第12回 「県民健康調査」甲状腺検査評価部会(2019年2月22日開催)での説明や議論の書き起こし



第12回「県民健康調査」検討委員会「甲状腺検査評価部会」のアーカイブ動画(OurPlanet TV提供)より、説明、発言および議論の一部を書き起こした。資料および後日公開される公式議事録は、こちらからダウンロードできる。発言者の所属等に関しては、次第内の部会員出席者名簿や関係者座席表を参照願いたい。病理医の加藤良平 部会員は欠席だった。
なお、以下の書き起こしは、発言を完全な文章で書き起こしていない部分もあり、聞き取れなかった箇所もあることをご了承願いたい。

第12回甲状腺検査評価部会の動画


当日の出席者名簿
関係者座席表

志村浩己 福島医大 甲状腺検査部門長(以下、志村)資料1-1本格検査(検査2回目)の細胞診実施に関する分析結果」をご覧ください。これは、前回までの評価部会におきまして、悪性あるいは悪性疑いの方の発見率には、先行検査における結節発見率の年次的変化、あるいは先行検査一次検査と本格検査一次検査の間の検査間隔の違い、本格検査における高校卒業後の世代の受診率の低下、また加えて細胞診の実施率の変化などが交絡因子として関与しているのではないかということをご議論いただいております。今回、このうち、細胞診の実施率について詳細な分析のご依頼をいただいておりましたので、解析を行いました。今回の解析は、前回の評価部会でご提案いただいた方向にしたがい、行っております。資料1-1のデータにつきましては、前回と同様に、本格検査1回目の結果を解析したもので、先行検査と本格検査両方とも受診した方を対象としております。

まず1ですが、これは一次検査実施年度別に、本管区検査受診者を2群に分けておりまして、細胞診の実施率および悪性・悪性疑い発見率を、ここでは二次検査の時の結節径の分類別で解析いたしました。

図1をご覧ください。これは、本格検査一次検査実施年度別にみた、二次検査で結節があると確認された方のサイズ別の割合を示しています。横軸は二次検査における結節の最大径、縦軸は全体のうちのパーセンテージを示しています。ご覧になりますように、2014年度および2015年度実施分ともに、10mm以下の結節が最も割合が高くて、20.1mm以上の割合が低くなっております。

図2をご覧ください。これは、各年度別の細胞診実施率および悪性ないし悪性疑いの発見率を示しております。2015年度実施分におきましては、2014年度実施分と比較して細胞診実施率は低くなっておりまして、悪性あるいは悪性疑い発見率も、割合は低くなっておりますが同様の傾向を示しております。
図3ですが、これは図2のデータを、二次検査時点の結節径別に示したグラフです。細胞診実施率は、20.1mm以上の結節において年度間に差は認められませんでしたが、10.1-20.0mmおよび10.0mm以下の結節におきましては、年度間に差がみられました。一方、悪性あるいは悪性疑い発見率は、10.1-20.0mmでは差が少なかったのに対しまして、10.0mm以下の結節においては年度間に差が認められました。20.1mm以上におきましては大きな年度間差が認められておりますが、20.1mm以上の結節を有する方の数が少ないため、この結果の信頼性は低いと思われました。なお、この悪性あるいは悪性疑い発見率に関しましては、今回のデータでは、二次検査で結節が確認されている方を分母にした発見率となっておりまして、前回のデータとは計算方法が異なっております。

以上をまとめますと、10.0mm以下および10.1-20.0mmの群では、2014年度実施群において細胞診実施率と悪性あるいは悪性疑い発見率が高い傾向を示しておりました。

次に、2に移らせていただきます。細胞診実施率および悪性ないし悪性疑いの発見率を地域別に検討しました。4地域の分類は前回と同じですが、注1から注4に記載したとおりであります。

図4は、地域別にみた、二次検査時に結節を認めた方をその時の結節径別に分類した割合を示しています。横軸は二次検査時の結節径でございます。ごらんになりますように、すべての地域において10.0mm以下の結節の割合が最も高くて、20.1mm以上の結節の割合が低くなっております。

次に図5です。図5は、各地域別の細胞診実施率および悪性ないし悪性疑いの発見率を示しております。細胞診実施率は避難区域等の地域が最も高く、ついで中通り、浜通り、会津地方の順で低くなっております。また悪性ないし悪性疑い発見率も同様の傾向を示しておりました。

図6ですが、これも同様に、図5のデータを二次検査時点での結節径別に示したグラフです。細胞診実施率は20.1mm以上の結節において地域間に大きな差は認められませんでしたが、10.0mm以下と10.1-20.1mmの群では、避難区域等と中通りにおいて高い傾向を示しておりました。悪性ないし悪性疑い発見率におきましても、10.0mm以下および10.1-20.0mmの群では、細胞診実施率と同様の傾向が認められました。20.1mm以上の群におきましては地域差が大きかったというデータが示されておりますが、これは20.1mm以上の結節を有する人の数が非常に少ないため、パーセンテージとしては結果の信頼性は低いと考えてられました。

以上、2番のデータをまとめさせていただきますと、細胞診実施率および悪性ないし悪性疑いの発見率は、避難区域等で最も高く、ついで中通り、浜通り、会津地方の順でした。10.0mm以下あるいは10.1-20.0mmの群では、避難区域等と中通りにおいて細胞診実施率と悪性あるいは悪性疑い発見率が高い傾向を示しました。20.1mm以上の群では、細胞診実施率に明らかな地域差は認められませんでした。

最後に3番です。3番は、さきほどと同じように、細胞診実施率および悪性ないし悪性疑い発見率を、先行検査の時の細胞診を実施された方、あるいは実施されていない非実施の方に分けて検討しました。先行検査の時に細胞診を実施して本格検査を受診された方は122人。先行検査の時に非実施だった方は1302人いらっしゃいました。

図7は、その先行検査時細胞診実施別にみました、二次検査結節径分類別結節有所見者の割合を示しています。横軸は二次検査時点での結節の最大径です。ご覧になりますように、先行検査時に細胞診を実施されていた方は、二次検査の腫瘍径としましては、非実施群に比較しまして、10.1-20.0mmおよび20.1mm以上の群に分類されているものが多い傾向が見られました。

図8をご覧ください。これも、先行検査時の細胞診実施率別にみたデータであります。左の細胞診実施率のグラフは、本格検査における細胞診の実施率を示しており、横軸は、先行検査時の細胞診実施、非実施を示しています。本格検査における細胞診実施率は、先行検査で細胞診実施されていた方については、非実施の方よりも、本格検査における細胞診実施率は低くなっていました。また、悪性あるいは悪性疑い発見率も同様の傾向を示していました。

図9は、図8のデータを、二次検査時の結節径別に分類したグラフです。本格検査時の細胞診実施率は、すべての腫瘍径のグループにおいて先行検査における細胞診非実施群の方が実施群と比較しまして、細胞診実施率が高い傾向が認められました。また、悪性あるいは悪性疑い発見率も同様の傾向を示しておりました。

以上をまとめますと、先行検査において細胞診を実施している場合、いずれの結節径においても本格検査において細胞診実施率および悪性ないし悪性疑いの発見率は低くなる傾向が認められました。

説明は以上です。

鈴木元 部会長(以下、座長):最初の1と2というのは基本的に細胞診実施率と悪性ないし悪性疑い発見率がかなり相関しているというような結果だと思います。ちょっとわかりづらいのが3の方でして、こちらは、先行検査で細胞診を実施していたかどうかというのが、あまり本格検査の方に関係はなかったということをおっしゃりたいのでしょうか?

志村:以前から申し上げておりましたが、先行検査で細胞診を実施されて、かつ本格検査に受診をされた方は、先行検査の時の所見と増大傾向、あるいは超音波検査の所見に変化があったもののみ細胞診を実施するという運用をしております。そのために、先行検査で細胞診を実施された122名においては、実施されてなかった方よりも細胞診の実施率は下がっていまして、それを反映して、悪性・悪性疑いの発見率も下がっているという状況であります。しかし、細胞診を実施された方の腫瘍径は、大きい方に少しシフトしているという特徴もございました。

祖父江友孝 部会員(以下、祖父江)(大阪大学):図1〜3と図4〜6は、本格検査1回目の状況ですね、これ。2014年、2015年、あるいは地域と。おそらく避難地域が2014年に行われたということで、避難地域を含む2014年が高いということで理解できますけれども、先行検査の時の細胞診の実施状況が地域別でどうだったかという所の関連がですね、説明してもらうと理解しやすいと思います。

志村:この、細胞診を実施した方と実施してない方に加えて、地域別で分類しますと、各群の母集団の数がさらに少なくなりまして、非常にバラバラして一定の傾向が出ないようなデータになっていたと記憶しています。

祖父江:質問はですね、細胞診実施率あるいは実施割合が、先行検査時に地域別に違っていたかどうか、です。

志村:先行検査では、細胞診の実施率は避難区域が最も高くなっておりまして、中通り、浜通り、会津地域の順に細胞診実施率は下がっております。したがいまして、そこから再受診された方もその傾向を継続されていたと記憶しています。同じ傾向が、細胞診を実施された方が避難区域で多いという傾向があったと思います。

祖父江:だとすると、ちょっと逆になっていますね、今。非実施割合、非実施人が多いところで、本格検査での細胞診実施率が高く、悪性あるいは疑い発見率が高くなっている。だから、まあ私もちょっとうろ覚えなんですけど、B判定の割合が確か、避難区域は少なかったんです。で、そのB判定の中で、細胞診の実施率は避難区域が高かったという、そういう関係じゃなかったですか?

志村:その通りです。細胞診実施をされて本格検査に再度受診された方は、二次検査受診された方の全体の10%になりますので、その方々の変化というのは、細胞診非実施者の方の方が10倍ありますので、そちらの方に引っ張られている、いわゆる、全体のデータに対する細胞診実施者の寄与度といったものは少ないという状況がございます。

南谷幹史 部会員(以下、南谷)(小児科医、千葉県):図2の確認なんですけど、2014年度と2015年度の細胞診の実施率が50%くらい違うわけですが、ただ対象者は__一緒なわけですよね。それでこの率が違うというのは、どういうことなんでしょうか?

志村:なかなか明確なお答えは難しいところもありますが、先行検査から細胞診実施率の傾向をみますと、年次推移で少しずつ下がってきているという傾向が全体的にはみられます。そういう傾向の一環として、ここで差が出ているということが考えられます。細胞診実施の基準は変えてはいませんけれども、超音波画像の評価に関しましては、われわれの経験が積んできて、その見かたも少しずつブラシアップされているということもあるのかもしれませんけれども、もう少し明確な理由は、ちょっとまだわかりません。

南谷:そうすると、必ずしも大きさだけで細胞診をするかどうかを決めているわけではないという理解でよろしいですか?内部の構造とか?

志村:はい、特に10.0mm以上の大きさで決めておりますが、それ以下は超音波画像の所見を評価した上で決めているという状況です。

片野田耕太 部会員(以下、片野田)(国立がん研究センター):確認なんですけど、3番の細胞診実施率というのは、個人単位の情報をもとにしているということですよね?

志村:その通りです。

片野田:1番も、地域ごとではなくて、個人単位で何年度に受けたかどうかで分けていますか?

志村:その通りです。

片野田:質問は以上なんですけど、感想としてはやっぱり、細胞診の実施率が、2番だと3倍近く地域によって違っていて、一番低いところで6%ほど、高いところで18%くらいまであって、それが、悪性あるいは悪性疑いの発見率と、これだけきれいに相関しているので、線量との関係を見る時に、非常に解釈が難しいなという感想と持ちました。

髙野徹 部会員(以下、髙野)(大阪大学):先ほどの志村先生のお話で、超音波所見の見方がブラシアップされたので率が減ったというお話だったんですけども、そうだとすれば、より悪性を拾い上げる効率が上がっているはずなので、悪性あるいは悪性疑い発見率が細胞診率に一致していると、ほぼ__に動いているということでしたら、そのケースはちょっと考えにくいんじゃないかと思うんですけど、いかがでしょうか?

志村:ひとつのスペキュレーションであって、すべてが分かっているわけではございませんので、今後の課題とは思います。

座長:今の質問にちょっと関連するんですが、これは、外科の先生の方がお答えになった方がいいと思うんですが、年度によって実際に手術まで回って行った腫瘍のステージはどうだったんでしょうか?年度によって違って来てたのかどうかということなんですけども。

志村:本日、手術を担当しているドクターが不在ですので、ちょっと詳細は・・

横谷進 福島医大甲状腺・内分泌センター長(以下、横谷):今、ここで即答することはできませんが、それは可能なので、ちょうど時間系列に置いた時に、ほぼ、今までのデータというのは、先行検査で見つかったケースが最終的に手術してどうだったかということは分かっていて、その先のところがようやく分かってきたところなので、それが可能になってきているので、これから、それらに対する答えを出してくることができるだろうというふうに思っております。ただ、発見の年は何で定義するかによって変わってくるので、まあそこら辺も考えて行かないと傾向が見えないかもしれませんので、検討したいと考えてます。

片野田:もう一点だけ確認なんですが、1番と2番の関係についてなんですけど、2番が地域別の集計になっていて、ざっくり言えば、避難区域等と中通りが2014年度に実施したという、そういう理解でいいんですか?

志村:少数の例外はございますけども、基本的にはそういう関係性があります。

片野田:さきほど、個人単位で何年度に受けたかで集計はしているけれども、ただ、2番はたとえば、図5の4本あるラインを真ん中で割ったものが1番のグラフに大体相当しているという理解でいいですか?

志村:ただ、中通りは実際は、2014年度で検査を行った市町村と2015年度に検査を行った市町村がございますので、中通りについてはクリアーには分けられないという状況ではあります。

座長:先ほど私が質問したことに対して自分で答えるのも変なんですが、以前からこの部会の中で、腫瘍径の分布が年度によってずいぶん違ってきてて、2014年度にあたったかと思うんですが、他の年よりも腫瘍径が小さくなったというデータをお見せいただいたように思います。ちょっとこの、同じ細胞診実施率で、実際はその時に発見されているもののステージが違っているのではないかというのは、先ほど私が質問した内容でしたので、もっと外科のデータをこれから解析して示していただけるということなので、期待しておりますのでよろしくお願いしたいと思います。

ちょっと次のに関係するのですけども、これまで年度、あるいは地域によって悪性・悪性疑いの発見率に大きく影響の出るものっていうのは、この間の解析で何度か出てきました。一番最初に志村先生の方からもありましたけども、検査間隔。当然、検査間隔というのは、受診者の年齢分布に関係してきますし、それぞれも、所見の多くなる年長の人たちの受診率の地域差がどうかとか、あるいはこの、年度の細胞診の実施率という、こういうものがおそらく発見率にずいぶん影響してくるのだろうと思っています。で、この部会、今までの解析の中で、今後、線量との関係で、交絡因子あるいはバイアスの原因になりそうなものを解析に入れていくとした時、今、私があげたものの他にどういうものが考えられるでしょうか?祖父江先生、片野田先生、スペシャリストに聞きたいんですけど。

祖父江:甲状腺に関しては、大きなリスク要因というのがあまりないんですよね。タバコとかウイルス感染とかそういうことでなくて、やっぱり、検診の受け方ですね、やり方。ここのところの違いをいかに線量との関係を見る時に説明を加えて行くかということですけども、今、把握しているもの、検診の実施年度、B判定の基準、それから細胞診の実施割合等々、それを加味していくのはそうなんですけども、それ以外何か、まあ、私たちがこれが正しいというよりは、現場の方々ではっきり関係するような、検診のやり方に関してのファクターを考えていただけると、suggestionしていただけるとありがたいと思います。

片野田:今、鈴木先生がおっしゃったのは、年齢と検査間隔、受診率、細胞診の実施割合も入っていて、あと、祖父江から先ほどお話のあった、B判定率も年度によって違うということなので、それを入れるということと、先ほどの資料1-1の3の、前回の結果っていうのが影響しているとなると、これがちょっと、私自身もどういうふうに入れていいのか、まだ思いつかないんですが、ちょっとこの3番のやつが扱いが難しいかなと思っています。他は、今あげたようなものを、考慮できれば考慮した方がいいという意見ではありますけれども、先ほどの資料でもありますように、ざっくり、年度でかなり傾向が変わっているということなので、まだ年度で分けてというのもありかなと思います。

