慢性被ばくの影響の病理メカニズム: 感染症、ホルモン機能障害、放射線白内障、脳におけるセシウム蓄積
「電離性放射線の神経精神的影響」A.I. Nyagu and K.N. Loganovsky著
第6章 慢性被ばくの神経精神的影響 より抜粋和訳
http://www.physiciansofchernobyl.org.ua/eng/books/Niagu/pdfs/Chapter6Rev.pdf
(下記はこの章の英語の解読後に、抜粋和訳をしたものである。)
1963年に、慢性被ばく症は疫病分類学的に別のカテゴリーとして認識するべきだと主張された。慢性被ばく症による損傷は、放射性物質の放射線の影響と化学的毒性の両方に特徴づけられると言われた。局所感染や全身感染の増加は、免疫力が弱まった体の抵抗力の低下による、慢性被ばく症の通常の合併症であると言われた。
電離性放射線が様々な器官や組織の器質細胞に直接的影響を与えた後に、硬化状態が起こる。直接的な線量依存性がみられ、線量の閾値は1Gyから5Gyである。
ホルモン機能障害は直接的な線量依存性を持たず、閾値は0.01−0.1と低い。内分泌系疾患は、間接的なメカニズムの結果として現れる。きっかけとなるのは、放射線によって誘発される生殖腺、甲状腺と副腎の構造と機能の最初の抑制と損傷である。これらの変化は全ての内分泌器官でみられる。放射線被ばくによる後期の影響は、記憶低下、疲れやすさ、めまい、大脳皮質の主要プロセスの不安定さと衰えや、神経痛である。
内部被ばくによる放射性白内障の発生の可能性についての研究は特に興味深い。ストロンチウム89、ストロンチウム90、やポロニウム210が体内に取り込まれた場合に白内障が増加すると言うデータがある。ストロンチウム白内障というのは、次のように発生する。ストロンチウムとカルシウムには化学的相似性があるため、器官や組織の中でカルシウムのように分布する。普通の水晶体のカルシウム濃度は10mg/dLである。虹彩のカルシウム濃度は39mg/dLと高く、脈絡膜では63mg/dLと特に高い。白内障発生において、水晶体内のカルシウム濃度が普通の5倍以上に上昇し、50mg/dLに達するかもしれない。ストロンチウムも同じような割合で存在し得る。ストロンチウムは、体内に取り込まれたあと、常に水晶体に堆積し、ますますたくさん、水晶体内にしっかりと固定される。水晶体の損傷は、β粒子が虹彩と毛様体をターゲットとすることによって起こる。ポロニウム白内障の特異性は、水晶体の前極の基本的な位置が変化することである。これは、α放出核種であるポロニウムが、主に毛様体の網内皮に堆積するためである。
強直性脊椎炎や結核の治療としてラジウム224の静脈内注射を受けた患者において、白内障発症の増加がみられた。白内障の確率は1から4.5%であり、ラジウム放射線治療後の7年から26年後の発症であった。ラジウムは、虹彩の色素細胞に濃縮し、α線が水晶体細胞の分裂を変える事によって白内障が発生すると思われる。白内障発生において、内部被ばくと外部被ばくによる違いはみられなかった。
ラジウムが、毛様体、脈絡膜や虹彩などの目の色素組織へ堆積することにより、水晶体上皮の、分裂可能な細胞がある胚ゾーンがα線に被ばくすることになる。これらの細胞は放射線感受性が強い。水晶体線維を作る。放射線被ばくはこれらの細胞を変性させ、水晶体の後極で白内障が発生する。これと同じ様な影響は、体内に取り込まれたプルトニウム同位体や、ラジウム224がラドン220に、そしてラジウム226がラドン222に崩壊する時に放出されるα線が水晶体上皮に浸透する事によっても起こる。50年間絶えず取り込んだ場合、目の色素細胞における線量はラジウム224で1.7-8.7Gy、ラジウム226で12-62Gyであり、プルトニウム239で0.1Gy以下である。中枢神経系による、骨に親和性を持つ放射性物質の慢性的な取り込みは、骨格系よりの放射線被ばくによって起こる。この場合、最大の被ばく線量を受けるのは脳下垂体である。脳下垂体腫瘍の、コントロールグループよりも多い発症は、ヨウ素131、 アスタチン211、ストロンチウム90、セリウム144、プロメチウム147、ルテニウム106、ニオブ95、アメリシウム241、カリホルニウム252、プルトニウム239とプルトニウム238のような放射性物質の取り込みの晩発影響でみられている。
脳内でのセシウム蓄積率はカリウムの2.5倍から3倍であると言うデータがある。この場合、カリウムとセシウムは体内で競い合っていない。すなわち、カリウム代謝はセシウム代謝と独立していると言う事である。一日に620Bqのセシウム137を3ヶ月間摂取したラットでは、同量を1ヶ月間摂取したラットよりもセシウム137の脳内蓄積量が25%多かった。研究によると、セシウム137の全身蓄積量合計の0.2%から0.5%がラットの脳に蓄積していた。一日に1,200Bqのストロンチウム85を摂取したラットの脳内蓄積量は高くなかったが、これはおそらく半減期(T1/2=64.8日)が短いためだと思われる。研究の結果、脳は放射性物質、特にセシウム137を蓄積する能力があるとわかった。
山下俊一氏は、なぜグラフを改ざんしたのか?
福島県の放射線リスクアドバイザーであり、福島県立医科大学副学長(当時)の山下俊一氏は、2013年3月11日にメリーランド州ベテスダで開催された米国放射線防護測定審議会議会の年次総集会で基調講演を行なった。
NCRPのサイト
山下氏の基調講演の動画
山下氏の基調講演のパワーポイント講演資料PDF
山下氏の基調講演の完全書き起こしおよび和訳
山下氏の講演パワーポイント資料では、カーディス氏他による2005年の研究論文「子ども時代のヨウ素131への被ばく後の甲状腺癌のリスク」内のグラフが使用されていた。山下氏はこの研究論文の共著者の1人であり、使用されたグラフは、729ページ目の「図2: 11の線量区分で推定された区分別オッズ比の最適なリスクモデルによって予測されるオッズ比(ORs)の比較」である。
カーディス論文の727ページ目には次のように述べられている。
「図2では、被ばく線量を関数としたオッズ比の変動が表されている。強い線量反応関係(P<.001)が観測された。オッズ比は、1.5~2グレイの線量までは直線的に増加するようであったが、それ以上の線量では横ばいになった。統計的に有意なリスクの増加は、0.2グレイ以上の被ばく量区分すべてで見られた。
これらのデータを最適に表す統計モデルは、1グレイまでの過剰相対リスク線形モデル(注:カーブ③)、2グレイまでの過剰相対リスク線形モデル(注:カーブ②)、そして全線量域での過剰相対リスク線形-二次モデル(注:カーブ①)である。しかし、図2でみられるように、後者のモデル(注:カーブ①)は、2グレイ以下でのリスクを過小評価する傾向があった。」
これが、山下氏のパワーポイント講演資料スライド12「チェルノブイリ付近での小児甲状腺癌リスク」内のグラフである。
これがカーディス氏のグラフである。
山下氏は、最適のモデルのひとつだとみなされたカーブ①:全線量域での線形−二次線量反応モデル(過剰相対リスク線形-二次モデル)を除外した。このカーブが「2グレイ以下でのリスクを過小評価する傾向があった」からなのか?
山下氏の基調講演の動画では、このスライドに関しては次のように述べられていた。(山下氏の英語発言からの意訳)
「他のケース・コントロール共同研究によると、甲状腺癌が放射性ヨウ素の線量反応的に増加するのが明らかにわかります。このようなデータは、近年、米国・ベラルーシ、そして米国・ウクライナのコホート研究によって確認されています。甲状腺被ばく量の線量反応性を理解することは本当に大切です。」
このスライドは、甲状腺癌のリスクの線量反応を示すために使われたと思える。
チェルノブイリ事故後と福島事故後の出生率や死亡率のデータを分析してきたドイツの物理学者アルフレッド・ケルプラインは、山下氏のグラフのデータポイントを、元のカーディス氏のグラフのデータポイントと共に図示した。
山下氏がカーブ①を除外した理由は明らかではない。さらに、図自体を「改ざん」しているのに、スライド内で元論文を引用するのが適切なのかという疑問が残る。
これは研究者として倫理的だと言えるだろうか?
