メモ:2019年10月7日発表の甲状腺検査結果の数字の整理など


* 4巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された13人で3巡目でA2と診断された8人の内訳が、正確には「A2結節が2人、A2のう胞が6人」であるところ、逆になっていたので訂正した。(2019年11月12日)

 2019年10
月7日に、第36回「県民健康調査」検討委員会が開催され、2019年6月30日時点での3巡目(新たに5例が悪性ないし悪性疑いと診断、1例が手術により甲状腺がんと確定)と4巡目(新たに8例が悪性ないし悪性疑いと診断、手術例なしの結果が公表された。
 各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数、平均年齢と平均腫瘍径、および各年度ごとの手術症例の人数などは、「参考資料1 甲状腺検査の状況」にまとめられている。今回、初めて4巡目の年齢・性分布ヒストグラムが公開されている。

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現時点での結果
これまでに発表された集計外症例数と、前回発表された25歳時節目検査の結果も含む、現時点での結果をまとめた。


第5期検討委員会および第3期甲状腺検査評価部会の委員名簿
 なお今回は、2011年5月27日に発足した検討委員会の第5期(任期は2019年8月1日〜2021年7月31日)となり、再任を含む新たな委員構成での開催となる。(検討委員名簿PDFはこちら。)「これまでの流れを変えないように」という堀川章仁氏の推薦で、星北斗氏が座長として再選された。
 新規の委員は、福島県臨床心理士会長の安部郁子氏(前任は成井香苗委員
)、量子化学技術研究開発機構の高度被ばく医療センター・副センター長である立崎英夫氏、環境省の田原克志氏(前任は梅田珠美氏)、日本甲状腺学会推薦で獨協医科大学教授の菱沼昭氏(前任は髙野徹氏)、弘前大学の三浦富智氏(前任は柏倉幾郎氏)、日本内分泌外科学会推薦で前期は甲状腺検査評価部会員を務めた甲状腺外科医の吉田明氏(前任は清水一雄氏)の6人である。立崎氏は新たに設けられた18人目の委員ポジションを占めることになる。(ちなみに、山下俊一氏が2019年4月1日付けで高度被ばく医療センター長に就任している。)

 また、開催は未定ながら、3巡目の結果を検討することになる第3期(任期は2019年8月1日〜2021年7月31日)の甲状腺検査評価部会の名簿も公表されている。福島県病院協会の推薦で会津中央病院の旭修司氏(前任は阿美弘文氏)、日本内分泌外科学会の推薦で東名古屋病院長の今井常夫氏(前任は吉田明氏)、日本病理学会の推薦で山梨大学の近藤哲夫氏(前任は加藤良平氏)、日本甲状腺学会の推薦で野口病院の村上司氏(前任は髙野徹氏)の4人の部会員が新任となった。


3巡目の結果
  2016年5月1日から開始されている3巡目では、新たに県外受診者35人を含む177人が受診し、182人で結果が判定された。一次検査受診率も結果判定率もそれぞれ前回と同じ64.7%と100.0%と安定している。
  一次検査でB判定とされた二次検査対象者は前回より9人増えて1499人となった。この9人のうち5人が2016年度対象市町村(南相馬市1人、郡山市3人、白河市1人)、4人が2017年対象市町村(いわき市1人、須賀川市1人、昭和村1人、会津若松市1人)の住民で、2巡目検査の結果は、A1が1人、A2が1人、Bが4人、未受診が3人だった。二次検査の受診者数は9人(2016年度2人、2017年度7人)増えて1090人となり、受診率は0.1%増えて72.7%となった。二次検査の結果確定数は、2016年度で3人増えて573人、2017年度で16人増えて465人と、計1038人となり、全体的な結果確定率は0.9%増えて95.2%となった。
  2017年度対象市町村から5人が細胞診を受診し、5人とも新たに悪性ないし悪性疑いと診断され、3巡目での悪性ないし悪性疑いは29人となった。この5人のうち2人が浜通り、3人が会津地方の住民で、男性が3人(事故当時年齢6歳、8歳、8歳)と女性が2人(同10歳、11歳)だった。2巡目での判定結果は、A1が1人、A2のう胞が2人、Bが2人だった。3巡目の悪性ないし悪性疑い29人の2巡目結果は、Aが19人(A1が6人、A2のう胞が10人、A2結節が3人)、Bが7人、未受診が3人となる。手術症例は、2017年度対象市町村で1例増えて19例(甲状腺乳頭がん 19例)となった。今回発表された手術症例は全体的に1例と少ない。次回発表のデータには夏休みに手術を受けた人が含まれることになる。
  3巡目以降、二次検査実施状況は、市町村別ではなく地域別でしか公表されなくなっている。「別表5 地域別二次検査実施状況」によると、二次検査を受診したのは中通り2人(20歳以上2人)、浜通り4人(10〜14歳1人、20歳以上3人)、会津地方3人(15〜19歳1人、20歳以上2人)で、二次検査受診率は、避難区域等13市町村75.5%、中通り73.8%、浜通り70.9%、会津地方68.8%と、ほぼ横並びとなっている。

