011/09/18)(甲状腺検査開始前の会議)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/307/000307276.pdf
4 議事
(1)報告
 ・県民健康調査の概要
 ・甲状腺検査の概要
 ・放射線医学県民健康管理センターについて
(2)協議
 ・一次検査での観察項目及びレポート
 ・一次検査施行者の妥当な技術水準
 (今後目標とするレベル及び現行で容認できるレベルについて)
 ・診断基準
 ・超音波診断のコンサルテーションボード
 ・細胞診の基準
  ・細胞診のコンサルテーションボード
 ・手術適応についての小委員会
 ・二次検査時の超音波レポートと追加検査項目
 ・二次検査施設の認定基準
  ・県外施設の認定(一次、二次)
  ・メーリングリストの開設
 ・今後の学術的支援(講演会、講習会等)
 ・今後の検査の支援について
  ・超音波検査士の雇用
  ・地元医師会等との連携

資料一部:
診断基準詳細情報
避難区域等からの避難先市町村(県内)の状況
避難区域等からの避難先都道府県の状況(甲状腺検査対象者)

第2回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2011/12/18)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/307/000307277.pdf
4 議事
(1)報告
 ・第1回委員会議事録
 ・現在までの進捗状況
(2)協議
 ・結果の開示
 ・A2判定に対する説明文
  ・二次検査の実施方法
 ・県外の施設認定、一次検査、二次検査、機器の基準、データの取扱、契約
 ・県内での講習会、説明会等
 ・ローカルルールによる地元医師の参加
 ・県外施設認定後の対応

報告1
第1回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 記録(抜粋)
4. 超音波診断のコンサルテーションボード
 ・判断が困難な事例について、学外の委員に助言を求める。
 ・毎回全員に助言を求めると負担が大きいので、2~3人ごとに順番にお願いする。
6. 細胞診のコンサルテーションボード
 ・超音波診断のコンサルテーションボードと同様の仕組みを作る。
7. 手術適応についての小委員会
 ・当部会の外科医を中心に数人追加して組織する。
8. 二次検査時の超音波レポートと追加検査項目
 ・追加検査項目として、聞き取り調査などによりヨードの推定摂取量を把握したい。
16. その他
 ・訴訟リスクがあるため、補償・賠償に係る枠組みも明確化しておく必要がある。
 ・リスクコミュニケーションの観点から、危機管理及び広報に係る体制を確立すべきである。

第3回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2012/07/07)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/307/000307278.pdf
議事
【報告】
(1)第2回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討委員会について
【協議】
(1)甲状腺検査(二次検査)後の対応について
(2)県外施設の認定、公表について
(3)甲状腺検査(一次検査)の結果報告について
(4)今後の県内での認定講習会への対応

第3回資料
甲状腺検査講習会概要

第4回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2012/11/24)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/307/000307279.pdf
4 議事
【報告】
(1)第3回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 概要記録
【協議】
(1)一次検査、二次検査の進捗状況と問題点
(2)県外検査の開始について
(3)判定の結果通知の方法について
(4)自己情報開示について
(5)講習会の認定基準について

報告1
第3回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録 (注;ここでは詳細は割愛)
1 報告
(1)第2回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討委員会について
2 協議
(1)甲状腺検査(二次検査)後の対応について(内容は黒塗り
(2)県外施設の認定、公表について
(3)甲状腺検査(一次検査)の結果報告について
(4)今後の県内での認定講習会への対応

第5回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2013/05/12)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/307/000307280.pdf
4 議事
【報告】
(1)第4回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 概要記録
(2)甲状腺検査(一次検査)実施状況について
(3)甲状腺検査(一次検査)結果とりまとめ状況について
  (3-1)甲状腺検査(一次検査)の判定区分別(結節・嚢胞)による集計
  (3-2)甲状腺検査(一次検査)の判定・年齢・性別による集計
(4)甲状腺検査(二次検査)実施状況について
  (4-1)平成23年度実施市町村
  (4-2)平成24年度実施市町村
(5)県外検査機関による甲状腺検査実施状況について
(6)甲状腺検査平成25年度スケジュールについて
【協議】
(1)甲状腺検査(二次検査)細胞診結果について(平成23年度実施市町村者対象)
(2)県外検査機関での二次検査実施について

報告1
第4回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録(注:ここでは内容を一部割愛)
1 報告
(1)第3回委員会議事録
2 協議
(1)一次、二次検査の進捗状況と問題点について
   微小がんについて意見が交わされた。また、二次検査体制の強化が求められることなどの意見が出された。
(2)県外検査の開始について
(3)判定の結果通知の方法について
(4)自己情報開示について
(5)講習会の認定基準について

 その他 
 ・福島県内における現在の嚢胞の所見率について、福島県外(長崎、山梨、青森)で 「甲状腺有所見率調査」を行うこととなったが(長崎では既に実施されている)、弘前での検査が12月中と指定されているため、検者を急募することとなった。

第6回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2013/11/03)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/307/000307281.pdf
4 議事
【報告】
(1)第5回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 概要記録
(2)甲状腺検査(一次検査)実施状況(県内検査)
(3)甲状腺検査(一次検査)の判定区分別(結節・嚢胞)による集計
(4)甲状腺検査(二次検査)実施状況
(5)県外検査機関による甲状腺検査実施状況
  (5-1)甲状腺検査(県外検査)実施状況
  (5-2)都道府県別甲状腺検査(県外検査)実施状況
【協議】
(1)癌症例についての経過報告
(2)低分化癌などの特殊型について
(3)細胞診結果について
(4)濾胞性腫瘍の取り扱いについて
(5)県外二次検査拠点の基準等について
(6)県内講習会および認定試験について
(7)びまん性甲状腺腫の取り扱いについて
(8)保険診療後の紹介先からの情報のフィードバック

報告1
第5回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
(1)第4回 甲状腺検査専門委員会判断基準等検討部会記録について
(2)甲状腺検査(一次検査)実施状況について 
(3)甲状腺検査(一次検査)結果とりまとめ状況について 
  ・報告1から3について資料に基づき説明した。
(4)甲状腺検査(二次検査)実施状況について 
  ・資料に基づく説明と、画像による事例紹介をした。
   事例紹介については、対応した医師から所見を述べられた。
(5)県外検査機関における甲状腺検査実施状況について 
  ・資料に基づき説明した。また、県外検査機関での二次検査実施について依頼をした。
(6)甲状腺検査平成25年度スケジュールについて 
  ・資料に基づき説明した。

報告事項終了後、甲状腺手術の事例4件を紹介し、各委員から助言、意見を伺った。

2 協議
(1)甲状腺検査(二次検査)細胞診結果について(平成23年度実施市町村対象者)
(2)県外検査機関での二次検査実施について
 ・県外検査機関で手術が実施される事例が生じた場合、どのように情報共有するかについて議論された。
  手術前後で情報共有を図ることが望ましいという事がまとまったが、具体的な方法と倫理面での裏付けについては検討が必要とされた。

3 その他 
 小児手術の特徴について 
 ・小児の甲状腺の手術についての意見交換がなされた。

第7回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2014/01/19)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/307/000307282.pdf
4 議事
【報告】
(1)第6回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 概要記録
(2)県内検査実施機関(二次検査・一次検査)について
(3)県内講習会および認定試験について
(4)第13回検討委員会について
【協議】
(1)第14回検討委員会について
(2)手術症例について
(3)県民健康管理センターから保険診療担当医療機関への連携運用について

報告1
第6回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
(1)第5回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 概要記録
(2)甲状腺検査(一次検査)実施状況(県内検査)
(3)甲状腺検査(一次検査)の判定区分別(結節・嚢胞)による集計
(4)甲状腺検査(二次検査)実施状況
(5)県外検査機関による甲状腺検査実施状況
  ・報告1から5について資料に基づき説明が行われた。
2 協議
(1)癌症例についての経過報告
(2)低分化癌などの特殊型について
(3)細胞診結果について
(4)濾胞性腫瘍の取り扱いについて
  ・事例報告を行い、意見交換がなされた
(5)県外二次検査拠点の基準等について
  ・県外二次検査拠点の基準について、各委員から意見を伺った。
(6)県内講習会および認定試験について
  ・認定試験の受験資格の説明や12月に認定試験を行う予定であることについて報告が行われた。
(7)びまん性甲状腺腫の取り扱いについて
  ・びまん性甲状腺腫の取り扱いについて各委員から意見を伺った。
(8)保険診療後の紹介先からの情報のフィードバック
  ・紹介先からの情報のフィードバックについてどのように行うかについて議論が行われ、継続審議となった。

第7回資料:
甲状腺検査実施基準

医療機関別 甲状腺検査(県外検査)受診状況
p.35 検査機関ごとの検査人数と都道府県別小計

議題3(p.41) 
県民健康管理センターから保険診療担当医療機関への連携運用案
1.二次検査終了時に医師が本人・家族と相談し、次回受診医療機関名と受診時期を決める。その結果を医師が二次検査受付票に必要事項(紹介状作成の要・不要、紹介目的。次回診療時期紹介先医療機関および医師、紹介先へのコメント)を記載。原則的には紹介状「要」にチェックして頂く様に二次検査担当医療機関に通知しておく。
2.センターにて紹介状原案を作成。内容は定型文+二次検査受付票に記載された紹介先への医師コメントを元に作成。
3.二次検査担当医師に修正・承認を受ける
4.医師により擦印。
5.予約未取得の場合は、紹介先病診連携部門に連絡し、次回診察時期を参考に予約を取得(あらかじめ医療機関の病診連携部門連絡先と予約取得方法を確認しておく)
6.患者あるいはその家族に連絡を行い、取得した予約を通知した上で都合を聞き、都合が悪い場合は予約を再取得する。
7.紹介先医療機関に下記を送付し、電子カルテ等への記録を依頼する
 1)紹介状
 2)報告書ひな形
 3)一次検査所見票(複写)
 4)二次検査所見票(複写)
 5)二次検査血液・尿検査結果(複写)
 6)超音波画像CD(一次・二次)
8.患者あるいはその家族に下記を送付する
 1)紹介状封書(診療情報提供書(紹介狀)+報告書ひな形)
 2)予約確認書(予約診療医療機関・診療科、予約日を記載)
 3)予約医療機関より発行された予約確認書(発行されている場合のみ同封)
9.予約当日、8で送付した書類(二次検査終了時に渡された予約票があればそれも持参)と保険証を持参して医療機関に受診
10.診療担当医師に診療情報提供書(報告書)を返送していただく。
 1)経過観察依頼の場合:初診時の超音波検査、血液検査などの所見を記入して返送して頂く。
 2)治療依頼の場合:術前検査所見、手術所見、病理診断結果について記入して返送して頂く。


第8回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2014/04/29)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/307/000307283.pdf
4 議事
【報告】
(1)第7回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 概要記録
(2)第14回検討委員会(H26.2.7 開催)にかかる甲状腺検査部門資料
(3)病理診断コンセンサス会議(仮称)の報告
(4)甲状腺検査(一次検査及び二次検査)の実施マニュアル
(5)県外検査機関一覧表
(6)県外出張検査
【協議】
(1)第15回検討委員会(H26.5.19 開催)にかかる甲状腺検査部門資料について
(2)手術症例について

報告1
第7回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
(1)第6回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 概要記録
(2)県内検査実施機関(二次検査・一次検査)について
(3)県内講習会および認定試験について
(4)第13回検討委員会について
 ・報告(1)から(5)について、資料に基づき報告が行われた。

2 協議
(1)第14回検討委員会について
(2)手術症例について
   事例検討を行い、意見交換がなされた。
   また、病理診断の意見を諮るため、コンサルティングボードを設置することについて、了承された。
(3)県民健康管理センターから保険診療担当医療機関への連携運用について
   議題3の資料について、資料に基づき説明が行われた。

資料:
県内・外検査機関用
県民健康調査 甲状腺検査一次検査実施マニュアル(pp.28-36)
2014.1.21制定(一部改正 2014.4.1)

平成26年4月23日
県民健康調査 甲状腺二次検査実施マニュアル ハンドアウト版(pp.37-)
県内・県外検査拠点施設用 改定版
1-1.二次検査の基本概念
(4)二次検査は、保険診療として行うものではなく、保険請求や受診者への負担請求(交通費等は自己負担)を行いません。実施医療機関には県民健康管理センターより契約で定められた交付金が支払われます。
2-1.必要書類
 問診票項目(p.39)
 (1)身長・体重
 (2)既往歴
 (3)甲状腺疾患の家族歴
 (4)食品摂取頻度 (i) 魚介類 (ii) 海藻類
 (5)診断・治療目的の放射線被曝歴
 ※以下成人のみ
 (6)喫煙歴
 (7)アルコール摂取歴
4-1.二次検査初回(受付・問診2)先行検査版(p.43)
 問診内容
 設問1. 今までにかかった病気やけがについて。
 設問2. ご家族の方に甲状腺の病気にかかった方がおられるかどうかについて。
 設問3. 震災後、避難された場合、どのように避難されたか、場所および移動時期を記載して頂く。
4-2.二次検査初回(受付・問診2)本格検査版(p.44)
 問診内容
 設問1. 現在の薬剤服用状況。
 設問2. 薬剤副作用歴。
 設問3. アルコール過敏症の有無。
 設問4. 震災後、避難や転居により移動された場合、移動場所とその日時を記載して頂く。
 設問5. 妊娠・出産の経験について。(該当する年齢の女性のみ)



第9回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2014/08/03)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/307/000307777.pdf
3 議事
【報告】
(1)第8回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 概要記録
(2)第15回検討委員会(H26.5.19 開催)にかかる甲状腺検査部門資料
(3)病理診断コンセンサス会議の報告
(4)県内・県外検査機関一覧表
(5)県外出張検査(新潟県(柏崎市・新潟市))実施結果
【協議】
(1)第16回検討委員会(H26.8.24 開催)にかかる甲状腺検査部門資料(案)について
(2)甲状腺癌症例について
(3)甲状腺結節・甲状腺癌の地域差について
(4)細胞診施行率について

報告1
第8回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録より
1 報告
(1)第7回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 概要記録
(2)第14回検討委員会(H26.2.7 開催)にかかる甲状腺検査部門資料
(3)病理診断コンセンサス会議(仮称)の報告
(4)甲状腺検査(一次検査及び二次検査)の実施マニュアル
(5)県外検査機関一覧表
(6)県外出張検査
  委員より(1)から(6)について報告。
 ・前回の会議で設置することとされた(3)について、委員より説明。 
 ・症例の病理診断については、コンセンサス会議を経て、当検討部会において確定することとされた。
 ・コンセンサス会議における学外の委員について、次回より検討部会の委員として追加することとされた。

2 協議
(1)第15回検討委員会(H26.5.19 開催)にかかる甲状腺検査部門資料について
(2)手術症例について
  議題(1)、(2)について検討を行った。

報告3
第8回甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 病理診断コンセンサス会議(仮称)概要記録 平成26年4月29日(火)10:00~12:00
 ・医大病院の病理診断はtentative report(仮報告)とし、コンセンサス会議を経て検討部会で最終報告とする。
 ・全例検討する方針とする。
 ・午後の甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会に「病理診断コンセンサス会議」の名称を提案する。
 ・次回の開催は6月8日(日)予定。

第2回病理診断コンセンサス会議 概要記録
平成26年6月8日(日)9:00~13:00 福島県立医科大学付属病院 2階病理部 検鏡室
(1)会議の運営について
  ・一例ずつ検討を行い、別途政策した県民健康調査用の病理診断報告書により所見を記入し、委員の承認を得ることとした。
  ・代表はXXに決定した。(黒塗り
(2)症例検討(黒塗り

第3回病理診断コンセンサス会議 概要記録
平成26年6月30日(月)9:00~12:00 福島県立医科大学付属病院 2階病理部 検鏡室
(1)症例検討(黒塗り) 


第4回病理診断コンセンサス会議 概要記録
平成26年7月14日(月)8:55~11:00 福島県立医科大学付属病院 2階病理部 検鏡室
(2)症例検討(黒塗り

議題2 ※取扱注意
甲状腺癌症例について(鈴木眞一)
・二次検査結果
 第13、14、15、16回検討委員会それぞれでの細胞診判定(279件、397件、443例、509例)についての何らかのデータ(黒塗り)
 2014年6月30日現在の手術症例58例
 ・福島医大 55例(良性1、癌54)
 ・他施設  3例
 福島医大手術54例(悪性のみ)(黒塗り
 病理組織型(黒塗り
 術前(黒塗り
 術式(黒塗り
 術後(黒塗り
 資料4 術前微小癌が想定された症例の手術適応の理由(黒塗り