部会長:今後の解析の中で今あげられたような因子等々を解析に加えていくかについて、また継続して議論して行きたいと思います。


30:50 
部会長:では続いて、資料1-2「市町村別UNSCEAR推計甲状腺吸収線量と悪性あるいは悪性疑い発見率との関係性」の方に移りたいと思います。

大平哲也 福島医大 健康調査部門支援長(以下、大平):資料1-2の方をご覧ください。市町村別UNSCEAR推計甲状腺吸収線量と悪性あるいは悪性疑い発見率との関係性をですね、示したグラフになります。参考資料5を見ていただきますと、こちらの方にですね、UNSCEAR2013年報告書抜粋資料と書かれた参考資料がございます。こちらの方の報告書にUNSCEARの方で、東日本大震災原子力事故後に放射線被ばくレベルの影響ということで放射線被ばくレベルをですね、各市町村ごとに推計しているものがございます。あらかじめ申しておきますと、こちらの方の4ページ、5ページの方に書かれていますように、こちらの推計にはですね、不確かさというものが大きく影響しておりますので、これがすべてのものを反映しているわけではないということを、まずご了承いただけたらなと思います。

まず、こちらの1番ですけども、震災時6〜14歳の対象者におけるUNSCEAR推計甲状腺吸収線量と悪性あるいは悪性疑い発見率との関連性を説明したものです。これは、参考資料5の12ページにおけますTableのC-16.2というものをご覧いただければと思うんですけど、これはですね、その当時10歳の子どもにおける一年間の甲状腺の平均の吸収線量を示したものです。

この表は、避難区域以外の福島県内の市町村の推計線量を示したもので、一番右側にトータルと書いてあります。このトータルと書いてある数値を、10歳と書いてありますけども、こちらの推計は、1歳と10歳とアダルトということになってまして、今回の解析は、6歳未満がほとんど甲状腺がん発見率がないということから6歳以上の方を対象として評価しました。で、このC-16.2の10歳のTable の数値を、6〜14歳の子どもたちの解析の方に用いております。

C-16.2が避難区域以外の甲状腺の吸収線量ということになりますが、参考資料5の40ページのTable C-18.5の方には、避難区域の10歳の方の一年間の甲状腺の推計線量が出ております。ただし、見ていただければわかりますように、双葉町、楢葉町、浪江町と書いてありますけども、避難区域(経路?)別に推計されております。わたくしどものデータでは、誰がどういう経路で避難したかを正確には持ち合わせておりませんので、今回は、たとえば双葉町であれば、2種類のtotal dose(右から3番目)の中で一番高い線量を当てはめて、そこの数値を用いました。すなわち、双葉町の6〜14歳の子どもは、すべてこのtotal doseである14 mGyという数字を当てはめて評価を行なっております。

元に戻っていただきまして、資料1-2の最初の①-7に書いてあります地図別に、推計甲状腺推計線量というのを書いてあります。ここで先ほどの表のtotal doseを市町村すべてに当てはめました。

そうしますと、たとえば会津地域でいえば、ほとんどが20 mGy未満ということになりますし、一番高い所で言いますと、いわき市とか南相馬市が30 mGy以上ということで、こういうふうに地図上で色分けしております。で、この人たちの発見率というのを、先行検査と本格検査と分けて、オッズ比をみたものです。オッズ比は、20 mGy未満をreference「1」としまして、性・年齢を調整した上で、何倍発見があるかというものをみたものです。

図1の方に、先行検査と本格検査のオッズ比をみていると思いますが、こちらみて行きますと、先行検査で20以上25未満の所で若干上がっているように見えますが、有意な上昇ではございません。全体的に量反応関係というのはみられないというのが、今回のこの図でみてとれるかと思います。本格検査におきましては、同じように20以上25未満のところでやや上昇がみられておりまして、この丸の上下の線は95%信頼区間を示しておりますので、ここの所で1以上となっていますので、この部分で有意な上昇がみられております。しかしながら、全体的に量反応関係はみられていないというのが、これでみてとれるかと思います。これが6歳から14歳までの結果です。

続きまして、①-8をみていただけると思います。先ほどは、避難区域の最大線量をすべての子どもたちに当てはめて計算したものですけれども、今度は最小値を当てはめて、同じような解析を行っております。図の方をみていただけると分かりますように、ほぼ先ほどと同じような分布はしておりますけども、どちらかというと最小値を用いておりますので、やや低い方の色分けが多くなっているかと思います。
こちらで見ましても、同じように解析をさせてもらいました。先行検査・本格検査、両方みていただきますと、先ほどと同じような関連性がみられまして、先行検査・本格検査ともに、20以上25未満でやや発見率の上昇がみられておりますが、量反応関係は、やはりみてとれないというふうに思います。


続きまして、①−9をご覧ください。こちらは、震災時15歳以上の対象者を、同じようにUNSCEAR推計甲状腺吸収線量と悪性あるいは悪性疑いとの関係性を示したものです。で、こちらはどのものを使ったかと言いますと、まず、先ほどの参考資料C-16.1という表をご覧ください。

ちょうど10ページになると思いますけれども、ここも同じように、避難区域以外の「Adult」と書いてありますけれども、大人の1年間における吸収線量を示したものです。一番右側にTotalと書いてありますけれども、そのTotalの線量を各市町村に当てはめて計算を行いました。

同じように、避難区域の方はですね、39ページのC-18.4「Adult」と書いてありますが、各避難区域の平均吸収線量をみたもので、一番右から3番目にTotal doseと書いてありますが、この線量をすべての住民に当てはめて計算を行ったものです。

元に戻りまして、①ー9の福島県の地図上に推定甲状腺吸収線量の分布が書かれております。で、15歳、大人ですので、甲状腺吸収線量は子どもに比べて低くなっておりまして、10 mGy未満の所をreferenceにしまして、それ以上の4つの__でオッズ比を計算しております。

図3の方に、先行検査と本格検査、そしてこちらは甲状腺吸収線量の最大値を当てはめて計算したものですけれども、先行検査、本格検査ともに、オッズ比の上昇はみられておりません。

続きまして、①-10の方は、最小値を当てはめて関係性をみたものですが、こちらも同様に10未満をreferenceにして性・年齢調整オッズ比をみたものですが、やはり推計甲状腺線量と発見率の間に関連性は特にみられませんでした。

①-11の方に結果の方をまとめてあります。UNSCEARによる推定甲状腺吸収線量は、理論的な計算による事故後1年間の推定値であります。ですので、先ほども申しましたが、実際上のものとは異なっている可能性があります。また、おひとりおひとりのものに違いがありますが、今回、すべてのひとつの自治体では同じ線量を当てはめておりますので、実際の個人の線量とは差異がある可能性がありますことをご了承ください。震災時年齢が6〜14歳の対象者および15歳以上の対象者において、線量依存性の悪性あるいは悪性疑い発見の性・年齢調整オッズ比の上昇の傾向は認められませんでした。また、各市町村平均推定甲状腺総吸収線量の最大値または最小値ともに用いて解析を行いましたが、その傾向に明らかな差異は認められませんでした。以上でございます。

座長:議論に入る前に私の方から、UNSCEARの線量評価に関しまして、コメントをさせていただきます。
先ほど___先生の方からも、不確実性があると説明あったと思いますが、福島の事故で、事故当時の放射性ヨウ素の実測値が非常に少ないです。特にこういう線量評価において必要なのは、空気中にどのくらいの放射性ヨウ素が漂っていたかという濃度の時間経緯、それから場所の系列?、それがあればかなり正確な評価ができますし、実際に住民の甲状腺を測定していけば、どのくらいの内部被ばくがあったかということを実際に知ることができるわけです。
そういうものは少なかったために、UNSCEARが何をやったかと言いますと、大気輸送拡散沈着モデル、ATDMと言っておりますが、日本でいうと、WSPEEDIというと皆さんご存知かと思いますが、そういうコンピューターシミュレーションで線量を評価しております。で、このコンピューターシミュレーションのベースになっている考え方というのは、原発からどのくらいの割合で、たとえば放射性ヨウ素が放出されていたか、その放出されていた時に風はどう動いていて、放出された放射性ヨウ素の雲、プルームといいますが、それがどの方向に飛んで行ったか。これをコンピューターでシミュレーションしております。
このシミュレーションというのが、今、私たちも研究していますが、非常に難しい。その難しい第一は、本当の意味で気象の、その時風がどっちに吹いていたかというのを正確に知ることができません。特に3月12日のプルームが北の方向に飛んでいるわけですが、それがどこの地域まで含んで飛んでいたか、あるいはいつの段階で__かというのが、非常に不確実性がありました。
現在、その再評価をやっていまして、そこの中には、双葉とかあるいは南相馬とか、新地とか、そういう所でSPMという大気中の浮遊物質の測定ステーションがありましたが、そのデータを使って、今、この時期、どれくらいのたとえば放射性セシウムが飛んでいたかというのは、かなり正確にわかるようになってきています。ただ、このUNSCEARのデータをまとめた段階では、まだそういうデータが利用できていませんので、まだまだ不確実性の高いものだということを承知していただきたいと思います。
で、このUNSCEARの参考資料5の、たとえば5ページ目、段落の112とかの一番最後に書いてありますが、「(...)ATDM解析に直接基づいている。これらの住民グループの地区平均実効線量と臓器吸収線量は、特定の場所と時間に関するATDM解析の結果に不確かさがあるため、一般的に4倍から5倍過大評価若しくは過小評価される可能性がある」、要するに、そのくらいの幅がある評価しか、まだ、このUNSCEARの段階ではできていなかったということだと思います。それからその下に114のパラグラフがありますが、UNSCEARの線量評価の中で、たとえば福島県民全体で言いますと、先ほどのたとえばC-16.3の15ページ(実際には14〜15ページ)ちょっと見てください。

これは1歳児のものですが、この表の一番右から2番目に、ingestionという項目があります。Ingestionというのは、経口で、口から入った量です。これが、1歳児ですと、32.79 mGyと、みんな一律にあげられてます。これはどういう仮定をしたかというと、先ほどの8ページ(実際には5ページ)の方に戻っていただきますが、食品の流通で汚染されたものがそのまま福島県産であったと仮定して、それだけ食べていたという仮定をしています。そのため、すべての県民が同じ線量を付与されているわけですが、これは、UNSCEAR自身、パラグラフ114の下から3行目で、「(もし)福島県で消費された食物の25%が県内産であったと仮定した場合、事故後1年間の経口摂取による実効線量の推定値は、本委員会の推定値の30%になると考えられる」と、この辺もかなり大きな不確実性の要因になっていると思います。
ですから、今日のこのデータというのは、ある程度吸入線量で地域によって凹凸があるので、その凹凸がどのくらい実際の線量評価に影響しているかという、相対的なものみているというふうに理解していただきたいと思います。ここに書いてある数値そのものが信頼性が高いものではないということを十分意識しておいていただきたいと思います。
ちょっと長くなりましたけれども、こういうUNSCEARの線量評価というのは、今、改定作業に入っていまして、おそらく2021年、あるいは2022年頃に、報告書の改訂版が出るという方向に考えまして、現在作業が始まっているところですので、将来、ブラシアップされた線量を甲状腺がんの疫学調査に使えるようになってくるだろうと。で、まあ、今日の解析というのは、そういう意味での途中段階の線量評価を使ったものだということをまず理解していただきまして、その上で委員の先生がた、方法論とかあるいは実際に解析をしている結果等に何か疑問点あるいは質問がありましたら、お願いしたいと思います。

片野田:今のご説明で、食事以外のものは相対的な差がゼロであるということは、今回の分析では食事以外は考慮していないと考えていいのか?(座長:それでいいです。)あともう一点、複数の値があった場合に最小の値を使った場合というようなご説明がありましたけれども、最小を使うか最大を使うかというのは、結果にどういう影響を及ぼしたかという確認をしたいんですけれども、もし線量による勾配があった場合に、最小のを使った場合の方が勾配が強く出るという理解でいいですか?その、横幅は短くなるという、そういう理解でいいんですか?

大平:はい、そのような理解でよろしいかと思います。

片野田:わかりました。で、今回は、資料には入っていないけれども、最大のものを使った結果も同じだったということですか?

大平:資料の方には、最大と最小と両方が入っています。

座長:こういう、線量との関係のグラフをみるというのは、私たち放射線疫学をやっている者には非常にfamiliarなんですが、他の方はあまり慣れてないと思います。

吉田明 部会員(以下、吉田)(甲状腺外科医、神奈川県):6〜14歳のところでですね、20から25 mGyのところがいずれもみんな高くなっているのは、何か考えられるということがあるのでしょうか?

大平:こちらに関しましては、先行検査と本格検査と両方とも同じように高くなっているということを考えれば、もともとの地域特性を示しているもの「かも」しれないということが考えられます。

片野田:ちょっと今、聞き漏らしてしまったんですけれども、もう一度おっしゃっていただけますか?(吉田部会員が質問を繰り返す。)私が答えるべきかどうかというのはあるんですけれども、もし仮に線量の効果があったとすれば、量反応関係があったと考えるのが自然なので、局所的にどこが有意かをみるよりは、やはり勾配をみるべきだというのが私の意見です。

座長:20から25のところが跳ね上がっていることに対しての答えというのは、今、実際にないんだと思います。先ほどの議論の中で、いくつかの交絡因子があるということがわかってきてますので、そういうものを調整してた行った時にここがどういうふうに動くのかというのが、今後解析する話だと思っています。片野田先生がおっしゃったもうひとつのことは、もし線量効果関係があるのだったら、25から30、あるいは30以上というところに向かって、線が上がっていく、オッズ比が上がっていくというパターンになるはずが、現在そうなっていないということを強調されたかと思います。

片野田:もうひとつは、信頼区間が非常に広いので、おそらく実際に観察された悪性ないし悪性分布の数というのが、他の線量分布に比べて少し少ないのかなというような印象を持っています。

南谷:これは、住民票があったところでの地域分けということですか?ずっとそこにいたというわけじゃないんですよね?避難の行動パターンとかを考えると、どこに住んでいるかということだけで検討すると、何をみているのかなという気がするんですけれど、いかがでしょうか。

大平:ご指摘のように、この住所は震災当時の住民票の住所をもって解析をしております。ですので、先生のご指摘のように、避難の経路によって異なる可能性は十分ありまして、そのために、先ほど申しましたようい、最大値・最小値両方で当てはめて計算したということでございます。

座長:ちょっと追加しますと、放射性ヨウ素の内部被ばくというのは、かなり初期の、3月12日とか3月15日のプルームで、場所によってはそのあとの3月19〜20日とか、そういう後半のプルームも影響する地域があります。避難地域の方々というのは、最初のプルーム、初期のものにあたった結構県内に避難してしまってるんで、逆に線量の低い人たちが出て来てしまっているというところがあると思います。もちろん、UNSCEARの線量評価の中でも少し見えてるのだと思いますが、基本は最初の時期の、どこにいたかというので、かなり内部被ばくの量というのは規定されていきますので、一年間どこにいたかというのでUNSCEARは評価していますが、ヨウ素の内部被ばくというのでいうと、3月の前半部分がかなり地位的?というふうに理解しています。

髙野:ちょっと私が勘違いしているのかもしれませんけど、浜通り、中通り、避難区域に分けた時は、避難区域からの悪性の患者の率が高かった結果というのは、このデータに反映されているのでしょうか?

大平:今回の解析は、同じデータセットを用いて解析を行っていますが、区分をUNSCEARの推定甲状腺吸収線量を用いて解析した結果こうなっているということでございます。

髙野:そこでさっきの細胞診の受診率とかがかんでくると、またデータが変わってくる可能性というのはないんでしょうか?

大平:もちろんその影響は多少ならずとも出てくる可能性があります。先ほど先生がおっしゃったように、地域それから細胞診の実施率をですね、将来的には踏まえて解析を行う必要があるのではないかなというふうに考えております。

座長:地域間の比較から線量に変えたというのは、同じ避難地域と言ってても、実際に線量はかなり凹凸があるということです。このUNSCEARのたとえば40ページで見ていきますと、10歳児の、同じ避難地域と書いてますが、低い所は12、高い所は58とか、結構でこぼこがあるんですね。そういうものを入れて行った時、どこの地域で発見が多かったかというふうに、解析し直して行るところ?かと思います。

片野田:今の(参考)資料5の40ページの見方について確認なんですけど、このテーブルは避難区域の人たちのテーブルで、一番はじめの富岡であれば、富岡にずっといた場合と郡山に避難した場合と、その2通りをやったというような理解でいいんでしょうか?

大平:先生、すみません。たとえば富岡の人は、ほとんどが郡山に避難してるので、避難経路は郡山ですという意味合いですね。例えば楢葉であれば、田村に行っている人もいれば、会津美里に行っている人もいる。そこで避難経路によって吸収線量を違うように評価しているという、こういうことです。

片野田:わかりました。で、ひとつの市町村が必ず同じひとつに避難しているわけではなくて、市町村によっては複数の場所に避難している場合もあるということですかね。わかりました。

祖父江:今の40ページの表ですけど、Destination dose, Total dose, Projected dose, Averted doseはわかったんですが、これは食事由来の被ばくというのは考慮していないということですか?