海外の研究者達とのメール交換では、倫理的とは言えないということで意見が一致した。カーディス氏には、この件について何度もメールを送ったが、返答はなかった。
山下氏が独自のグラフを作成しながらもカーディス論文を引用したことについてどのように思ったかをケルプラインに尋ねた。返事は、「これはごまかし、もしくは詐欺、と呼べると思う。」だった。
浪江町の道路のダストの放射能分析
大西 淳氏が採取したダストサンプルが米国で分析されたので、その結果をここに公表する。
大西氏より:
この検体を採取した正確な場所は、経度緯度情報で「37.4752 140.9461」です。
住所はビデオの冒頭、電信柱の表記で確認できます。
浪江町小野田字清水102-1
清水寺前(せいすいじ)前です。
2013.4.1より浪江町の警戒区域が再編され『避難指示解除準備区域』『居住制限区域』
『帰宅困難区域』に指定されています。
浪江町小野田地区は『居住制限区域』に指定されていて、許可等を受けなくても立ち入りが可能な場所です。検体採取地点の西にすすむと50mほどで通行止めのバリケードがあり、『帰宅困難区域』となります。
ビデオ (86.09μSv/h 浪江町小野田 路上ホコリの上1cmで 2013.4.6 )
"2013.4.6 Namie street dust 86.09 μSv/h at 1 cm above ground"
チャンネル(Truth we must face)
大西 淳
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浪江町の道路のダストの放射能分析
2013年5月31日
マルコ・カルトーフェン
ボストン・ケミカル・データ・コーポレーション
米国マサチューセッツ州ワーチェスター市
ワーチェスター・ポリテクニック研究所
土木工学・環境工学部
メールアドレス: Kaltofen@wpi.edu
アブストラクト
福島第一原発事故現場から約10kmに位置する道路のダストのサンプルを受け取った。この道路は、福島県双葉郡浪江町にある。ここは『居住制限区域』内であり、『帰宅困難区域』のすぐ傍である。ダストのサンプルは、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析(SEM/EDS)、そしてNaI(ヨウ化ナトリウム)ガンマ線スペクトルメーターを用いて分析された。ブルーセンシティブなX線フィルムを用いたオートラジオグラフも用意された。サンプルからは、Cs-134とCs-137が合計で1,500 Bq/g、そしてCo-60が0.3 Bq/g検出された。オートラジオグラフィーによると、このサンプルの放射性は均一していた。走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析によると、ミネラル物質の大きめの凝集体の合間に、核分裂生成物と思われる粒子が広範囲に渡って分布しているのが分かった。
紹介と方法
浮遊ダストは高濃度の放射性同位体を含む単離した個々の粒子として放射性物質を運ぶことができる。ダストのサンプル内での個々の粒子の比放射能は、周囲の粒子よりもかなり高い場合がある。この比放射能が高い粒子はホットパーティクルと呼ばれ、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析 (SEM/EDS)を用いて単離した上で分析できる。
浪江町のダストサンプルの一部は、導電性テープを用いてガラスのスライドの上に固定され、炭素でコーティングされて、LEO/BrucherのSEM / EDSシステムを用いて走査された。電子顕微鏡分析は、リチウムドリフト型シリコン半導体検出器を用いて行なわれた。SEM/EDS分析はすべて、マサチューセッツ州チェルムズフォード市のMicrovision Labsで行なわれた。電子ビームの電流は0.60 nAmperesで、0.5以下から60 keVの電圧で加速された。後方散乱した電子が検出され、相互作用する原子核の原子番号によってコントラスト画像が決まる。電子ビームとの相互作用により励起状態になったイオンから特定X線が放射される。この特定X線は、リチウムドリフト型のシリコン検出器で検出される。
SEM/EDS では、元素の原子核が安定しているか不安定(放射性)であるかの区別がつない。粒子に放射性物質が含まれているかどうかを決めるには、さらに情報が必要である。ウラン、トリウムやプルトニウムなどの元素では、放射性同位体しか知られていない。鉛、イットリウムと多くのレアアースのような元素は放射性と安定同位体両方が知られている。安定同位体と放射性同位体の両方を持つ元素では、ガンマ線スペクトロメトリによって大量の粒子状サンプル内での放射性同位体の存在を確認できる。この分析では、最初のガンマ線スペクトロメトリ解析は、10〜2060 keVの測定範囲と銅と鉛の多重遮断を持つ、AmptekのCdTe(テルル化カドミウム)ガンマ線検出器とマルチ・チャンネル・アナライザーを用いて行なわれた。実験室での詳細なガンマ線スペクトロメトリ解析は、Ortechの2インチのNaI(ヨウ化ナトリウム)ガンマ線検出器と鉛遮断を用いて行なわれた。
結果と考察
この分析では、損傷を受けた核燃料から放出される核分裂生成物に焦点を当てた。福島県で放射能汚染されたダストで最もよく見つかる核分裂生成物にはセシウム134とセシウム137が含まれる。原子炉から生じる副産物には、重い元素(原子量125〜155)と軽い元素(原子量80〜110)がある。これらの中には、軽い放射性同位体である元素のイットリウムや銀、そして重い同位体であるスズ、アンチモン、セシウム、セリウム、ネオジム、ランタンなどがある。SEM/EDSにより、これらすべての放射性同位体が10μmほどの微粒子として、このダストサンプルから検出された。この少量(100 mg)のダストサンプルからSEM/EDSで検出された粒子は、例えば、トリウムを含むレアアースの粒子、チタン酸鉛とイットリウム・ランタノイドの粒子などであった。これらは、2μm〜10μmのサイズだった。
道路のダストはまた、ヨウ化カリウムガンマ線スペクトロメトリでも分析された(図1参照)。サンプルからは、オートラジオグラフが用意された(図2参照)。ガンマ線スペクトロメトリでは、100 mgのサンプルで、放射性セシウム(セシウム134とセシウム137)とウラン娘核種がが合計153 Bq検出された。これは1グラムにつき1530 Bq、すなわち、1.5 MBq/kgということになる。コバルト60は0.3 Bq/gだった。ガンマ線スペクトロスコピーによって検出されたウラン娘核種で最も多かったのは、ラジウム226だった。(図1参照)
ダストサンプルには、鉛、イットリウムと様々なレアアースとトリウムを含む粒子が大量に含まれていた。これらの鉛とレアアースの粒子の中には、1〜2μmという吸入可能なサイズ範囲のものがあった。(図3、4、5の例を参照)
このダストは、福島第一原発周辺の「帰宅困難区域」から50mほどの場所で採取された。たまに、風に飛ばされた黒い堆積物で、放射性セシウムや他の放射性同位体の濃度が普通よりも高いものが少量見つかったとの報告がある。今回は初めて、周囲の土壌やダストと明らかに異なって放射能レベルが高いサンプルを検査することができた。このサンプルからは、我々の実験室がこれまでに分析した200あまりのダストと土壌のサンプルの中で、最大のラジウム226が検出された。
検体が単独(そして微量)のダストサンプルであるために、この分析には限度がある。このサンプルが浪江町全体を代表するというわけではない。このデータが示しているのは、道路のダストで単離されたものが、周囲の一般的な状況よりもはるかに高い放射能レベルに達することができるということである。
単独のサンプルからは、なぜ少量の道路のダストサンプルの放射能汚染が周囲の物質と比べてひどかったのかを説明できるデータを十分に得られない。明らかに、何らかの環境的メカニズムによって、この放射能汚染度が強いダストが、土壌に分散したり雨で流されたりせずに分離されたままの状態にある。この放射性ダストが分散しにくいと言うことを考慮すると、この分析からは、小さくて局部的な放射能ホットスポットが、東日本大震災とその後の放射能漏れから何ヶ月も何年も経ってからでも持続し得るということが示唆される。
著者開示告知
著者は、経済的利益相反が存在しないことを宣言する。著者はこの分析で使用されたサンプルの提供者である大西淳氏の努力に対して深謝を述べる。
図1:浪江町の道路のダストのヨウ化ナトリウムガンマ線スペクトラム
図2:浪江町ダストサンプルのX線フィルムのオートラジオグラフ(右)とスケール化された天然色スキャン(左)
図3:大きな塊の中に埋め込まれている鉛の粒子の、ロビンソン検出器を用いた走査型電子顕微鏡写真と、粒子の元素構成比率のグラフ
図4:大きな塊の中に埋め込まれているトリウムを含んだ粒子の、ロビンソン検出器を用いた走査型電子顕微鏡写真と、粒子の元素構成比率のグラフ
図5:大きな塊の中に埋め込まれているイットリウム・ランタノイドの粒子の、ロビンソン検出器を用いた走査型電子顕微鏡写真と、粒子の元素構成比率のグラフ
カルトーフェン報告書和訳 平沼百合
PDF https://docs.google.com/file/d/0B3fFCVXEJlbvYURON25Bamp3akE/edit
カルトーフェン報告書英語PDF https://docs.google.com/file/d/0B3fFCVXEJlbvbTFUdWFoekRhaDQ/edit
英語記事 http://fukushimavoice-eng2.blogspot.com/2013/06/radiological-analysis-of-namie-street.html
アルフレッド・ケルプラインによる、マンガノ&シャーマン共著の先天性甲状腺機能低下症論文に対しての編集者への質問状 英語原文
アルフレッド・ケルプラインは、チェルノブイリ事故後の欧州諸国における出生率、乳児死亡率、先天性奇形などのデータを統計的に分析してきたドイツの物理学者である。
福島事故後の日本での乳児死亡率
PDF http://www.strahlentelex.de/Infant_mortality_in_Japan_after_Fukushima_jp.pdf
福島原発事故から9ヶ月後に日本で生産(せいざん)率減少
ケルプラインは、ジョセフ・マンガノとジャネット・シャーマン共著の研究論文 "Elevated airborne beta levels in Pacific/West Coast US States and
trends in hypothyroidism among newborns after the Fukushima nuclear
meltdown"「福島原発事故後の米国ハワイ州と西海岸4州での大気中のベータ線量増加と新生児における甲状腺機能低下症の傾向」について、掲載誌であるOJPedの編集者へ質問状を送った。論文内の統計的計算などに疑問を持ったからである。だが、不思議な事に、この掲載誌OJPedでは編集者への質問状は受け付けないということだった。
この手紙はまた、マンガノとシャーマン両著者にもメールで送られた。しかし、マンガノからは無反応、シャーマンからはたった一行の「ありがとう」と言う返事しか来なかった。
ケルプラインは、過去にもマンガノ&シャーマン論文に対しての疑問・批判を発信しているが、両著者ともそのような建設的批判を認識すらしないようである。
ケルプラインの許可のもと、この編集者への質問状の原文をここに公開する。
マンガノ&シャーマン論文リンク
福島事故後の日本における出生率や乳児死亡率の変化をチェルノブイリ後の変化と比較した論文の和訳は下記のリンクよりご覧頂ける。
福島事故後の日本での乳児死亡率
PDF http://www.strahlentelex.de/Infant_mortality_in_Japan_after_Fukushima_jp.pdf
福島原発事故から9ヶ月後に日本で生産(せいざん)率減少
http://donpuchi.blogspot.com/2013/04/9.html
日本における乳児と新生児死亡率
http://fukushimavoice.blogspot.com/2013/04/blog-post_14.html
日本における出生数の性比の分析
http://fukushimavoice.blogspot.com/2013/05/blog-post.html
日本における乳児と新生児死亡率
http://fukushimavoice.blogspot.com/2013/04/blog-post_14.html
日本における出生数の性比の分析
http://fukushimavoice.blogspot.com/2013/05/blog-post.html
この手紙はまた、マンガノとシャーマン両著者にもメールで送られた。しかし、マンガノからは無反応、シャーマンからはたった一行の「ありがとう」と言う返事しか来なかった。
ケルプラインは、過去にもマンガノ&シャーマン論文に対しての疑問・批判を発信しているが、両著者ともそのような建設的批判を認識すらしないようである。
ケルプラインの許可のもと、この編集者への質問状の原文をここに公開する。
Elevated airborne beta levels in Pacific/West Coast US States and trends in hypothyroidism among newborns after the Fukushima nuclear meltdown
Joseph J. Mangano and Janette D. Sherman
*****
Letter to the editor
of OJPed in response to:
Joseph J. Mangano,
Janette D. Sherman. Elevated airborne beta levels in Pacific/West
Coast US States and trends in hypothyroidism among newborn after the
Fukushima nuclear meltdown. Open Journal of Pediatrics, 2013, 3, 1-9.