議題3 ※資料回収
甲状腺結節、甲状腺がんの地域差についての解析結果 ver 3(計8ページが黒塗り

議題4 ※取扱注意
細胞診施行率について
 ・二次検査例における悪性ないし悪性疑いの頻度(A1, A2判定を除く)(黒塗り
 ・年度別細胞診施行例における悪性ないし悪性疑いの頻度

pp. 81-85 福島民友新聞記事抜粋(著作権処理未完につき未掲載)

第10回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2014/12/06)

https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/308/000308530.pdf
3 議事
【報告】
(1)第9回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 概要記録
(2)第16回検討委員会(H26.8.24 開催)にかかる甲状腺検査部門資料
(3)病理診断コンセンサス会議の報告
(4)県内・県外検査機関一覧表
(5)県外出張検査(山形県(米沢市・山形市))実施結果
【協議】
(1)第17回検討委員会(H26.12.25 開催)にかかる甲状腺検査部門資料(案)について
(2)「県民健康調査」検討委員会 第4回「甲状腺検査評価部会」(H26.11.11 開催)資料について
 (2-1)手術の適応症例について(医大提出資料)
 (2-2)福島県における甲状腺がんの有病者数の推計(津金委員提出資料)
(3)二次検査におけるLBC(液状化検体細胞診)の併用について
(4)二次検査におけるCEA、カルシトニン測定の実施について
(5)遺伝子検査結果について
(6)手術症例について
(7)細胞診について
(8)その他の画像

報告1
第9回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
(1)第8回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 概要記録
(2)第15回検討委員会(H26.5.19 開催)にかかる甲状腺検査部門資料
(3)病理診断コンセンサス会議の報告
(4)県内・県外検査機関一覧表
(5)県外出張検査(新潟県(柏崎市・新潟市))実施結果

2 協議
(1)第16回検討委員会(H26.8.24 開催)にかかる甲状腺検査部門資料(案)について

(2)甲状腺癌症例について
  委員より、悪性ないし悪性疑い症例のうち福島医大で手術を実施した54症例について説明。
【意見等】
 ・手術症例については、リンパ節転移や反回神経近傍などの理由で手術適用としており、手術適用理由としては妥当との意見があった。

(3)甲状腺結節・甲状腺癌の地域差について
  委員より、先行検査における甲状腺がんの発生頻度などの地域差についての分析結果(速報)を説明。速報値では、会津地域でB、C判定が多く、悪性疑いの頻度は地域差が見られなかった。
  分析結果については精査して、第16回検討委員会へ報告予定。

(4)細胞診施行率について
  委員より、甲状腺検査(二次検査)における細胞診施行率について説明。
【意見等】
  ・過剰診療とよくいわれるのは被包型乳頭癌だが、手術症例の中には被包型がないことから、過剰診療ではないといえるのではないか。
  ・細胞診の施行率について、年度毎に低くなってきているが、これは一定の診断基準のもと、過剰診断にならないように常に診断の質の向上を図った結果と考えられる。

報告3
第5回病理診断コンセンサス会議 概要記録
平成26年10月27日(月)9:00~12:00 福島県立医科大学付属病院 2階病理部 検鏡室
(2)症例検討(黒塗り
 ・次回の開催は、12月6日(土)東京で開催の予定。

議題5
日本甲状腺学会 学術集会における発表のお知らせ
平成26年11月14日

 「第57回 日本甲状腺学会 学術集会」抄録より
 「小児~若年者における甲状腺がん発症関連遺伝子群の道程と発症機序の解明」

第11回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2015/02/08)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/307/000307757.pdf
3 議事
【報告】
(1)第10回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
(2)第17回検討委員会(H26.12.25 開催)甲状腺検査部門資料
(3)病理診断コンセンサス会議報告
(4)県内・県外検査機関一覧表
【議題】
(1)第18回検討委員会(H27.2.12 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
(2)手術症例及び細胞診症例について
(3)びまん性の対応について
(4)二次検査における血液検査の追加について
(5)過剰診断・過剰診療について
(6)今後の検査間隔について

報告1
第10回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
(1)第9回 甲状腺検査専門委員会 診断基準等検討部会 概要記録
(2)第16回検討委員会(H26.8.24 開催)にかかる甲状腺検査部門資料
(3)病理診断コンセンサス会議の報告
(4)県内・県外検査機関一覧表
(5)県外出張検査(山形県(米沢市・山形市))実施結果

2 協議
(1)第17回検討委員会(H26.12.25 開催)にかかる甲状腺検査部門資料(案)について
  委員より第17回検討委員会資料(案)について説明。
【意見等】 
 ・先行検査を受けていない方が、本格検査期間以降の受診した場合はどのようにデータを扱っているのか。
 →先行検査受診の有無に関わらず、本格検査のお知らせが発送された市町村の対象者は本格検査の受診者として扱っている。
 ・線量との関係を評価するためには、本来の先行検査期間でデータを区切るべきではないか。
 その上で、H26.4以降の先行検査の受診者については、別途考察を加えてはどうか。

(2)「県民健康調査」検討委員会 第4回「甲状腺検査評価部会」(H26.11.11 開催)資料について
  委員よりH26.11.11に開催された同会議の一部資料について説明。
【意見等】
 ・B、C判定の中には、がんではないが結節を有している方がおり、その方々への対応について今後検討しなければならない。
 ・過剰診断の話では、不利益ばかりを強調されるが、県民が甲状腺検査を受診して不安の解消につながるなどの利益についても検討し、比較して論じるべきではないか。
 ・過剰診断ということについて、県民からの意見等はいただいていない。この議論を続けても県民不在の議論になるため、本件については大学として、何らかの見解を示したい。(広報より)

(3)二次検査におけるLBC(液状化検体細胞診)の併用について
  委員より二次検査におけるLBC(液状化検体細胞診)の併用について説明。
  現在の二次検査における細胞診については、圧挫法で実施しているが、二次検査の精度向上のため、標本からコロイドや血液の除去が可能で、細胞の回収率が高いLBCの併用を検討している。
【意見等】
 ・同手法は細胞の回収率がよく、検体不適正が半分程度に減るというメリットがある。
 ・一方で細胞が収縮して読みにくいというデメリットはあるが、併用でやることでお多大のデメリットを補完できる。
 ・県外の二次検査実施機関には実施の意向を伺う必要がある。
 →同手法の導入について了承されたため、今後の運用について県民健康管理センター内で別途協議する。

(4)二次検査におけるCEA、カルシトニン測定の実施について
  委員より二次検査におけるCEA、カルシトニン測定の実施について説明。
  細胞診診断を補完するため、通常二次検査で行っている血液検査に追加で、CEA、カルシトニン測定の実施を検討している。
【意見等】
 ・CEAとカルシトニンを両方測定することと、二次検査対象者全てに対してスクリーニングをすることに対して反対意見があった。
 →実施の場合は保険診療として実施するのか、二次検査の枠組みの中で実施するのかなどの問題があるため、今回でた意見を考慮し、実施の有無含めてセンターで別途検討することとなった。

(5)遺伝子検査結果について
  委員より遺伝子検査結果について説明。
  次回検討委員会の際に口頭で報告予定。

(6)手術症例について
  委員より手術症例について説明。
【意見等】
 ・過剰診断との話があるが、手術をしなくて良いかと問われれば、真実が分からない限り医師としては手術を実施することは妥当と考える。

(7)細胞診について
  委員より細胞診の実施について説明。
【意見等】
 ・年度毎に細胞診の施行率が低くなっている。
 →のう胞内結節など細胞診を実施しない症例が増えていることや、先行検査の二次検査で細胞診を既に施行され、本格検査の二次検査対象となった場合は細胞診を施行しない例もあることが要因として考えられる。

その他
【広報より】
 ・12月26日(金)放送予定のNHKの特番について周知。同番組については、医学的なアプローチではなく、県民の不安に医師がどのように応えるのかをテーマにしている。

報告3
第6回病理診断コンセンサス会議 概要記録
平成26年12月6日(土)11:00~11:50 東京
(2)症例検討(黒塗り
 ・次回の開催については未定。

議題5
第5回甲状腺検査評価部会資料
 部会長提出3議題についての見解 
  渋谷部会員 https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/100579.pdf
  津金部会員 https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/100580.pdf

第12回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2015/04/29)
(注:第19回検討委員会で鈴木眞一氏の後任となった大津留晶氏が挨拶)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/307/000307758.pdf
3 議事
【報告】
(1)第11回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
(2)第18回検討委員会(H27.2.12 開催)甲状腺検査部門資料
(3)県内・県外検査機関一覧表
【議題】
(1)第19回検討委員会(H27.5.18 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
(2)手術症例及び手術予定症例について
(3)こころのケア・サポートについて

報告1
第11回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
(1)第10回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
(2)第17回検討委員会(H26.12.25 開催)甲状腺検査部門資料
(3)病理診断コンセンサス会議報告
(4)県内・県外検査機関一覧表

2 議題
(1)第18回検討委員会(H27.2.12 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
  委員より第18回検討委員会資料(案)について説明。
【意見等】
 ・年齢の高い方の受診率が下がっている。18歳以上の方の受診率が特に低い。
 ・先行検査でA判定だった方が今回悪性及び悪性疑いとなったことについて検討すべき。
 ・震災当時の年齢による資料は年齢が上昇すれば自然経過で変化してゆくので、今後も載せ続けるのか、あるいはそのことをしっかり説明してゆくのか。
 →海外の専門家も0~5歳で被ばくした子どもがその後どうなるかを注目しているので、今までのように両方載せた方がチェルノブイリとの比較の概略を把握しやすいので良い。
 ・本格検査の悪性ないし悪性疑いに男女比がないが、受診者全体での性差はあるのか。
 →一次検査の結果確定数で見るとほぼ同数。
 ・18歳以上の受診者が少ないということで、大学での検査をやっているとの記載があるが。
 →機会を設けるということで今年より試験的に実施しており、大学での検査については対象者数に対して受診者数は少なかったが、一度も受診していない対象者もいたため一定の効果はあった。今後も休日検査と大学検査を適宜実施していく予定。

(2)手術症例及び細胞診症例について
  委員より手術症例について説明。 
【意見など】
(広報より質問)
 ・専門知識の無いものとしては、前回A判定だった方から悪性・悪性疑いが新たに8名も出ていること、また、甲状腺の腫瘍はゆっくり育つという説明をしてきたが、最大で17mm超の腫瘍であったことについて放射線の影響ではないかとの疑問があるが、県民などに対してはどのような説明をすべきか。
 ・超音波で分かる異常や病変というのは、ある程度の大きさからでないと分からない。エコー検査の感度の特性からまずは説明してはどうか。
 →検討委員会の資料に結節のサイズ別の頻度のグラフがあるが、5mmがピークで、4、3mmは発見率が低いことが見て取れることから、感度の説明がつくのではないか。
 ・臨床的患者数で見て、小児における甲状腺癌の罹患率は10歳から20歳までに急増する。先行検査から本格検査まで2年間の時間経過があるため、新たに甲状腺癌が見いだされるのは当然であり、今後も時間が経過すれば、新たな患者が見いだされるのではないか。問題は、検診時の年齢で見た罹患率がその後上昇するかどうかである。
 ・ガイドラインで小児甲状腺癌の特徴として、進みが早く、リンパ節転移、肺転移の起こす可能性が描かれているのでそのような説明もよいのではないか。
 ・バセドウ病の際に偶然見つかった例も少なからずあるためそういった例を使って説明するのもいいのではないか。
 ○今回の議論を踏まえ、放射線の影響の有無を科学的に判断してゆくためには、癌を含めた甲状腺結節の自然史の理解が不可欠であり、その為にはある程度繰り返して検査を受診することが重要であるということを改めて周知していく。

(3)びまん性の対応について
  一次検査で見つかったびまん性への対応について協議。
  現状では一次検査の対象疾患ではなく、そのため結果通知に含まれておらず、二次検査の対象でもないため、担当職員が個別に電話連絡等で、通常診療受診の案内をしている。
【意見等】
 ・びまん性が疑われる方へ電話で受診案内をしているが、結果通知で異常なしであった方に理解いただくことが困難で批判も受ける。基準の設定は難しいかと思うが、正式に通知する仕組みを作ってもらえればというのが現場の意見。
 ・甲状腺検査の本来の目的はなにかということを考えて、必要性を検討すべきではないか。びまん性病変を見つけることは、本来の目的ではないのでないか。
 ・一定のラインで切って、受診勧奨の形にすると、受診する必要のない方も含まれるという問題点があり、無駄な検査を受けさせる可能性も生まれる。
 ・発病している方のその後の進行のタイムコースはそれぞれで違うが、進行している人がごく一部にいることを考慮すると、一次検査の結果から電話をかけるまで時間がかかると考えれば、一次検査時にびまん性疾患疑いを伝えた方がいいのでは。
 →現場で症状があるかどうかについては、注意深く見るように検査技師に指導し、明らかに症状がある場合については、その場で医師より説明しているが、学校検診の場では保護者の方に直接説明できないため電話で対応をしている。
 →学校での検査であれば、養護教員などと連携するのがよいのではないか。
 ・この場では、その仕組作りの是非についてではなく、そういう仕組みを作ると決定した場合に、どのような基準でやるのかというのを議論する場ではないか。
 ○今後の議論を踏まえ、改めて医大として検討することとなった。

(4)二次検査における血液検査の追加について
  前回に引き続き、二次検査における血液検査への項目の追加について協議。
  追加項目として髄様癌の発見につながるカルシトニンの測定を検討している。
【意見等】
 ・二次検査対象者全員を計測するのか。 
 →二次検査対象者には血液検査を一律に実施しているため、一律に計測したい。
 ・びまん性への対応と同様に、甲状腺検査の本来の目的が何かということから検討してはどうか。チェルノブイリでは、事故後髄様癌が増加したとの話を聞いたことがない。また、髄様癌の診断のためにカルシトニンを測定することについては国内外でも議論があるところ。
 →甲状腺癌のみでなく甲状腺の健康を見守るという目的がある。副次的にわかるものについては、どのレベルまでこの健診で診断をすべきかそうでないかが重要。
 ・現在の採血・採尿にコンセンサスが得られており、費用の問題がクリアされているのであれば検査項目として追加するのは問題ないのではないか。
 ・エビデンスのない段階で、検診でカルシトニンを測定するのは問題があるのではないか。カルシトニンの測定にあたっては、まずは、今あるストック血清から別予算でエビデンスを積み上げて、それから検診の枠組みに入れるかどうか検討してはどうか。
 ○今回の議論を踏まえ、まずはストック血清からのエビデンスを積み上げていくことを検討することとなった。

(5)過剰診断・過剰診療について
  過剰診断・過剰診療について、第5回甲状腺検査評価部会の資料を用いて協議。
【意見等】
 ・病理としては、小さくてもがんであるこということは絶対に崩さない。その結果、臨床側でどのように治療するか議論の上で対応しているのであって、一方的に小さいがんを手術しているわけではなく、かなり細かい配慮された基準の中で治療をしていると理解している。
 ・福島第一原発事故という背景があって甲状腺検査を行っている。
 ・いったん始めた以上可能であれば同じ基準で継続し、世界に発信することに意義がある。
 ・リンパ節転移など医大の手術適用については妥当であると考えられる。
 ・甲状腺癌の小さいものについては、一般的に経過観察で問題ないとは言われてはいるが、個々の症例については必ずしも一概には言えない。術前に経過観察でよいか、早期手術でよいかは、全てが分かるものでもない。
 ・全員の被ばく線量の評価がされていないという指摘は重要な指摘である。
 →内部被ばくを推計するのは難しい。現在は、外部被ばくから推計しようということをやっている。
 ・甲状腺7学会で過剰診断に対するパブリックなコメントが出せればよいのではないか。
 →現在支援している甲状腺検査では、現在までにこういうデータ・結果が出ているという内容でコメントを検討しては。