座長:食事由来のものが、このDestinationのところに入っているんです。避難地域以外は、この、Destinationのところでの食事の量っていうのが一律に全部付与されているもので、行った場所によっては、県外であればそこがなくなっている。

祖父江:あ、なるほど。埼玉だとDestination doseが非常に低いというのはそういうことなんですか。

座長:はい。

片野田:さきほどの質問に対する答えに関してなんですけど、20から25のところで見かけ上というか突出して高いという結果について、実際、どの市町村で何名かがみたいな数字は出ますでしょうか?

大平:郡山が一番多いと思います。

片野田:やっぱり人口の多い所が多いとは思うんですけども、そのあたりの数は出ますか?

大平:それはデータとしては持っております。今、手元にはございませんので後日。

片野田:出そうと思えば出せる、と。

大平:はい。

祖父江:今の関連で、今までの検診の受診状況の表はすべて4地域となってますので、同数?に関して、この地域ごとの分布がわかるとですね、まあ、今までの検診の受診状況との比較が割としやすいと思います。で、今後やっていくこととしては、性・年齢だけじゃなくて、受診状況に応じた調整を行うということが必要なので、そこのアンバランスがどの程度起こっているのかということを確認する参考にはなると思います。

座長:その辺は宿題として今後検討をお願いしたいと思います。

片野田:私も今後の提案として、資料1との絡みで申し上げます。細胞診の実施割合を2部なり3なりわけて、それでみてはどうかということと、もうひとつ実施年度ですね、参考資料2の2ページ目に本格調査の2014年度の実施地域と2015年度の実施地域の色分けがされていますけれども、これと比較しながら見てたんですが、少なくとも2014年度の実施であれば、ある程度線量のバリエーションが確保できそうなので、2014年度の実施地域に限って同じ表を書いてみるのもひとつの方法かなと思います。

大平:どうしても__すると症例数が少なくなってしまうという、そういうリミテーションが出てくるとは思いますが、解析自体は可能です。

祖父江:今回のデータとはちょっと違うんですけれども、今まで発見率と、発見とアウトカムにしてますけれども、これ本来、罹患をアウトカムとすべきであって、先行検査を受けた全員について、検診以外で発見された甲状腺がんも把握すべきところです。従来から、がん登録との照合が必要であると言ってますけれども、少なくとも2015年までは、県の事業として行っているがん登録に関しては、県の判断で照合できると思いますので、ぜひ進めてほしいと思います。2016年以降は、これ、全国がん登録で、今、体制がちょっと変わっていますので、それはちょっとまだ時間かかるかもしれません。

座長:非常にタイムリーなご意見だったと思いますが、これは県の方あるいは医大の方で、がん登録をどういうふうに使って行くか、何か今の考え方ございましたら、お願いしたいと思います。もし、今即答できないようでしたら、この次にでも準備していただきたいなと思います。

安村誠司 福島医大理事(教育・研究担当)(以下、安村):以前から祖父江先生からご指摘いただいているように、地域がん登録のデータとの照合、また全国がん登録のデータを用いた集計等、今後やっていくということで、県と福島医大でそれは進めて行くということは考えております。よろしくお願いいたします。

座長:できればこの次にでもですね、大体どういうふうなスケジュール感で動いているか報告していただければと思います。

吉田:二次検査の実施率および悪性・疑い発見率という一連の表の中で、発見された人たちが罹患した甲状腺がんの年齢別の層別というのはやらなくていいんですかね。放射線の方は6歳から14歳と15歳以上というふうに分けて書いてますけど、一番交絡因子の中で関係するのはやはり年齢だと思いますので。

座長:それも今、データとしては、解析前のものがあると思うので、また次回にでも説明してもらえるといいかと思います。こういう細胞診実施率と悪性・疑い発見率の、年齢階層別ということかと思います。

志村:前回の評価部会で年齢階層別の細胞診実施率のデータは出させていただいたと記憶しております。参考資料1です。参考資料1の表1が年齢別で、表2がそれを検査間隔3部に分けた層別となっておりますので、ちょっとこれをご覧いただいて、また解析が必要でございましたらお教えいただけるとありがたいです。

1:11:15
座長:それでは次の議題に移りたいと思います。甲状腺検査対象者への説明・同意について、事務局の方から説明お願いいたします。

志村:資料2-1甲状腺検査のお知らせ改訂案」をご覧ください。前回の検討委員会におきまして、評価部会の中で甲状腺検査のお知らせについてメリット・デメリットの周知?内容について素案を作成して検討せよというご指示がございましたので、作成しました。現時点におきましては、ページ②-5がお知らせということになってまして、ここで簡単な説明がされている状況でございます。改訂に関しましては、前回、第11回評価部会で各部会員の先生がたのご意見をいただいておりましたので、それを反映する形で、また検査対象者にとってわかりやすい表現や手法を用いることに留意して作成いたしました。まず今回の改訂案として、お知らせという冊子の表紙に、②-1ページですね、メリット・デメリットの要約というか、主なものを文章化しまして、詳細なものは別紙、別のところにあるものをご覧いただきたいという旨を書かせていただきました。それで別紙に関しましては、②-3ページに、とりあえず現時点で、少しまた、実際、中まで見ていただく時には見やすくしたりとかいう工夫をするつもりではありますが、案として作成させていただきました。最初に検査が始まった経緯と、検査にはメリット・デメリットがあることなど、一般的には甲状腺の超音波による甲状腺検診は行われて来なかったということを記載させていただきました。内容では、メリットが1から4、デメリットが1から4ということでまとめさせていただきまして、メリットの1から3およびデメリットの1から4は、前回の評価部会の先生がたのご意見を整理した形でまとめました。メリットの4番に関しましては、われわれが平素説明している内容を反映させていただきました。ご説明は以上です。

座長:続けてこの改訂案を部会のみなさんに回覧しまして、またコメントをいただいております。そっちが資料の2-2「甲状腺検査のお知らせ改訂案への部会員意見」にまとめてあります。それについて事務局から少し説明をお願いいたします。

県民健康調査課・鈴木:②ー6、資料2-2をご覧ください。お知らせ文改訂案について、事前に各部会員にお送りし、意見をいただきました内容を列挙したものでございます。内容について簡単にご説明いたします。
まず、資料2-1の②-1ページ部分でございますが、このお知らせ文改訂案に対しまして、阿美部会員から、今まで甲状腺の超音波検診が一般的に行われて来なかったという記載がなくなり、曖昧に感じる、というご意見をいただきました。
次に ②のお知らせ文中段18〜23行目の目的記載部分についてでございますが、祖父江部会員・髙野部会員から、検査の目的としての記載内容を変更すべきというご意見をいただきました。
次に、③のお知らせ文後段、24〜31行目のメリット・デメリットの記載について、祖父江部会員・髙野部会員から、別紙の説明内容との整合性や重複する部分があるので不要ではないかというご意見がございました。
次に、お知らせ文最後、④の32〜34行目、検査希望の確認について、祖父江部会員・髙野部会員から、16歳以上の方からの本人同意についてご意見をいただきました。
次に、②-7をご覧ください。資料2-1の②-3ページ、別紙「甲状腺検査について」ですが、⑤の資料全体について、祖父江部会員から、証拠に基づいた記述にすべきであり、既存のガイドラインの引用として、IARC報告書を引用すべきとのご意見をいただきました。髙野部会員からは、メリット・デメリットを、利益と害とすべきというご意見をいただきました。
次に⑥1〜6行目に対し、片野田部会員・祖父江部会員・髙野部会員から、ご覧の記載の内容のとおりのご意見をいただきました。次に②-8ページでございますが、⑦の7行目から、全体につきまして、髙野部会員から、整理の仕方についてご意見をいただきました。
次にメリット部分、⑧から⑩までについて、祖父江部会員・髙野部会員から、エビデンスがないというご意見をいただきました。
次に丸11、メリット(3)に対しまして、片野田部会員から、受診者のメリットではないのではないかというご意見をいただきました。
次に②-9でございますが、丸13のデメリット(1)(2)(4)について、髙野部会員から、若年者の甲状腺がんは早期診断・早期治療が必ずしも利益にはならない、若年者の甲状腺がんが通常のがんとは大きく異なる自然史を持っていることを説明する必要がある、として、改訂案としてご覧のご意見をいただきました。
次に丸14、デメリット(1)についてですが、阿美部会員から、甲状腺がん検診は推奨されていないことを記載した方が良いというご意見、祖父江部会員から、利益が示されていないということを不利益の部分に記載すべきというご意見や、加藤部会員・南谷部会員から、若年の甲状腺がんの転移や予後についてのご意見、南谷部会員から甲状腺乳頭がんの死亡率がもともと低いため、別の指標を用いて比較すべき、とのご意見といただきました。
次に丸15、デメリット(3)についてですが、片野田部会員から、この項目に対する脚注として、本格検査にがんないしがんの疑いの割合を記載すべきというご意見をいただきました。
次に丸16、デメリット(4)についてですが、この報告は甲状腺検査のデメリットではない、というご意見をいただきました。
次に、②-10ページですが、丸17、参考※全体について、阿美部会員から、全体として内容が甲状腺検査を受けるように誘導しているというご意見、南谷部会員から、表やグラフで示した方がいいというご意見をいただきました。
次に丸18、参考※2についてでございますが、片野田部会員から、ベラルーシの検査との比較ではなく、今回の検査における値を記載し、低いという価値判断も不要というご意見をいただきました。髙野部会員から、超音波検査を受けた集団と受けない集団とで比較したデータを提示する必要がある、というご意見をいただきました。
次に丸19、参考※3についてでございますが、片野田部会員から、この文章から5mmを基準とすることがなぜ過剰な診断の抑制となるのかわからないというご意見、髙野部会員から、この記述で不必要な診断が妨げられているとは証明されていないというご意見をいただきました。
次に丸20、参考※5についてでございますが、片野田部会員から、細胞診の実施割合の示し方について、ご意見をいただきました。
次に、②-11ページをお開きください。その他といたしまして、阿美部会員から、一般的な状況においてがん検診は推奨されていないというご意見、加藤部会員から、甲状腺がんの一般論と特殊な状況での検査を分けて考えるべきというご意見、髙野部会員から、インフォームドコンセントの説明の目的の上で、害については可能性の段階であってもすべて提示すべきであり、科学的根拠の乏しい利益の提示は慎むべきというご意見をいただいております。
最後になりますが、参考資料3としまして、前回部会員からいただいたご意見を添付しております。事務局からの説明は以上でございます。

阿美弘文 部会員(以下、阿美)(甲状腺外科医、福島県):お知らせの表面の方はいままで通りでいいのかなと思いまして、メリット・デメリットの方はもっと単純に羅列するっていうかたちの文章にした方がいいのかなというふうには考えてます。

1:23:40(この辺から、かなり議論が白熱してくる。)
座長:この検診の目的の書き方のところで祖父江部会員の方から、「本検査は甲状腺にかかわる健康影響を最小限にすることと放射線と甲状腺がんとの関連を正しく評価することを目的としています。」というご意見でしたら、これは県の方から、もともとここに書いてありますように、甲状腺検査、不安に応えるために始まったということで行われていますので、ちょっとコメントいただけますでしょうか。

鈴木:はい、参考資料4(甲状腺検査に関する目的について(第9回甲状腺検査評価部会 資料1‐1)をご覧いただけますか。第8回部会におきまして、甲状腺検査の目的に対しまして、祖父江部会員からご意見があり、第9回部会でご説明させていただいた時の資料でございます。今回、祖父江部会員および髙野部会員から、検査の目的をこれにすべきというご意見であります。甲状腺検査は、これまで、資料等の記載のとおり、「県民の不安に応えるために始まり、これまで子どもたちの健康を長期に見守ること」を目的に実施してまいりました。第9回部会の時の事務局としてのご説明においては、検討委員会と評価部会の設置要項における目的に包含されるもので評価していただきたい__の視点?であると考え、ご説明したところでございます。検査の目的自体を変更する場合、検査のあり方についての議論になると考えております。今回の利益や不利益を丁寧に説明するとの趣旨でのお知らせ文の改訂の議論とは別にご議論の上、検討委員会にもはかって行く必要があるものと考えております。

祖父江:受診者の方に目的を正しく理解していただくというのは、初期の段階ではちょっと難しかったかもしれませんけど、かなり時間が経って冷静になってきた時に、検査の目的というのは何なのかということを考えていただくのには、やっぱり本来の目的というものはこういうものであるというのをきちんと記述した方が、何のための検査なのかを考えて行く情報として有用なものだと、私は思います。

南谷:部会の構成メンバーが変わって、初期からのメンバーは加藤先生だけだと思うんですけども、最初の時の資料をちょっと見てたんですけど、この会議の第1回のところの資料2の、②-6とかいうパワーポイントのスライドだと思うんですけど、当初、私の記憶では、被ばく線量は多くはないから甲状腺の検診はあまりやる必要がないというスタンスだったと思うんですけれど、②-6の上のところのスライド11に3つポチがあって、線量が少ないけれども、当然ながら不安があるから検査を始めたというのがこの検査の趣旨だと思うんで、それを変えるというのであれば、また、県民のかたがたの意識がどうなっているのかというところを確認しないとどうなのかなという気もしますが。

第1回甲状腺検査評価部会(2013年11月27日) 
資料2「甲状腺に関する基礎知識と甲状腺検査の概要」スライド11
座長:この甲状腺部会の中で、この検査のそもそもの目的のところをもう一度書き直すというのは、先ほど事務局の方も、設置要項自身から変えて行くというような作業が必要ではないかという意見があったかと思いますので、とりあえず今のままの設置要項の中に書かれている文面で行くというのが、今、ここに出されている案になっているかと思います。

祖父江:われわれ作業するようになってから議論をした甲状腺検査の目的というのは、被害を最小限にするということと、線量の関係を正しく評価する、とこの2点であるというふうに私は確認したと思っております。で、そこのところはまず一応押さえた上で、受診者の方への説明文の中に加えるかという議論をしていただくのだったら、そこは議論が必要だと思いますけれど、一応、まあ、目的としては、ここで同意されたものだと私は思ってました。

座長:ひとつはですね、当初から過剰診断というのが非常に大きな問題になってて、今現在、健診体制というのは、色んな議論をしてきた中で、かなり精度が上がってきた、そういう意味で過剰診断が起きにくい体制が、今、作られてきているんではないかと私は理解してるんですが、そういう現在における説明としては、当然、今、祖父江先生がおっしゃった、健康影響を最小にするというような健診体制をこちらがある程度評価して、過剰診断がなるべく起きないような体制ができているかということをみていくという意味では、やってるんじゃないかというふうにちょっと思っていますけど。

祖父江:いや、健康被害を最小限にするというのは、甲状腺による被害、甲状腺がんによる、ですね、端的に言うと。甲状腺がんによる死亡減少、死亡を減らす、まあ死亡は非常に少ないですから、それにまつわるような健康被害を少なくするということを目的にする、と。検診を行うことによって、ですよ?利益の部分を想定しての行為である、と。ただ、甲状腺がん検診の超音波検査の場合は、その想定以外に不利益の大きさが非常に大きいので、その目的を達成するどころか、むしろマイナスの面があるということが、その議論の中で議論すべきことではありますけども、甲状腺検査そのものの目的としては、なんらかのベネフィットを与えることを目的とする、と。それと線量との評価をきちんとする、と。ここが目的であるということが、共通理解だと私は思っています。

1:32:05
吉田:確かに祖父江委員の言うようなことは、この会の第8回ですか。一番最初の会の時に議論されたことだと思うんですけど、今言われているこの、なぜこの検査が始まったかということとは、直接は関係ないと思うんですね。これは、だって、こういう格好で始まりましたよということを、それで今の状況を、この後、書いてるんですから。

祖父江:始まったきっかけを、私、言ってるわけじゃなくて、この検査の目的、です。何をもって目的を達成したかというか。

座長:そちらの方になると、結局、メリット・デメリットの議論のところに入ってくるんじゃないでしょうか。

祖父江:___というのが、何をきっかけにして始まりましたという意味であれば、私の言ってること全部取り下げていいかもしれません。何かを目的として、という意味で言ってるのであれば、私の言ってることをちょっと議論していただきたいと思います。

髙野:インフォームドコンセントのフォーマットの原則として、やっぱり、目的は示さないと、そもそもインフォームドコンセントと言えないと思いますので、やはり、形式的でもこれが目的であるということは提示する必要があるし、その中身については議論の結果でいいと思いますけども、この書き方だけでは不十分だと思います。