Alfred Körblein,
alfred.koerblein@gmx.de
Mangano and Sherman’s idea to study congenital hypothyroidism (CH) case numbers among newborn babies is new and seems to be promising. Their approach is reasonable; they compare the CH case numbers after Fukushima with those before Fukushima in 5 Pacific/West Coast states (Hawaii, Alaska, Washington, Oregon, and California: the study region) where the fallout from the Fukushima plumes was higher than in other parts of the USA. And they also look at the 2010-2011 change of CH cases in 36 other US states (the control region).
Mangano and Sherman state:
“The 2010-2011 ratio representing the change in CH cases was 1.16 for the five Pacific/West Coast States, rising from 281 to 327 confirmed cases. The 1.16 ratio exceeded the 0.97 ratio (decline in cases from 1208 to 1167) for the 36 control states; the difference is significant at p < 0.03. Increases in ratios were observed in the exposed areas for the periods March 17-June 30 (1.28, significant at p < 0.04) and July 1-December 31 (1.10, not significant at p < 0.21).”
Unfortunately the authors (M&S) do not clearly say how they tested the significance of their result. In their method section they state:
“CH cases for births in the periods March 17 to December 31 (2010 and 2011) will be compared, for the Pacific/West Coast States and the remainder of the US Portions of this 290 day period will also be compared. Significance testing will be conducted using a t test, where n equals the number of Pacific/West Coast cases in 2010 and 2011, the observed change will be the change in the Pacific/West Coast, and the expected change will be the change for the remainder of the US.”
So their hypothesis to be tested is whether there is a significant difference in 2010-2011 ratios between the study region and the control region. To check whether the reported p-values of p<0.03 and p<0.04 are correct, I applied a Poisson regression of CH numbers from their Table 4 in the two years (2010 and 2011) and in the two regions (study and control) and used two dummy variables: “d11”, which is 1 for 2011 and zero for 2010, and “study”, which is 1 for the study region and zero for the control region. A third dummy variable is the interaction dint=d11*study. Dummy variable “dint” is used to estimate the difference in 2010-2011 ratios between the study and control region.
The result of the Poisson regression was a 20.5% increase in CH cases in 2011 for March 17 to December 31 (p=0.041) and a 35.6% increase for March 17 to June 30 (p=0.049). So both results are statistically significant, albeit not at their stated p<0.03 or p<0.04 levels.
But it turns out that the estimate of the parameter for “d11” is not significant; the p-value s are p=0.400 for March 17 to December 31 and p=0.451 for March 17 to June30. As a rule, parameters that have no meaningful influence on the goodness of fit should be omitted in the regression and, per convention, p>0.2 is considered not meaningful. There is also a criterion that helps choosing the best model, the so called Akaike criterion (AIC), see http://en.wikipedia.org/wiki/Akaike_information_criterion, which is a measure for the goodness of fit. This is smaller for the regression model without d11 (AIC=35.2) than for the model with d11 (AIC=36.6).
The regression without d11, yields the following result for the shorter period March 17 through June 30:
Estimate Std. Error z value Pr(>|z|)
(Intercept) 5.96229 0.03587 166.197 <2e-16 ***
study -1.40842 0.10869 -12.958 <2e-16 ***
dint 0.25014 0.13683 1.828 0.0675 .
Now the parameter for dint (which estimates the 2010-2011 change in CH cases in the study region) is not significant (p=0.0675). A similar result is obtained for the longer period March 17 through December 31 (p=0.0624).
The use of CH case numbers instead of CH incidences, however, means that their inferences can only be made if the live birth numbers don’t change between 2010 and 2011, or if the 2010-2011 relative change in birth numbers is the same in both the study and control region.
Official numbers of live births for 2011 are not available yet, but the US Centers for Disease Control and Prevention provide preliminary annual live birth data for 2011 for individual US states on their website [1]. The respective data for 2010 can be found on the statehealthfacts website [2]. Therefore I was able to determine the numbers of live births for 2010 and 2011 in the two periods (March 17-December 31 and March 17-December 31) and calculate the incidence rates. I used a logistic regression of CH incidence rates for the two time windows with only one dummy variable (dint) to estimate the excess in 2011 in the study region. This yielded a 16.6% increase in March 17-December 31 2011 p=0.0087) and a 32.5% increase in March 17-June 30 2011 (p=0.0036). Both results are significant at the p<0.01 level.
The main reason for the lower p-values compared to the regression of the CH case numbers is that in 2010 the incidences agree fairly well in the study and control region (the p-value for the dummy variable study is p=0.735) so study can be omitted. There is also good agreement between the incidences in 2010 and 2011 in the study region, so the dummy variable d11 (p=0.578) can also be omitted.
Essentially, the use of incidence rates instead of case numbers increases the statistical significance of Mangano and Sherman’s findings.
Several technical gremlins appear in the published tables. The confidence intervals in Table 1 and the ratios in the last two columns of Table 3 are incorrect, and the case numbers for the 36 control states in the last two rows do not sum up to the numbers in the first row in Table 4. Also page 3 states “Results showed that for I-131, the highest depositions, in becquerels per cubic meter....“. This should read “per square meter“. This was first spotted on the ex-skf.blogspot website [3].
However these glitches have no influence on the authors’ main finding.
References
[2] http://www.statehealthfacts.org/profileind.jsp?rgn=1&cat=2&ind=34
[3] http://ex-skf.blogspot.de/2013/04/ot-slight-problem-with-mangano-sherman.html
抗酸化性栄養素とファイトケミカルによる電離性放射線からの防護
PDF https://docs.google.com/file/d/0B3fFCVXEJlbvOG96bE5OaXR6RE0/edit
この前書きは、ジョセフ・F・ワイズの1997年の研究論文「放射線に誘発された致死とその他の損傷からの薬物を使用した防護」の前書きからの抜粋である。
Toxicology. 2003 Jul 15;189(1-2):1-20.Protection against ionizing radiation by antioxidant nutrients and phytochemicals.Weiss JF, Landauer MR.
放射線防護作用を持つサプリメントなどについては既にインターネットなどでも情報が出回っているが、米国エネルギー省と国防省関連の研究者による2003年の有料研究論文を見つけたので、和訳した。
この前書きは、ジョセフ・F・ワイズの1997年の研究論文「放射線に誘発された致死とその他の損傷からの薬物を使用した防護」の前書きからの抜粋である。
電離性放射線からの化学物質を用いた防護の最初の生体内実験は、1949年に行なわれた。硫黄を含んだアミノ酸であるシステインが、致死量のX線からラットを守ったのだ。当時は既に原子力時代が現実になっていたため、放射線防護的化学物質の軍事的適用と原子力事故の際の使用が、はっきりとした可能性となっていた。
1959年から1973年まで、ウォルター・リード陸軍研究所(WRAIR)では放射線対策の薬品開発が行なわれ、4000以上の化学物質が合成され、ネズミで実験された。1979年か1988年にはWRAIRでの研究が復活し、アミフォスティン/amifostine(WR−2721)が開発された。WR−2721は、放射線療法や抗がん剤による普通の組織の損傷の防護の研究のための、癌の臨床試験で用いられた。今の時点で、米軍は、WR−2721や放射線誘発性の致死を防ぐ薬品の使用や開発を認証していない。関連した研究は旧ソ連やワルシャワ条約加入国でも行なわれたが、そこで研究された薬品との比較研究は実施されていない。
近年では、研究の焦点は生物学的メカニズムと物質に移行してきた。1980年代から今までには、幅広い小規模の研究プログラムが出て来ているが、その特徴は、バイオテクノロジーの優勢と、細胞の感受性、細胞サイクルと細胞死などの、放射線の細胞への影響に関連した新知識である。
(前書き終わり)
抗酸化性栄養素とファイトケミカルによる電離性放射線からの防護
著者
ジョセフ・F・ワイズ 米国エネルギー省 健康研究局
マイケル・R・ランダウアー 軍隊放射線生物学研究所 放射線病理生理学と毒物学科
Toxicology. 2003 Jul 15;189(1-2):1-20.Protection against ionizing radiation by antioxidant nutrients and phytochemicals.Weiss JF, Landauer MR.