(6)今後の検査間隔について
  3巡目以降の検査について、20歳までは2年毎、それ以降は5年毎となっているが、改めてその検査間隔について協議したい。
【意見等】
 ・当初決められたとおりにやるべきではないか。
 ・5年というスパンは変えず、希望者には必要に応じて検査を実施する枠組みではどうか。
 ・20歳以上も2年での検査間隔にして、通常診療では1年毎の経過観察ということであればしっかり経過が見られるのではないか。
 ・20歳以下の2年は妥当。また、それ以降の5年も許容範囲ではないか。
 ・進学・就職で方々に移る方もいるので、受診率の確保ができるような仕組を考えなければいけない。
 ○引き続き、次回以降の検討課題とする。

第13回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2015/08/02)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/307/000307759.pdf
3 議事
【報告】
(1)第12回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
(2)第19回検討委員会(H27.5.18 開催)甲状腺検査部門資料
(3)県内・県外検査機関一覧表
(4)県内・県外拠点施設における一次検査結果説明
【議題】
(1)第20回検討委員会(H27.8.31 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
(2)手術症例及び手術予定症例について
(3)甲状腺検査二次検査実施マニュアル(案)について

報告1
第12回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
(1)第11回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
(2)第18回検討委員会(H27.2.12 開催)甲状腺検査部門資料
(3)県内・県外検査機関一覧表
2 議題
(1)第19回検討委員会(H27.5.18 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
  委員より第19回検討委員会資料(案)について説明
【意見等】
 ・先行検査から本格検査への検査結果の変化について、前回資料から今回資料にかけての傾向は変わらないが、先行検査でB判定(大部分は結節)だった方の本格検査の結果でA判定の方が4割程度となっている。
 →大人の例だが、結節やのう胞が小さくなる事例はある。小児において一定期間をおいて検査を実施した例はないが、小児期の方が結節の縮小・消失する頻度が成人より高い可能性があるのではないか。健診をよりよく進めてゆく上で、年齢による自然経過の特徴を分析し、明らかにしてゆく必要があると考えられる。
 ・検診しているのでがん登録のデータよりも若年にシフトした早期発見になるが、臨床的に小児甲状腺がんの罹患率は10~20歳以降より上昇してくることから、検査時点の年齢による罹患率を計算し、比較する必要があるだろう。
 ・本格検査と先行検査を比較して、20mm以下ののう胞が増えているのは。
 →年齢の上昇による影響が強いと考えられる。
 ・細胞診の実施率は減っているのか。
 →診断基準等については変わっていないが、先行検査で細胞診をして診断がついている人は本格検査では再度の細胞診をする必要がないことと、検査開始当時の状況として細胞診を希望される保護者が多かったことなどが影響としては考えられるのではないか。
 ・本格検査の悪性または悪性疑いの平均腫瘍径が前回資料と比べて、小さくなっているが。
 →本格検査は先行検査後に画像上新たに見えるようになった即ち比較的腫瘍径が小さいものを診断しているものと思われる。

(2)手術症例及び手術予定症例について
  委員より手術症例及び手術予定症例について説明。
【意見等】
 ○外部被ばく線量や内部被ばくを完全に測定できる状況ではないが、原発事故後4年を経過していることを受け、これまでの状況から放射線量に関する影響は考えにくいということを専門家集団のコンセンサスとして出すことは出来ないのか。その上で、甲状腺検査を続けていく意味があるのか、同じ制度でやり続けるのか、治療方針を変えていくのかということを議論すべき時が来ているのではないか。
 ・今回紹介頂いた少数例の結果から見れば、手術適用は妥当なので、成人の診断ガイドラインがある程度は、小児のスクリーニングにも適応できるのではないか。 
 ・自覚症状がない対象者を検査して、がんを見つけて手術を適用することは不利益ではないかという意見も当然ある。しかし、臨床症状が現れてからではQOLという観点からは手遅れになる場合も考えられる。
 ・原発事故後、標準的な基準での検診をせずに、がん登録だけで経過を見ることは、検診率やどのような症例にFNABを行ったかなどの交絡因子を補正することができず、かえって混乱が増えることも想定され、やはり皆さんがしっかりした検査を希望されたという背景因子も考慮されるべきではないだろうか。
 ・放射線被ばくの影響で甲状腺癌が増えるか増えないのかを検証するため、また、がんが見つかった場合に放射線起因性の有無にかかわらず、過剰でない適切な治療が行われることをめざして始まった検査と理解している。この場合、前者の観点からは、同じ基準で続けないと評価は出来ないのではないか。
 ・チェルノブイリ原発事故と比較して被曝線量がきわめて低いと予測されている。放射線の影響の有無をみるために通常考えられている線量依存性による解析は、このように低いところでは日常のバックグラウンド線量の個人変動や推測の誤差の波に完全に飲み込まれるため、科学的に妥当な解析は疫学上はおそらく不可能であろう。線量の地域差と地域による罹患率で比較することも、その他の交絡因子の変動のほうが、大きいと推測される。いずれにしても交絡因子の影響を受けやすくなるが、解析の可能性としては当面ケースコントロールスタディでがんが見つかった方の線量を見ることと、被ばく時年齢の分布がチェルノブイリとは違うということを示すことの2点ではないか。
 ・次年度より3巡目の検査となるが、今の検査間隔についても改めて検討する必要がある。
 →20歳以下では2年ごと、20歳以上は5年ごとという検査間隔のスキームではじめた健診である。3回目以降の本格検査からはじめて5年間隔の実務上の取り扱いが出てくる。20歳以上の5年間隔は、過剰診断を避ける意味もあったと考えられるが、それは20歳以下にもあてはまる可能性はある。もう一つは、一般の他の健診と同様に、長期に健診を維持してゆく上でも節目健診を受けさせる方が、受診者の理解も受けやすいということから5年とした。また、甲状腺癌は予後が良く、発育も遅いということで、一般には健診は必要のない癌と考えられているということもある。
 ・当面、現在の診断基準を守られるべきだろう。ただその運用をどのようにすべきか。一次検査は検者も熟達してきていて、比較的標準化が図られやすいが、二次検査以降の対応については個々の医療機関の診療スタイルがあるため、ガイドラインの検討と、それを徹底することが重要。
 
 ○がんと診断された子どもたちや保護者は必ずしも口に出すことは少ないかもしれないが、放射線のせいでがんになったと思っている人が少なからずいる。今のガイドラインの基準で、結節が5~10mmの場合でも悪性と疑われる場合は細胞診を実施するという健診では、ガイドラインがない時代と比較すると過剰診断は抑制されているが、これまで分かっている甲状腺がんの自然経過から考えれば、やはり進行するまで相当期間のかかるがんも早期診断している可能性があり、今後どれくらいの数が悪性疑いとされて手術適用になるのか、癌と診断されればたとえ進行が遅く予後がよい癌であっても心に与える影響は大きく心配である。子どもたちの心の健康を守るという視点からも診断基準について検討いただきたい。 
 ・10mm未満の腫瘍に細胞診をどの程度施行するか、悪性疑いの場合どの程度手術適用するかどうかが問題になる。保護者のその時の心理状態を考えるに、経過観察という対応は医学的には妥当であると推測されても、現実的問題としてなかなか受け入れられないのではないだろうか。
 ・5~10mmでも超音波上ある程度悪性を疑う場合については細胞診を実施すべきと考える。仮に悪性となった場合については丁寧に説明し、経過観察という選択肢もあることを判っていただき、最終選択してもらう必要がある。
 ・細胞診でがんの疑いとなった方の全ての手術しているわけではないだろうし、手術適用についても、手術に携わる方が十分に検討して対応しているので、それらは本事業の範囲を超える問題である。最終的な診断や診療内容は患者とご家族、主治医の専門家にゆだねているわけなので、受診率が罹患率に最も大きく影響する交絡因子であっても、本事業からそれらに関与することは難しいのではないか。
 ・超音波検査で、あるレベルの癌疑い(癌であってもまだ臨床的には当面問題ない微小癌疑い)のものについて、細胞診を実施し診断を確定する必要はないのではないか。経過観察し、必要であれば、診療に紹介して細胞診をして、その結果の上で、さらに経過観察するか、手術を適用するかしないかは次の診療のステップだろう。
 ・悪性疑い者の外部被ばく線量は全て5 mSv以下だが、この数値はチェルノブイリなど過去のデータとして比較してどうなのか。
 →もしこれらの方々に内部被ばくがほとんどないとすれば遥かに低い。集団の中で最も高い内部被ばくが加味されるグループにおいても、現在予測されている範囲では、かなり低い。
 ・5~10mmの基準を変えると比較が出来ないという意見は分かるが、10mm以上の基準は変わらないので、10mm超を対照として比較することも可能だし、超音波検査の診断のみで悪性疑いを高い確率で判定できるのであれば、かならずしも細胞診を実施しなくてもよいのではないか。多少基準が変わっても、その方が受診者にメリットが大きく、科学的にも問題が無ければそういった対応も可能なのではないか。
 ・仮に細胞診の基準を10mm超とした場合、10mm以下での悪性が疑われた場合についても、次回検査は2年後3年後とするのか、それよりも短い間隔でフォローをするのか。
 →二次検査に入っているため仮にそういう基準とした場合でも短い間隔でフォローすることは可能。
 ・先行検査はいわゆる有病率調査となっているので、今後比較するには、フォローアップも罹患率ではなくて全て足した診断時年齢の有病率での比較をするべきなのかもしれないが、その場合、縮小する腫瘍も手術してしまっているのであれば、先行検査よりも過大に評価することになる。一方、有病率から年齢ごとの罹患率を推定することも可能かもしれないが、ハーベスト効果を評価することになる場合と、逆に手術した症例の腫瘍サイズが小さいと過大に評価することも考えられる。そう考えると例えば、10mmを超えた腫瘍の間での比較も可能ではないか。

 ○放射線の影響がないかということをどのように証明できるのかを示さずに、検査をしていることは問題ではないか。この調査を行うことで放射線の影響がわかるということを伝えれば、対象者には協力を頂けるだろう。ただ、科学的に放射線の影響が分からないくらいに放射線の線量が低いということであれば、根本的に見直す必要があるのではないか。
 ・個人の被曝線量の影響で、がんが増えるかどうかを評価するには、これまでの科学的知見からは、困難ではないかと予想される。上述されているように低線量の影響の僅かなリスクがあるかないかを検証することは非常に困難である。しかし、がん生物学とは少し別の見方をすると、放射線の影響を含め予想外のことが起こっていないかどうかという観点も必要であろう。それは先行検査に比べて、本格検査でがんが変動範囲を超えて増えるかどうかということも一つだろう。そのためには検査時点の年齢での罹患率を比較すべきなので、同じ精度で検査を行う必要がある。
 ・先行検査についても放射線を含め予想外の交絡因子がないかどうかは、性別・年齢に加えて、詳細病歴・地域性・健診受診率などの多様な検討が、今後も必要とされる。
 ・県民健康調査の「妊産婦調査」では、早産・死産・流産・先天奇形などの質問項目がある。先天奇形・異常については産婦人科医会のガイドラインでは3~5%となっているが、福島県内ではいずれも3%を下回っていることが報告されている。こうした数値も、放射線の影響の有無を考える手がかりの一つにはなるかもしれない。これまでの科学的な知見からは、それらの放射線の確定的影響が出る可能性は100 mSv以上からで、疫学的に検証されるのはもっと高い線量からなので、災害の影響という意味では重要であるが、放射線の影響という意味では科学的には調べる必要がないかもしれない。しかし、そのような結果をしっかり出してゆくことで、放射線の影響についての不安が解消されはじめているようである。同様なことは甲状腺検査にとっても重要である。
 
 ○前回A判定の方がBになるケースもあるが、医大だけでなく他拠点での実施も増えているため精度管理が非常に重要な課題ではないか。
 ・他拠点の検査結果については慎重にチェックしているが今後も拠点が増えるため精度管理には十分注意する。

 ○今後、県外に転出する方が増えるにつれ、受診率が低下することが懸念されるが、対象者の中には、思い出したくなくて検査を拒否する方もいるという話を聞く。放射線の影響は考えにくいと言われているのに、常に追跡されてお知らせ等が送られてくることに不安を感じる方もいるようだ。
 ・改めて検査の目的等をしっかり伝えて理解して頂いた上で、自主的な参加で成り立っている検査ということを判っていただいて協力を得る必要がある。また、受診のインセンティブや、検査を不要とする方がドロップアウトするような対応も検討する必要があるのではないか。 
 ・受診者には治療費等を負担するなどのインセンティブもよいのではないか。
 ・甲状腺癌については、もし健診がなくても、若い方々は特に治療すれば治る癌という点を周知すればよいのではないか。
 
 ○今後も甲状腺検査の基準等については継続審議とする。

(その他)
 ・先行検査は約30万入の結果がほぼ出そろって112人、本格検査は先行検査の約半数の約12万人の検査結果が出た中で15人の悪性疑いが出ているが今後本格検査が最終的に進捗すると、健診を継統しているということ以外は、先行検査と放射線を含め何も甲状腺がんの発症に影響を与えるものがないと仮定すれぱ、おおよそ2年間で5、60人程度の悪性疑いが出るようた試算になるのか 。
 →受診率が先行検査と比較して低下傾向にあるので、現時点でどのように評価すべきかはわからない。 
 ・本格検査の受診率は67%前後で、受診機会を増やすよう施策を講じてはいるが高校卒業後の受診率が極端に低い。本人の希望による検査なので、受けないことを希望されているのであれば、それは当然であり、先行検査と比敏するには年齢別に見ることが適切ではないかと考える。 

第14回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2015/11/03)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/309/000309245.pdf
3 議事
【報告】
(1)第13回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
(2)第20回検討委員会(H27.8.31 開催)甲状腺検査部門資料
(3)病理診断コンセンサス会議報告
(4)県内・県外検査機関一覧表
【議題】
(1)第21回検討委員会(H27.11.30 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
(2)手術症例について
(3)一次検査同意書、一次検査結果通知書の見直しについて
(4)検査結果の判定基準について

報告1
第13回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
(1)第12回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
  委員より前回記録について説明。
(2)第19回検討委員会(H27.5.18 開催)甲状腺検査部門資料
  委員より前回開催資料について説明。
  同会議で示された甲状腺検査評価部会による甲状腺検査に関する中間とりまとめ資料について紹介。
【意見等】
 ・甲状腺検査に関する中間とりまとめに、「過剰診断」か「過剰発生」のどちらかというような表現がなされているが、正確な表現ではないのではないか。
 →本とりまとめについては、複数回にわたり様々な議論をした上でとりまとめたものであることを御理解頂きたい。

(3)県内・県外検査機関一覧表
  委員より7月31日現在の県内県外検査機関の締結状況について説明。
  県内検査機関は7月31日現在で26機関と協定締結しており、医師会の認定試験制度のもと協定締結医療機関
か増えてきたため、引き続き検査の精度管理を適切に行う。 
  県外検査機関は7月31日現在99医療機関と協定締結しているほか、今年度は既に神奈川県で出張検査を実施し、今後埼玉県、千葉県の2県で出張検査を実施予定。 