座長:これに関して、医大あるいは県の方から何かあれば。もともと、この検診は不安に応えるということだったので、ほとんどの人が心配するような状況ではないということを受診者に伝えるというのは、まず第一の目的になってるんだと思います。第二に、そこで実際に甲状腺がんが見つかった場合、それが過剰診断にならないように、そしてまた最適の治療を受けられるようにするというのが、それに付随してきているということになるんだと思うんですけども。そこは、この後のメリット・デメリットのところに書かれていると思うんで。やっぱり、一番最初にあるのは、この検診の目的というのは、不安に応えるというのが目的になるということ、私はおかしくないと思うんですけど、いかがでしょうかね。で、当然そういう検診をやって行った時にデメリットもあるんで、それは十分に理解してほしいということで、このインフォームドコンセントの書き方になってるかと思ってます。ですから、もし、始まりましたという書き方じゃないとすると、不安に応えることを目的にしておりますという書き方、何かその辺の、まあ、こっちの設置要項との関連でいうと、そういうふうな書きっぷり?に修正なるのかと思いますけども。いかがでしょうか。少なくとも、甲状腺がん、もともと死亡率が高い疾患ではないですから、死亡率を下げるためにやっているというような目的ではないです。でも、万が一見つかった場合は、なるべくQOLを害さないような治療機会を提供することになる。大部分の人にとっては、やっぱり、みなさん心配しているようなものではないと伝えられるというのが一番の目的になると思うんですけども。

祖父江:私はそう思いませんけども、ここのところよりも、むしろメリット・デメリットの__の方が重要なので、そちらの方の議論を進めた方がいいかと思います。

座長:それでは、その次のメリット・デメリットの方に移りたいと思います。(後略)

祖父江:重複しているので、整合性とれるようにきちんとした内容は別紙の方に、というのでいいと思うんですけども、ここに書いてある、IARCレポートの一番大きな事実として記述されているのが、専門家が不利益が利益を上回ると判断しているということですね。で、ここは、多くの人がそうは思っていないところなので、非常に重要なというか、必ず伝えるべきことだと思います。ここのところが議論していただきたいんですけれども、そのことをエッセンスとしてここで書くべきだと。

座長:現実に今、小児甲状腺がんの早期診断というのがどういうメリットとしてみて行けばいいかというのが、あまり明確になってないので、IARCの報告書自身もそこがそんなに解析できるデータを持ってなかったので、何も書いてないのだと思います。また、日本のように非常に手術侵襲を限定してやっていくというような手術形態を取っているところも、そんなに世界的にないわけですね。吉田先生、ちょっとその辺の日本の今の甲状腺手術の・・

吉田:はい、あの、小児甲状腺がんというのは非常に甲状腺がんと言われるものの中には、みな、手術しないと甲状腺がんであるという正確な診断がつきませんので、手術されたものの中では、小児甲状腺がんは1〜2%くらいしか占めないですね。それで、手術しないでそれをずっとみていくと言うことはできないんですね。みているグループというのはありますし、非常に小さいものは手術しないで経過観察でみようということになって、それを実際やってるんですけど、それはやっと始まって10年も経たないような状況です。それで、その、手術しなかったらどうなるかというようなことは、正確なエビデンスとしてはないわけですね。それと、手術したもので死亡率が低いから、まったく意味がないというような論調でWHOのIARCのレポートが書かれてますけど、それを金科玉条のごとくですね、__めるというのは、僕はこのIARCのレポートというのは、エビデンスレベルとして低いものだろうと思うんですね。低いものをいくつ集めても低いのは変わりないんです。本当に質が高いエビデンスっていうのは、やっぱり、今、世界で最大のってのはやっぱり、この福島で出てきた甲状腺がんじゃないかなと思いますので、これが超音波検査で見つかった甲状腺がんですね。これを手術しないでずっとみてたという群があればそれと比較するのが一番なんですけど、それにしてもまだ10年、20年、もっと30年、40年経たないと分からないんですね。本当のエビデンスというのは出てこないと思うんですね。ですから、そういった意味で、あまりそのことを、WHOのこの提案というのは、尊重すべきであろうと思いますので、どこかには書かなくちゃいけないんだろうと思うんですけど、それを前面に、だからと言って、この内容を書き換えるようなことはしない方がいい、と私は思っておりますけど。

座長:ずっとこの一年間そうなんですけど、外科系の先生と内科系あるいは疫学系の先生の中で、どうしても見解が違っているところなんです。確かに小児甲状腺がんというのは、死亡というような意味でいうと、老人の甲状腺がんと比べると、死亡率は低いと思いますが、再発とか早期の転移とか、そういうアグレッシブネスという意味でいうと、むしろ高い。そういう意味でQOLというのは、小児の甲状腺がんをそのまま放っておいて行った場合、QOLは間違いなく悪くなるという、そこの途中段階のエビデンスはいっぱいあると思うんです。ただ、どのステージで手術したらそれがどのくらい変わるかというような細かいエビデンスがないというのは、髙野先生おっしゃってる通りなんです。

祖父江:この、別紙の方の中身にもう入ってると思いますので、この意見で行くと、甲状腺の②-7ですね。資料全体のところの意見として、私が申し上げさせていただいているわけですけども、専門家の意見を列挙する形で情報提供するというのは非常に混乱すると思います。で、もし提示するのであれば、きちんと証拠に基づいた記述をするために、システマティックレビューをこのグループでやるべきだと思います。ただ、それをしている時間と労力というのが限られていますので、既存のグループが行ったシステマティックレビューの引用をするということが考えられるので、その意味で一番客観的でレベルの高いまとめが、IARCのレポートだと思います。国際的な科学者が集まってやったものですから、このエビデンスレベルが低いというのであればですね、やっぱり、このグループでやって、きちんとエビデンスレポートを代わりに出さないと、そういう言い方をするのはちょっと良くないということだと思います。

吉田:エビデンスレベルが低いと言ったのはですね、もともと、エビデンスの元となるエビデンスがないから、それを無理にしてるから低いという話をしたので、これ、やり方を変えてもですね、そういうエビデンスの元のデータがないので、変わらないんじゃないかなというふうに思います。これは、どなたがやってもそうじゃないかと思います。だから、分からないということですね。

座長:まあ、あの、部会の中でも小児甲状腺がんに対してステージが長いほど予後が良くなるというようなデータは、ある程度出てきている。ただ、症例数が少ないということと、それからrandomized trialというような形で比較検討をしたような論文ってのは、一個もありませんから、結局その辺がエビデンスレベルが低いというようなところに繋がってくるんだろうと思います。ただ、どのレベルのエビデンスをもって、QOLが改善するというふうに考えるかで、ずいぶん変わってくるんだろうと思います。IARCの論文は、決してQOLをエンドポイントにした解析というのは、やってないですよね。で、今まで、私自身も見ましたけど、まだそれに関するエビデンスが、そういう報告が見当たらないから判断できない、というような判断をしている報告書、結構多いと思います。

南谷:色んな症例__データが小児がんで出てますけども、そういうの大体みると、肺転移が2〜3割あると。大人の肺転移は10%くらいなので、大人に比べると肺転移がとても多いということですとか、または、福島県のデータでもそうですけど、頸部リンパ節転移だとか、甲状腺外浸潤もかなり多い、7割以上でしたっけ?、そういうデータがちゃんと出てると思いますし、あと、ちょっと出しましたけど、この前の?データでもアクティブサーベイランスは、年齢が低い方が、低いと言っても20代とかですけど、20代の甲状腺がんはアクティブサーベイランスをしていると、どんどん大きくなる率が、30代、40代、50代に比べると高い、まあ活動性が高いという、そういう報告は出てますね。だが、それぞれ施設ごとのデータなので、__ができるかというと、それはなかなか症例数が少なすぎるんで。福島県でも今の点で125例くらいでしょうから、なかなか難しいような気もしますけど。

祖父江:あの、先生がた、ということはですよ、そのIARCのレポートで行っているharm and meritのレビューですね、これがレベルが低いと。で、個々のレポートを積み上げた方が、違った答えが出ると。あの、IARCは基本的に・・

南谷:私が言ったのは、放射線とは関係ない小児甲状腺がんの話であって、今回、ここでやってるのは、まあIARCの方も、放射線で誘発された甲状腺がんのスクリーニングはデメリットが多い、そういうことであって、ここで見つかっている小児甲状腺がんが、放射線が関係ないとしたらばそれはそれでまた、別に大事な議論になると思ってますけど。わかりますかね、言ってることが。

祖父江:よくわかりません。

髙野:ちょっと、ここの誤解は解いておきたいんですけども、小児甲状腺がんが非常にアグレッシブで経過が悪いというのは、大きな誤解だと思うんです。まず、prognosisは大人の方に比較して圧倒的にいいですし、それからちょっと福島のケースで考えないといけないのは、超音波で見つかったケースであるということ。それから、今ので、南谷先生が論文のレビューとかでおっしゃってるのは、症状があってadvancedなレベルで見つかっていること、ここに大きな違いがあって、それでadvancedなレベルで見つかっても非常に生涯prognosisはめちゃくちゃいいですから。それで、隈病院のデータも出されていましたけども、隈病院のデータとは別のデータもありまして、30歳以降になると成長が止まってくる。こういうデータも出てます。ですから基本的には、10代、20代で非常にアグレッシブに成長して転移とかもしますけども、その後は段々おとなしくなるという説があります。ですから、ちょっと大人の甲状腺がんと一緒に考えると、大きな判断ミスを起こすんじゃないかなと思っています。

南谷:ちょっと良く分からなかったんですけど。Prognosisって、何を言ってるんですか?

髙野:一般的な死亡率のことです。

南谷:それは先ほどから出てるんですけども、死亡率はもともと低いんで、子どもにとって生きるか死ぬかというよりやっぱりQOLですから、生きるか死ぬかそれでいいと言われても、小児科医としては、それはちょっと認められない、許せないですね。やっぱり、どういう学校生活を送れるかというそういう意味からですし、あともうひとつ言わせていただくと、福島県で見つかっているケースでも、もう肺転移が3人いますし、早期に見つかってみてるのでもそうだと。だから症状が出て、もうちょっと放っておいたら、肺転移が増える可能性はある、とは思いますけど。

髙野:ですから、そこで問題になるのが、超音波で早期に見つかっている。なのに、8割以上がすでに、甲状腺外に進展している、と。これをどう考えるかということで、じゃあ超音波かけなかったらどうなっているのかということですと、おそらく、先生がおっしゃっている、肺転移などを起こしている例を除いて、今でも無症状でいるんじゃないかということは十分推測できます。ですから、それをもって、非常にアグレッシブな症例をつかまえているという考えは、やっぱり違うんじゃないでしょうか。

座長:多分それは、今の学会の超音波の所見からbiopsyを行うかどうか、今実際にどの症例がよりアグレッシブで手術に向けた方が、検査をした方がいいかということを、実際に県立医大の方で実践しているわけですが、そのcriteria自身、どう思われてますか?それ自身がもう、間違いだというふうな考え方でしょうか?

髙野:今回のケースは、とにかく世界で初めてのケースなので、あまり先入観を持たずに考えた方がよくて、やはり、一番問題になっているのは、放射線の影響がないとされながら、罹患率が跳ね上がっているということで、じゃあ、跳ね上がった分の罹患率を出している患者というのは何者なのかというところに視点を集めなきゃいけなくて、その患者さんが、放っておいたらQOLがガクッと悪くなるような患者さんなのかというところが考えるべきだと思います。

南谷:放射線の影響がないっておっしゃられた時点でこの部会は存在すべきじゃないと思いますんで、やめた方がいいと思いますけど(拍手)。追加しますと、先ほどの議論でも、まあ、県民の不安を解消するためにやってると。甲状腺がんの不安というのでなくて、放射線による影響の不安で、影響を受けるのは甲状腺なのでそういう甲状腺の検査をしているという、そういう認識で私はいます。

座長:まあ、あの、この議論、委員の立場がきれいに分かれてしまっていて、なかなか妥協点がないというか、収束点がないというのが欠点の議論になってしまっているんです。で、いくつかの点に関して、メリット・デメリットの中で、具体的に挙げてきた中で、これはやっぱり違うんじゃないかというようなことを、もう少し議論していただけないでしょうか?最終的には、これ、県立医大の方が、あと親委員会の方が、こういう文章でやって行きたいと言った時に、どう判断して行ったらいいか。こちらがそれに対する論点を十分ディスカッションしているかということが重要だと思ってます。で、メリットに関していくつか、たとえば、⑨メリット(1)のところに、「甲状腺に異常がないことが分かれば、放射線の健康影響を心配している方にとって、安心とそれによる生活の質的向上に繋がります」ということに関して、祖父江先生が「証拠に基づいた内容ではない」。これは、どういう証拠を期待して書かれているのか、ちょっと説明いただけますでしょうか?

祖父江:安心、あるいは生活の質の向上。これをどうやって測るかっていうことですね。

座長:はい、安心に関しては、たとえば、栃木の方で同じような検診をやった後のアンケート調査をやった先生がおられますが、結果として大丈夫だったと言われた時に安心を覚える方が大部分で、そのレベルのエビデンスでよろしいんであれば、引用できると思います。

祖父江:ですから、検診受けた人の中で、受けない人と比べて、相対として、安心というか、なんか仕様がですね、改善したというなら、それはそうかもしれません。ですけど、中にですね、異常がないことが分かればじゃなくて、異常がある人がいますね。で、間違って異常があると言われた人もいますね。そういう人たちの不安のところは、やはりきちんと考えないといけないということです。ですから、受診者全体での総量としての安心とかですね、生活の質の向上が上がるんだったらやるということなんじゃないですか。

座長:それは、県立医大の方に少し振りたいんですが、今までそういう受診者の意向調査のようなものは実際にやられてますでしょうか?

志村:すでにpublishしてる論文の中で、放射線へのリスクへの心配が甲状腺検査を受けた方で下がったという論文は出しております。あとは、こころのケアの方で、心的な状況に係る報告を検討委員会でたびたび行っていますけども、それはまあ、甲状腺検査が原因かどうかというのは難しいところですが、軽減しているという、そういうこともございます。

座長:ある程度、医大の中で受診者に対する調査の結果は、__したものはあるというご意見でした。そういうエビデンスが出るということではないと__

祖父江:個々の断片的な論文を根拠として記述をしていくこともいいですけども、それで一体、何を受診者の方に伝えるのか、です。総量として、メリットとデメリットと、どちらが一体大きいのかという判断をですね、誰がするのかですけども、それを個々の事実を羅列して、しかも専門家の意見も含めてバラバラな意見を羅列をして、それで判断を受診者に求めます、と書いただけでいいのか、ということです。

吉田:エビデンス、エビデンスということなんですけど、これは説明文であって、これを実際に読んだ人がですね、どの程度わかるかということでですね、エビデンスを積み重ねて、こうです、こうです、という説明では論文としてはいいかもしれないんですけど、一般の説明文としてはこれでいいんじゃないかなと私は思いましたけども。

片野田:もともと、この部会で、メリット・デメリット両方あるから説明した方がいいという意見が出てこれを作ってるわけで、この部会としては、どちらが多いかという判断まではしないものと私は理解していて、それで、メリットとして安心を与えられると記述して、デメリットとして、もしかしたら将来治療の必要のないものが見つかる可能性があると両面を提示するのであれば、今のままで私はいいと思います。

座長:はい、ありがとうございます。ちょっと落としどころを示していただいたようなんですが・・。いかがですか、阿美委員?