アブストラクト
抗酸化物質が電離性放射線による細胞損傷を減らす可能性は、動物モデルでは50年以上研究されてきた。抗酸化放射線防護物質は、放射線の人体への被ばくの様々な状況に広範囲で適用されているわけではないが、一般的には、細胞内の非タンパク質性チオールや抗酸化酵素などの内在性の抗酸化成分が、ある程度の防護作用を持つと言うのは認められている。このレビューは、自然由来の抗酸化物質、特に抗酸化性を持つ栄養素やファイトケミカルの放射線防護効果が、放射線による損傷の様々なエンドポイントに影響を与えるかと言う事に焦点を当てる。
動物実験の結果によると、ビタミンEやセレン化合物などの抗酸化性栄養成分は、放射線の致死性や他の影響に対して防護的であるが、合成的な防護物質よりも作用が劣ることが分かっている。抗酸化物質とファイトケミカルの中には、薬理学的な服用量で投与された場合に一般的に防護的でありながらも、毒性が低いという利点を持つものもある。自然由来の抗酸化物質はまた、低線量の放射線照射に対しての防護の治療域を拡大できるかもしれなく、これは、放射線照射後の投与による治療効果も含む。カフェイン、ゲニステインやメラトニンなどを含む多くのファイトケミカルには、複数の生理学的効果と抗酸化作用があり、結果的に生体内で放射線防護作用を及ぼす。
抗酸化作用を持つ栄養素やファイトケミカルの多くには抗変異原性があるが、癌のような放射線被ばくの晩発影響の調節については、更なる研究を必要とする。また、癌の放射線療法の間の、特定の抗酸化物質とファイトケミカルの潜在価値を決めるのにも、さらなる研究が必要である。
1.放射線防護物質の開発と適用の可能性
計画的な放射線被ばくや放射線事故や事件の際に利用できるかもしれない放射線防護的化学物質については、原子力時代が始まった頃から調査されてきた。そして、普通の組織を守る放射線防護物質があれば、癌患者の放射線療法の改善にも繋がるかもしれないと考えられて来た。低線量レベルでの自然放射線の中で生物が生存してきた事は、栄養素にサポートされた生理学的な適応メカニズムが放射線による過剰な損傷から守ると言う事を示唆する。
最初の研究者達は、放射線防護物質を用いて、放射線と生物学的に重要な分子との相互作用を解明しようと試みた。ガルシュマン(Gerschman)らは、放射線による損傷と酸素中毒は両方とも、活性酸素の発生によって起こると仮定した。システイン、グルタチオンや2−メルカプトエチルアミン(システアミン) などのスルフヒドリル物質や他の抗酸化物質が、放射線の致死的影響からマウスを守ったばかりでなく、高酸素圧に晒されたマウスの生存率を増加させた事を示した。酸素効果と急性および晩発性被ばくとの関連性についての理解を深める事により、自然由来の抗酸化物質を様々な被ばく状況に合理的に適用する事ができるはずである。
多数の物質の予防的および治療的影響については、様々な放射線防護作用メカニズムが提案されている。自然由来の抗酸化物質は、放射線防護物質の中のひとつの種類にすぎない。放射線防護の可能性を持つ物質の中で、特にスルフヒドリル基を持つものは抗酸化物質であると言える。しかしまた、生理活性脂質、サイトカインや成長因子のように、主に受容体依存性メカニズムを通して、明らかに防護的または治療的効用を示すものもある。放射線防護物質を個々に分類するのは困難である。化学反応を通して影響を及ぼす物質と受容体依存性プロセスを用いる物質は、別々の過程を通っても、同様の結果に至るかもしれない。スルフヒドリル化合物は、フリーラジカル消去、水素供与や修復プロセスの調整などのメカニズムの組み合わせによって、細胞のDNAを守ると思われる。その一方、サイトカインは、受容体依存性メカニズムを通して、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やメタロチオネインなどの、細胞内の抗酸化活動を誘発すると思われる。合成的な保護物質や薬物の中には、N−アセチルシステイン、システアミンやジチオールチオンのように、生体内において少量の存在が確認でき、内在性もしくは自然由来の放射線防護物質と似ていたり、同一のものもある。
放射線防護物質や治療剤を用いるにあたり、潜在用途を区別する事が大切である。これらは、不慮の外部被ばくか内部被ばく、急性高線量放射線障害、アルファ粒子の肺への環境からの被ばく、長期に渡る低線量職業被ばく、軍作戦、宇宙飛行時の宇宙放射線被ばく、普通の組織の保護と癌細胞破壊が必要である放射線療法プロ トコールなどである。原子力事故や起こり得るテロ行為による、コントロールされない放射線被ばくは、放射線療法では見られなかったような問題を提起するであろう。微小重力と高LET放射線への被ばくの可能性による生理的合併症を考慮した場合、宇宙飛行士の防御の必要条件は特有なものになる。
放射線防護の動物研究のほとんどは、γ線かX線線源、または中性子や他の高LET線源を用いた。しかし、人間の被ばくのシナリオの可能性は、ヨウ素、ストロ ンチウム、アメリシウム、セシウム、プルトニウムや他の超ウラン系列の放射性同位体などの、放射性物質の摂取を伴うかもしれない。摂取された放射性物質による特定の臓器の内部被ばくには、初期に遮断薬(ヨウ素にはヨウ化カリウム)、キレート剤(プルトニウムとアメリシウムにカルシウムDTPA-ジエチレ ントリアミン五酢酸--と鉛DTPA)と、セシウムにはプルシアンブルーを用いる事が最適である。
現在のサイトカインを用いた臨床経験からすると、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が原子力事故かテロ行為のシナリオでの造血系傷害での最善の治療法であると示唆されている。
緊急時の計画的被ばくに対する放射線防護は、特定の被ばくに対して確立された治療法(キレート剤、サイトカイン、鎮吐剤)の内容に沿って開発されるべきであり、その後に、自然由来で毒性の低い抗酸化物質のような薬品や治療を組み合わせるべきである。
2.放射線防護作用の評価
生体外実験は、クローン原性やアポトーシス性の細胞死からの防護、細胞分化や突然変異誘発の調節、放射線誘発性の脂肪過酸化や他の生化学的変化からの防護など、様々な防護作用の測定に使う事ができる。抗酸化物質の生体外研究は解釈に注意を要する。なぜかと言うと、抗酸化物質の中には、状況によっては酸化促進物質効果を及ぼすことができるので知られているものもあるからだ。例えば、チオールは、組織培養内で酸化し、過酸化水素を発生し得る。ビタミンEラジカルは、ビタミンCのような他の抗酸化物質によってビタミンEに再生されなかったら、損傷を起こし得る。
実験動物を用いた生体内実験は、造血系や消化器系の損傷による放射線誘発性致死性、他の特異な組織損傷、アポトーシス、突然変異誘発、そして発癌からの防護に関して行なわれてきた。最も信頼のおける手順は、線量変更因子(DMF)の決定を使っている。DMFは普通、実験対象の物質を投与されたネズミと投与されなかったネズミをある線量範囲で照射し、エンドポイントを比較することによって決められる。例えば、30日生存率のDMFは、薬物投与された場合のLD 50/30(半数致死量)を、薬物投与されなかった場合のLD 50/30で割ったものであり、造血系防護の数値化である。造血系幹細胞の損失が十分に大きければ、感染症、出血と貧血から、死に至る。消化器系症候群は、ネズミにおいて、比較的高線量の全身照射の後の6日目か7日目の生存率で評価できる。腸陰窩細胞の測定や機能的変化もまた、消化器系損傷の指標となり得る。最も情報が得られて役に立つ前臨床研究とは、薬物の防護効果を同一の動物モデルにおける薬物の毒性に関連づけているものである。放射線防護作用と並行して毒性が存在することが良くあるが、一般的には、自然由来の放射線防護物質は、チオールの一部を除いて、毒性が低い。
残念ながら、自然由来の物質のDMFは、合成的な物質と比べると必然的に低いために、あまり報告されていない。ネズミでは、高数値のDMF(2.0以上)は合成された薬物に見られるが、自然由来の物質が1.3以上になることはない。しかし、人間では、WR-2721やアミフォスティンのような最も効果の高い放射線防護物質には毒性がある。そのために、全身や造血系の外部被ばくからの防護での1.3より高いDMFは、現在入手し得る合成薬物では得る事ができないことが示されている。
放射線防護物質の効能は、明確なエンドポイントを用いて臨床試験で研究されている。放射線防護物質の薬効の決定に使うことができる他のエンドポイントの中で、一番良く評価されているのは、頭頸部の放射線療法の結果として起こる粘膜炎や口腔乾燥症、そして消化器管が放射線照射野内にある場合の様々な副作用の予防である。放射線療法由来の続発性腫瘍からの防護は評価が難しく、十分な中間的生物学的エンドポイントが必要となるかもしれない。また、放射線事故や事件の際に使われるかもしれない予防的防護物質のリスク/ベネフィット分析を正しく行なうのは困難である。最近の米国FDAの規定は、放射線障害致死性に対する防護物質の発達のような、人体における効能の研究が倫理的でなかったり可能でない場合の、新しい薬品や生物由来物質の認定を合理化するかもしれない。放射線被ばくの絶対的な臨床実験を行なうのが不可能かもしれなくても、毒性や他の適用での使用についての人間のデータから、自然由来の抗酸化物質や関連物質の使用を強化することができる。