(4)県内・県外拠点施設における一次検査結果説明
  委員より前回会議で承認された一次検査会場における検査結果説明について説明。 
  既に県内公共施設での運用を開始しているが、県内・県外拠点での運用開始に向けて準備を進めている。 
  前回会議で要望のあったマニュアル、説明資料を作成したので、それに基づき各拠点でも必要に応じて暫定的な検査結果の説明についてお願いしたい。 
  また、暫定的な検査結果の説明と併せて、これまで医大で個別に対応していたびまん性甲状腺疾患の受診勧奨を、各拠点で実施することについて意見を求めた。 
【意見等】 
 ・検査技師が検査を実施する場合、その結果説明についてはどのように対応するのか。 
 →公共施設などでの一次検査における説明ブースは、医師が検査結果の説明をする。また拠点施設では、検査結果の暫定説明を行うかどうかなど、対応は各拠点にお任せしたい。 
 ・びまん性甲状腺疾患をこの基準で受診勧奨する場合、対応によっては偽陽性が増える可能性はないのか。もう少し具体的な基準を設けた方がよいのではないか。検査の現場で、明らかに見過ごせない方に個別に受診勧奨をすることに一定の理解は示すが、基準を明確にして慎重に対応できるようにした方がよいのではないか。
 ・もちろんこの基準で受診勧奨をした場合にも、ある頻度で軽症の治療レベルの方が漏れる可能性もある。 
 ・福島県内の協力機関に対する甲状腺超音波検査認定試験の技術講習会においても、基準を標準化しないと、必ずしも甲状腺疾患を日常的には診療していないところもあると思うので、もう少し丁寧さが必要と考える。 
 ・複数名の医師で実施している判定委員会で見た症例については、ある程度標準化できると思うが、それが各拠点や説明ブースでは1人の医師の判断によることも多い。 
 ・一方、判定委員会では症状や病歴などは分からないが、現場では超音波に加えて、その他の状況も把握でき、より受診者にメリットがでる可能性もある。 
 ・各拠点の医師の責任のもとで受診勧奨をすることになるが、もう少し具体的な基準を決めないと、依頼をされた医師が困るのではないか。 
 ・基準としては、例えばびまん性腫大の有無などシンプルにすべきではないか。 
 →それだけだと年齢が高い層で多く所見が見られるため、その他の基準でも見ている。
 ・びまん性甲状腺疾患の受診勧奨については、甲状腺検査の本来の目的ではないが、検査によって明らかに受診した方がよい方についてお知らするという仕組みであるということをきちんと説明すべきではないか。
→電話での受診勧奨では説明している。文書で出す場合も説明文書を添付することになる。
 ・検査結果の説明については、説明できない(しない)ということでこの検査への協力をしている医療機関も少なからずあろうと思うので、検査結果の説明が出来る施設と出来ない施設があることについて理解していただく必要がある。
 →一次検査説明については、学校で受診している方には説明ができないため、全員に説明ができるわけではないことについて、すでに周知をしている。
 ・甲状腺検査の本来の目的ではないびまん性甲状腺疾患の受診勧奨は、要治療の可能性が高いものに絞ったほうがよい。もし、県外施設でやることを考えるのであれば、サイズだけでも定量的な基準があった方がよい。今回示された基準だと検査を担当した各医師の主観が入ってしまう。
 ・この基準で受診勧奨した場合の件数の内訳を示してもらっているが、要治療の人が5人に1人、顕性異常が4人に1人という結果は決して甘い基準ではない。症状が明らかに疑われた場合には勧奨すべきと考える。
 ・びまん性腫大もしくは峡部肥厚については、年齢毎の基準となる大きさの示し、内部エコー不均質についてはグレードに分けて示すというような具体的なものを出せばよいか。
 →基準としてはセンター内のコンセンサスを得た上で、考え方の多様性のある外部でも認識の差が出にくい形にするものが望ましい。
 ○この制度については、まずは県内で実施するということで対応し、その後ノウハウを蓄積した上で県外での実施を順次進めてゆくことを検討する。

2 議題
 (1)第20回検討委員会(H27.8.31 開催)甲状腺検査部門資料(案)について 
  委員より第20回検討委員会資料(案)について説明。 
  第19回検討委員会で委員より指摘のあった、本格検査資料における年代毎の受診率や、先行検査資料にデータを追加したほか、H28年度以降の検査実施計画(案)について資料に追記。
【意見等】
[先行换查]
 ・臨床的には小児甲状腺癌の10人に1人程度の割合で濾胞癌があると思われるが、本甲状腺検査においては遮胞癌の症例はないのか。
 →現時点では1例もない。
 ・先行検査の一次検査は終了し、確定版となるということだが、悪性疑い者についてはまだ増えるのか。
 →まだ先行検査の二次検査が確定していない方もいるため増える可能性はゼロではない。その場合は追補版で対応する。
 ・表9に悪性疑い者数の10万対比が出ているが、会津地方が少ないので統計的な有意差が出るのではないかと思われるがどうか。
 →悪性疑いで多く見られる18歳以上の年齢の受診率が会津地域では低いことから、会津地域の悪性疑い者数が少なくなっていると思われる。
 →検査時の平均年齢や、震災時平均年齢との年齢の開きも他の地域と比べてもあまり変わらないので、乳幼児と18歳以上が少なく、学童期の受診者が多いといった年齢構成は表からは見て取れない。
 →性別年齢を考慮した上での分析によれば、差はないということである。

[本格换查]
 ・今回より年齢階級別の受診率を新たに提示したが、18歳以上の受診率が低くなっている。先行検査の資料から見ると、同じ分類基準ではないが、同年代の受診率はH23で約74%、H24で約62%、H25で約36%と年を経る毎に受診率は下がってきていたが本格検査で大幅に下がったもの。
 ・県外への転出者が多くその方々の受診が少ない状況で、学校検査では医大が各学校に出向いて検査をすることで高い受診率を維持しているが、公共施設などの案内ではなかなか受診につながらない。
 →中間とりまとめにもこの年代に対するフォローを課題と位置づけている。
 →休日検査、出張検査を今後も適宜実施していくとともに、県内外の各拠点においても休日に検査を受け入れてもらえるよう協力を依頼していく。
 ・平成28年度以降の本格検査における20歳以上の5年おきは節目健診が、確かに受診者にとって分かりやすいと思われる。

(2)手術症例及び手術予定症例について
  手術実施症例について、前回検討委員会報告分より6月30日現在まで1例手術症例が追加。
【意見等】
 ・今後も引き続き一例一例慎重に検討して手術を実施すべき。
 ・本甲状腺検査は、これまでに前例がない検査である。現時点での手術症例は妥当かと思われるが、今後症例を重ねることで何か特徴が見つかるかもしれない。
 ・本格検査で比較的小さい腫瘍の悪性疑い症例が増えてきており、もちろんそれが全て手術になるとは限らないが、個別に慎重に検討しつつも、全体として俯瞰した判断も加味すべき。

(3)甲状腺検査二次検査実施マニュアル(案)について
  委員より二次検査マニュアルの変更(案)について説明
  前々回審議した液状化検体細胞診(LBC)の導入、血液検査においてパニック値が出た場合の対応、今年度より開始したサポート事業の記載を追記したほか内容を分かりやすく修正した。
 修正意見等をとりまとめの上、必要な手続きを経てマニュアルを施行予定。

報告3
第9回病理コンセンサス会議 概要記録
平成27年10月17日(土)14:30~17:30 福島県立医科大学付属病院2階 病理部検鏡室
議題
(2)症例検討(黒塗り
(3)その他
 ・次回は、平成28年1月31日(日)開催予定。

第15回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2016/01/24)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/309/000309246.pdf
3 議事
【報告】
(1)第14回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
(2)第21回検討委員会(H27.11.30 開催)甲状腺検査部門資料
(3)県内・県外検査機関一覧表
【議題】
(1)第22回検討委員会(H28.2.15 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
(2)検査結果の判定基準について
(3)手術症例について

報告1
第14回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
 (1)第13回甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 概要記録 
  委員より前回記録について説明。
(2)第20回検討委員会(H27.8.31 開催)資料
  委員より前回開催資料について説明。 
(3)病理診断コンセンサス会議報告
  委員より病理診断コンセンサス会議開催結果について報告。 
(4)県内・県外検査機関一覧表
  委員より10月31日現在の県内県外検査機関の締結状況について説明。 
  10月31日現在で県内検査機関は32機関と協定締結、県外検査機関は99機関と協定締結。

2 議題
 (1)第21回検討委員会(H27.11.30 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
  委員より第21回検討委員会資料(案)について説明。 
  検査期間について、第20回検討委員会で検討いただいた結果を踏まえ、対象者が20歳を超えるまでは2年ごと、それ以降は25歳、30歳等の5歳ごとの節目健診で実施することとなった。 
  ー次検査については学校世代の受診率が高く、18歳以上の受診率が低い傾向が続いている。
  一部表の作りを修正したほか、受診者数等を9月30日現在の数値に更新した。
【意見等】
 ・先行検査に比べて、悪性(疑い)者の外部被ばく線量が一見やや高い方に分布しているように見えるが、これは線量が高い地域から順に検査をしているからと思われる。 
 ・本格検査での悪性(疑い)者が2015年9月30日までのまとめで39名という状況をどのように解釈すべきか、小児の甲状腺がんの自然史はわかっていないので、よく検討する必がある。 
 ・先行検査で本来悪性と診断されてもよかった人がそのとき診断されずに、本格検査で診断されて本格検査分として集計されているということはないのか。 
 →39名について確認したところ、前回ー次検査を受けていない方はいない。また、画像確認の結果、先行検査の一次検査で結節性病変がある人が一部にいるが、前回の場所とは違う場所で結節が見つかるなど、前回の検査で、明らかに診断すべき例を診断しえなかった例はないと考えられる。 
 ・先行検査で二次検査が必要だが受診しなかった人、また逆に本格検査では二次検査が不要になった方(A判定になった方)などの件数は把握しているか。 
 →前者について、手元の資料で先行検査の二次検査対象者2,294名のうち2,108名(91.9%)は受診しているが、約180名は二次検査を未受診である。それらの方には電話や手紙で受診勧奨行ってきた。未受診者のほとんどは念のための二次検査と考えられる所見で、例えば二次検査を受診しなくても本格検査の一次検査を受け、問題ないと判断される人が多い。その方々は、受診勧奨終了としている。ただし一部には二次検査をできれば受けた方がよいと思われる方で、二次検査にも本格検査にも来ていない人がいるので、それらの未受診者については引き続き受診勧奨をしている。 
 →後者について先行検査でB判定となって本格検査でA判定となった割合は資料のとおりであるが、実際に結節が消えたような方もある頻度でおられる。それがどれだけいるかということについて、分析はこれからである。
 ○修正、追記等意見なし。

(2)手術症例について 
  手術症例は、本格検査分で前回検討委員会報告分から9月30日現在まで9例追加。

(3)平成28年度より、一次検査同意書、一次検査結果通知書の見直しについて
  委員より、次年度からの3回目の検査開始に伴い検討している一次検査同意書、一次検査結果通知書の見直しの概要について説明。
[ー次検査同意書の見直し]
 ・同意書未提出の方は検査を受けたくないのか、たまたま書類を見ておらず返送がないのかがわからない状況で、追加検査などのお知らせを送付し続けている。また、検査を希望していない対象者あるいはしっかり説明を聞けば希望しない対象者に対し、学校検査での同意書のとりまとめをお願いすると、半強制的な検査となり本人、保護者に対する同意取得方法としては問題であり、さらに学校にも迷惑をかけることとなり支障がでている。 
 →対象者から同意・不同意の回答をもらった上で検査を実施し、不同意の方へのお知らせ送付の希望を確認する方式としたい。
 ・前回の検討委員会で、甲状腺超音波スクリーニングは、現在推奨されているがん検診ではなく、メリット・デメリットをしっかり説明した上で、あくまで希望者に対しての検査であるという説明をきちんとお知らせに載せるべきとの指摘があった。
 →検査を受けることのメリット・デメリット等を同意書の説明に記載。

[一次検査結果通知書の見直し] 
 ・現行の23パターンから4パターンに変更。 
 ・B判定の方に対し、返信用はがきで二次検査受診希望、保険診療受診状況を確認。 
 ・直近2回分の検査結果が分かるような表を作成。 
 ・びまん性甲状腺疾患が疑われる方で、判定委員会で受診勧奨が必要と判断された方について、この結果通知とは別にびまん性疾患に対する受診勧奨の通知を同封。 
【意見等】 
 ・この検査は強制ではないため、検査を受けたくない人、お知らせが欲しくない人への配慮が必要というのは当然の対応。 
 ・検査のデメリットとして過剰診断という表現が一般の方にとって理解しにくいので、別な表現に改めてはどうか。 
 →実際のお知らせには過剰診断ということばを直接的には使わず、わかりやすい表現で作成予定。 
 ・今後は不同意の方でお知らせ希望をしない方には送付しないことだと思うが、仮に両親などの保護者が検査を拒否していて、本人が成長して自分の意思で受診を希望した場合に、検査に関する情報を知るルートは確保されているのか。 
 →基本的に対象者が成人になったら、もう一度お知らせを送付する方向で検討している。また、16歳以上の対象者の方については本人の意思を尊重していただけるような記載を検討し、途中で希望が変更になった場合などにも対応できるよう工夫する。
 ・二次検査の希望確認のはがきにはマスクをするなど個人情報の取扱には留意する。
 ・この同意はコホート調査研究への参加の意思を確認するものではないため、今後コホート研究として進める場合には、同意の取得の方法については仕切り直しが必要ではないか。
 ・結果通知のパターンを23から4パターンにしても、前回結果など詳細な情報が入っているのでよいと思われる。
 ・検査結果について電話で問合せが来たときの対応はどのようになっているか。
 →現在は検査の予約変更等や、検査結果の問合せ等の窓口が全て一本になっているため、医学的な説明が必要な方向けの専用ダイヤルを現在準備中である。今後は、そちらにお電話いただき、こちらからコールバックすることを検討している。
 →ご心配があって医師からのコールバックが必要な例は、現在2日に1本程度の入電。説明ブースを始めてから、若干増えてきた。専用ダイヤルが準備出来次第、積極的に学校での説明会等でアナウンスすることで問合せの件数も増えることを想定し、準備を進めているところ。
  なお、報道等を見て不安を感じる方は徐々に少なくなっている印象。
 ○同意書、結果通知ともに本案にて修正として了承。

(4)検査結果の判定基準について 
 委員より、一次検査結果の判定基準の変更について提案。 
今後一次検査の受診率が減っても年齢が上がるにつれB判定が多くなることが想定される。B判定のほとんどは臨床的には問題ないものであるが、B判定となった方は放射線災害下の健診ということで、検査が必要以上に不安をもたらすことも多いと考えられる。またがんの場合も、本当に早期発見早期治療のメリットがあるかは、一部の症例を除き分からないという考え方も十分できる。そのような状況であり、今のB判定の基準をどのようにすべきかということを議論したい。 
 ・先行検査でB判定結節に対する悪性(疑い)の割合は約5%程度で、10.1mm以上の結節がやや多い。
 ・ー方、本格検査で B判定結節に対する悪性(疑い)の割合は約4%程度で、10mm以下の結節が相当多い。 
 ・のう胞内結節の割合は結節全体のうち概ね30~35%程度で、一方、悪性は2例、2%以下である。のう胞内結節のほとんどは10mm以下で結節部分が5mm以下である。そのため、のう胞内結節を充実性結節と同様の基準で判定することについて、御意見を伺いたい。
【意見等】
(約3分の2ページほどの意見が黒塗り)
 ○今後も継続審議とする。

3 その他 
 ・100名を超える乳頭癌症例の中に、髄様癌や濾胞癌が1例もないことについてはいかがか。
 →濾胞性腫瘍 (濾胞癌)については、時間が経過しないと分からないことも多く、腫瘍径の増大や超音波所見で手術適用を判断するため、検診でのスクリーニングよりは診療の中でのフォローアップにより診断あるいは治療が判断されていくことになると考えられる。 
 →髄様癌については、すでに診療で把握されている例を除けば、年齢的にまだ少ない可能性が高く、中年以上になれば検診から診療へ移行した中で、発見される可能性は高まってくると推定される。健診でカルシトニンを測定することについては以前に議論され、行わないことが検討された。
 ○次回の開催日程については別途調整予定。

第16回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2016/04/29)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/343/000343798.pdf
3 議事
【報告】
(1)第15回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
(2)第22回検討委員会(H28.2.15 開催)甲状腺検査部門資料
(3)県内・県外検査機関一覧表
【議題】
(1)第23回検討委員会(H28.6.6 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
(2)手術症例について

報告1
第15回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
(1)第14回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
  委員より前回記録について説明。
(2)第21回検討委員会(H27.11.30 開催)甲状腺検査部門資料
  委員より前回開催資料について説明。
  比較のため第20回検討委員会資料(先行検査)の抜粋資料についても説明。
  先行検査については、二次検査が現在も進捗している状況のため追って追補版を出す予定。
[意見等]
 ・悪性の方の手術費用は公費負担となるのか。 
 →悪性(疑い)の方が二次検査終了後保険診療に移行した場合、自己負担分については今年度から開始した県のサポート事業により費用負担が可能となった。
(3)県内・県外検査機関一覧表 
  委員より1月22日現在の県内県外検査機関の締結状況について説明。 
  県内検査機関は36機関と協定締結、県外検査機関は101機関と協定締結。