阿美:わたくしの意見としてはですね、この福島の検診を期に、対象外への検診の広がりがある。で、全然関係ない県で検診が始まったり、大人に対して超音波検診が行われていたりというようなことが実際に起こってまして、そういったことは推奨されてないというのは一定の事実だとは思いますので、そういう記載をちゃんとした方がいいというふうに。(最後聞き取れず)

座長:確かに、線量、被ばくの可能性はほぼないという人たちに対して甲状腺検査というのを積極的に推奨する所はどこもないわけです。一番、福島で悩ましいのは、誰もあなたたちは被ばく線量がゼロですよという保証をしてくれる人がないという現状だと思うんですね。今もUNSCEARの、私たち、線量評価、決して正しくないだろうと、過大評価になってるだろうというふうに思ってますけど、やっぱりこういう形で、線量評価に対して権威のある国連の科学委員会が、福島の線量をこういう形で、ある程度、ゼロではないということを言ってるということは、重いんだろうと思うんです。だから、髙野委員がおっしゃるように、被ばくがないからやる必要がないっていうふうな前提でまず議論を始めてしまうと、ちょっと難しい話になるのかなと思うんです。

髙野:言ってるのは、被ばくがないからやる必要がないと言ってるわけではなくて、今までの結論で、被ばくの影響が見えるか見えないかと言った時に、見えないという結論を出しているにも関わらず罹患率が跳ね上がっていると。これはいいこととみなすのか、悪いこととみなすのかということを、ぜひ考えてくださいと言ってることで、被ばくの影響がないと言ってませんので、これはちょっと誤解を招かぬようお願いします。

座長:はい、ここはまた別の議論になるかと思います。それはこの間ずっと、なんで検診の受診率とか細胞診実施率とか、そういうものが微妙に絡めてるという議論をしてきてますんで、今、その議論をここの中に落とし込む必要はないんでないかと思ってます。あくまでここでは、過剰診断を、間違えば起こしてしまうという検査をやってますよということを、伝わればそれでいいんだろうと思ってますんで。どうですかね。メリット・デメリットを提示した上で、それがそれぞれどうなってるかという価値判断まで含まないで説明文を作るという・・

祖父江:今、受けておられる人たちの理解度を調査した結果というのが、まあ、こないだの国際シンポジウムで緑川先生が言っておられましたけども、不利益が存在していることを知っている人がほぼいない。もう、1割以下という状況で、その理解度のギャップをですね、とにかく埋めるのが一番重要なことだと僕は思ってます。

座長:それでここで、デメリットということが正面切って入って来ちゃうんだろうと思ってるんですが。

祖父江:で、まあ、不利益という言葉自体が、馴染みのない言葉ですけども、そのことを羅列することで理解を得るということだと、ですから、IARCの、まあ、不利益が利益を上回るという判断というか、これはまあ、システマティックレビューにもとづく専門家の判断ですけど、このことを、きちんと伝えることが僕は重要だと思うんですけども。

座長:あれはあくまで、一般集団ですよね。あの、IARCのは2つに分かれていて、at riskの人たちっていう、リスクがあると思われるグループに関しては、別の話をしているわけです。ただ、あそこで、線量を、IARCのグループは100〜500 mGyというような線量を出してますけども、あのこと自身、あの論文のあとに、今、出て来ている、小児甲状腺がんの評価ですと、結構、50 mSvくらいから相対リスクが1.5くらいになってるような論文も、これは一番、小児甲状腺がんの疫学解析の中では一番新しくて、しかもかなり強いデータになってるんですけど、そういうものを必ずしも反映してない。ですから、IARCがレビューした時点と、それ以降の話というのは違ってくる可能性があって、必ずしも、at riskというのが100 mGy以上だというふうに、今、断言できないんじゃないかと思ってるんです。そうすると、at riskになるかもしれない福島の集団に対して、どっちを使うのかですよね。IARCの、at riskの人たちに対する、モニタリングと言ってるガイドラインと、それから一般集団のリスクがない人たちに関しては、スクリーニングはリコメンドしないという、どっちを使って(最後、聞き取れず)

(筆者注:鈴木座長が言及されているのは Lubinらによる論文だが、2017年10月のIARC国際専門家グループの最初のミーティング以前に出ており、IARC国際専門家グループの報告書でレビューされてはいる。ただ、100〜200 mGy未満に関しての言及のみで、50mGyでの相対リスク(Figure 1)については言及していない。)


祖父江:今、福島でやっている甲状腺超音波検査は、線量にもとづいてやっているわけではありませんので、前者のリコメンデーションに相当すると私は思ってますけど。

座長:いや、at riskの人たちに対する、今、健診という形で、これ、始まったわけですよね、あくまで。

祖父江:__にもとづいては、やっていないですよね。

座長:線量が出てくるというのは、どの集団でも、疫学集団でも、ずっと後です。線量が確定した集団だから始めましょうというふうにはならない。

祖父江:いや、その方がいいと思います。甲状腺検査の場合は、確定した後の方が。早急にやってるのは、何のメリットもないと僕は思ってます。

片野田:私もIARCの報告書をかなり読んだんですけど、その、やるかやらないかは、その地域の社会的状況に応じて決めるべきだというような、最後はそういう__になっていたと理解してますんで。福島においては、その住民の感情なり社会的な状況を考慮して、今、この検査が行われているふうに理解しているので、あれをもとに、この福島でやるべきかどうかというのを、ここで蒸し返すのはちょっと違うんじゃないかなと感じてます。

座長:ちょっと時間もだいぶんオーバーになってきてますんで、今、いくつかご意見が出てましたんで、少し、修文しないといけない所も出て来たかと思います。で、一度、今の議論の段階を、やはり親委員会の方にあげてみて、こういう議論でしたという形で出したいなと思うんですけど。

南谷:前も言ったんですけど、小児科病院で臨床研究やる時は、小学生でも同意書を求めますんで、これ、15歳以下は保護者とか色々案が出てますけど、小学生もサインを求めるべきです。でないと、通常の臨床研究は求めてるので。あと、説明文書ですよね。この説明文書を、小学生が読んで分かるでしょうか。小学生が分かるような文章も作っていただきたいと思います。

座長:はい、ありがとうございます。医大の方で、今の案を。小学生でも同意のサインをいただくべきだという話でした。また、小学生が理解できる別バージョンの説明文書も必要ではないかというご意見でしたが、いかがでしょうか。

志村:はい、別にサインをいただく紙がございます。16歳、高校生以上は必ず本人のということで、それ以下の子どももサインはできるような形で欄は作ってあります。ちょっとその辺の整合性はまた本学の委員会と検討した上で最終的には決めさせていただきますが、基本的にサインはできるようにはなっております。いわゆる、お子さんでも分かるような説明文書っていうのも重要であることも、認識はしております。まあ、骨子が決まらないと、その説明も何も決まらないので、まずこの、いわゆる方向性の決まってからの作業になるかと思ってます。

座長:ある程度議論が平行性のままで、なかなか着地点がないという議論が続いています。で、やっぱり、あの、いつまでも昔の同意書・説明文のまま続いていくというのも、デメリットについてきっちり対象者に伝えてないということもありますんで、あまり議論だけ長く続けるというのはいいことだとは思ってません。だから、今回出た内容で、ある程度、少し、より明確に書かなきゃいかんという所があれば、たとえば、メリットとデメリットに関して、線量がないような人たちに関しては、あまり推奨されるようなものではありませんというようなIARCの文章を、どっかに入れるかとか、そういうふうないくつかのオプションがあるんだろうと思ってますんで、ちょっとその辺を医大の方で叩き台を出してもらって、一度、委員のみなさんに回覧して行きたいと思うんです。で、根本的な所を完全に書き換えるということがなかなか難しいと思いますので、ある程度、あの、総花的になるかもしれませんけど、メリット・デメリットのようなものを書いたものでまとめて行きたいと思ってますが、よろしいでしょうか?

安村:この改訂案については、甲状腺のチームの__がですね、学内でも一生懸命、理解してもらえるような文章を作ってきた経過がございます。で、今の議論をお聞きして、部会長さんが先ほどおっしゃった、落としどころっていうのがどこかというのを、私も聞きながら考えていましたけども、これを、小学生でも理解できるようにということを含めてですけど、これだけ議論が一致点を見ない中で叩き台をと言われても、正直、私たちがどういう方向でまとめていいかっていうのは、非常に苦しいです。部会の方でしっかり方向性を決めていただいて、どういうポイントをメリットと書くのか、またはデメリットをどうするのか、あと、委員の中には、メリット・デメリットという表現自体変えるべきだという意見もございますので、ちょっと申し訳ありませんけど、もうちょっと部会で詰めていただければ、私たち、最善の努力を最大限やりたいと思ってます。よろしくお願いいたします。

座長:はい。あの、今の部会の中で完全に意見が分かれていますんで、ある意味、妥協点がないんですね。ですから、妥協点としては、先ほど片野田委員がおっしゃったように、価値判断を含まないでメリット・デメリットを羅列したかたちで、それを完成品にするという考え方があると思って、そこの中でまだ足りないというところ、たとえばIARCの価値判断というようなものを、どういう形で一文付け加えるかというようなところは、少し、妥協点として残ってるのかと思ってますんで、少しその辺に関するたたき台、逆に言ったら、この次の部会までに、少し委員の間で、私の方から何点か妥協点になりそうな文面を考えますんで、それをもとに、もう一度、部会員の方たちに、判断していただくというような作業をしたいと思います。医大の方からそれを出すのはしんどいということですので、ちょっと部会長として、それを、責任を持って出してみたいと。ただ、先ほどから言いましたように、これは、まったく考え方が違って、価値観が違ってしまってるんで、なかなか、両方が完全にハーモナイズされるようなものってのは、最終的に出ないんではないかと思ってます。ある意味、それはしょうがないのかなという気もするんですけども、なるべく、やはり、受診者の人たちに何がメリットで何がデメリットになるのかを伝えるというのが一番の目的だと思いますんで、そこは考えて行きたいと思います。ちょっとまとまりのない、今回、成案を仕上げることができないということで、大変申し訳ございませんでしたが、少なくとも、IARCの価値判断のようなものを、何らかの形で少し書き加えられるかということは、少し宿題として残させていただきます。






















メモ:2018年12月27日発表の甲状腺検査結果の数字の整理など



2018年12
月27日に、第33回「県民健康調査」検討委員会が開催され、2018年9月30日時点での3巡目(新たに3例が悪性ないし悪性疑いと診断、2例が甲状腺がんと確定)、4巡目、そして25歳時の節目検査(2016年度実施)の結果が公表された。

各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数・年齢・性分布、および各年度ごとの手術症例の人数などは、「参考資料1 甲状腺検査の状況」にまとめられている。

3巡目の結果
  2016年5月1日から開始されている3巡目では、新たに20人が受診し、41人で結果が判定されたが、一次検査受診率も結果判定率も前回と同じ64.6%、100.0%に留まった。1巡目と2巡目での受診率はそれぞれ81.7%と71.0%だったので、それよりも低いことには変わりない。検査年度4月1日時点での年齢が18歳以上の受診率は、前回と同じ16.4%である。
  二次検査対象者は前回より3人増えて1485人となり、受診者数は111人(2016年度対象市町村で15人、2017年度対象市町村で96人)増えて1024人になり、受診率は7.4%増えて69.0%となった。1巡目と2巡目の二次検査受診率(92.9%と84.1%)よりまだ低い。二次検査の結果確定数は、2016年度対象市町村で13人増えて560人(94.3%)、2017年度対象市町村で94人増えて373人(86.7%)と、全体的には933 人となり、全体的な結果確定率は、わずか0.6%増えて91.1%になった。
  2016年度対象市町村から3人、2017年度対象市町村から6人の計9人が新たに細胞診を受診し、2016年度対象市町村から1人(女性1人)、2017年度対象市町村から2人(女性2人)の計3人が、新たに悪性ないし悪性疑いと診断された。1人が避難区域等13市町村、2人が浜通りの住民である。この3人の事故当時年齢は、6歳、6歳、11歳だった。2巡目での判定結果は、1人がB判定、2人がA2判定だったが、A2判定の2人の内訳(結節か、のう胞)は、報告されなかった。(この内訳に関して記者会見で問われた際、志村氏は、個人情報の観点から、A2判定の内訳を報告して良いものなのか確認の必要があると述べた。今回、志村氏が本年度に甲状腺検査部門長に就任してから初めて、前回検査結果がA2だった例が報告されたことになるため、単にA2内訳が報告すべき情報だと認識していなかっただけかもしれないが、公開データの継続性が保たれることが望まれる。)手術症例は、2017年度対象市町村で2例増えて13例(甲状腺乳頭がん 13例)となった。
  3巡目以降の二次検査実施状況は、市町村別ではなく地域別でしか公表されなくなっている。「別表5 地域別二次検査実施状況」によると、二次検査受診率は、避難区域等13市町村と中通りでは73〜74%、浜通りと会津地方では、前回よりそれぞれ18.2%と13.1%増えて59.5%と62.9%になったが、特に浜通りで夏休み中の受診が多かったと思われる。またこの別表によると、細胞診実施者9人中、2人が避難区域等13市町村、1人が中通り、2人が浜通りの住民である。
  

4巡目の結果
  2018年4月1日から開始されている4巡目(25歳節目検査対象者は除外)では、今回初めて、二次検査の進捗状況が公表された。一次検査対象者数293865人中、受診したのは41537人(2018年度対象市町村で39946人、2019年度対象市町村で1591人)と、前回より25175人増え、受診率は前回の2倍以上の14.1%となった。結果判定数は25029人と大幅に増えて25982人(2018年度対象市町村で25146人、2019年度対象市町村で836人)となり、受診者の62.6%で結果が判定されている。B判定者数は、前回の8人から大幅に増えて151人(2018年度実施市町村で142人、2019年度実施市町村で9人)となった。
  3巡目結果との比較では、3巡目を未受診だった2824人の受診者中15人が4巡目でB判定となっており、現時点で、4巡目でのB判定151人の1割が3巡目を未受診だったことが分かる。
  二次検査対象者151人中、39人(2018年度対象市町村で37人、2019年度対象市町村で2人)が二次検査を受診(受診率25.8%)し、結果が確定(結果確定率17.9%)している7人(全員が2018年度対象市町村)のうち6人がA1・A2相当以外となっているが、細胞診受診者はまだいない。

25歳時の節目検査の結果
  前回の第32回検討委員会(2018年9月5日)で、25歳時の節目検査の結果については半年ごとに公表されると報告されていた通り、今回、1992年度生まれの人たちの25歳時節目検査の2018年9月30日時点での実施状況が公表された。これは実質、第30回検討委員会(2018年6月18日)の資料3-3(3巡目結果)の 最後の2ページに掲載された、2018年3月31日時点での結果の追加データである。なお、25歳時の節目検査は、次回の節目検査の前年まで受診可能とされているので、実質、「25〜29歳時」節目検査ということになる。
  1992年度生まれの対象者22653人中2005人が一次検査を受診している。前回より103人増えているが、受診率は8.9%と、非常に低い。約3分の1にあたる659人が県外で受診している。1989人(99.2%)で結果が判定しており、前回より8人多い88人がB判定となった。B判定率は4.4%で、1〜4巡目の0.6〜0.8%よりもはるかに高い。
  前回検査結果との比較の表(表3)によると、一次検査受診者1989人の約3分の1が前回検査を未受診だったが、これは、2巡目(8.8%)、3巡目(6.9%)、4巡目(10.9%)のいずれよりもかなり高い。また、B判定88人の35%である31人が前回検査を未受診だったことと、B判定率の高さから推測すると、何らかの症状が受診動機に繋がっている可能性は否めない。ちなみに、B判定88人中、また別の31人は前回もB判定だった。
  二次検査対象者88人中67人(前回より26人増)が受診しており、受診率は76.1%だった。58人で結果が確定しており、A2相当の3人を除いた55人がA1・A2相当以外で、うち3人が細胞診を受診し、2人が悪性ないし悪性疑いと診断された。この2人に関しては、性別(男性1人、女性1人)以外の情報は公表されなかった。

(注:前回検査との比較表における「前回検査」とは、前回検査での一次検査の結果であり、二次検査後の再判定が反映された結果ではない。)


***

現時点での結果
前回発表された集計外症例数と、今回発表された25歳時節目検査の結果も含む、現時点での結果をまとめた。

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以下は、1〜4巡目と25歳時の節目検査の結果であるが、同情報は、「参考資料1 甲状腺検査の状況」の5ページ目にもまとめられている。

先行検査(1巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例      102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例      14人

本格検査(2巡目)
悪性ないし悪性疑い 71(前回から変化なし)
手術症例      52人(甲状腺がん 52人:乳頭がん 51人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例     19人 

本格検査(3巡目)
悪性ないし悪性疑い 18(前回から3人増)
手術症例      13人(前回から2人増)(甲状腺がん 13人:乳頭がん13人)
未手術症例     5人

本格検査(4巡目)
悪性ないし悪性疑い 0人
手術症例      0人


25歳時の節目検査 
悪性ないし悪性疑い 2人
手術症例      0人

合計
悪性ないし悪性疑い 207人(良性結節を除くと200人
手術症例      167人(良性結節 1人と甲状腺がん 166人:乳頭がん 164人、低分化がん 1人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例***     38人

注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第7版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。
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2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された71人の1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人

3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された18人の2巡目での判定結果
A1判定:2人
A2判定:8人(結節2人、のう胞4人、未報告により不明2人)
B判定:5人
2巡目未受診:3人

第11回 「県民健康調査」甲状腺検査評価部会(2018年10月29日開催)での議論の一部の書き起こし



2018年10月29日に福島県福島市で開催された第11回「県民健康調査」甲状腺検査評価部会の中での、「資料2 甲状腺検査対象者への説明・同意に関する部会員意見の集約」および、 「
資料3-2【髙野部会員・祖父江部会員資料】県民健康調査における甲状腺超音波検査の実施体制および検査方法の問題点と改善案」についての議論を書き起こした。

第11回甲状腺検査評価部会の全資料はこちらからアクセスでき、公式議事録も、後日、そのウェブページに掲載される。どうしても聞き取れないために空白となっている箇所については、公式議事録を参照願いたい。