放射線被ばくをした集団においての癌の発生率や死亡率への食生活の影響に関する疫学調査は限られている。チェルノブイリ事故のずっと後に、清掃作業員や被ばくした子供達の血清内での染色体異常誘発性因子の測定をした研究があった。染色体異常誘発性因子は、染色体切断に繋がるが、脂質過酸化物質、サイトカイン(特にTNF、または腫瘍壊死因子)や変化が起こったヌクレオチドだと認識されている。染色体異常誘発性因子は慢性炎症疾患や他の病気でも起こり、過酸化物によって自己持続性を持つプロセスによって生産されると思われている。
放射線照射後の脂質過酸化物質の上昇などの他の生化学的変化は、放射線防護の評価の手段として用いることができる。放射線被ばくや、自然由来そして合成的な放射線防護物質の多くは、グルタチオンや抗酸化酵素システムなどの、内在性の防護システムのバランスに変化を与えることができる。グルタチオンペルオキシダーゼ、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn−SOD)、銅・亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(Cu, Zn-SOD)やカタラーゼなどの抗酸化酵素は、放射線被ばくから体を守る重要な役割を持つと思われるが、特定の細胞や全身において、最大の放射線防護に至る酵素の適切なバランスは、全く明白になっていない。例えば、あるモデルシステムにおいてのマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn−SOD)の大きな増加は、放射線防護効果よりも、放射線感受的効果があるかもしれない。これはおそらく、細胞がH2O2またはヒドロキシル基の過剰生産に対応できないからだと思われる。発癌プロセス、腫瘍代謝と癌治療においての抗酸化物質の役割は、放射線防護物質の研究における焦点となり続けると思われる。
3.アミノ酸、ポリアミンとその他の関連化合物
システインは、硫黄を含むアミノ酸であるが、50年以上前に、最初の生体内実験で抗酸化物質として、致死量のX線からラットを守って、放射線防護作用が報告された。システインからカルボキシル基が取り除かれたシステアミンも防護作用がある。シンプルなスルフヒドリル化合物の2つであるN−アセチルシステインとシステアミンは、チオール系防護物質の中で最も「自然」であると言える。両方とも、様々な目的で人体における使用を認められている。システアミンは生体内でモノオキシゲナーゼによってシスタミンとなるが、シスタミンは細胞のチオール:ジスルフィドの電位を保っているジスルフィドの重要な供給源である。WR−2721は物質代謝でシステアミンに変化し、N−アセチルシステインは細胞のグルタチオンの前駆物質である。
N−アセチルシステインとシステアミンは、ネズミにおいて、遅延型過敏症として表される、致死量以下の放射線被ばくの免疫抑制効果を同様に防ぐ。放射線障害性致死からの防護は、N−アセチルシステインよりもシステアミンの方が大きかったが、システアミンの致死性毒性と行動性毒性はさらにもっと大きかった。N−アセチルシステインの放射線誘発性致死性のDMFは約1.1である。システアミンの最大耐性線量の半分、すなわちLD10で腹腔内に投与された時、62%のネズミが致死量を上回る放射線量(13 Gy)を生き延び、DMFは約1.4だった。システアミンの二硫化物であるシスタミンは放射線照射を受けたラットで同様のDMFを示す。シスタミンはまた、高LET中性子照射にもある程度の防護を与える。シスタミンの生体内防護は、ジスルフィドが遊離チオールに再生されていることを示唆する。
システイン、システアミンとシスタミンは、放射線療法の様々な副作用を改善するのに効果的であることが分かっている。放射線防護物質の動物実験が良く行なわれる前は、放射線療法を受ける患者は、副作用のために、治療前にグルタチオンを投与されていた。予備的な無作為試験では、グルタチオンが放射線療法中に普通の組織を防護するのが示唆されていた。骨盤照射の15分前に、1200mgのグルタチオンを点滴投与された患者では、治療後の下痢が少なかった。(28%で、コントロール群が52%)アミフォスティン(WR−2721)は、頭部と頸部の癌の放射線療法の際の使用がFDAに承認されているが、他の応用もできるかもしれない。
WR−2721とその関連化合物は、もっと単純なアミノチオールと比べて、多種の生化学的特徴があるようだ。もっと複雑な化合性アミノチオール、特にWR−2721のようなホスホロチオエートが優れているのは、DNAとの親和力と、チオールとジスルフィドの代謝物が細胞のポリアミンに構造的に似ているからだと思われる。アミノチオールの放射線防護メカニズムは、ゲノム安定性であると提案されている。スペルミンやスペルミジンのような内在性ポリアミンは抗酸化物質であるが、細胞の放射線感受性の調節に重要である。WR−2721とその関連化合物について続けられている研究は、細胞死を防ぐ能力の調査だけでなく、突然変異誘発、形質転換や発癌現象にどのような影響を与えるかと言う事にも焦点が向けられている。抗癌効果は、放射線照射前にネズミに大量のホスホロチオエートが投与された時に示されている。毒性が低く、放射線照射前後に投与可能なアミノチオールの更なる研究が必要である。そのようなアミノチオールは、ラジカル消去剤と、DNA防護、修復と合成プロセスに影響を与えるポリアミンミメティックスの両方として機能し得る。
アミン基を2つ持つ非必須アミノ酸のグルタミンは、体内で一番豊富なアミノ酸である。ストレス時に、呼吸燃料としての取り込みと活用が大増したら必須アミノ酸と認識される。グルタミンは、グルタチオンの前駆物質であり、細胞の酸化還元バランス、アポトーシスの調節と腫瘍細胞増殖において重要である。
腹部への10 Gyのガンマ線照射後に、4日連続で3%グルタミン強化食を与えられたラットにおいて、腸粘膜の形態状パラメーターの改善と、細菌転移の減少が見られた。同様の結果は、照射前の4日間にグルタミン強化食を、そして照射後の4日間にコントロール食を与えられたラットでも見られたので、予防的治療も効果的であると示された。
グルタミンが胃腸管を防護すると言う理由のために、子宮頸癌の細胞株2つの成長率と放射線感受性への生体外効果が研究された。生理学的濃度を超えるグルタミンは、腫瘍の成長や放射線抵抗力を増やさなかったので、更なる臨床実験が適切であると示唆される。グルタミンはまた、頭頸部癌への放射線療法を受けている入院患者での粘膜炎の治療においても評価されている。予備的な無作為試験では、経口のグルタミンは、放射線療法の間の口腔粘膜炎の持続期間と重症度をかなり減らすかもしれないと示した。
4. 抗酸化栄養素
米国科学アカデミー医学研究所の食物栄養委員会が食物性抗酸化物質と定義しているのは、ビタミンE、ビタミンCとセレンのような、「食物内で、活性酸素や活性窒素種などの活性種による、人体の普通の生理学的機能における悪影響を顕著に減らす物質」のみである。このレビューではさらに、ベータカロチンのような他の栄養素や、ビタミンの色々な処方や投与経路も考慮する。
4.1 ビタミンE
ビタミンE(αトコフェロール)の放射線誘発性の酸化損傷に対する防護的役割は生体外で示されており、放射線誘発性の脂質過酸化が、高線量よりも低線量の放射線においてより多いという事が証明されている。ビタミンEの防護作用が、低線量において比較的大きく見られる可能性があると言うのは、致死率が測定された動物実験において示唆された。最低栄養所要量(RDA)以上のビタミンEを投与されたネズミの照射後の生存率には統一性がない。これらの結果は、放射線照射量、ビタミンEの種類、投与経路、投与時間やスケジュール、ネズミの種族、そしてまたは、食物投与の研究の場合は、コントロール群の餌の種類などの、多くの要因に影響を受けているかもしれない。
最低限のビタミンEを含む餌を与えられたネズミの放射線照射後に、ネズミの最低栄養所要量の3倍のビタミンE(餌の0.036%)を含む餌が与えられた場合に、生存が助長されたと報告されている。例えば、7.5 Gyのコバルト60照射が線量率0.4 Gy/分で行なわれた場合、ビタミンE補助食を食べていたネズミは全部生き延びたが、最低限のビタミンEを食べていたネズミは10%しか生き残らなかった。しかし、後の研究では、普通食が最低栄養所要量の3倍のビタミンEで補助された場合、もっと高い線量率の1 Gy/分のコバルト60照射後のネズミの生存率には変化が見られなかった。
ビタミンEの注射液の使用は、餌を通してのビタミンEの投与と比べて、照射後の生存率に明らかな改善が見られた。照射の1時間前か15分後のビタミンEの皮下注射は、CD2F1株のネズミの照射(0.2 Gy/分のコバルト60)後の30日間の生存率を顕著に増加させた。照射後15分以内に100 IU/kgのビタミンEを皮下注射した場合のDMFは1.11だった。もっと高い線量率の1 Gy/分のコバルト60照射の1時間前にビタミンEが皮下注射された場合のDMFは最高で1.06だった。ビタミンEは、照射後の投与も含め、保護期間を延長すると言う事が分かった。照射後の防護または治癒的作用は、腹腔内に水溶性のαトコフェロール調剤薬が投与された時に、細胞性免疫と体液性免疫が高まったことにより、初めて見つかった。水溶性のビタミンE派生物であるαトコフェリルリン酸水素二カリウムは、ラットにおいて、αトコフェリルアセテートやWR−2721よりも優れた放射線防護物質であると報告された。