2 議題
(1)第22回検討委員会(H28.2.15 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
  委員より第22回検討委員会資料(案)について説明。 
  12月31日現在の進歩状況のほか、平成28年度からの検査3回目の計画について、既に了承されている内容を含めた記載を盛り込んだ。
 [意見等] 
 ・受診者の被ばく線量を検査者は把握した上で検査を実施しているのか。
 →甲状腺検査受診者の基本調査による初期4ヶ月の外部被ばく線量推計が、すべての方々でなされているわけではない。公共施設の受診会場では、基本調査の書き方支援を行っている。
 ・本格検査の悪性(疑い)の方の基本調査における外部被ばく線量が先行検査のものよりも高くなっているように見える。また、線量の比較的高い地域と低い地域で、二次検査受診率や細胞診率が違うため、地域間のパイアスが気になる。 
 →本格検査の二次検査についてまだ進抄しており確定した数値ではないし、また本格検査1回目は線量が県内で相対的に高い地域から進んでいるため、相対的に線量の低い地域の平成27年度対象市町村の結果がまだ反映されていないことも影響していると考えられる。
 ・こころのサポート体制について、県外の施設でそのようなサポートが必要な事例の経験はあるか。 
 →県外で検査を行っている経験からすると、最近は不安も落ち着いてきており、あまり不安を訴えられない場合は、こころの問題については追求しないようにしている。
 ・良性の腫瘍である濾胞性腫瘍の対応が課題となっている。甲状腺検査の対象者の様に若い世代に対しどのような説明をするのがいいのか何か意見はあるか。 
 →国際的には濾胞性腫瘍は手術適応となっていることもあり、濾胞性腫瘍の手術適応の質問が受診者よりあった場合、どのように対応されているのか。 
 →日本の外科のガイドラインとしては、微少濾胞がんについては手遅れになることもないことから、良性の濾胞線腫と濾胞がんの区別が難しいという理由だけで、すべての濾胞性腫瘍をすぐに手術するところまではなっていない。過剰診療、過剰診断にならないように考慮すべきで、良性腫瘍と思われる結節の手術適用については難しいところ。
 →細胞診で濾胞性腫瘍と診断された場合の取扱について、ATAのガイドラインに準拠して手術を勧める選択肢もあるが、実際の臨床の場でそれが適切かどうかはかなり難しいところで、個々の病院のなかでも明確なコンセンサスには至っていない。大人の場合でもこのような状況のため、子どもに対してはより判断が難しい。
 →濾胞性腫瘍については、20mm以下については転移等が疑われる場合に精査となるが、そのようなケースはまれで、実際には腫瘍径が30~40mmといったところで細胞診を実施してその結果を考慮して手術も選択されるということではないか。あとは患者の希望により20mm以下でも手術することもあるだろう。 
 ・スクリーニングを実施している状況で、偶然発見された濾胞性腫瘍について積極的に治療をするという考え方は問題であろう。通常であれば何らかの症状があって受診し、そのようなケースでも先ほどの日本のガイドラインにそった治療にすることが望ましい。スクリーニングを実施し、それを診療のガイドラインにそって治療したら意味のない病変を見つけすぎる懸念がある。 
 ・現実的には見つかったもの全部を手術しているわけではないが、診療のガイドラインにそって手術適用とすれば、その中には確かに取らなくていい人の数は増えるだろう。 
 ・濾胞性腫瘍の大半は手術をしないことには賛成だが、患者さんや家族の腫瘍に対するとらえ方もある。また、スクリーニング症例と通常の診療ベースの症例の対応が大きく異なるのもどうだろうか。 
 ・甲状腺検査で悪性(疑い)となった方で手術適用となった方の9割以上は悪性(乳頭がん)であるが、髄様がんが見逃される可能性も考える必要があるのではないか 
 ・濾胞性腫瘍の手術適用については、健診症例でも日常の保険診療の症例でも、議論であったようにシステマチックに決められる訳ではなく、腫瘍の大きさ、所見をみて相談した上で、本人の希望を踏まえて手術としている。経過をみていくうちに増大傾向があり、そのため手術された腫瘍の方が増えてくると、インシデンタルに濾胞がんがでてくる可能性はあるだろう。濾胞がんについては、10年程度経過を見ないとわからないという状況だろう。 
 ・濾胞性腫瘍の取扱は確かに問題だが、本甲状腺検査での濾胞性腫瘍がどれぐらいの割合、大きさかが分からないと判断できない。 
 ・例えば濾胞性腫瘍で大人を手術した場合には3割程度のがんが見つかると思うが、これは臨床側が既に手術適応を慎重に選択した上で手術した結果であり、もしそのような選択をせずに何らかの基準で手術を実施してしまうと、濾胞がんの頻度はもっと低くなることが想定されるため、濾胞性腫瘍を経過観察し結果として濾胞がんであった場合の問題と、濾胞性腫瘍をすぐに手術する場合の問題の、メリット・デメリットを科学的にも考えなければならない。 
 ・チェルノブイリでは、濾胞がんについては論文等を見る限り線量は関連がないとされていることも考慮すると、今回の健診で濾胞性腫瘍をすぐに診療側へ橋渡しすることは、期待できる受診者メリットの範囲外であり、結節の過剰診断のことを考えると、健診の対象疾患の一つとしない方がよいのではないか。

(2)検査結果の判定基準や結果報告について 
  委員より、一次検査結果の判定基準やその結果報告について、どのような基準が受診者にとってよいのか、議論していただくことを提案。
8ページにわたって、全部黒塗り
(注:これは第15回検討部会の議事録であり、その時に議論されたのは、22日後の2016年2月15日に開催された第22回検討委員会の資料(案)だった。8ページにわたって、何が非公開で議論されたのか?ちなみに、第22回検討委員会では、1巡目での手術例が2例増えて116例になったことが口頭発表され、また、2巡目で悪性・疑いとされた51例中25例が1巡目ではA1だったということに関し、大津留氏は、悪性細胞が1巡目ですでに存在していた可能性に言及している。

(3)手術症例について
  手術症例は本格検査分で前回検討委員会報告分から平成27年12月31日現在で1例追加。

第17回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2016/08/07)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/343/000343799.pdf
3 議事
【報告】
(1)第16回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
(2)第23回検討委員会(H28.6.6 開催)甲状腺検査部門資料
(3)県内・県外検査機関一覧表
【議題】
(1)第24回検討委員会(H28.9.14 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
(2)手術症例について

報告1
第16回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
(1)第15回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
  委員より前回記録について説明。
(2)第22回検討委員会(H28.2.15 開催)甲状腺検査部門資料 
  委員より前回開催資料について説明 (詳細は割愛)。
  「本格検査2回目(検査3回目)」(10ページ)の検査運営方針について掲載した旨説明。
(3)県内・県外検査機関一覧表 
  委員より4月22日現在の県内県外検査機関の締結状況について説明。 
  県内検査機関は48機関と協定締結、県外検査機関は103機関と協定締結。

2 議題
(1)第23回検討委員会(H28.6.6 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
  委員より県民健康調査「甲状腺検査(先行検査)」結果概要【平成27年度追補版】(案)について変更点を中心に説明。 
  昨年の確定版以降、二次検査を中心に受診した方を中心にデータの精査等により数字が変更になった旨説明。 
[意見等] 
 ・手術症例について、診断は基本的に癌取扱い規約に則って診断しているが、昨年の11月に規約の一部改定があり、新たな現行の規約に則って一部の症例の診断を変更。

  続いて県民健康調査「甲状腺検査(本格検査)」実施状況について委員より前回からの受診者数の増加等変更点について説明。
[意見等] 
 ・57人の悪性(疑い)について、先行検査の時の所見に関してはどこに書かれてあるか。
 →判定については5ページの(2)細胞診等結果の5行目に先行検査の結果の内訳として記載。 
 ・先行検査と本格検査の対象者について、資料によれば先行検査対象者数が36万7千人に対し、本格検査が38万人となっており、その違いは? 
 →先行検査は平成4年4月2日から平成23年4月1日生まれまでの震災当時0歳~18歳までの方が対象で、本格検査以降はその集団に平成23年4月2日から平成24年4月1日までの方、資料の年齢では4歳前後が新しく加わった方である。 
 ・震災当時、胎児の方が加わった? 
 →1ページの2の対象者のところにあるように、年度の考え方を取っているので、実際には原発事故という観点からは必ずしも検査対象でなくてもよい方も含まれるかもしれないが、 年度別の考え方については機会をみて説明を行っている。 
 ・例えば、当時胎児だった方は先行検査なしで、本格1回目からデータに含まれてることになるのか?
 →そのとおりである。 
 ・先行検査の116人の平均腫瘍径が14.2ミリで今回の検査結果が約10ミリであり、約4ミリ小さくなったが、どのような解釈が考えられるか? 
 →先行検査は、いわゆる有病率調査のような検査である。恐らくもっと以前より存在していた比較的大きいサイズのものが一部含まれているため、平均腫瘍径を比較すると大きく、一方本格検査は超音波でようやく見えるようになった腫瘍が相対的に多いため、小さな腫瘍が多くなると考えられる。
 ・外れ値があるということは、四分位データがあるとピックアップしやすいが、平均値だけ出すと、引っ張られがちになってしまう。 
 →先行検査でも本格検査であっても、例えば腫瘍のタイプによっては大きく計らざるをえないことがあり、数が少ないときはたしかに平均値が引っ張られることもある。しかし最終的な平均値に大きな差は出ないと考えられるので、一般的な結果として平均値で報告している。 
 ・対象者の年齢によって受診率が異なっているので、将来的には受診者の中の割合も提示する必要があるのではないか。 
 →将来的な科学論文としてはそうであるが、検討委員会では3ヶ月に一回データを公表している。すなわち速報値を出す形で資料の報告をまとめている。 
 ・先ほどの腫瘍径の大きさの質問について、二次検査の結果で比較的大きい腫瘍でも、術後の病理所見では、もっと小さな結節となっている場合があり、単純な腫瘍径の平均値だけで比較できない面もある。 
 ・現在、本格検査を受けた18歳以上の方が約25%いるが、単純に検査データだけから見るとその年齢層の%を上げることが本当にできるのかと思う。5年後10年後の予測となるかもしれないが、受診率が低いことの一つの理由として、本人に検査の連絡が行かなくなってしまっていたり、行方不明になっている人がかなり多くいたり、といった本人の意向とは 関係ない理由による受診率低下は考えられないか? 
 →住所の変更が十分になされなくて配送されないものももちろんあるが、全体の数から見るとそれほど多くはない。その年齢層だけがそれが特別に多いということでもない。むしろ配達はされているが、受診されない方が高い年齢層に多い。主な理由は就職や大学に進学して福島県内・県外の指定された実施機関に行きにくいケースが考えられる。 
 ・受診していない方にもう一度連絡した場合に検査を希望する方のパーセンテージはだいたいどのくらいか。 
 →本格検査の1回目まで、受診しなかった方には追加実施としてもう一度お知らせを送ることを行っているが、その場合、概ね送った方の10%弱の方が希望されている。 
 ・年齢が高いところの受診率が低いのはどういう方が受けないのか、例えば福島県内の方が受けない方が何%、県外の方が何%という数値は持っているのか。 
 →今日は分からないが、県外に完全に転出された方は受診率がかなり低いというふうに思う。 
 ・県外に出た方はどのくらいいるのか。 
 →福島県では高校卒業後の進学、就職で半分以上の方が県外に出ている。1学年16,000~18,000の方がいるがそのうちの半分が県外に出ている。 
 ・今後県外に出た方の連絡先の把握の方法は本人が連絡するのか、行政の方で住所を追っていくような仕組みはあるのか
 →この調査では基本的にはそのような仕組みはない。本人もしくは家族の方が転居、住所変更の届けをするということになっている。住所変更をいかにしていただくかということに努力をかたむけており、毎回検査のお知らせにも住所変更手続きをお願いしており、ホームページや検査の会場、甲状腺通信の中などの中にも住所変更のお知らせを入れている。さらに、高校を卒業する学年にクリアファイルを配っている。このクリアファイルは、自分が次にいつ受けるのかという早見表と住所変更のお知らせのやり方が記載してある。これらの取り組みにより住所変更や次に自分がどこで受けるのかを意識してもらえればと期待している。また、運営上の制約はあるが、引き続き休日実施も行っていきたい。休日検査では今まで一度も受けられなかった方が受けられる頻度が高いようである。基本的な考え方は受診率をいかに上昇させるかというよりは、受診したいと思っているのに受けられないという方をできるだけ減らせるように、受診しやすい環境を作ることに力を注いでいる。 
 ・尚、市町村に問い合わせた結果では、住民票ベースだと一回目の住所変更のところまでは追えるがそれ以降は分からないということである。

(2)手術症例について 
  手術症例は本格検査分で前回検討委員会報告分から平成28年3月31日現在で14例追加。

3 その他 
 ・累積羅患率を計算した癌登録からのデータによると、年数が経過し年齢が上がるほど10万人あたりの有病率は増える。先行検査から算出した年齢別の有病率であるが、受診者の年齢別に受診率等で補正したとすれば、年齢階級別の各年齢の有病率は、20歳前後になると、癌登録のデータなどと比較すると非常に多く、超早期診断されていることになる。本格検査の二次検査は6割強くらいしか進んでいないが、本格検査と先行検査を比較すると、ばらつきがあるが年齢が若い方は分布パターンが似ている。18歳以降は先行検査の方が高くなる。先行検査で18歳の方は本格検査では20~21歳になっているので、累積とするとさらに多くの癌が診断されているという状況になる。年齢が上れば、さらに発見率は上がるので、こういう状況で本当にいいのかということで前回話し合っていただいた。早めに手を打つべきことと思われるので専門家としてどうするか、意見をお伺いしたい。 
 →全体として、腫瘍が以前から検出していたものも、今回検出したものも腫瘍サイズも増殖率もあまり変わらないと思う。 
 ・一次検査と二次検査の期間では、全体としてみるとほとんど大きくなっていない。また大きく発見された腫瘍がより大きくなりやすいものかどうかという観点でみても、大きい腫瘍だからといって大きくならない、むしろ大きい腫瘍の方が大きくなりにくい傾向である。

[意見等]
6ページ分、丸ごと黒塗り
(注:この第16回検討部会議事録では、1ヶ月以上後に開催された第23回検討委員会の資料(案)が議論されている。第23回検討委員会では、初めて、事故当時5歳児が悪性ないし悪性疑いと診断されている。第16回検討部会開催時に、5歳児での症例が明らかだったのかは不明だが、もしも明らかだったとしたら、議事録中で一切言及されていないのも不自然である。非公開で議論された可能性もある。)

第18回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2016/11/06)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/343/000343951.pdf
3 議事
【報告】
(1)第17回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
(2)第24回検討委員会(H28.9.14 開催)甲状腺検査部門資料
(3)県内・県外検査機関一覧表
【議題】
(1)第25回検討委員会(H28.12.27 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
(2)手術症例について

報告1
第17回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
(1)第16回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録 
  委員より修正があれば事務局まで連絡する旨説明。
(2)第23回検討委員会(H28.6.6 開催)資料 
  委員より前回開催資料について説明 (詳細は割愛)。
(3)県内・県外検査機関一覧表 
  委員より8月3日現在の県内県外検査機関の締結状況について説明。 
  県内検査機関は55機関と協定締結、県外検査機関は105機関と協定締結。

2 議題
(1)第24回検討委員会(H28.9.14 開催)甲状腺検査部門資料(案)について 
  委員より県民健康調査「甲状腺検査【本格検査】(検査2回目)」結果概要(案)と、県民健康調査「甲状腺検査【本格検査】(検査3回目)」実施状況(案)について説明。
 [意見等] 
 ・二次検査の細胞診の受診率が低くなっているのは、どのような理由によるのか。 
 診断基準は変わっていないが、前回細胞診をされた方は今回行っていない場合が多いこと、 経過中にA判定相当に縮小する場合や、前回・前々回との比較より適応とならない場合もあるため、2巡目以降は必然的に減少する。ただし、まだ二次検査進歩中なので、今後もう少し増加する可能性もある。
 ・2巡目で新たに発見された癌はどのようなものか。
 →前回画像的に検出できないもので、今回検出されやすくなり診断されたケースが多いと思われる。
 ・県民健康調査の対象者かどうか確かでないが、検査を希望している方への対応はどのようにすればいいのか。 
 →個別対応となるので、確認が必要な場合、ご本人から県民健康管理センターへ連絡してほしい。
 ・細胞診の結果、35.6ミリと腫瘍が大きい方がいるが、前回はっきりしなくて今回悪性を疑う症例だったのか。
 →前回は超音波画像上はっきりしない症例だった。 
 ・血液・尿データのサイログロブリンの基準値は何を参照したのか。異常値のパーセンテージからすると、子どもは基準値を高くしなければいけないのではないか。 
 →基準値は成人の検査センターの基準値である。小児の基準値を定めたいと思うが、血液検査を行っている方は結節がある方で数値が高めとなるため、基準範囲を設定するための対照群とならない。 
 ・できれば基準値を成人の検査値であると記載した方がいいのでないか。 
 ・細胞診で59人が悪性ないし悪性疑いの方がおり、そのうち先行検査の内訳では54人が A判定だった。先行検査のデータの見直しを行っているのか。 
 →行っており、59人について、個々の症例により様々であるが、先行検査時にA1、A2の症例のほとんどは画像的には検出されないところから、今回見えるようになった。A2結節の中には、結節がやや大きくなって今回Bとなり、診断された症例も含まれる。 
 ・先行検査の画像上、判断が難しい症例はなかったということか。
 →基本的にそのような症例は含まれていない。前回B判定で細胞診が予定されていた方が診せず、今回一次検査を受診し、B判定となり、今回細胞診を行って診断された方もいるが、診断されるまでの時間を短くしなければいけないという状況はない。 
 ・患者への説明はどのように行っているか。 
 →お一人お一人対応している。 
 ・超音波診断の質をどのように担保するか重要だと考える。そのような取り組みを行ってほしい。