4巡目の結果
 2018年4月1日から開始されている4巡目(25歳節目検査対象者は除外)では、一次検査対象者数が前回より31人増えて294158人、受診者は前回より13745人(2018年度1659人、2019年度12089人、うち県外受診者は2018年度549人と2019年度291人の計840人)増えて117899人(2018年度99948人、2019年度17951人)となった。一次検査受診率は、前回より4.7%増えて40.1%(2018年度59.5%、2019年度14.2%)となった。結果判定数は16120人(2018年度14167人、2019年度1959人)増えて105927人(2018年度98942人、2019年度6985人)となり、受診者の89.8%(前回より3.6%増)で結果が判定されている。B判定者数は、前回より64人増えて655人(2018年度562人、2019年度93人)となった。この64人のうち38人が2018年度対象市町村(南相馬市1人、田村市1人、福島市4人、郡山市31人、白河市1人)、26人が2019年度対象市町村(いわき市8人、須賀川市2人、浅川町2人、棚倉町2人、玉川村1人、下郷町1人、喜多方市1人、猪苗代町1人、会津美里町2人、会津坂下町4人、会津若松市2人)の住民で、この26人の3巡目検査の結果は、A1が4人、A2が31人、Bが24人、未受診が5人だった。
 一次検査受診者の88%が2019年度対象市町村、結果確定数の88%が2018年度対象市町村であり、2018年度対象市町村では受診率が59.5%で結果判定率が99.0%、2019年度対象市町村では受診率が14.2%で結果判定率が38.9%である。これまでの受診率が1巡目から3巡目まで81.7%、71.0%、64.7%と徐々に低下していることを考慮すると、2018年度受診者の結果は安定しつつあるといえ、2019年度対象市町村での検査はまだまだ進捗中であることがうかがえる。ちなみに、2019年度受診者17951人中8305人は7〜11歳、6680人は12〜17歳である。
 二次検査対象者655人中、前回から新たに81人(2018年度68人、2019年度13人)が二次検査を受診し、合計392人(2018年度352人、2019年度40人)となり、受診率は7.2%増えて59.8%となった。結果確定数は122人(2018年度109人、2019年度13人)増えて346人(2018年度316人、2019年度30人)となり、結果確定率は16.3%増えて88.3%となった。
 2018年度対象市町村から新たに12人が細胞診を受診し、8人が悪性ないし悪性疑いと診断され、4巡目での悪性ないし悪性疑いは13人となった。この8人は全員中通りの住民で、男性4人、女性4人である。4巡目では、今回初めて年齢・性分布のヒストグラムが公表されたため、この8人での年齢と性別は不明である。4巡目全体の13人では男性6人(事故当時年齢5歳が2人、7歳が2人、12歳が2人)、女性7人(同4歳が1人、6歳が1人、8歳が1人、9歳が1人、10歳が3人)である。
 8人の3巡目での判定結果は、A1が2人、A2のう胞が2人、A2結節が2人、Bが2人だった。4巡目の悪性ないし悪性疑い13人の3巡目結果は、Aが10人(A1が2人、A2のう胞が2 6人、A2結節が6 2人)、Bが3人となる。今回、4巡目での手術症例はなかった。
 「別表5 地域別二次検査実施状況」によると、二次検査を受診したのは、避難区域等13市町村6人(12〜17歳5人、18歳以上1人)が、中通り69人(6〜11歳19人、12〜17歳41人、20歳以上9人)、浜通り3人(20歳以上3人)、会津地方3人20歳以上3人)である。二次検査受診率は、避難区域等13市町村72.7%、中通り59.6%、浜通り45.2%、会津地方25.0%と、かなりのばらつきがみられる。