ビタミンEのネズミやラットにおいての他の放射線防護作用は、胃腸管の生理学的損傷からの防護であるが、胃腸系の死に至るほどの高線量の場合は防護しない。ビタミンEは放射線照射を受けたラットにおいて、空腸、回腸と大腸の液体吸収を保つと報告されている。
ビタミンEは生体外での放射線誘発性の形質転換を抑制する。1 Gyの照射後でさえも、ビタミンEはネズミの骨髄内の放射線誘発性の染色体異常と小核に対しての防護作用を示した。しかし、別の研究でのもっと低線量でのX線照射での染色体異常は防護しなかった。TMG[2-(alpha-D-glucopyranosyl)methyl-2,5,7,8-tetramethylchroman-6-ol]というビタミンEの水溶性派生物は、放射線照射後すぐに600mg/kgが投与されたら最も効果的だった。この治療は、ネズミの放射線誘発性の骨髄染色体の中期異常を減らし、照射後24時間での微小核赤血球の頻度を減らした。照射前のTMG投与は、ネズミの放射線誘発性の催奇形を防いだ。MOLT-4リンパ球においての放射線誘発性アポトーシスは、また別の水溶性ビタミンE派生物であるトロロックスが照射後に投与されたら抑制された。
ビタミンEのみか、ビタミンEとガンマ線照射の組み合わせは、癌細胞の体細胞分裂を減らしたが、普通の細胞の体細胞分裂は減らさなかった。ビタミンEのような抗酸化物質が、放射線療法時に癌細胞をフリーラジカル損傷から防護するかもしれないと言う恐れは正当ではないと言う結論が出された。
ビタミンEと放射線照射の、動物においての癌の成長への影響はあまり研究されていない。放射線照射の7日前のビタミンE(50−500 mg/kg)投与が、放射線照射によるラットの肉腫の成長阻止を顕著に増大したが、ビタミンEが1 g/kgに増やされたら、癌の成長に影響を与えなかった。それ以前の研究では、1 g/kgのビタミンEが全身照射と同日に扁平上皮癌のネズミに投与された場合、癌が防護された。
放射線療法を受けている患者においてのビタミンE、他のビタミンや抗酸化能力を測定する研究は複数あるが、解釈が困難である。しかし、ほとんどは、体内のビタミンEや他のビタミンは放射線療法中に減少することを示している。
化学療法や放射線療法を受ける癌患者の、口腔粘膜炎や痛みに対応する医学的措置の臨床試験は色々ある。経口のペントキシフィリン(pentoxifylline)とビタミンEは、高線量ガンマ線によって誘発された豚の皮下線維症を退縮させた。この組み合わせの臨床試験は、頭頸部癌か乳癌の放射線療法を受けて線維症が出た患者において行なわれた。1日にペントキシフィリンを800 mgとビタミンEを 1000 IUを服用し、それを最低6ヶ月続けたら、臨床的退縮と機能的改善の結果が出た。他の研究グループも、放射線療法の併発症でありながら、自然退縮しないために対応が難しい放射線誘発性線維症の治療での、ビタミンEとペントキシフィリンの有益効果を確かめた。ペントキシフィリンとビタミンEの組み合わせは、小児癌のための放射線療法で20−40 Gyを、骨盤を含むエリアに受けた若い女性での、線維萎縮性の子宮病変を減らす事がみつけられた。またこの組み合わせは、チェルノブイリ事故の犠牲者に見られるような放射線皮膚症候群を含む、重篤な皮膚損傷にも使えるかもしれない。放射線誘発性の線維症の治療において、ペントキシフィリンとビタミンEの抗酸化の性質が有益効果を持つのかどうかは明確ではない。
4.2 セレンとセレン・ビタミンEのコンビネーション
セレン(Se)派生物の多数において、放射線防護効果の研究がされてきている。セレン化合物は、様々な食物に含まれている。例えば、Se-methylselenocysteineは、ニンニクやブロッコリに含まれている。 セレノメチオニンは、自然由来のセレン派生物で毒性が低く、大豆、穀物、豆類やセレンに強化された酵母に含まれている。
腹腔内に投与されたセレノメチオニンは、放射線照射を受けたネズミの生存率をかなり増加し、保護期間を延長した。セレノメチオニンは、低線量(0.2 Gy/分)のコバルト60照射の24時間前、1時間前と15分後の投与で同様の防護力を示した。例えば、10 Gy以上の照射を生き延びたネズミはコントロール群にいなかったが、照射の24時間前か15分後にセレノメチオニン(4 mg/kg セレン)を投与されたネズミの3分の1が生き延びた。亜セレン酸ナトリウムも同様の防護作用を示したが、セレノメチオニンの方が毒性が低い。セレンは、生体外で、放射線誘発性の突然変異誘発を防ぐ。メスのネズミがセレノメチオニン入りの餌を与えられるか、妊娠中に亜セレン酸ナトリウムを投与された場合に、放射線誘発性の奇形の発生率が減少したことが示された。
セレン化合物の放射線防護作用がグルタチオンペルオキシダーゼと他のセレン含有タンパク質の誘発にどのように関連しているかは、明らかではない。そして、また、セレノメチオニンのような化合物の、直接的な酵素擬態性の活性があるのかと言う事も明らかではない。放射線誘発性の酸化損傷からのセレンの防護メカニズムの細胞研究では、セレンが、グルタチオンペルオキシダーゼを誘発することによって、DNA損傷を予防へ直接的影響を及ぼすとは思われないと示された。照射後の期間に、ネズミの組織で、グルタチオンペルオキシダーゼ活性の減少が見られた。セレンかビタミンEが餌に加えられたら、この減少が少なくなった。グルタチオンペルオキシダーゼ活性の最も大きい効果と完全な防護は、ビタミンEとセレンを多く与えられたネズミでみられた。照射後の生存率もまた、ビタミンEかセレンかどちらかを与えられたネズミに比べ、ビタミンEとセレン両方を多く与えられたネズミにおいて、より大きかった。また、ビタミンEとセレンは、放射線照射を受けた動物において、抗酸化酵素を守ったのが発見された。この研究では、ラットが、6.5 Gyのガンマ線照射の10日前に、ビタミンE(200 mg/kg)と亜セレン酸ナトリウム(体重1 kgにつき0.1 mgのセレン)を腹腔内投与された。放射線誘発性である、血液内グルタチオン、グルタチオンペルオキシダーゼとSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)の減少と、血清中の脂質過酸化物の上昇が、放射線照射を受けたラットがビタミンEとセレン両方を投与されたら正常化した。放射線照射による抗酸化酵素の変化のパターンは、げっ歯動物の組織において異なるかもしれないが、ビタミンEとセレンの投与は、放射線照射を受けた組織内の酵素レベルを正常化した。内在性の抗酸化物質への影響以外に、放射線誘発性の腸内の脂質化酸化物と粘膜損傷の増加もまた、このビタミンEとセレンの組み合わせによって逆転された。ほとんどの研究は、酸化損傷の防護におけるビタミンEとセレンの相乗効果についての証明を示している。しかし、ひとつの研究では、ビタミンEとセレン両方が欠乏した餌は、放射線照射を受けたネズミの生存率に影響を与えなかった。だが、この研究グループの予備データでは、ビタミンEとセレンが欠乏した餌を与えられたネズミは、普通より大きな放射線感受性を持っていたと示されている。
亜セレン酸ナトリウムは、一度の照射と、複数の分割された線量での照射両方において、普通の人間の皮膚線維芽の培養細胞は守ったが、扁平上皮癌の細胞培養は守らなかった。
進行性直腸癌の放射線化学療法の予備的な研究で、亜セレン酸ナトリウム(2000マイクログラム)が、フルオロウラシルのコースが終わるごとに経口で投与され、放射線療法後には1日に400マイクログラムが投与された。セレン治療自体は問題なく耐えられたが、放射線療法の補助剤としての効果はまだ明確でない。頭頸部の扁平上皮癌の治療(手術および、または放射線療法)時に亜セレン酸ナトリウム(1日に200マイクログラム)を補助剤として投与された場合、治療中と治療後に、 細胞性免疫反応が顕著に増加した。
4.3 その他の抗酸化ビタミンとミネラル
全身照射か部分身照射に曝露されたネズミにおいて、餌に加えられたビタミンAとβカロチンによって放射線防護作用があったと報告されている。死亡率と罹患率の低下に加え、ビタミンAは、放射線誘発性の副腎肥大、胸腺退縮とリンパ球減少症をやわらげた。餌に加えられたビタミンA(150,000 IU/kg、これに対してコントロール群はRDAー推奨栄養所要量ーの3倍)は、食道(29 Gy)または腸(全身で13 Gy)への局部的放射線照射から防護した。藻類のDunaliella bardawilから抽出されたβカロチンが市販の餌に加えられたら、ラットの放射線誘発性の体重減少が防がれた。ビタミンAを補われた、またはビタミンAが欠乏した餌を与えられたラットが高線量の胸部放射線照射を受けた際に、肺の炎症はビタミンAを補われたグループで減少した。