部会員については、以下の出席者名簿に詳細が記述されているが、発言者として最初に登場する際に、どのような立場での発言か分かりやすいように専門分野なども記述した。

注:学校検査について、「学校検診」と言う言葉が出てくるが、2014年3月2日の第2回甲状腺検査評価部会で、福島県立医科大学の甲状腺外科医である鈴木眞一氏は、はっきりと、福島県の甲状腺検査は、死亡率を下げることが目的の「(がん)検診」ではなく「健診」であると述べている(議事録の31ページ目を参照)。2017年10月末の第50回日本甲状腺外科学会学術集会でのシンポジウム発表抄録(以下のスクリーンショットを参照)では、最初に「検診」と言及してはいるが、「今後放射線被ばくによる甲状腺癌発症の増加があるかないかを確認する目的で、直ちに超音波検診(健診)を開始した。」と説明した後は、「健診」としているため、「学校健診」と認識すべきであろう。しかし、この書き起こしでは、発言者が「検診」を用いていることが分かっていたり、発言の文脈から通常のがん検診と同様に考えていると思われるため、あえて「検診」としている。




以下の書き起こしは、資料2と資料3−2に関する議論で2部に分けてある。それぞれ、当日の動画も貼り付けてあるが、書き起こしを始めた箇所から再生されるように設定してある。

1. 資料2 甲状腺検査対象者への説明・同意に関する部会員意見の集約」に関する議論の書き起こし



鈴木 元 座長(国際医療福祉大学教授、日本放射線影響学会 推薦):資料の2、利益の方に移って。それぞれ箇条書きをしております。この部会の中で、利益がないという意見もありました。それに対して、特に外科の立場からは、吉田先生の方から、早期診断になった場合は手術侵襲も少ないというふうに、患者さんにとってはメリットのある術式になるということも説明がされました。一方、不利益としては、本来、手術しなくてもいいような甲状腺も手術してしまう過剰診断・過剰治療ということも起きると言うことで、その辺を避けるために、なるべく、成人の場合はアクティブサーベイランスと言われてまして、経過をみながら本当に手術が必要になる時期を慎重に選んで行くという作業がなされるわけですが、お子さんに関してはまだそういう臨床的な体制というのが必ずしも成立してない時期であるということを踏まえた上で、検査をやって行かざるを得ないというひとつの問題点があるかと思います。不利益に関しては、そういう所で、早めに手術してしまうことによる不利益ということがいくつか挙げられてまいりました。これに関して、一個一個の項目の議論を始めて行くとちょっと時間はありませんが、髙野委員、いかがでしょうか。

髙野 徹 部会員(大阪大学大学院 医学系研究科 内分泌代謝内科学講師、日本甲状腺学会 推薦):祖父江先生と共同でちょっと意見書を出させてもらったんですけども、この利益・不利益、メリットとハーム(harm)という言い方の方が正しいように思うんですが、漠然とこんな利益、こんな不利益がありますという形では、なかなか議論の集約ができないし、県民にイメージもしにくいということで、超音波検査をした場合、しなかった場合で、それぞれ、これだけの対象者にこんだけの利益があります、で、こんだけの対象者にこんだけの不利益がありますと数字でやっぱり出して、それを比較検討して、こんな通りですよということをお示しすると言うことが非常に重要な責務ではないかと思いますし、そういうことはこの部会でしかできないと思いますので、ぜひ、その方向でご議論いただきたいと思います。

鈴木座長:資料2の、たとえば利益の所の米じるし1、2、3、というような形で、この間、部会でも挙げて来たデータなんですが、数字を挙げて来ました。これに関しては、___になるでしょうか?安心があるというか、検査の結果、見つからないパーセント、実際に見つかるパーセント、それが実際に手術を受けた場合に、チェルノブイリの時の手術にくらべて、今現在の早期発見の場合の手術の副作用の頻度というのがここに書かれてます。

髙野部会員:そういう、たとえば、早く見つかった方が予後がいいとか、そういう数字じゃなくて、超音波検査の、つまりがん検診としての有効性の話になると思うんです。ですから、受けた場合と受けなかった場合での差というものが、どういう風に見えてくるかということが__なことだと思うんで、それを出す必要があると思うんですよ。

吉田 明 部会員(甲状腺外科医、日本内分泌外科学会および甲状腺外科学会 推薦):あの、甲状腺って非常に小さい臓器でですね、かつ、対象?としての非常に予後のいい甲状腺のがんですよね。そういうのを数値化するっていうのは、非常に難しいのではないかと思うんですね。だからほんの少しのわずかな差しか出てこないだろうと思うんですよね。ただし、要するに、そこで見つかったものに関しては、やはりその当人にとってはすごく大きなメリットがあると思っているんで、髙野委員の言うようなやり方だとですね、何をやっているのか良く分からない、と言うことになってしまうのではないかなと思うんです。

髙野部会員:吉田先生のおっしゃることは良くわかるのですけども、やはりそこは、がん検診の有効性というスタンスで、一回、資料をまとめる必要があるのではないかなと思います。

鈴木座長:はい、あの、多分ね、髙野先生と私自身、少し立場が違ってて、議論がかみ合わないのは、たとえば、IARCの、まったく検診も何もしてないような集団、それに対してこれから予算をつけてスクリーニングのプログラムを組みますかと言う時の議論と、それから、今、実際にがん対策として甲状腺検査が始まったわけですが、予算がついて動いてる中で、今、これからこれをどういう風に変えて行くか、あるいは方向性としてどういう方向性を向いて行くのかという議論、そこのスタンスが、立ってる位置が違っていて、なかなか議論がかみ合ってないような気がします。スクリーニングの有効性があるかどうかという議論でいうと、これはまた、一般には検診の有効性って言うのは、がん死亡率をどのくらい下げられるかというような所で議論をしていくわけですが、今、この甲状腺プログラム、死亡率を下げようという立場で始まったプログラムではないと思うんですね。だから、ちょっとその辺は、私は違うのではないかなと言う風に思うんです。

南谷 幹史 部会員(小児科医、日本小児内分泌学会 推薦):色々言われてるのは、今、鈴木先生がおっしゃられたように、死亡率なんですけど、甲状腺がん、良くない髄様がんにおいても、10年生存率は85%なわけでして、その予後が悪い髄様がんですら、アメリカですと、家族性の場合は、__的に温存せず取ってしまうと言われてるわけですね。ですから、エンドポイントとして死亡率と言ってしまうと、まったく、甲状腺がんに関しては予後が良いがんなので、それをエンドポイントとするとちょっとどうかな、と言う気がします。前、医大でまとめていただいた125例の手術例で、甲状腺外浸潤したものが4割くらいでしたが、その見つかったものが、手術したメリットがなかったかというのは、ちょっとどうなのかと感じます。

片野田 耕太 部会員(国立がん研究センター がん統計・総合解析研究部長):数字で示す場合に、福島県ではどうか。資料の3ページ目の(3)の1の3つ目の、「検査を受けた場合どのような割合でどのような結果が出て、どういう経過をたどるのか」というのが、おそらく、先行検査をやる前というのは、やってないと分からないということもあったと思うんですが、現状ではもう、本格検査の結果、先行検査の結果がある程度出揃っていますので、たとえば受けた人の1%弱にB判定以上の結果が出ますと。で、二次検査を受けた人の10%くらいの割合で細胞診の適用となります。そのうち何パーセントくらいに悪性または悪性疑いの人が見つかります。って言うことの説明をした上で、それぞれ、その検査結果に応じてどのような心情的な負担を生じるかと言うのを、きちっと説明すべきだという風に思います。
過剰診断の話が出ましたけど、過剰診断の割合って、現状のデータからは、決して実データとしては出せないので、欧米ではシミュレーションの結果とかで過剰診断の割合を出したりしていて、実例からは決して出てこないものなので、死亡率の減少効果についても同じだと思います。現状で分かってる範囲でこういう結果になりますという説明を十分にすべきではないかと私は思います。

祖父江 友孝 部会員(大阪大学大学院 医学系研究科 環境医学教授、日本疫学会 推薦):利益の部分で、死亡減少効果があるのはなかなか望みにくいと言うことは、その通りというか、専門家は分かってることかもしれませんけども、少なくとも受けてる人たちは、そのことをあまり分かっておられないと思います。ですから、説明文書に何を書くかと言うことなんですが、専門家が当たり前と思ってることでも、受診者の人たちがその理解にギャップがある場合は、きちんと記述すべきかと言う風に思うんです。その上で、どのようなものが利益であるのかということを列記する。それもできるだけ定量的に示すと言うことをした方がいいと思います。

吉田部会員:死亡率云々と言うのを利益の第一に考えていらっしゃると思うんですけど、甲状腺がんではQOLを上げると言うような部分が非常にが大きいんですね。浸潤してるのが40%であると言った所をですね、早期に超音波で発見してそれを治療に持っていくって言うのは、非常に大きいわけなんですね。そうすると、死亡率云々を言うのにはですね、まだ7年くらいしか経ってないわけですね、一番最初の先行検査から始めて。それにはあまりにも期間が短すぎると言うことが言えますので、今の議論の中では、なかなかちょっと、先生の言うようなことは言えないんじゃないかな、と言うふうに思います。

祖父江部会員:このデータから死亡減少効果を言うというのは、それは難しいです。何ができるかと言えば、個々の発見例の人が仮に放置されたらどのような結末になっていたのか、と言うことを想定して、どのような利益だったのかと言うことを記述すると言うのはできるかも知れない。

吉田部会員:どのような利益であるか想定してって言うのはですね、手術なさった先生方は、そのまま置いとくと危ないと言うように思って手術をされてるわけですから、それを否定するってことはなかなか難しいと思うんですね。

祖父江部会員:否定はしてません。ですから、どのような利益が想定されたのかと言うことをここに記述する、と。

鈴木座長:まああの、まずちょっと整理しますと、最初の予後の件については、一般に甲状腺がんは小児の場合でも予後は、たとえば10年生存率で99.5%とかという数字が出てるかと思いますんで、そういうのを入れると言う方向ですね。それから、あの、先ほどの片野田先生が言ったものに関しては、②ー2の米じるしの4の所に、ちょっと書き落してるんですけども、本格検査の実績では、B判定が大体0.5%ぐらいになってまして、今の状態ですと、そのうちの5%くらいの人に穿刺吸引がなされます、というような、今のデータを入れ込むというようなことでよろしいでしょうか。
それで、先ほどの祖父江先生の、えーっと、ご意見ですが、そのまんま放置して、要するにどの段階で臨床症状が出るかという議論だと思うんですね。で、要するに臨床症状が出るというのは、反回神経麻痺が起きるとか、気管の中に細胞浸潤が入って、そこで声がおかしくなる、呼吸がおかしくなるとか、あるいは、どっかにポンと飛んでそれによる症状が出るとかいうような所の、一番、どちらかと言うと昔の何もしない時の甲状腺がんが臨床的に発見された時の標準的な治療でどのくらいの成績だったかという話を「出せ」と言うことのように、今、理解したんですが、よろしいですか?

祖父江部会員:あの、別に、成績とかのことを言ってるわけじゃ、全然ないんです。たとえば、反回神経に非常に隣接しているロケーションであって、何年か経つとこのようなことになるというのをここに検討するのはできると思うんです。

鈴木座長:はい、これはあの、臨床の吉田先生の方から。たとえば医者がなかなかそこまで放置したっていうのはないんで、ただ、昔だったらこういう症状で甲状腺がんが見つかったよ、というような書き込む形になるのかなと思うんですが、吉田先生、いかがですか?

吉田部会員:あの、そのまま放置したらどうなるかということはですね。やはり第一に、出血が起こります、気管の。それで出血による窒息死というものも起こりますし、それから、周囲臓器、頚部ってのは動脈・静脈、太い頸動脈・頸静脈がありますので、それを浸潤して大出血を起こす、と。そういうのを具体的にですね、われわれは経験しております。そういうことになるんじゃないかと想定されます。それが何年先に来るかということは、その腫瘍の浸潤の速度によって違ってくるだろうというように考えておりますので、何年ということは言えないんですけども、遠い将来、そういう恐れがあるということで、外科医はみな手術するんだろうというように思いますけども。

祖父江部会員:想定されるそういった害ですね、有害性ですね、個々の例について記述したらどうか、と。そういう意味です。

吉田部会員:あのー、それ非常に生々しくてですね、そういうことをこの場に書くということ自体どうかな、と。そういうことになりますよと言うのは、みなさん、暗黙のうちに分かってるんじゃないかなと思います。それから、あと、反回神経の麻痺っていうのがあります。そのまま置いとくと嗄声になってきます。そういうので一生苦しんでる人ってのは、かなりの数でいますので、そういうことをあえて書くということをしなくていいんじゃないかな、と言う風に思います。非常に生々しいことは、却って恐怖心を植えるような感じになると思いますので。その代わりに私は、この検査を受ける前にですね、小児甲状腺がんに言われている一般的なコースのことを書いてですね、手術した場合に何パーセントくらいの人が生きてられるというようなことを書いた方が、非常に予後がいいということを書いた方が、検査を受ける前の段階の人たちには有益じゃないかな、という具合に思いますけど。

髙野部会員:ちょっと全体像を俯瞰してみた方がいいと思うんですけども、現状、放射線による影響は少ないと県も見解を示しています。にも関わらず、200名以上に甲状腺がんが診断されています。この地域では、通常の臨床経過では数例しか甲状腺がんが出ないはずです。じゃあ、残りの差は何なのかということで、まあこれ、残りの200人近くが全員、甲状腺がんが見つかって良かった人だということになると、じゃあなぜ福島だけこんなに増えてるのかということを、これは県民に説明しないといけないんですよね。それをどう評価するかという所で、やはり、どれだけの人がメリットがあって、どれだけの人がデメリットだったのかということを示すべきなんじゃないでしょうか。これをどう説明するのか。

鈴木座長:論点がちょっとずれてるように思うんです。現実的に今、多く見つかっているというのは、その前の議論の中でも、スクリーニングをかけて小さいがんを一生懸命見つけているという現状を報告したかと思います。だから、そこで十分説明はついています。問題は、そういう小さいがんを見つけることが、はたしてメリットかデメリットかという議論になってくるんで、ちょっと論点が少しずれてるかなと思います。で、小さいがんのうちに見つけた方が手術侵襲は少ないですし、QOLはいい。で、甲状腺全摘をしないわけですから、そこでホルモン補充療法も、少ないかやらないで済む。そういうメリットがありますよということは、ここで書き込めるわけですね。私はそれで、かなり十分なんじゃないかという風に思います。

髙野部会員:あの、そこで仮にスクリーニングをせずに置いといた場合、どのようなデメリットがどのような人数の子どもに出るかというような議論が必要なんじゃないかと思います。

鈴木座長:はい、それは先ほど(苦笑)吉田委員の方からもあったんで。要するに、どの段階で臨床症状が出るかっていうことは、予見不能なわけですよね。で、ただほっとくと、少なくとも臨床がんに進展する人たちは、将来こういう臨床症状が起きて外来受診しますよ、と。で、そういう段階で手術した場合は、今のような部分的な手術ではなくて、より侵襲の大きい全摘になるでしょうし、また場合によっては放射線療法も一緒に併用するというような話になりますし、甲状腺ホルモンもずっと生涯、補充するというような、そういうふうな、要するに臨床、病気が遅れれば遅れるほど、そういう治療法が変わって行ってQOLが変わりますよということは、記述できるんだろうと思います。

髙野部会員:あの、ちょっとそこも視点が違うんですけど、要するに、あの、先生のおっしゃることも分かるんですが、そういう方が200人の中、何人おられるかということも重要なんじゃないかと思うんです。その__も疑問?ではないんでしょうか?(聞き取りにくい)

吉田部会員:200人のうち何人いるかというのはですね、ただその手術をする外科医がですね、小さいがんと言っても、甲状腺の表面にあるがんと、中の方にあって神経に接しているがんと、それから食道に接しているがん、気管に接しているがんと、色々あります。それで、それぞれの所でリスクを考えて、そのリスクが多少、多めになっている可能性は否定できませんけれども、100%その、治療したのがですね、一致しないんですね。私たち、あの、患者さんを前にしてですね、こういう可能性がありますということで、手術をしますか?と言うと、手術をお願いします、という患者さんがほとんどです。その段階で同意書を取っています。ですから、それが結果的に浸潤しなかったということもあり得るかと思います。現在の医療上においては、その可能性があれば何か処置するというのが外科医の立場ですので、それを否定してしまうことはできないだろうと思うんですね。たとえば、甲状腺がんは予後がいいので、今、髙野委員が言われるようなことの議論が出てくるんだろうと思うんですけど、私は乳腺と甲状腺やっておりましたけど、乳がんの方でもそのようなことはいくらでも言えると思うんですね。だからそのことを言ってしまうと、外科医の仕事とか全否定してしまう感じになってしまうだろうという具合に思ってます。

片野田部会員:過剰診断はスクリーニングを受けなければ、生涯臨床的に発見されないと定義?されてますけど、個々の症例をそれを示すことって不可能なので、一般論として検診、精密検査では過剰診断というものがあって、生涯、臨床的に症状が発生しないようながんが見つかることがありますよというくらいの説明は、一般論としてはできると思うんです。で、現状では、それしかできないんだと思います。定量的に何か、どのくらいの割合で過剰診断で、という数値が、この検査の結果から?言えるわけではありませんので、ただ、一般論として過剰診断があり得るというのは、ちょっと説明することはできると思います。