(2)手術症例について 
  手術症例は本格検査分で前回検討委員会報告分から平成28年6月30日現在で4例追加。

3 その他 
 ・委員より、すでに公表されている甲状腺等価線量のデータ等より、被ばくの直接影響は考えにくいことが、論文や国際機関の報告書等で報告されている旨を説明。 
 ・委員より、小児の悪性腫瘍スクリーニングの一つである神経芽細胞腫のマススクリーニング検査事業の例を紹介。

【意見等】 
 ・過剰診断と過剰治療は別であるにもかかわらず、過剰診断という表現は過剰治療を連想させる。過剰診断という表現を使わないようお願いする。また、治療の必要性に病理診断が一助となる。 
 →病理診断から、過剰診断かどうかについて判断は難しい。しかしその時の診断をもとに治療を考えてゆくことは一般的な医療行為であって、過剰治療ではない。 
 ・神経芽細胞診のマススクリーニング検査と福島の甲状腺検査は、疾患が違うので比較には限界がある。一方、検査をやめても死亡率が上昇せず問題なかった点は、本検査ももし中止しても死亡率は変わらないであろうという点は同じである。現在、悪性または悪性疑いの方について、すべてを手術しているわけではなく、一例一例十分に検討し、治療をしている。 
 ・もともと、この検査は甲状腺がん死を防ぐために行ったものではないと理解している。死亡率の減少をあまり期待していない検査であるなら、原則的には最初からやるべきではない。また福島県に限定して検査を行っていることにも問題があり、差別や偏見の温床にもなりかねないとも思う。死亡率を下げるわけではないなら、もっと根本に返って検査を続けるべきかどうかを話し合う必要がある。 
 ・甲状腺のスクリーニングは、死亡率は低下しないが、合併症を軽減する効果の方は検査を継続しないと分からないだろう。 
 ・細胞レベルでみたとき、5歳ぐらいまでに発症する甲状腺がんと、大人になって発症してくる甲状腺がんは別物の可能性はある。ただ、小児特有のメカニズムで現れてきているものを拾っているという点では、神経芽細胞腫のスクリーニングとの比較は、共通の議論になると思う。
 ・欧米で甲状腺がんの過剰診断が重要になった理由は日本と違った治療をしていたこともある。日本で主流の葉切除は過剰治療と言っていない。欧米が主張している大きな目的は全摘プラス放射性ヨウ素内用治療の適応を減らすことであって、葉切除でも過剰診断でないとは言えないが、過剰治療にはなっていないことは理解していただきたい。 
 ・チェルノブイリの時の小児甲状腺がんの長期予後はどのくらいか。 
 →現在までに事故当時の0歳~18歳に対し、約6000例手術している。亡くなった方は20数名で、そのうち癌死は3名。ほとんどは事故や自殺、他の病気で亡くなっている。 
 ・この福島県の検査はチェルノブイリとの比較ということで始まった。線量は低いが放射線の影響が僅かにあるかどうか分からない中で行われた。チェルノブイリは、放射線が関与すると考えられるのは事故当時5歳未満の子。その点からするとまだ現時点ではそこを評価する時期ではないと思う。 
 ・神経芽細胞診と違うのは手術による合併症によって日常生活上問題が出る人がほとんどいない点である。 
 ・先行検査と本格検査の結果は、現時点での結果であり、今後本格2回目、3回目の検査の結果がどうなるかが1つのデータとなり、この検査の原点であると思う。 
 ・このマススクリーニングの検査事業については、福島県の今後の検査のあり方のコンセンサスを得たいという関係から、議論をしていると考えている。1つは検査をいつまで行うか。2つは検査のやり方を現状のまま行うか、変える必要があるのか。その点に焦点を絞って議論するのがよいのではないかと思う。 
 ・マススクリーニング検査事業と福島県の検査は、違うところもあり、同じところもあるが、マススクリーニング検査事業は過剰に診断される例が2倍~3倍あるのが問題となっていた。福島県の検査では、検診をしない時と比べて、何倍くらいだったら許容されるのかという点は今まで議論されて来なかった。そのようなものも含めて新たな考え方を議論したい。また、マススクリーニング検査事業が休止になったのは様々な要因があったが、福島県の検査では基準や継続方法も含めて、検査の考え方も議論していかなければならないと思う。 
 ・福島県の検査は、最初は症例を一例一例皆様に見ていただいて確認し、その積み重ねのもと行ってきた。福島県の検査は過剰診断にならないように、抑制した中で診断基準を作り、その診断基準で実施してきた。その中でもこれだけの数が見つかることに関して議論を行うことが重要であると思う。 
 ・過剰診断自体は日本全国の問題である。甲状腺がんが福島県では放射線の影響で特に多く発生することがないだろうとの結論が出た場合、現在の福島県の検査と同様な診断を行い、 治療をしてもしQOLを改善するということになれば、日本全国の潜在している甲状腺がんも早期発見・早期治療で行われるべきという極端な話にならざるをえない。冷静に科学的に慎重な検討を行わないといけないし、社会的にも重要な問題である。 
 ・放射線被ばくによってチェルノブイリと同じように自分たちの子どもが甲状腺がんになるのではないかという不安で検査を受けなければいけないと思っている人たちは、今はそう多くない。今は福島で甲状腺がんがたくさん出ていることにより、放射線被ばくの心配ではなく、甲状腺がんが子どもたちに見つかるのではないか、自分たちにも見つかるのではないかという気持ちで検査を受けている。それはこの検査の本来の目的とはかけ離れている。子どもたちや親のそのような心境を頭の隅に置いて議論していただきたい。 
 ・検査全体をどうするかという議論ももちろん必要であるが、検査の精度管理をどのように図っていくのかということも考えなければならない。

第19回 甲状腺検査専門委員会診断基準検討部会 (2017/02/5)
https://www.i-repository.net/il/cont/01/G0000338fmu/000/346/000346341.pdf
3 議事
【報告】
(1)第18回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
(2)第25回検討委員会(H28.12.27 開催)甲状腺検査部門資料
(3)県内・県外検査機関一覧表
【議題】
(1)第26回検討委員会(H29.2.20 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
(2)手術症例について

報告1
第17回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録
1 報告
(1)第17回 甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会 概要記録 
  委員より修正があれば事務局まで連絡する旨説明。
(2)第24回検討委員会(H28.9.14 開催)甲状腺検査部門資料 
  委員より前回開催資料について説明(詳細は割愛)。
(3)県内・県外検査機関一覧表 
  委員より10月28日現在の県内県外検査機関の締結状況について説明。 
  県内検査機関は58機関と協定締結、県外検査機関は105機関と協定締結。

2 議題
(1)第25回検討委員会(H28.12.27 開催)甲状腺検査部門資料(案)について
  委員より県民健康調査「甲状腺検査【本格検査】(検査2回目)」結果概要(案)と、県民健 康調査「甲状腺検査 【本格検査】(検査3回目)」実施状況(案)について説明。
 [意見等] 
・検査3回目の資料の3ページの二次検査対象者の割合と、7ページの二次検査対象者の割合が異なっているが、なぜか。 
 →3ページについては、結果判定者数に対する二次検査対象者の割合で計算されており、7ページについては、一次検査受診者数に対する二次検査対象者の割合で計算されている。 
 ・検査が進歩すれば数値は一致してくるのか。 
 →そのとおりである。なお、検査3回目の二次検査対象者の割合については、検査2回目の割合と比較して、ほぼ同じような推移となっている。 
 ・検査3回目でB判定が検査2回目と同じような割合で見つかっているということに関してはどう説明できるか。
 →母集団がほぼ同じであるので、数値はあまり大きく変わらないが、18歳以上の方の受診率が現在まだ低いことと、全体的に年齢が上にシフトし結節の割合が高くなることが相殺されていると考えている。 
 ・血液検査のデータについて、TgAb、TP0AbやTSHには悪性ないし悪性疑いとその他で優位さ(注:有意差)があるのかどうか。
 →TgAb、TPOAbには優位さ(注:有意差)がある。TSHにはない。

(2)手術症例について
  手術症例は本格検査分で前回検討委員会報告分から平成28年9月30日現在で10例追加。

3 その他 
 ・委員より、9月に行われた第5回放射線と健康についての福島国際専門家会議での発表内容について説明。
 【意見等】
  ・韓国や日本の一部の健診センターでも超音波健診が行われているが、成人に対する検診と子どもに対する健診の場合とでは、がんに対する考えが違う。当初のがんに対する対応と、データが積み上がってきた今の対応に変化が出てきているのは妥当ではないかと思う。 
 ・マススクリーニング検査を行わなければ本来見つからなかったがんが見つかるのはマススクリーニングの効果であるのは事実。問題は、見つかったがんが、もし見つけなかったとしたら、数年後に症状が出るようながんになるのかどうかであるが、それは分からない。甲状腺がんのスクリーニング効果は、一般的ながんのスクリーニング効果とは違うものであると思う。
 ・福島県の検査は生存率を上げるために行われたわけではなく、放射線の影響を調べるために行われた。現行の診断基準のもと、検査を行い、積み上がった貴重なデータを分析して、その情報を伝えていくことが重要である。 
 ・現行の基準で、非常に気を配って検査を行っているのは理解できる。しかし、対象者全員に検査を行うのが良いか悪いかという問題がある。それについては、先行検査での結果を議論することで、今後の検査の将来像が見えてくるのではないかと思う。 
 ・過剰診断という言葉は、 診断の判定を誤診したものと連想させるので使わないでほしい。 
 →一般の方に誤解されるかもしれないことは確かだが、健診の場合に使われている過剰診断とは、がんはがんであるが、結果的に死ぬまで至らないがんをみつけてしまうものである。がんでないものをがんと診断するものとは違うものである。 
 ・過剰診断という言葉を使わないのであれば、0verdiagnosisという言葉を使うしかない。 0verdiagnosis は国際的な医学用語である。 
 →同じ医学用語でも、医療の領域によっては使い方が違う用語もある。疫学と病理では違う使い方をしている。 
 ・この検査は疫学的に過剰であっても、治療については今の医学のガイドラインに従って行 われているので、過剰治療とは言うことができないし、今の医学では分からない。
 ・先行検査の結果でもがんと診断されている人が多いが、検査を行われなければ、がんと診断される人はここまで多くないはず。もし検査を行わなくても甲状腺がんが同じように増えたのであれば、被ばくなど環境要因の影響で甲状腺がんが多発していると解釈するしかないとなるがそれは考えられない。 
 ・検査に対する一つの視点として、先行検査で手術した方の今後の人格形成や成長について、見守っていくことによって、検査のプラス面やマイナス面について判定できるのではないかと思う。 
 ・スクリーニングで大事な点は、相手は困っている病人ではなく、日常生活を普通に送っている健康な人である。メリットだけではなく、デメリットをいかに減らすかという視点も必要。また、この検査のそのような複雑な側面について、一般の方が理解できるかどうかという点に不安を感じる。 
 ・この検査を始めることになった経緯や決定の仕方の確認、反省点をまとめることで、今後どのようによりよく変えていけるかということに繋がると思う。 
 ・A2判定の結果を通知することがデメリットだと思うので、やめることはできないか。また通知するのであれば、A2の人にはAとして結果通知を行うことを検討してほしい。また、B判定の基準をもう少し上げるべきではないか。 
 →A2のデメリットについては県外の3県調査でも差がないことが明らかに分かっているので、地道にお知らせしていくことが良いと思う。
 ・A1、A2がBに変わることが否定されたのであれば、A1、A2の分類をやめて全てAとして結果通知すればいいのではないかと思う。 
 →のう胞が心配いらないものであることは多くの人が分かってきている。しかし、のう胞があることは受け入れられるが、A2という判定は、段階的にのちにBになるのではないかと 誤解されている。説明ブースでも、のう胞があるが心配ないということを説明すると理解してもらえるが、分類はA2であると説明すると不安になってしまう方もいる。今後、がん進行のステージ分類と混同され、ラベリングにつながるA1、A2、Bという分類の仕方を検討すべきではないかと思う。 
 ・スクリーニングのガイドラインはないので、日本や欧米の診療ガイドラインに基づいて検査は始まったが、その結果として受けられた手術に関しては問題ないのではないかと考える。 
 ・検査結果の状況をお示しすること、過剰にならないように検査を行うこと、一方、検査によりがんが見つかった方へはガイドライン等に従って適切に治療することが大事である。 
 ・ある年齢層の方が甲状腺がんのハイリスクグループだとすれば、その年齢層に絞って検査 を継続するのか、また、18歳以上の方へフォローをどのように行うのかも併せて検討していくべきだろう。 
 ・今後検査の比較をするために、先行検査のデータは大変重要である。検査を継続する以上、検査の比較をするためには、もしそのデメリットが小さければ、同じ検査の仕方、精度で行えることが望ましいと思う。






































福島事故前と事故後に北太平洋で捕獲された鮭の缶詰の放射能検査結果


米国の水産会社 Vital Choice Wild Seafood and Organics(ヴァイタル・チョイス・ワイルド・シーフード・アンド・オーガニックス)の鮭缶の放射能検査結果を報告する。(英語記事はこちら

注:
ベクレル(Becquerel, Bq)とは、放射能を表す単位である。1 Bqとは、一秒間に原子が1個崩壊することを意味する。
ピコキュリー(picocurie, pCi)は、放射能を表す単位で、 1 pCi = 0.037 Bq である。

ハイライト
  • 米国の水産会社に製造された鮭缶の放射能検査を行うというこのプロジェクトは、市民有志により発案された。福島事故前後(2009年、2011年、2012年、2014年)に太平洋で捕獲された鮭から製造された鮭缶で、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90とトリチウムの検査が、日本の市民測定所により行われた。
  • 4検体すべてにおいて、非常に微量のセシウム137が検出されたが、このほとんどが、核実験由来のセシウム137だった。 
  • 2011年8月に製造された鮭缶から検出されたセシウム137は、他の3検体よりも約0.02 Bq/kg高かった。もしもセシウム134も同時に検出されていたら、この差異は福島事故由来と言えるだろう。
  • だが、セシウム134は不検出だった。福島事故由来のセシウム137とセシウム134の比率が1:1であることと、セシウム134の半減期が2年であることを踏まえると、もしもセシウム134が含まれていたとしても、検出限界値以下のために不検出となる。
  • 2011年産の鮭缶のセシウム137が他の3検体よりも高いのは、福島事故に関連している可能性はあるが、それを裏付けるデータはない。
  • ストロンチウム90とトリチウム(自由水と有機化合物のどちらも)は、不検出だった。
背景
この「プロジェクト」は、2015年夏に、ヴァイタル・チョイス社が行ったベニザケの2015年放射能検査結果の、異常に高いストロンチウム90値を検証することを希望した市民有志により、おのずと発足した。

ヴァイタル・チョイス社は、2011年3月に起こった東京電力福島第一原子力発電所事故以来、年に一度か二度、自社製品に用いられる魚介類の放射能検査を率先して行ってきた。2015年に実施されたストロンチウム90の検査では、6オンスの冷凍皮付き切り身6切れが、ベニザケの検体として、SGSという測定所に2014年12月11日に受理された。放射性セシウム検査には、同量の検体が、Eurofinsという別の測定所に送付された。