レチノイドは、生体外での、X線照射に誘発された悪性形成転換を抑制すると示されている。βカロチン(2.5 mg/kg経口)は、ネズミにおける、小核を有する多染性赤血球の出現の頻度で測定される、放射線誘発性の染色体損傷を抑制した。ビタミンAはまた、高LETでありDNAに結合する体内放出放射性核種である125IdU[(125)I-iododeoxyuridineまたは125ヨードヨードデオキシウリジン]による、ネズミの精子形成の減少に対する大豆油による防護効果を高めた。放射線療法の期間中にβカロチンを摂取した癌患者は、口腔内の剥離細胞での小核の出現頻度が低かった。
ビタミンCは、放射線照射後に投与されても、ネズミにおける放射線誘発性の染色体損傷を防いだ。線維肉腫を移植されたネズミの研究では、アスコルビン酸(4.5 g/kg 腹腔内)が全身照射の50分前に投与されたら、致死と皮膚落屑に対して防護した。この一度の大きな量のビタミンCの投与は、細胞毒性がなく、腫瘍の50%をコントロールするか、腫瘍の寛解を達成するのに必要な放射線量に影響を与えなかったため、腫瘍コントロールと普通の組織の保護に臨床的に役立つと示唆される。
脾細胞のヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子座の突然変異は、特に放射線照射後は、若いネズミよりも年老いたネズミでの方が頻度が高い。放射線照射前の餌に抗酸化サプリメント(ビタミンEとC、βカロチン、ルチン、セレン、亜鉛)を加えた場合の放射線誘発性の突然変異の予防は、年老いたネズミでの方が効果が大きかった。血液の検体を寄付した人間が同様の抗酸化サプリメントを摂取した場合、放射線照射を受けたリンパ球の小核の発現頻度が減少した。
ネズミの骨髄の多染性赤血球と膀胱の剥離細胞における放射線誘発性の小核に対しての防護は、放射線照射の前か後にビタミンE、ビタミンCとβカロチンの組み合わせを投与することによって得られた。ビタミンE、CとAの組み合わせは、BALB/cネズミの放射免疫療法(131I)の毒性効果は減らしたが、実験的治療を受けているヌードネズミの腫瘍異種移植片は保護しなかった。予備的研究では、過去の骨盤照射による慢性放射線直腸炎の患者20人がビタミンEとCのサプリメントを最長で1年間摂取し、出血や下痢の副作用の改善が報告された。
リポ酸(6,8-チオクト酸)は、時々ビタミンB複合体と思われることがあるが、親油性の内在性ジスルフィドであり、多くの生物にとって不可欠の補助因子である。他の自然由来の抗酸化物質と比べると、ネズミに対してかなりの毒性(LD95 = 319 mg/kg)を持つ。200 mg/kgのリポ酸を使った場合の30日間生存のDMFは1.26だったと報告されている。
ビタミンやミネラルを含む様々な抗酸化物質は、放射線被ばくから何年も後に、チェルノブイリの清掃作業員においての染色体異常誘発性因子のレベルを抑制したと報告されている。チェルノブイリ原子力発電所付近に居住した住民のために、食品にβカロチンのような抗酸化ビタミンで強化する事が考慮されている。ひとつの研究では、チェルノブイリ事故の何年も後に、被ばくをした子供達において、脂質過酸化物質が検出されたが、βカロチンの補充により、そのレベルは減少した。
セレンの他にも、酸化促進物質、または抗酸化物質としての影響によって、細胞の放射線感受性に影響を与える内在性金属がある。鉄、銅、亜鉛とマンガンは、フリーラジカルとその生産物の除去に関わっている酵素や蛋白質(カタラーゼ、SODs、セルロプラスミン、メタロチオネイン)の機能にとって重要である。
亜鉛やマンガン、そして有毒な金属カドミウムの注入は、放射線照射を受けたネズミの生存率を増加するが、これは組織内のメタロチオネインの誘発に関連づけられている。単純な銅塩と亜鉛塩も、ネズミで100%の致死性をもつ放射線量に対しての防護力を持つ。銅塩、亜鉛塩かセレン塩がホスホロチオエートと一緒に投与されると、この合成防護物質の放射線防護効果が増加し、毒性が減少する。有機性亜鉛塩(アスパラギン酸塩、ヒスチジン、オロト酸塩、酢酸塩)は、そのものだけでも防護作用があるが、亜鉛アスパラギン酸塩はWR−2721の放射線防護効果を増進する。亜鉛アスパラギン酸塩は、免疫を抑制されたネズミにおいての腫瘍異種移植片として育っている人間の腫瘍への、ガンマ線の放射線治療効果は妨げなかった反面、骨髄の、末梢血液細胞の前駆体には回避作用があった。金属元素(銅、鉄、マンガン、亜鉛)のキレートは、毒性が低い放射線防護物質として広く研究されてきており、放射線照射前後にこれらの化合物が投与されたら、ネズミの生存率が増加するのは示されている。
5.ファイトケミカル(植物性化学物質)
もっと普通の栄養素系抗酸化物質に加えて、多数の植物は、抗酸化性のファイトケミカル(植物性化学物質)を含み、これは様々なモデルシステムで放射線防護作用があると言われている。これらは、漢方薬、アーユルヴェーダ医学の処方、アブラナ科野菜(キャベツやブロッコリなど)、緑茶(ポリフェノール)、ジチオールチオン、朝鮮人参(Panax ginseng) 、刺五加エキス(シベリア人参またはエゾウコギ)(Eleutherococcus senticosus)、スピルリナ(Spirulina platensis)、大豆食品、ベノルトン(ルトシド)、ビキシン(カロテノイド)、イチョウエキス Gingko biloba(フラボン配糖体とテルペンラクトン)、マリアアザミ(milk thistle、抽出物は silymarin 、シリマリン)、Mentha arvensis(ミント)、Podophyllum hexandrum(Himalayan May apple)、Syzygium cumini(Jamun、black plum)、トリファラ植物エキス、クルクミン、クロロゲン酸、クエルセチン、ブドウ種子、 Aspalathus linearis(ルイボス茶)、ニンニク(アリシン)、リコピン、メチルキサンシン、メラトニン、エラグ酸などである。この中で、さらに詳しく説明してあるものもある。研究の多くは、複雑なエキスで行なわれており、特に結果がDMFとして報告されていないために、防護効果を比較評価するのが困難である。ファイトケミカルの中では、混合物内か独自での毒性が、完全に調べられていないものがある。これらの植物薬品や代替医薬品は、米国では補助食とみなされるため、FDAによって厳しく規制されない。ドイツでは、薬草の安全と効能を調べる規制機関がある。
5.1 フラボノイドと関連化合物
カミメボウキ(神目箒、Ocimum sanctum、インディアン・ホーリバジル、トゥルシー)から抽出されたフラボノイドであるオリエンティン(orientin)とビセニン(vicenin)は、広く研究されている。これらの化合物は、放射線曝露前に、非毒的分量がネズミに投与された場合に、染色体異常と致死性からかなり防護した。腹腔内に50 μg/kgが照射の30分前に投与されたネズミにおける30日間生存のDMFは、オリエンティンが1.3で、ビセニンが1.37だった。これらの化合物の放射線防護作用と抗酸化性には関連があるようだった。
大豆に含まれているイソフラボンのゲニステインは、抗発癌性の可能性があるので興味がいだかれている。発酵大豆食品の味噌や納豆に、より大きな濃度で含まれている。ゲニステインは、皮下注射一回分をガンマ線照射の24時間前に投与したネズミに放射線防護作用を与えた。DMFの1.16が、運動行為減少を妨げない(行動的毒性)分量か、体重に影響しない分量で得られた。さらに、何度も経口投与されたゲニステインは、放射線誘発性の致死性に対する防護力を顕著に高めた。ゲニステインと味噌はまた、ネズミにおける放射線誘発性の胃腸損傷を防護した。
放射線誘発性の乳癌は、大豆を餌として与えられたネズミで減少したが、この影響は、ボーマン・バーク阻害剤のような、プロテアーゼ阻害因子に関連づけられている。原爆被被爆者においての乳癌と大豆食品消費の前向き研究では、乳癌リスクと豆腐か味噌汁の消費に関連性が見つからなかった。
フラボノイド(ゲニステイン、クエルセチン、ルテオリンと他の茶の成分)の多くは、放射線照射を受けたネズミの末梢血液内の小核を有する網状赤血球の発現頻度を減らした。ブドウ種子から抽出される、ルチンを含むプロシアナディンは小核を有する赤血球の骨髄からの発現頻度の減少で表されるように、放射線防護作用があった。X線照射を受けたネズミの30日生存率は、ルチンでは影響されなかったが、放射線照射を受けたネズミが死に至る時間は、ネピトリン(nepitrin)、スクテラレイン(scutellarein)、ナリンギン(naringin)とルチンなどのフラボノイドでかなり増加した。茶のポリフェノールとクルクミン(ターメリック、またはウコンの主要成分であるDiferuloylmethane)は、 染色分体切断として表された、放射線誘発性であるDNA損傷を防いだ。また、餌にクルクミンが加えられた場合、ネズミにおいて、放射線誘発性でDSE(ジエチルスチルベストロール)によって促進された腫瘍に対しての防護作用は示したが、放射線誘発性の致死からは防護しなかった。生体外研究によると、クルクミンとターメリックは、チャイニーズハムスターの卵巣細胞における放射線誘発性の染色体異常を増加させたが、ネズミに経口投与されたクルクミンは、小核を有する多染性赤血球の出現で表される、放射線誘発性の染色体損傷を抑制したのが見つかった。
5.2 メチルキサンシン