加藤 良平 部会員(病理医、伊藤病院 病理診断科 科長、日本病理学会 推薦):過剰診断の問題にまた入ってしまったんですが、今、問題になってるのは、アメリカとか韓国とか過剰診断が問題になってます。で、これは事実なんですね。ただ、彼らが問題にしているものと、日本での診療と診断のシステムというのはかなり違うので、一概に、日本でやってることが過剰診断という言葉でまとめられるのは、少し違うんじゃないかというふうに思ってるわけです。過剰診断というと、初めからもう過剰の診断ですので、これはあの、患者さんにとっては非常に大きな問題になって、その言葉を使うこと自体が、非常に良くないんじゃないかと。実際に言われている、overdiagnosisという、アメリカで言われてるのと、それから韓国で言われている過剰診断というのは、かなり日本と立場が違うんです。それから、手術の方法、手術の範囲も、見つかった場合も、それも日本と大きく違いますので、そこは注意して扱われた方がいいと思います。

鈴木座長:はい、あの、オーディエンスのみなさんに多分、アクティブサーベイランスという、私たちは当たり前のように今、甲状腺がんで使っている言葉なんですが、ちょっともう一度説明した方がいいと思うんで。これは、吉田先生、お願いできますか。

吉田部会員:あのー、小さい甲状腺がんを手術した方がいいかどうかというのですはね、私が医者になった頃、40年くらい前から日本の外科医は議論してまいりました。初めの20年間はですね、やはりなんだかんだ言ってもがんなんだからと言うことで、手術をしてまいりました。ところが、今から20年くらい前からですね、ぽちぽちと、こう、手術をしないで様子を見ようと。特に1cm以下のものを、日本の外科医は微小がんと呼んでおりました。それでじゃあ、微小がんというようなものをどうやって扱うかということで、隈病院とがん研とその2つの病院で先行的に患者さんに同意書を渡して、3mm以上に大きくなったら手術しましょうとか色々細かい取り決めをして、ずっとフォローアップするというふうに。半年に一回、あるいは一年に一回のフォローアップをすると、積極的にフォローアップしていくと言うのを、アクティブサーベイランスと言う。で、今かなりそうやって、微小がんの扱いについては、そうやってみていく日本の施設が多くあると思います。だからそれをこの福島でも取り入れて、すぐに手術をする必要のないものは手術しないでアクティブサーベイランスというような格好で医大の方でみているんだろうという具合に私は思っておりますけど。

髙野部会員:アクティブサーベイランスなんですけども、それは大人と福島の子どもで大きく状況が違うと思います。まず、子どもの場合は、がんと診断されることが非常にその子にとって大きなデメリットになります。要するに、われわれ専門家は甲状腺がんは非常に予後がいいと言うふうに知ってますけども、世間一般では、その子たちは、診断されたその時から小児がん患者です。それから、もうひとつ、私自身も経験したことですけども、その世代の子どもたちをアクティブサーベイランスしようと思っても、結局、進学があり、就職があり、結婚したり、子ども産みたい、もう絶対に迷います。で、結局、何年か経ってから手術しようとなって手術しました。じゃあこれはアクティブサーベイランスはどうだったんだろう(?聞き取りにくい)という話になってしまいます。だからもともと大人と子どもは非常に違うと。特に福島の子どもは、今、福島の子どもたちは将来どんどんがんになるという風評被害が出ています。そんな中で子どもたちにがんという診断をつけるアクティブサーベイランスは非常に残酷なことだと私は思います。

祖父江部会員:あの、ちょっと提案なんですけど、利益・不利益の中身をですね、何を記述するかということについてちょっと議論があるとこなんですけど、一方で、今のIC(注:インフォームドコンセント)の説明文書できちんと説明できてるかという、それを補足するであろうというのが前回のコンセンサスだったと思います。ですから、待ってはおれないわけで、きちんと部会の間もですね、作業をして、ICの文書を、その説明文書の中における利益・不利益の検討をどうするのかの案を作らないとですね、なかなか進まないと思うので、何かワーキンググループをですね、あるいは福島医大の先生方にも入っていただいて、その案を作っていただいてこの部会で検討するという形にした方が、私はいいと思います。

鈴木座長:それは私も、あの、なかなか限られた30分くらいの間で議論が出尽すわけではありませんし、はっきりした文書を仕上げて行くためには、やはりそういう下準備で少しICを作る図案を作る必要があるだろうと思います。それから、もうひとつ、あの、こういう文章で伝えるって言うだけではやはりうまく伝わらない可能性がある。今、髙野先生も、そういう診断を受けること自身が非常に精神的なダメージが大きいんじゃないかというようなこともありましたし、まあ、現在も、がんと診断されたあとのケア体制というのは県立医大でしっかり取ってもらっていると思いますが、あの、その辺も含めてですね、少し再整理してみた文面を、まあこの次は準備していきたいと思います。よろしくお願いします。

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志村氏が「資料3−1 学校における甲状腺検査について」を読み上げ、現在の実施状況と開始の経緯について説明。
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2.「資料3-2【髙野部会員・祖父江部会員資料】県民健康調査における甲状腺超音波検査の実施体制および検査方法の問題点と改善案」に関する議論の書き起こし



鈴木座長:この資料3−1を準備してもらったのは、あの、この後、髙野先生・祖父江先生の意見書の中で、一番最初に、学校検診というのはどうしても強制性があるから倫理的に大問題であるという強い部分があったためです。あの、私自身は、きっちり同意の取れた人だけが受けるという形になってますし、現実に100%の受診率を達成してるわけではなくて、きっちりと受診しないことを選ぶ人もいるという現実。それから、まあ、ここにあるように、決してこれ、検査のやり方として最初からこういう形を取ったということがある。学校、あるいは父兄との同意のもと、現在の形になっていると理解しておりますんで、この資料を準備していただきました。 

では、続けて資料の3−2。これは「県民健康調査における甲状腺超音波検査の実施体制および検査方法の問題点と改善案」ということで、髙野先生・祖父江先生から出されていますが、髙野先生、簡単に説明をお願いします。

髙野部会員:県民健康調査の問題点の改善案としまして、1番として検査実施体制上の問題点、2番として検査方法の問題点としてリストアップさせていただきました。検査体制上の問題点につきましては、さきほど学校検診の件が出ましたけども、あの、超音波を行うには強制性があってはいけないということが大原則なんですが、現時点では授業の合間に検査が実施されており、検査拒否の意思を示しにくいため強制性を持つと言うことが言われています。実際あの、授業の合間に行われてしまうと、検査を受けない子どもたちは、授業中教室でポツンと残っている現状をうかがっています。ですから、原則、放課後あるいは休日に限定して検査すべきではないかと考えます。それから、これは補足的な事項ですけども、学校で検査を実施していることで、対象者に健康改善を目的とした他の健康診断と同様な検査であると誤解される可能性がある。多分、おそらく、たとえば先ほど祖父江先生も言われましたアンケートを取ると、そういう意識の保護者の方が非常に多いんじゃないでしょうか。ですからこの辺は、説明文の内容と、特に健康改善を目的とした検査ではないことを学校関係者に周知する必要があるんじゃないかと思います。

それから2番目は検査方法の問題点。これはさきほどのメリット・デメリットの話にも繋がりますけども、検査の対象者に対する有害性を提言するための検討をすべきである、ということで、別紙の方で参考文献が書いてありますけども、JAMAのUS Preventive Services Task Forceによれば、利益・不利益のバランスの上で不利益の方が勝ってしまっているということで、まあこれは問題であろうと言うことが言えると思います。また、がんの治療等に伴い、要するに頭頸部に大量に被ばくした症例についてどのようにフォローするかということでいくつかガイドラインが出ておりまして、こちらも参考文献に載せていますけども、今出ているガイドラインの方、参考文献からご覧になれますけども、③ー5になります。まず、後ろの方で3つの団体から推奨が出てますけども、いずれもUSではなくて触診の方を推奨しているということで、それから、アメリカ甲状腺学会の方からガイドラインが出てますけども、こちらの方も、まず診察すべきだと。診察して異常があった場合、画像検査を考慮すべきということをリコメンドしています。ですから、このような国際的な背景もあるということから改善案を提案しますけども、最初から超音波をするのではなくて、触診をした上で超音波検査による精査の必要性を判断する。あと、過剰診断を減らすためには超音波検査の件数を減らすしかありませんので、超音波検査の対象年齢を制限する、超音波検査の実施頻度を下げることを提案させていただきたいと思います。以上です。

鈴木座長:はい、あの、まず、問題点の1の方は、今、(説明が)あったように、決して強制性を持って始めてるわけではなくて、きっちり、あの、検査当日になって同意しますかどうかって言うと強制性ってのが十分あるかと思いますが、事前に、これはあの、意思表示をしてもらった上でやってるということになってます。私はこれは、かなり髙野先生の危惧しすぎかなと言う風に思っています。

で、②の方ですね。これは現在、説明と同意書を書き換えてる最中ですので、その中で十分書き込めば解決する問題ではないかと。決して一般の健康改善を目的にしたものではないと言うのは、ここで十分書き込めるんではないかと思ってますので、ここはICの方の話に継続?して行くのかな、と。

で、検査方法の問題点で、これは私、あの、髙野先生、文献の読み方、少しバイアスがかかっていらっしゃるかと非常に不安に思ってます。まずあの、子どもに関するガイドラインとしては、『JAMA』ではなくて『Thyroid』の方ですよね。これは、たとえば、リコメンデーション4(B)、一番下のところに、”Therefore, routine screening US in high-risk children can neither be recommended for nor against until more data become available.”と言うことで、あの、このリコメンデーションが書かれた段階(注:2015年)での文献調査では、積極的な支持も積極的反対もできないというのが、このリコメンデーションなんです。実は、この後のリコメンデーションとして、3つ目の『Cancer Treatment Review』、これがクレメントたちの論文なんですが、ここの中では、はっきりと、どちらかと言うと、超音波を使った場合のベネフィットとdisadvantage、まあリスクをしっかりと説明して、本人と医者が話し合った上でちゃんとUSを使いましょう、というようなリコメンデーションになってるかと思います。で、先生があげた所は、まずこれまでどうだったかという所の、一番最初の文献のサーチしたところでの表をたまたまポッと出してきただけで、実際の中身を読んでいただくと、そういう内容になってて、その精神?というのは、今回のIARCのリコメンデーションの中の、どちらかと言うとアクティブサーベイランスも含めたような形での、スクリーニングじゃなくてモニタリングというような概念に入って来てるかと思いますんで。決して、国際学会が超音波じゃなくてpalpation、触診でやりましょうと言うふうなのを子どもに対して今、積極的に勧めているわけではないと言うふうに理解してます。で、特に今、吉田先生の方からもご意見あったかと思いますが、小さいがんで、本当に今、手術しないで、アクティブ・サーベイランスの対象でいいのかどうかということを判断するのは、触診ではできないですよね。ですから、なんかその辺も少し、あの、髙野先生とまあ、私の意見はあまり強く言ってもしょうがないんですけども、国際的な流れと少しズレがあるような気がしております。

南谷部会員:小児科の立場からしますと、教育委員会というのは非常に強い力を持っていますよね。で、教育委員会、あるいは父兄からの要請があるというのは、かなり強いことだと思うんで、それに関して色々、僕らがどうかという立場じゃないかなと言う気がちょっとしますね。で、あとはですね、まあスクリーニングに関してですけど、福島県の「外」ですよね。たとえば私が住んでいる千葉県はですね、柏とかホットスポットがある地域がたくさんあるんですよね。そういう地域は、NPO団体が色々、もう勝手に甲状腺の検査とかしてるわけですね。で、そういう検査に殺到するわけですね。それから、ちょっと定かではないんですけども、市町村がその検診の費用を、まあ半分負担するとか、そういう自治体が絡んでやってる所も結構あったりしますんで。ですからまあ、ちょっと大阪と千葉と、なんて言いますかね、放射線に対する受け止めが違って、かなり千葉県の人は福島県から離れているけども、福島から避難した人じゃないですけども、そういうことでかなり気にしている人は多いと思いますんで、そういう状況で福島県が今の体制を改めてしまうと、要は、スタンスとしては、髙野先生は被ばくの影響はないっておっしゃってましたけども、まあその最初の政府の発表をみんな信じなかったというのが原点で、みんなまあ、隠蔽してるんじゃないかと、そういうことから始まっているわけですから、今の状況で想定外の甲状腺がんが見つかったということで、それで検査体制を縮小すると言うと、また何か色々言われるような気がします。

祖父江部会員:今の髙野先生の説明でですね、『Cancer Treatment Review』の方で触診を勧めている。まあ、これ、私も専門ではちょっとないのではっきり断言はできませんけども、少なくとも、放射線治療を受けた子どもにおいて、甲状腺がんのサーベイランスをする時に、超音波ではなくThyroid palpationですね、触診を推奨するというガイドラインが、3つの団体それぞれでconcordance、まあ一致して主張してるという。ですからまあ、超音波検査をすることと同様というかそれ以上に、触診ということは結構、あの、モニタリング、サーベイランスの手法としては採用されてるんじゃないかということが、僕は言えるんじゃないかと思うんです。で、その上で、学校検診の際にですね、あの、まあ、授業の合間部分にですね、まあ、やられていると。強制性はないかもしれませんけども、まあ、やらないと判断した保護者の方、あるいは本人ですね。教室に残って非常に居づらい感じだと言うようなことを聞いたりします。で、その際にですね、ま、一緒に検査を受けるんだけども、選択肢のひとつに触診、超音波に加えて触診があるということであればですね、検査を受けるということも可能だし、ま、たとえば、触診というものをですね、選択肢のひとつに設けるというのも本気で考えたらどうかと思ったりします。

吉田部会員:あの、甲状腺の触診っていうのはですね、ほとんど分かんないです。ですから、いわゆる、ほとんど、その、放射線を受けた子どもたちに触診をするというのはですね、radiation thyroiditisというのがあります。そちらの方で、それをdetectするのはいいのかもしれませんけど、それからがんが出てきた時に、その触診で見つけるってことはほとんど不可能ですので、やはりあの、甲状腺の超音波ってのは非常に無害ですし、いい方法だという具合に私は思っております。

南谷部会員:私も吉田先生の意見に最も賛成で、スクリーニングをする場合はかなり多数の医師が甲状腺を触るんですけども、私も甲状腺が腫れてると言われて紹介される患者さんいっぱいいますけども、ほとんど甲状腺じゃなかったりします。甲状腺を専門にしてない医者が触って、甲状腺が分かるどころか、結節が分かるとはとても思えないです。そういう意味では、超音波でないと客観性は保てないような気がしますよ。

祖父江部会員:ですから、超音波で見つけるようなnoduleを見つけようとしていないんですね、触診というのは。ですから、しない、ということでしょうか。

鈴木座長:あの、よろしいでしょうか。これも前回、ちょっと議論したんですが、結局、大きい甲状腺がんは、素人でも見つけられます。あの、5センチとか、そんな大きさだったら、誰でもって言うか、一応、その目で見れば見つけられますし、もうちょっとちっちゃいやつでも、慣れた人だと見つけると思います。ただ、その段階で見つけた時に、どういう手術方法になるかって言うと、一般のスタンダートは両側の甲状腺摘出になりますし、結構広い郭清になって、で、アメリカのこのJAMAなんかのリコメンデーションとか、あの段階のですとね、放射性ヨウ素の治療を一緒に組み込むわけです。要するに、そういう治療を前提にした触診法なんですよ。だからやっぱり、今、日本でやろうとしてる、早期発見でなるべく手術野の少ない治療を選択しよう、なるべくQOLを残したものにしようって時は、触診法では相当問題があるんだろうと私は思ってますが。

祖父江部会員:なぜこの『Cancer Treatment Review』でですね、Thyroid palpationというのが推奨される方法だと書いてあるんですか?