ヴァイタル・チョイス社から入手したSGSの報告書によると、ベニザケから、1.76 ± 0.863 pCi/g(65.12 ± 31.93 Bq/kg)と、予想外に高濃度のストロンチウム90が検出された。検出下限値は、1.45 pCi/g(53.65 Bq/kg)だった。

下記の理由を考慮すると、この、ストロンチウム90が「65.12 Bq/kg」という検査結果は、異常に高い。
  1. 日本政府が行った魚介類の検査でストロンチウム90の最高値が検出されたのは、2011年12月21日に福島沖で採集されたシロメバルで、1.2 Bq/kg(検出限界値約0.03 Bq/kg)だった。(水産庁のページからアクセスできる、「水産物の放射性物質の調査結果(ストロンチウム)」の項目10を参照。試料が採集された場所は、 「水産物の放射性物質の調査結果(地図 ストロンチウム)」の図1に、「10」と記されている。)
  2. 2012〜2013年に福島第一原子力発電所に隣接する港内で採集された魚を調査した2015年研究では、内臓を除く魚全体から検出されたストロンチウム90の最高値は、170 ± 1.2 Bq/kg(湿重量)だった。またこの研究でのセシウム134/137の数値は、ストロンチウム90の200〜330倍だった。
  3. 前述のとおり、ストロンチウムは一般的にセシウムよりずっと低レベルでしか見つかっておらず、これは、事故による放出量と一致している。たとえば、項目1で、日本政府により検査されたシロメバルのストロンチウム90が 1.2 Bq/kgだったと言及されたが、このシロメバルから検出されたセシウムは、970 Bq/kg(セシウム134が390 Bq/kg、セシウム137が580 Bq/kg)だった。ヴァイタル・チョイス社は、ベニザケのセシウム検査とストロンチウム検査に2セットの別々の検体(6オンスの皮付き切り身を6切れが1セット)を用いてはいるが、セシウム134とセシウム137のいずれも検出されなかった(検出限界値 1.0 Bq/kg)。ゆえに、ヴァイタル・チョイス社のベニザケからストロンチウム90が検出されるとは考えにくい。
  4. さらに、ここで言及した他の検査では、セシウム検査に筋肉、ストロンチウム検査に内臓を除いた魚全体を用いている一方で、ヴァイタル・チョイス社のベニザケの試料は、6オンスの皮付き切り身6切れであり、骨を除いた筋肉と皮のみだったことからも、ストロンチウム90が「65.12 Bq/kg」だという報告は、非常に疑わしい。(上記の「2015年研究」では、主に、内耳にある炭酸カルシウムの結晶である耳石が分析されたが、内臓を除いた魚全体での測定値も言及されている。)
  5. また、「65.12 ± 31.93 Bq/kg」という結果は、誤差範囲が31.93 Bq/kgとかなり大きく、検出限界値が、日本政府の検査で用いられている0.03 Bq/kgよりもはるかに高い53.65 Bq/kgであることからも、この検査の質は疑わしいと言える。

(ヴァイタル・チョイス社は、2015年検査結果報告の最下部で、ストロンチウム90の測定値が高かったのは、測定のエラーによるものだろう、と説明している。)


ヴァイタル・チョイス社の2015年放射能検査によるストロンチウム濃度の高数値がインターネットで話題になっていた頃、日本の市民測定所で再検査を行うという考えが出てきた。市民測定所では、事故後、市民の要求に応え、高性能の測定機器を入手し、検出限界値を可能な限り下げ、微量の放射性物質を検出すべく、工夫を重ねてきていた。まったく同じ試料を検査することはかなわないにしても、せめて、同じ2014年に捕獲された魚を検査することは可能のはずである。

実は、筆者は、事故前からヴァイタル・チョイス社の鮭缶を備蓄しており、2011年の福島事故のすぐ後に、2009年産の鮭缶(骨・皮入り)を複数箱購入したのだが、それを使えるのではないか、と思いついた。また偶然にも、福島事故が起こった2011年夏に製造された鮭缶(骨・皮入り)を、一箱持っている知り合いが近所にいた。さらに、ストロンチウムはカルシウムに似ているため、骨に蓄積するので、骨なしの切り身よりも、骨と皮入りの鮭缶でストロンチウム90検査を行う方が有意義である。(冷凍の切り身を日本まで冷凍配達するのは、個人で払うには高くつく、という問題もある。)そして、ストロンチウム測定と「同じ」試料でセシウムも測定すれば、福島事故前の鮭に含まれるセシウム137濃度のベースラインを得ることもできる。

ヴァイタル・チョイス社は、2014年産の鮭缶を提供することを、快く承諾してくれた。さらに、ヴァイタル・チョイス社の倉庫が、間違えて2012年産の鮭缶を送ってくれたおかげで、思いがけない「ボーナス」として、2012年産鮭缶も入手でき、事故前(2009年)と事故後(2011年、2012年、2014年)の鮭缶(骨と皮入り)が揃った。鮭が捕獲された日時、そして太平洋のどこで捕獲されたかという情報を得ることはできないが、缶コードにより、鮭缶がいつ製造されたのかは示されている。(鮭は捕獲された年に缶詰に加工される。)缶コード詳細とその説明は、こちらにまとめてある。

鮭缶は、米国郵便局の定額小包便で、いくつかに分けて日本に送付され、市民有志の協力により、セシウム測定のために東京の「新宿代々木市民測定所」に搬送された。セシウム測定後の試料は冷凍保管され、後日、ストロンチウムとトリチウム測定のため、福島県の「いわき放射能測定室 たらちね」にボランティアにより搬送された。検査費用は、測定所の厚意で無償か、あるいは個人負担された。

結果

報告書そのものは、こちらからアクセスできる。
放射性物質ごとの検査結果の表は、こちらに、試料の詳細情報はこちらにまとめてある。

ストロンチウム90

ストロンチウム検査は、日本で唯一、ベータ放射線測定器を持つ市民測定所である、「いわき放射能測定所 たらちね」で実施された。測定には、液体シンチレーションカウンター(詳細はこのPDFを参照)が用いられた。液体シンチレーション法は、この英語文献で詳しく説明されている。「たらちね」の検出限界値の0.15〜0.17 Bq/kgは、ヴァイタル・チョイス社がもともと測定を依頼した「SGS」の検出限界値の53.65 Bq/kgよりはるかに低いが、どの検体からも、検出限界値を超えるストロンチウム90は検出されなかった。

ヴァイタル・チョイス社が受け取った報告書には、分析方法として、「ASTM D5811-95」と記載されていた。これは、ASTM規格で定められている、「水中のストロンチウム90の標準検査方法」である。この分析方法は、環境中の水の検体内で、0.037 Bq/L(1.0 pCi/L)以上のストロンチウム90を測定するために開発されたもので、ここで説明されているように、ベータ線比例計数管(β-GPC)を用いて行われる。β-GPCは、環境有害物質・特定疾病対策庁(Agency for Toxic Substances and Disease Registry 、略してATSDR)のウェブサイトの「ストロンチウムの毒性プロフィール」の第7章「分析方法」の表7−2に示されているように、飲料水中のストロンチウムの分析方法である。

ヴァイタル・チョイス社は、2013年11月にもストロンチウム90の検査を行っている。この2013年11月の検査は、Pace Analytical Services社により実施され、SGSによりレビューされたが、ここでも、分析方法は、「ASTM D5811-95」と示されている。この時に検査された3種の魚、ベニザケ、キングサーモンとビンナガマグロは、いずれもストロンチウム90が検出限界値(それぞれ、0.0513 pCi/g、0.0635 pCi/g、0.0456 pCi/g)未満だった。

これらの検出限界値は、分析方法で可能とされている、1.0 pCi/L(0.037 Bq/L)よりも二桁高いが、ベニザケでの検出限界値は、2013年の0.0513 pCi/g(1.898 Bq/kg)よりも、2015年の1.45 pCi/g(53.65 Bq/kg)の方が、さらに二桁高い。これほど大きな違いは、単位の変換ミスのような、なんらかのエラーによるとしか思えない。

トリチウム

トリチウム検査も、「いわき放射能測定室 たらちね」で行われた。トリチウム自由水、トリチウム組織結合水のいずれも、検出限界値以下だった。

セシウム134&セシウム137

セシウム測定は、新宿代々木市民測定所で行われた。(この結果は、減衰補正されていない。報告書の実物は、こちらから閲覧できる: 2009 2011 20122014

2009年鮭から検出された、0.084 Bq/kgのセシウム137は、福島原発事故前から環境中にバックグラウンド放射線として存在する、核実験由来の「レガシー」セシウム137である。2011年鮭缶から検出されたセシウム137は、2009年鮭缶より約25%高い0.108 Bq/kgで、それが2012年鮭缶では0.088 Bq/kgに、2014年鮭缶では0.080 Bq/kgと、福島原発事故前のレベルに下がっている。2011年鮭缶のセシウム137濃度、0.108 Bq/kgは、2009年鮭缶よりも0.024 Bq/kg 多いが、この、0.024 Bq/kgのセシウム137は、福島原発事故由来の可能性がある。

セシウム134は、4検体のいずれからも検出されなかった。半減期が2年であるため、核実験由来のセシウム134が2009年鮭缶に存在しないことはわかっている。2011年以降の鮭缶に存在し得るセシウム134は、2015年9月に検査が実施された頃には、検出限界値以下になってしまっている。

考察

ストロンチウム90も、トリチウム(自由水と組織結合水の両方)も、2011年鮭缶、2011年鮭缶、2012年鮭缶、2014年鮭缶の4検体のどれからも検出されなかった。

缶コードによると、2011年鮭缶が加工されたのは、2011年8月9日である。(缶コード詳細については、こちらを参照。)2011年鮭缶の缶コードには、「スキーナ川(Skeena River)」を示すシンボルが含まれているが、これは、この鮭の母川がスキーナ川であることを意味している。(2009年、2012年と2014年の鮭缶には同様の母川の指定がされておらず、なぜ、2011年鮭缶のみに指定されているのか不明である。)ヴァイタル・チョイス社は、次のように述べている。
「鮭のほとんどは、状況さえ許せば、母川に戻るので、すべての鮭は、母川である特定の川により区別することができる。なぜ、2011年鮭缶が特に「スキーナ川」と指定され、他の鮭缶に同様の指定がなかったのかは不明である。鮭は、河川系に繋がる海や湾の広域で、さまざまな漁法により捕獲されるものである。」
しかし、この鮭がスキーナ川で捕獲されたのか、スキーナ川付近の太平洋で捕獲されたのかについての情報はない。2011年に捕獲された鮭が、どのようにして、福島事故由来のセシウムに曝露したのかは、その鮭が、母川に戻るところだったのか、川を下ってきたのかによるが、これについて知る術もない。事故後最初の5年間の福島事故由来の放射性物質の海洋への放出と輸送をレビューした論文の情報によると、この2011年に捕獲された鮭は、海か川に落ちた大気中降下物に曝露した可能性が強い。

興味深いことに、2011年、2012年と2013年に、アラスカの川で捕獲された鮭の切り身の放射能検査が、カリフォルニア大学バークレー校の原子力工学部によって行われていた。この検査では、2011年に捕獲された鮭から福島事故由来のセシウム134とセシウム137が、微量だが検出されていた(結果報告はこちら)。曝露経路については、鮭が川で捕獲されたことと、そのタイミングから考慮し、次のように示唆されている。
「(前略)鮭がセシウムに曝露したのは、太平洋で過ごした間ではなく、(少量ながら)川の水に集積・濃縮した大気中降下物からだった可能性がある。」
新宿代々木測定所でのセシウム検査では、検体は、缶から出してそのまま、乾燥させずに測定され、測定結果は、湿重量で報告されている。カリフォルニア大学バークレー校の測定室の結果は、「分析に用いられた重量は、湿重量、または凍ったままの鮭の重量であり、オーブンで焼かれ、湿重量よりもかなり少なくなった、『乾重量』ではない。」と述べられている。2012年と2013年の鮭から検出された核実験由来のセシウム137濃度の0.14 Bq/kgが、実際に、測定時の乾重量から湿重量に換算されて報告されているものだとしたら、鮭缶で検出された0.080〜0.088 Bq/kgよりも高いことは興味深い。(乾重量から湿重量に換算されているのかをウェブサイトのコンタクトフォームから問い合わせたが、返事はなかった。)

FDA(米国食品医薬局)がアラスカ州で行っている魚介類の放射能検査(詳細はこちら)では、検査結果(2016年の結果はこちら)は湿重量で報告されているが、検出限界値が1 Bq/kgを超えているので、鮭缶の結果との比較にはならない。

鮭ではないが、2012年の太平洋クロマグロの研究では、福島事故後のセシウム濃度が示されてはいるが、ここでは、検査結果が乾重量で報告されているので、鮭缶の結果と直接比較することはできない。しかし、鮭缶から検出された核実験由来のセシウム137濃度の裏付けとなるデータには、下記のようなものがある。
1)日本政府の環境放射線データベースから、2000年以降の鮭の放射能検査を抜き出してまとめた集計データは、こちらからアクセスできる。2)東京大学と秋田放射能測定室「べぐれでねが」の共同研究では、「べぐれてねが」で乾燥・濃縮された試料の高精度の測定が、東京大学で行われる(共同研究の論文:英語日本語)。この共同研究では、2014年に北海道産の白鮭からセシウム134が検出された(報告はこちら)が、2015年の北海道産の白鮭からは検出されなかった(報告はこちら)。「べぐれてねが」ウェブサイトで公表されている検査結果は、乾重量から湿重量に換算してある。2015年の白鮭から検出されたセシウム137は、0.0727 Bq/kgだった。

結論

このプロジェクトで鮭缶から検出されたセシウム137は、ほとんどが核実験由来のもので、通常よりもはるかに低い検出限界値が用いられなければ、検出されなかったレベルである。ストロンチウム90もトリチウムも、検出限界値以下であった。2011年鮭缶から検出されたセシウム137は、他の3検体よりも少し高く、この差異は福島原子力発電所事故由来と言えるかもしれない。

この結果をどう考えるか?


まず、最初に断っておくが、「食べるべきか、食べないべきか」というアドバイスをするのが、この記事の目的ではない。その決断を下すにあたり、役立つかもしれない情報を、下記に提供したいと思う。食品の放射能検査結果についての事実をいくつか学ぶことにより、放射能測定結果の数値を客観的にとらえること、さらに、詳細な情報を得た上で、食べるかどうかという個人的な決断を下すことができるのではないだろうか。

1. 今回の鮭缶の放射能検査で、ごく微量のセシウム137が検出されたのは、次のような理由であることに留意すべきである。
a) 実際に検査が行われたということ。b) その検査が、ごく微量のセシウム137を検出できるほど精度が高かったということ。
2. 多くの食品には、自然由来と人工由来両方の、バックグラウンド放射性物質が含まれている。


米国FDAが行っている、トータル・ダイエット・スタディには、放射性物質の分析も含まれており、セシウム137とストロンチウム90が市場に流通している食品に含まれていることがわかっている。しかし、調査報告書(最新のは2006〜2014年)を見ると、3つの食品(食品番号74、320と376)以外は「ゼロ」と表示されているので、ほとんどの食品にはセシウム137が含まれていないじゃないか、と思ってしまうかもしれない。だが、よく見ると、ひとつの食品について検査される複数(ほとんどの食品で10〜12)の検体のすべてで、セシウム137が「報告限界値」の5 Bq/kg 未満の場合のみ、「ゼロ」と報告されているにすぎない。もしも、ひとつの食品について検査される複数の検体のひとつからでも、5 Bq/kgを超えるセシウム137が検出された場合は、平均値、標準偏差と最大値が示されている。(ちなみに、食品番号74のレーズンブランシリアルでは最大値が10.8 Bq/kg、食品番号320のかぼちゃのベビーフードでは最大値が93.3 Bq/kg、食品番号376のサラダドレッシングでは、最大値が40.5 Bq/kgである。)

ゆえに、この「ゼロ」は、正確には、「<5 Bq/kg」と表示されるべきである。また、放射能測定値の報告では、検出限界値(この調査でのセシウム137の検出限界値は、おそらく1.0 Bq/kgであると思われる)を明記し、「ゼロ」ではなく、「ND」("not detected" 不検出)と記す方が、より正確である。

この調査では、ストロンチウム90に関しては、「報告限界値」が0.1 Bq/kgであるが、報告書(このPDFの22〜29ページ)を見ると、かなりの食品から微量のストロンチウム90が検出されているのがわかる。