受診率の推移
 一次検査の受診率は、1巡目が81.7%、2巡目が71.0%、3巡目が64.7%、4巡目が40.0%、25歳時節目検査が7.1%である。二次検査の受診率は、1巡目が92.9%、2巡目が84.1%、3巡目が72.7%、4巡目が52.6%、25歳時節目検査が59.8%である。
 前回の記事でも言及しているが、最初から県民健康調査外での受診、あるいは二次検査から甲状腺検査実施機関以外の医療機関を受診という可能性もあると思われるが、完全な症例把握は困難な状況である。検討委員会および甲状腺検査評価部会では、全国・地域がん登録データからの拾い上げによる症例把握について言及されているが、これは理論的には可能ではあるもの、実情としては、がん登録データの精度という問題が存在する。(がん登録制度の問題点については、岩波『科学』電子版2019年7月号「第13回甲状腺検査評価部会で公表された部会まとめ案について」の11〜12ページを参照のこと。PDFリンク

前回検査結果との比較
  表4の前回検査結果との比較によると、前回検査が未受診だった人の受診者に対する割合は、2巡目で8.8%、3巡目で7.0%、4巡目では11.5%、25歳時節目検査では33.5%である。前回検査でB判定だった人がまたB判定となる割合は、2巡目で53.4%、3巡目で61.5%, 4巡目では78.4%、25歳時節目検査では69.1%である。
  (注:前回検査との比較表における「前回検査」とは、前回検査での一次検査の結果であり、二次検査後の再判定が反映された結果ではない。)

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以下は、1〜4巡目と25歳時の節目検査の結果であるが、同情報は、「参考資料1 甲状腺検査の状況」の6ページ目にもまとめられている。

先行検査(1巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例      102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例      14人

本格検査(2巡目)
悪性ないし悪性疑い 71(前回から変化なし)
手術症例      52人(甲状腺がん 52人:乳頭がん 51人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例     19人 

本格検査(3巡目)
悪性ないし悪性疑い 29(前回から5人増)
手術症例      19人(前回から1人増)(甲状腺がん 19人:乳頭がん19人)
未手術症例       6人

本格検査(4巡目)
悪性ないし悪性疑い 13人(前回から8人増)
手術症例      1人(前回から変化なし)


25歳時の節目検査 
悪性ないし悪性疑い 2人(前回から変化なし)
手術症例      1人(前回から1人増)

合計
悪性ないし悪性疑い 231人(良性結節を除くと230人
手術症例      175人(良性結節 1人と甲状腺がん 174人:乳頭がん 172人、低分化がん 1人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例***      56人

注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第7版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。
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2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された71人の1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人

3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された24 29人の2巡目での判定結果 (2019年11月12日に「24→29」と訂正)
A1判定:6人(前回より1人増)
A2判定:13人(結節3人、のう胞10人)(前回よりのう胞2人増)
B判定:7人(前回より2人増)
2巡目未受診:3人

4巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された5 13人の3巡目での判定結果  (2019年11月12日に「5→13」と訂正)
A1判定:2人(前回より2人増)
A2判定:8人(結節6 2人、のう胞2 6人)(前回より結節2人とのう胞2人増)
B判定:3人(前回より2人増)
2巡目未受診:0人

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