カフェインやテオフィリンなどのメチルキサンシンは、放射線への反応を調節する、アデノシン受容体作動薬である。生体外研究によると、一般的に、カフェインは放射線照射を受けた細胞において、細胞周期G2期の遅れの抑制により、細胞の放射線感受性を高めることが示されているが、この効果は人間の普通の細胞株で見られるが、人間の腫瘍細胞では見られない。カフェインは、損傷と増殖メカニズムを持たないシステムである、プラスミドpBR322でのDNA鎖切断を防いだ。この防護作用は、生体外で示された、一次的および二次的活性酸素種の捕獲を含む、カフェインの抗酸化作用に関連づけられた。
カフェインは、最大で40 mg/kgの分量の投与か、ホスホロチオエートとのコンビネーションでの投与のどちらにおいても、造血系や胃腸系に損傷を与える線量を照射されたネズミの生存に不利な影響を与えなかった。メチルキサンシンは、ネズミの胃腸細胞を放射線による損傷から守る。また、カフェインは、7日生存率で判断される、放射線とインドメタシンの組み合わせによる胃腸損傷における有毒な影響を改善した。メチルキサンシンの抗酸化作用が胃腸保護を影響するのかは明白でないが、この胃腸保護作用は、細胞のサイクリックAMPのレベルの増加にもっと関連しているのかもしれない。
カフェインが放射線曝露の前後に投与された時に、染色体異常の減少がネズミで観察された。放射線誘発性の致死からの防護は、80 mg/kgのカフェイン投与によって得られた。これと同じく多い分量のカフェインは、ネズミにおける局部的放射(35 Gy)への皮膚反応を防いだが、 腫瘍に注入された際には、ネズミの 線維肉腫の放射線への反応に影響を与えなかった。放射線療法の研究はまた、カフェイン摂取は骨盤への放射線照射後の、重篤な遅延性の毒性を減らすかもしれないと示唆した。ペントキシフィリンは、合成された、抗酸化性を持つメチルキサンシンであり、末梢血管疾患の治療に用いられるが、ネズミの四肢における、遅延性の放射線誘発性損傷を防ぐことが示された。ビタミンEと組み合わせた使用は、このレビュー内で既に取り上げられた。
5.3 メラトニン
さくらんぼのような食用植物は、松果体に高濃度で見つかる内在性抗酸化物質である、メラトニンの重要な供給源かもしれない。多くの研究が、放射線によって起こされる酸化ストレスからの、メラトニン(N-アセチル-5-メトキシトリプタミン)の防護作用を示している。放射線誘発性致死に対しての、メラトニンの小さな防護効果は、8.15 Gyの放射線照射を受ける1時間前に250 mg/kgのメラトニンを投与されたネズミにおいて示された。人間の志願者が経口で300 mgのメラトニンを投与された、1時間後と2時間後にリンパ球が採取された研究では、染色体異常と小核の発現がかなり減った。ネズミの有糸分裂細胞と減数分裂細胞における放射線誘発性の染色体損傷は、メラトニン(10 mg/kg)が照射前に投与された時には防護されたが、照射後に投与された時は防護されなかった。
5.4 その他
イチョウエキスと植物性フェノールは、チェルノブイリ事故の清掃作業員の血清中の染色体異常誘発性因子の抑制をすると示された抗酸化物質の一部である。チェルノブイリ事故で汚染された区域からイスラエルに移住した子供達の、新鮮な野菜や果物の摂取頻度と染色体異常誘発性因子の数値は反比例していた。日本の原爆被爆者コホートにおける食事と膀胱癌罹患率の前向き研究では、緑黄色野菜と果物のたくさんの摂取は、膀胱癌に対しての防護作用を示したが、緑茶は防護作用を示さなかった。
アリイン(S-allyl cysteine sulfoxide)は、4 Gyの照射においてのラットの生存率を高めた。ニンニクエキスは、最大で2 Gyの照射を受けたネズミにおいての染色体損傷(骨髄の小核テストによって表される)を減らした。
アルギン酸は、抗酸化作用を持つ、水溶性の海洋性多糖類である。体内に蓄積された放射性物質の排出に役立つようである。アルギン酸ナトリウムは、Ra-226を骨から除去することを刺激するので、骨髄幹細胞をアルファ線放射線から守る。生体外研究によると、アルギン酸は、炎症と関連している接着分子の、放射線誘発性の表現を抑制する。ネズミのモデルでは、高線量の放射線照射後にアルギン酸ナトリウムを用いた場合、口腔内放射線照射致死(LD50/20)ではDMFが1.12で、口腔粘膜の組織診が改善された。
6.ディスカッション
伝統的には、放射線防護物質というのは、放射線被ばくの前に投与される物質を指し、治療物質は放射線被ばく後に投与される。厳密な分類は、活性種に関連した放射線による損傷が 連続した出来事の集積であると言う概念からすると、無意味かもしれない。こういう意味では、多くの自然由来の抗酸化物質は、照射後の致死と突然変異誘発に対する防護を含め、長い防護期間を提供すると言える。一般的に、このレビューで取り上げられた物質は、ホスホロチオエートのように合成された放射線防護物質に比べると防護力が低いが、毒性も低い。これらの物質の多くを、緊急時に予測される放射線被ばくの予防か、放射線事故か事件の後の治療として、適用することの可能性は期待出来る。
放射線への反応を調節する事ができる栄養素とファイトケミカルの多くの防護メカニズムは明確ではない。ここで取り上げられた物質の多くは、抗酸化物質なだけでなく、他の生理学的活性を持つ。ビタミンEでさえ、抗酸化性でない性質を持ち、それが放射線の影響を調節するかもしれない。
自然由来の抗酸化物質のいくつかに見られる、致死性からの防護力の低さは、遅延性の反応の調節に関連するかもしれない。例えば、放射線誘発性の生体分子のラジカルと普通の細胞プロセス中で生じた活性酸素種か活性窒素種との相互作用などである。抗酸化物質による、放射線照射後の防護効果は、電子スピン共鳴研究に基づいたモデルで説明できるかもしれない。このモデルは、放射線被ばくは、細胞死を引き起こす、ヒドロキシラジカル(•OH)のような短命のラジカルと、突然変異と形質転換を引き起こす長命のラジカルを生み出すと言う事を示唆する。この概念はまた、マイクロビームによって照射された細胞を用いた実験でも支持されている。これらの実験は、放射線誘発性の細胞核への影響以外に、活性酸素種が細胞質で生じるために、細胞死は最小限に留められても、かなり大きな突然変異の可能性が結果として起こることを示す。
抗酸化性栄養素とファイトケミカルの多くは、放射線被ばく後に投与された場合に抗突然変異の効果を持つが、これが抗発癌効果に繋がるかどうかは明確でない。一般的に、果物と野菜が豊富な食事は癌のリスクを下げると言われているが、ビタミンEやセレンの補充などの抗酸化物質による、特定の癌の予防についての決定的な無作為化比較試験は、まだ完了していない。セレンで強化された酵母(1日に200 μgのセレン)の、非メラノーマ皮膚癌の再発の予防における効能を調べる無作為化対照臨床試験では、セレンの補充が、血清中のセレンのベースライン数値が低かった男性において、全部の癌と前立腺癌の発生率を下げた事がみられた。放射線誘発性の癌の化学的予防の最終的な臨床試験を実施するのは、非常に困難であろう。急性または慢性の、環境的か職業的な放射線被ばくを受けた人間の集団における分子的疫学調査は、放射線誘発性の癌が発達するリスクを持つ亜集団の特定や具体的な分子的ターゲットの特定などの、役に立つ情報を提供するかもしれない。このような情報は、介入戦略の発展に使う事ができる。
合理的である大きな疑問があるが、これは、ビタミンEサプリメントなどの抗酸化物質の摂取を放射線療法の期間中に止めるべきかと言う事である。実験の結果から、複数の抗酸化ビタミンのサプリメントが、放射線療法を含む癌療法の効能を改善するかもしれないと提示されている。その反面、過剰な抗酸化栄養素の摂取は、癌治療に逆効果であるとも反論されている。米国癌協会のワークグループが次のような指導を示した。「残念ながら、これは現時点で的確な答えがない、多くの重要な質問の内のひとつである。故に,化学療法か放射線療法を受ける患者には、ビタミンサプリメントについては、DRI(栄養素参考摂取量)の上限を上回らないように、そして抗酸化化合物を含む栄養補充剤を避けるようにアドバイスをするのが賢明である。」
抗酸化物質は、活性酸素種による最初のアポトーシスの媒介と、後に起こって、放射線誘発性のアポトーシスの特徴である、細胞膜脂質過酸化を妨害するかもしれない。中核の問題は、放射線誘発性のアポトーシスが、抗酸化物質によって腫瘍では促進されるが普通の組織では促進されないか、そして、普通の細胞において、放射線誘発性のアポトーシスをいつ防げばいいのか、と言う事である。損傷を受けた細胞においてアポトーシスを防ぐのは、環境放射線被ばくを受ける集団においてだけでなく、放射線療法の計画においての化学的予防戦略に適切である。放射線療法のエンドポイントであるアポトーシスと典型的な生殖細胞死が、腫瘍と普通の細胞にとって同じ重要性は持たないであろうから、2つのエンドポイントを差次的に修正することによって治療効果比が得られるであろうと示唆されている。特定の腫瘍と普通の組織においての、放射線誘発性のアポトーシスへの抗酸化効果に焦点を絞った、さらなる生体内研究が必要である。このレビューは、放射線被ばく後の抗酸化栄養素とファイトケミカルを用いての治療は、癌研究において実りのある分野であると示唆する。
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