3. 魚介類の放射能検査では、検査された特定の個体に含まれている放射性物質しか測定できない。近くで捕獲された他の個体でも似たような傾向が見られるかもしれないが、海のどこを泳いで何を食べてきたかにより、取り込んだ放射性物質の量が異なる可能性がある。

4. もうひとつ重要なことは、放射性物質の量がどのように説明され、何と比較されるかということである。

大気、飲料水や食品に含まれる放射性物質への曝露の結果の被ばく線量は、頻繁に、「CTスキャンやレントゲン何回分」や、「飛行機でのフライト何時間分」という比較をされているが、これは紛らわしい。CTスキャンはレントゲンは、X線による「外部被ばく」、飛行機でのフライトは、宇宙線による「外部被ばく」であり、どちらも、曝露の時間は限定されている。その一方で、呼吸や飲食により放射性物質を取り込む「内部被ばく」は、放射性物質が体内にとどまっている間、ずっと持続し続ける。さらに、体内に取り込まれた放射性核種には、特定の臓器に蓄積し、影響を与えるものがあるため、外部被ばくと内部被ばくを被ばく線量のみで比較することは、適切ではない。

また、飲料水や食品に含まれる放射性物質の濃度は、(米国では)FDAによって決められた基準値(介入レベル)である、「DIL(Derived Interventional Level)」と比較されることが多い。DILとは、ここで説明されているように、「輸入食品および国産食品の放射性物質濃度のガイダンスレベル」である。セシウム134とセシウム137を合わせたセシウム合算のDILは 1200 Bq/kg 、ストロンチウム90の DIL は、160 Bq/kg である。(DILがどのように算出されたかについては、ここに詳しく説明してある。)なお、福島原発事故以来、米国内外の2つのグループが、食品中のセシウム基準値の引き下げを提案している。米国のとある連携グループは、セシウム合算のDILを1200 Bq/kg から 5 Bq/kgに引き下げることを推奨しており、また別の2つの国際組織は合同で、EU(欧州連合)のベビーフードの基準値を370 Bq/kgから8 Bq/kgに、その他の食物の基準値を600 Bq/kgから16 Bq/kg に、引き下げることを推奨している(これについては後述を参照のこと)。

DILは、PAG(防護対策指針)に基づいているが、PAGは、FDAウェブサイトで、「PAGとは、防護対策を用いて個人への被ばく線量を制限すべきであるとみなされる、放射線被ばく線量のレベルである」と説明されている。1998年に、年間実効線量 5 mSv が PAGとして採用されたが、この線量とは、実質、放射線被ばく由来のがん死が1万人につき2人増えることを受容するものである。(このトピックに関するFDA文書はかなり複雑であるが、2011年4月14日付けのForbes記事で、もう少しわかりやすく説明してある。)

現在のセシウム134&137のDILである1200 Bq/kgは、1986年に設定された「LOC」と呼ばれる「懸念レベル」の370 Bq/kg が、1998年に更新されたものである。介入レベルが370 Bq/kgから1200 Ba/kgに引き上げられた理由は、LOCは、食物が100%汚染されていることを仮定していた一方、DILは、汚染が30%であると仮定しているからである。だが、DILもLOCも、PAGが5 mSvであるという点では、実質同じである。つまり、年間実効線量の5 mSvに達するには、食物の汚染度が低い(DILでは30%)場合は、高い場合(LOCでは100%)よりも、多くの汚染食品を食べれる、というわけである。

ここで言及しておくと、セシウムの1200 Bq/kgというDILは、EUの輸入食品に対する基準値の600 Bq/kgの2倍である。また、日本の放射性セシウムの現基準値の100 Bq/kgは、年間1mSvを最大許容線量として算出されているが、DILはその10倍である。さらに、福島原発事故直後に、年間5 mSvを最大許容線量として日本政府が暫定規制値と設定した500 Bq/kgの、2倍以上である。(日本の食品における放射能規制値については、このPDFを参照のこと。日本の現基準値である100 Bq/kgは、流通食品の50%が汚染されているという仮定に基づいている。)

前述したが、2つのグループ、米国の「Beyond Nuclear」とその連携グループ、および、国際組織「フードウォッチ」と「IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部」が、食品中に許容されている放射性セシウムの量を引き下げることを、次のように推奨している。
a)米国のDILの1200 Bq/kgを、5 Bq/kgに引き下げ(Beyond Nuclearとその連携グループ)b)EUの輸入食品の基準値をベビーフードと乳製品で370 Bq/kgから8 Bq/kg、その他の食物で600 Bq/kgから16 Bq/kgに引き下げ(フードウォッチとIPPNWドイツ支部)
Beyond Nuclearとその連携グループの、セシウム134と137合わせて5 Bq/kgに引き下げるという推奨は、ベラルーシの病理学医、ユーリ・バンダジェフスキー氏による、セシウム137の健康影響についての研究に基づいている。

フードウォッチとIPPNWドイツ支部による推奨は、ドイツ放射線防護協会による研究に基づいており、原発の平常運転時に、放射性物質が大気中と水中に放出される場合の一般市民への放射線暴露の制限値とされる年間最高0.3ミリシーベルトが元となっている。以下、フードウォッチとIPPNWドイツ支部の報告書(英語PDF日本語PDF)から、重要なポイントを抜粋する。
「食品中の放射性核種に関して公的に規定された制限値は、市民を健康障害から保護するものだ。ただ有害化学物質の場合と異なって、それ以下の放射能であれば害がないというしきい線量がない。そのため、「危険ではない」とか「害がない」、「心配ない」といえるような微量の放射線量もない。上限値や制限値を規定するとは、規制作成者が規制作成者にとって容認できると見られる病人数と死者数をその値によって規定するということだ。(中略) 
この目的を達成するため、要求する制限値を算出するに当たり、最大年間実効線量として0.3ミリシーベルトを採用した。ドイツの放射線防護法はこの値を、原発の平常運転時に放射性物質が大気中と水中に放出される場合の放射線暴露の制限値としている。(中略) 
これまでのEUの放射性セシウムの制限値は乳幼児用食品で8 Bq/kgに、その他のすべての食品で16 Bq/kgに引き下げなければならない。」

謝辞

ヴァイタル・チョイス社とBR氏には、鮭缶の提供について、新宿代々木市民測定所といわき放射能市民測定室「たらちね」には、測定の提供について、そして最後に、NK氏とAT氏には、鮭缶の日本到着後の搬送について、深くお礼を申し上げる。

メモ:2017年2月20日発表の甲状腺検査結果の数字の整理


2017年2月20日に開催された第26回県民健康調査検討委員会で発表された、甲状腺検査結果の数字をメモ的に整理した。データは2016年12月31日時点のものである。

1巡目結果は、2016年6月6日開催の第23回県民健康調査検討委員会で公表された追補版に掲載されているデータである。それ以降の追加情報は公開されていないため、2016年9月14日のメモから変わっていない。

2巡目結果は、二次検査の受診率が79.5%、結果確定率が95.0%ではあるが、まだ89人の結果が未確定だけでなく、二次検査も進行中ということで、今回も確定版は出なかった。(なお、2巡目未受診の25歳節目検診対象者の受診結果も2巡目に計上されるため、今後も受診者数が増加する見込みだという。)

2巡目で悪性ないし悪性疑いとされた69人の先行検査(1巡目)結果についても、簡単にまとめた。

2016年5月1日から開始されている3巡目結果では、一次検査受診率が25.9%で、483人の二次検査対象者のうち、143人が二次検査を受診し、うち64人で結果が確定している。1人が細胞診を受診したが、「悪性ないし悪性疑い」ではなかった。

先行検査(1巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人
手術症例      102人(前回から変化なし)(良性結節 1人と、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
経過観察中      14人

本格検査(2巡目)
悪性ないし悪性疑い 69(前回から1人増)
手術症例      44人(前回から変化なし)(甲状腺がん 44人:乳頭がん 43人、その他の甲状腺がん**1人)
経過観察中     24人

本格検査(3巡目)
悪性ないし悪性疑い 0人
手術症例      0人
経過観察中     0人

合計
悪性ないし悪性疑い 185人(良性結節を除くと184人
手術症例      146人(良性結節 1人と、甲状腺がん 145:乳頭がん 143人、低分化がん 1人、その他の甲状腺がん**1人)
経過観察中       39人

(**「その他の甲状腺がん」とは、2015年11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第7版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。)

***

本格検査で悪性ないし悪性疑いと診断された69人の先行検査結果
A1判定:32人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:31人(結節 7人、のう胞 24人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人

メモ:2016年12月27日発表の甲状腺検査結果の数字の整理


2016年12月27日に開催された第25回県民健康調査検討委員会で発表された、甲状腺検査結果の数字をメモ的に整理した。データは2016年9月30日時点のものである。

1巡目結果は、2016年6月6日開催の第23回県民健康調査検討委員会で公表された追補版に掲載されているデータである。それ以降の追加情報は公開されていないため、前回のメモから変わっていない。

2巡目結果は、二次検査の受診率が75.8%、結果確定率が92.2%ではあるが、まだ132人の結果が未確定だけでなく、二次検査受診自体も続行中らしいため、確定版が出るのには時間がかかりそうである。(なお、2巡目未受診の25歳節目検診対象者の受診結果も2巡目に計上されるため、今後も受診者数が増加する見込みだという。)

2巡目で悪性ないし悪性疑いとされた68人の先行検査(1巡目)結果についても、簡単にまとめた。

2016年5月1日から開始された3巡目結果では、受診率が14.7%の中、211人の二次検査対象者が出ているが、二次検査が2016年10月開始のため、結果は報告されていない。

先行検査(1巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人
手術症例      102人(前回から変化なし)(良性結節 1人と、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
手術待ち       14人

本格検査(2巡目)
悪性ないし悪性疑い 68(前回から9人増)
手術症例      44人(前回から10人増)(甲状腺がん 44人:乳頭がん 43人、その他の甲状腺がん**1人)
手術待ち      24人

合計
悪性ないし悪性疑い 184人(良性結節を除くと183人
手術症例      146人(良性結節 1人と、甲状腺がん 145:乳頭がん 143人、低分化がん 1人、その他の甲状腺がん**1人)
手術待ち        38人

(**「その他の甲状腺がん」とは、2015年11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第7版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。)

***

本格検査で悪性ないし悪性疑いと診断された68人の先行検査結果
A1判定:31人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:31人(結節 7人、のう胞 24人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人

『ランセット: 糖尿病と内分泌学』掲載の高村レターへの反論レターの和訳


『The Lancet: Diabetes and Endocrinology』12月号に、8月号に掲載された高村らのレター "Radiation and risk of thyroid cancer: Fukushima and Chernobyl" への反論レター  "Misrepresented risk of thyroid cancer in Fukushima" が、著者らのリプライと共に掲載された。著作権の関係で、掲載された文章の和訳を公表することはできないが、校正前のレターの和訳の公表は問題ないとエディターから了承を得た。以下は、校正前の原文とその和訳であるが、字数制限下で書かれた原文の意味をわかりやすくするために、和訳では足りない部分を補うか意訳している部分があるので了承願いたい。なお、ランセットではすべての投稿がランセット独自のスタイルに校正されることになっていると説明されたが、あくまでも読者にわかりやすくするための校正であり、実質、内容に変化はなかった。また、このレターの内容は、岩波書店『科学』11月号に寄稿した「チェルノブイリと福島のデータの誤解を招く比較」で、より詳細に説明されている。

*高村らのレター "Radiation and risk of thyroid cancer: Fukushima and Chernobyl" は、2016年9月14日に開催された第24回福島県「県民健康調査」検討委員会で資料8「福島とチェルノブイリにおける甲状腺がんの発症パターンの相違についてとして提出されている。

*****

福島の甲状腺がんリスクが不正確に伝えられている

2011年の核惨事後の福島県での放射線被ばくと甲状腺がんの因果関係は、論争の的となっているトピックである。高村ら(1)は、福島県で見つかっている甲状腺がん症例が「スクリーニング効果」に起因するとし、時期尚早に、そして紛らわしい方法で放射線影響を否定している。


高村らは、ベラルーシの0〜15歳のデータから、1986年のチェルノブイリ事故から4年後の1990年に、事故当時0〜5歳だった子どもたちで甲状腺がんの発症率が増加し始めた、としている。チェルノブイリ事故から4〜10年後に甲状腺がん手術数が最も多かったのは、年齢が低いグループだった。2011年10月〜2014年3月に実施された1巡目検査で見つかった113例の甲状腺がんのほとんどが年齢が高いグループで見つかっているために、この113例は「スクリーニング効果」である可能性が高い、と著者らは結論づけた。しかし、より論理的な結論が示唆するのは、事故から4〜10年後の福島でベラルーシと同様の傾向が見られるかもしれない、ということである。事故後の異なる期間(ベラルーシでは事故から3〜4年後、福島では事故直後の3〜4年間)や、異なる年齢グループ(ベラルーシでは0〜15歳、福島では0〜18歳)を比較することは、妥当ではない。

高村らは、福島での甲状腺被ばく線量が低いため、「(事故後)4年以内に検出可能な甲状腺がんの過剰発生が(この低い線量で)起こったとは考えにくい」と主張している。その一方、津田らは、福島県の甲状腺がんデータの疫学的分析を行い、(事故後)4年以内に甲状腺がんの過剰発生が検出されたと結論づけている(2)。高村らはまた、甲状腺被ばく線量測定のサンプルサイズの小ささ(1080人vsコホート全体の36万人)や、測定時のバックグラウンド放射線レベルの高さなどが不確かさや過小評価につながるという、甲状腺被ばく線量実測値(3)の問題点を無視している。この(チェルノブイリの線量より低い)被ばく線量実測値を強調することにより、行動パターンや飲食の個人差による、より高い被ばく線量が見落とされるかもしれない。なによりも、がん症例の甲状腺被ばく線量は把握されていないし、(被ばくによる)影響は直線的である。最近の証拠では低線量でがんリスクが増加することが示されており(4,5)、さらに、明らかなしきい値線量というものはないのである。たとえ、この(1巡目終了時の)時点で福島の集団において統計的に検出可能な過剰発生がないとしても、福島原発事故によるがんリスクがまったくないことにはならない。


校正前の投稿原文
Misrepresented risk of thyroid cancer in Fukushima

Causal relation between radiation exposure and thyroid cancer in Fukushima after the 2011 nuclear disaster is a controversial topic. Takamura et al. [1] prematurely and misleadingly dismiss the radiation effect in attributing thyroid cancer cases detected in Fukushima to “an effect of screening”.

Takamura et al. observe from the Belarussian data for ages 0-15 years that starting in 1990, four years after the 1986 Chernobyl accident, the incidence of thyroid cancer had increased in children who were 0-5 years at the time of the accident. The highest number of thyroid cancer surgeries was in younger age groups 4-10 years after Chernobyl. The authors conclude that 113 thyroid cancer cases in Fukushima, detected mostly in older age groups in the first screening cycle from October 2011 to March 2014, are likely due to “an effect of screening.” A more logical conclusion suggests a similar trend in Fukushima in 4-10 years after the accident. It is not valid to compare two different post-accident periods—after (Belarus) and during (Fukushima) the first 3-4 years, or different age ranges (0-15 in Belarus vs. 0-18 in Fukushima). 

While Takamura et al. declare that Fukushima’s low thyroid dose levels are “unlikely to have caused a detectable excess in thyroid cancer within 4 years,” Tsuda et al. concluded in their epidemiological analysis of the cancer data that an excess of thyroid cancer was detected within 4 years [2]. Takamura et al. disregard the shortcomings of the thyroid dose measurements [3], including a small sample size (1,080 vs. 360,000 children in the full cohort) and high background radiation levels leading to uncertainties and underestimation. Focus on these doses might overlook potentially higher doses due to individual variation in exposure from behavior patterns and intake of food and water. Critically, the thyroid exposure doses of the cancer cases are unknown and the effect is likely to be linear. More recent evidence points toward increased cancer risks at low doses [4,5], with no apparent dose threshold. Even if a statistically detectable excess were absent at this timepoint for the Fukushima population, it does not mean the absence of cancer risk from the event. 

220人の手術症例とこれまで報告されてきた臨床データについて

   2024年11月12日に開催された 第53回「県民健康調査」検討委員会 (以下、検討委員会)および3日後に開催された 第23回「県民健康調査」検討委員会「甲状腺検査評価部会」 (以下、評価部会)で、 220例の手術症例 について報告された。これは、同情報が 論文 として20...