鈴木座長:えっと先生、これ、もう一回先生に文献を送ったと思いますが、これは一番最初に既存のものをレビューしたんです。その中で、じゃあ、彼らはどういうふうなリコメンデーションにしようかって言って、その後、ズルズルズルといっぱい書いてまして、たとえば、palpationの、触診法のメリット・デメリットも書いてますし、超音波のメリット・デメリットも書いてます。で、そういうのを理解した上で、医者と患者さんと親御さんとで話し合って、USを使うんだったら、超音波を使いましょうと言うのがリコメンデーションになってます。決して、あの、これで全部やるべきだと言うようなリコメンデーションではないですが、あのそういう、USを否定するようなリコメンデーションではないです。

祖父江部会員:否定はしていません。選択肢のうちにpalpationも入れたらどうですか、ということです。(注:発言後に髙野氏が座ってる方向をちょっと向いたように見えた。)

鈴木座長:はい、ですから、palpationを入れるという議論は、さきほど言いましたけども、今の日本の術式の考え方とはあまり合ってないと言う所だと思います。

髙野部会員:あの、この『Thyroid』の論文、それから『Cancer Treatment Review』の論文ですけど、いずれも触診とか超音波検査について議論をしてて、結局、超音波検査はリコメンドしてないんです。その理由というのはやはり、overdiagnosis、これが__を下げるという理由に違いありません。で、もしも超音波検査が非常にいいもの、有益なものであって、無症状の若年者に超音波をあてていいものだったら、もっと世界的に広まっているはずです。それがされないと言うことに、ちょっとわれわれ、神経を尖らす必要があると思います。

吉田部会員:あの、超音波ってのは、日本で非常に早くから発達しててですね、欧米というのは、非常に日本の方に引っ張られてやったものなんですね。ですから、その影響がかなりあるだろうと思いますし、今、触診、触診って言われましたけど、たとえば乳がんの世界で、乳がんの検診をする場合にですね、触診はもう今、根拠がないと、客観性がないということで、否定されています。それでマンモグラフィーしましょうと言うことになっております。それと同様にですね、超音波で見つけることが悪いという、超音波検査そのものが悪いんではなくてですね、もし悪いとしたらですね、見つけたがんをどういう具合に取り扱うかという、その方法の部分で、みんな手術してしまうとかって言うような、韓国みたいなことが取られるのが悪いのであってですね、それに対してアクティブ・サーベイランスなり、色々解決案がありますので、その精度をもっと高めようというような努力をする方が正しいんじゃないかな、というふうに思いますけど。

加藤部会員:髙野委員とか祖父江委員の意見の、一般的な甲状腺がんのスクリーニングとか、この福島の原発事故後の調査を一緒にして扱っているところが、うーんどうかな、と言うふうに思いますね。今までそんな子どものスクリーニングとかやった所はひとつもないですので、実際に出たきたデータで、そういうふうな話になってきてるんだと思いますけど。だからやはり、原発事故後、やる時にですね、やはりロールモデルだったのはですね、チェルノブイリなんですよね。で、チェルノブイリの甲状腺って言うのは、子どものがんが多かった。それが非常にみなさん危惧していると思うんです。それで始めたことなんですけど。今の話というのは、一般的な甲状腺がんの話を、大人の話をしてると。で、実際われわれがやってるのは、__の、将来がある子どもたちのために何とかしようと言うふうなことですので、それに対するデータと言うのは、ほとんどないんです。どこの大学に出しても?ないと思います。わたくしもかなり甲状腺の子どものがんをやってますけど、子どもの甲状腺がんは特殊です。ただし、それに対する臨床的なフォローアップデータとかそういったものは非常に限られておりまして、今出してるJAMAとか色んなものってのは、大人の甲状腺がんに対してのものなので、やはり、それと分けて考えていいんじゃないかと言うふうに思います。

阿美弘文部会員(甲状腺外科医、福島県病院協会 推薦):わたし、市内で甲状腺外科をやってまして、その立場からしますと、あまりその、反回神経麻痺とか出血が起こってという契機で発見される甲状腺がんって実際に少ないって___、自然に見つかる甲状腺がん__がほとんどだなっていう印象なんですね。___、触診って本当に不十分なのかって言うのはちょっと何とも言えないかなと思いますし、超音波で過剰診断が出るんじゃないかなという意見も__、僕自身ちょっと、どう言うことが一番正しいのかと言うことを決めかねている状況ではあります。(注:非常に聞き取りにくかった。)

鈴木座長:触診法、あるいは超音波を使った検査、それぞれメリット・デメリットがあると言うのは、クレメントたちの論文にも書いてあります。今までの小児甲状腺がんに関するリコメンデーションで、超音波を使った方が間違いなくいいと言うようなデータってのはまだまだ少なくて、実際は日本の、この部会の中でも前々回になりますか、吉田委員の方に、小児の時期に診断した症例の日本の報告をお示しいただきましたけど、まあ、ステージが早いほど再発率が少ないというようなデータが少し出てきたくらいで、非常に大規模な調査の中で、早期診断と言うのがどの程度のメリットがあるのかって言うエビデンスは、まだまだ蓄積が足りないってのが現状だと思ってます。その辺が、あの、超音波を使うことに対して積極的反対もしないし賛成もしないという、中立的なリコメンデーションになってたと言う所だろうと思います。現実に今、この福島では、超音波を使った検診を続けてるわけなんでして、そこの中で間違いなく色んなエビデンスが今、集まってきている。大体どういうふうな、で、また手術した症例も増えて来てますんで、それがどういうふうな予後をたどって行くのかって言うのも、従来、小児の場合ですと、非常に大雑把に病理分類をしてやってたんですが、より細かい病理分類をした上での解析も将来可能になって来るんじゃないかと思います。で、その辺が出ないと、本当の意味で今、髙野先生の疑問に対して答えるエビデンスと言えるだけのデータってのは出て来ないのかもしれませんが、現在それがないからと言って、じゃあまったく早期発見の、間違いなくそれ自身はQOLを改善する利点はあるわけですが、それを_した上でもう一回、palpationに戻るのかという疑問は、私は、なかなか受け入れられないんじゃないかと言うふうに思っております。

あの、どうしましょうか。なかなか議論は収束はしない。こういうふうに立場の違いと言うのは残るんだろうと思ってます。で、そういう意味では、クレメントたちと同じようにですね、インフォームドコンセント、同意書を取る時に、超音波検査でどういうことが、実際、早期診断のメリット・デメリットと同じ話になるんだろうと思いますが、それをきっちり書き込んだ物を作って行くというような、形になるのかと思います。あくまで判断してそれを受けるかどうかと言うのは、やっぱり親御さんと子どもさんが判断する話なんで、それに対して十分説明を尽くすと。ただまた、早期発見された場合の、まあアクティブサーベイランスというような考えも出されましたが、いま、医者の側ではそういうようなことをスタンダードとして考えながら、みなさんをフォローして行きますというようなことを、ある意味、書き込むのかと思っています。その辺をこの次までに、文章にもう少しまとめて準備していきたいと思っています。そんなところでいかがでしょうか。

髙野部会員:この資料ってのはわれわれ、元々、倫理問題として出してるものですので、特にこの学校検診に関しては、倫理委員会とかで検討しただく必要があります。ですから、現在、福島県立医大の倫理委員会がその役をしていると思います。そちらの方で学校検診の問題についても、これで__、是とするか否とするかは、判断していただきたいと思います。

鈴木座長:これについては、すでに、今の研究計画書は倫理委員会にかかってて、その中にこの検診の体制も含まれているんではないかと私、推察するんですが?

安村 誠司 氏:(福島県立医科大学医学部 公衆衛生学講座教授):鈴木先生の仰られたとおりです。(注:安村氏は、県民健康調査の研究プロトコル論文の筆頭著者であり、検査体制設定に最初から関わってきた。)

鈴木座長:一応、倫理委員会で、この方式は認められてるというふうになってるかと思うんですが。

髙野部会員:それはあの、県が開始当初の審査ですか?

安村氏:そうです。

髙野部会員:この学校検診は、その後で始まったのではないでしょうか?

安村氏:このやり方での倫理審査を受けて、承認されています。

髙野部会員:了解しました。

祖父江部会員:学校検診のことだけでなくてですね、16歳以上の未成年に関しての同意の取り方に関しては、どうですか? 倫理審査でこのやり方で認められてるわけですか?

志村 浩己 氏(福島県立医科大学医学部 臨床検査講座教授、放射線医学県民健康管理センター 甲状腺検査部門長):現在、あの、二次検査に関しては16歳以上は本人の同意も得ている方針。一次検査は20歳以上で本人の同意、20歳までは保護者の同意という同意書の書式で承認はいただいています。で、前回、お答えさせていただきましたように、段々、指針も移り変わっておりますので、今回の議論を踏まえて、また書式を見直したりと言うことで、もう一回、修正申請をすることになると思いますので、その時また、一緒に検討させていただきます。(注:志村氏は、28年度より、前任の大津留晶氏から甲状腺部門長を引き継いでいる。)

髙野部会員:今思い出したんですけども、あの、超音波検査の実施に関する提案についての審査と言うのは、されてるんでしょうか?

志村氏:あの、前回お示しさせていただきました同意のお知らせの文章とその同意書を提出して、あの、最初は承認から色々移り変わりがございますので、その都度、修正審査をしていただいて、追加したものを受診者の方に報告しているという(状況です?)。

鈴木座長:髙野委員、今、同意書の文面を変えて、そこの中に甲状腺検査のメリット・デメリットもきっちり書き込んだものが出てきて、それが倫理委員会に再度かかって、と言うふうに私は理解しておりますんで、髙野先生の懸念はその段階で解消されるのではないかと思ってます。

髙野部会員:ちょっと、私が福島県の方に書類__してみたところでは、超音波検査の利益・不利益という所、そこには、超音波検査については、基本的には侵襲性はないと__されてなかったような気がするんです。そこがもし、今の現状のままだとしたら、そこはやはり、審査を再度する必要があるのではないかと思います。

志村氏;研究計画書は__はそうかもしれませんけど、同意書は、あの、その都度提出してますので、先生が求められてるように出してるかちょっと分からないんですけども、まあ、その都度、可能な範囲で修正が__しております。で、まあ今回、前回は先行検査の評価部会・検討委員会の結論を踏まえた出ておりますので、今回また、本格検査2回目の評価部会・検討委員会のご決定を踏まえて、また_____。

鈴木座長:はい。では、どうもありがとうございました。あの、今日はかなり突っ込んだ議論がされました。あの、必ずしもこの部会の中で、ハーモナイスされるというのは期待はしておりません。やはり色んな意見があるというのを、いかに県民の皆さんにもちゃんと伝えた上で、検査を受けてもらう体制を作っていくことが一番重要であると思っておりますんで、あの、ぜひこの次までに具体的な文面として、今の検査のメリット・デメリット、その辺を分かりやすく書いた書式、もしそれで足りないんであれば付属のパンフレットようなものも使うと言うような形で準備を進めて行きたいと思ってます。その他、ございますでしょうか?特にないようでしたが、第11回の甲状腺検査評価部会、これで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

(書き起こし、以上)

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参考:「資料3−2」の「参考文献からの抜粋」に出てくる3つの論文についての解説ツイート
https://twitter.com/YuriHiranuma/status/1058386397801762816












注:最後のツイートで言及されている「4つめの文献」とは、鈴木部会長の、「髙野先生、文献の読み方、少しバイアスがかかっていらっしゃるかと非常に不安に思ってます。」「決して、国際学会が超音波じゃなくてpalpation、触診でやりましょうと言うふうなのを子どもに対して今、積極的に勧めているわけではないと言うふうに理解してます。」と言う発言について、髙野部会員がブログで、「4つのガイドラインにおける議論のいずれも超音波検査を使用するかどうか議論しており、結論として4つのいずれも超音波検査を推奨する方法として最終的に採用していないという点は重要である。」と述べていることに言及している。

メモ:2018年9月5日発表の甲状腺検査結果の数字の整理など


2018年9
月5日に、第32回「県民健康調査」検討委員会が開催され、2018年6月30日時点での3巡目(新たに3例が悪性ないし悪性疑いと診断、2例が甲状腺がんと確定)と4巡目の結果が公表された。

1〜3巡目の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数・年齢・性分布、および各年度ごとの手術症例の人数などは、「参考資料2 甲状腺検査の状況」にまとめられている。

3巡目の結果
  2016年5月1日から開始されている3巡目では、一次検査受診率が前回よりわずか0.3%増えて64.6%となり、結果判定率は5.8%増えて100.0%となった。1巡目と2巡目での受診率(それぞれ81.7%と71.0%)よりも低いことには変わりない。特に、検査年度4月1日時点での年齢が18歳以上の受診率は、前回より0.5%しか増えず、16.4%とかなり低いままである。
  二次検査対象者は前回より115人増えて1482人となり、受診者数は110人(平成28年度対象市町村で17人、平成29年度対象市町村で93人)増えて913人になり、受診率は2.9%増えて61.6%となった。1巡目の二次検査受診率は92.9%、2巡目では84.1%だったので、かなり下がっていることになる。二次検査の結果確定数は、平成28年度対象市町村で30人増えて547人(94.5%)、平成29年度対象市町村で107人増えて279人(83.5%)と、全体的には826人となり、全体的な結果確定率は5.0%増えて90.5%になった。平成28年度対象市町村から2人、平成29年度対象市町村から8人の計10人が新たに細胞診を受診し、平成29年度対象市町村から3人(男性1人、女性2人)が悪性ないし悪性疑いと診断された。1人が浜通り、2人が会津地方の住民である。この3人の事故当時年齢は、男性が9歳で、女性が10歳と11歳である。3人とも、2巡目での判定結果はB判定だった。手術症例は2例増えて11例となった。
  3巡目以降の二次検査実施状況は、市町村別ではなく地域別でしか公表されなくなっている。「別表5 地域別二次検査実施状況」によると、二次検査受診率は、避難区域等13市町村と中通りでは70%をやや超え、浜通りと会津地方では、前回よりそれぞれ8.1%と15.8%増えて41.3%と49.8%になった。今回発表された結果は、4月1日から6月30日までに集計されたものであるが、新学年開始直後のあわただしい時期よりも夏休み中の受診を選ぶ可能性もあると思われ、浜通りと会津地方での二次検査結果には、今後動きが見られると想定される。またこの別表によると、細胞診実施者10人中、6人が中通り、2人が浜通り、2人が会津地方の住民である。
  2巡目の結果との比較表によると、2巡目を未受診だった15048人からB判定が92人出ている。B判定1482人のわずか6%であり、この中から悪性ないし悪性疑いが出ているのか不明ではあるが、もしそうであれば、新規受診による早期発見に繋がっていることが望まれる。

4巡目の結果
  4巡目に関しては、これまで2018年5月1日から開始されているとされていたが、実際には2018年4月1日からの開始であることが説明された。一次検査対象者数は、3巡目よりも42818人減っているが、これは、25歳節目検査の対象者が除外されているからである。1993年度生まれの対象者(約22000人)は2018年度に、1994年度生まれの対象者(約22000人)は2019年度に節目検査を実施することになる。節目検査の結果は別途、計上される予定である。このように、節目検査対象者が除外されて行くにつれ、対象者はどんどんと減って行くことになる。
  4巡目の一次検査は、対象者293850人中、受診者が16362人と、受診率はまだ5.6%である。まだ953人でしか結果が確定しておらず、8人がB判定となったが、二次検査は未実施である。
  3巡目の結果との比較表によると、3巡目を未受診だった93人からB判定が2人出ている。

(注:前回検査との比較表における「前回検査」とは、前回検査での一次検査の結果であり、二次検査後の再判定が反映された結果ではない。)

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現時点での結果
前回発表された集計外症例数も含む、現時点での結果をまとめた。

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以下は、「参考資料2 甲状腺検査の状況」の4ページ目にも、まとめられている。

先行検査(1巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人
手術症例      102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例      14人

本格検査(2巡目)
悪性ないし悪性疑い 71(前回から変化なし)
手術症例      52人(甲状腺がん 52人:乳頭がん 51人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例     19人 

本格検査(3巡目)
悪性ないし悪性疑い 15(前回から3人増)
手術症例      11人(前回から2人増)(甲状腺がん 11人:乳頭がん11人)
未手術症例     4人

合計
悪性ないし悪性疑い 202人(良性結節を除くと201人
手術症例      165人(良性結節 1人と甲状腺がん 164人:乳頭がん 162人、低分化がん 1人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例       37人

(**「その他の甲状腺がん」とは、2015年11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第7版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。)

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2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された71人の1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人

3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された15人の2巡目での判定結果
A1判定:2人
A2判定:6人(結節2人、のう胞4人)
B判定:4人
2巡目未受診:3人

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他施設での手術症例について
  今回の検討委員会では、「手術の適応症例について」の訂正報告で、2016年3月末時点での手術症例132例(1巡目102例、2巡目30例)のうち、福島医大以外での手術症例が6例と報告されていたけど、2015年には7例だったことについて、実際には7例であると報告された。
  背景を説明すると、2015年8月31日に開催された第20回検討委員会で鈴木眞一氏が提出した資料「手術の適応症例について」では、2015年3月31日時点での手術症例104例(1巡目99例、2巡目5例)のうち、7例が他施設での手術症例とされていた。しかし、2016年9月末の国際専門家会議で鈴木眞一氏が出した臨床データでは、132例中6例が医大以外での手術例とされていた。(注:この臨床データについての2016年10月の記事での筆者の解説では、それまでの7例から6例に減っていることに言及している。)2017年11月30日に新メンバーで再開された甲状腺検査評価部会では、2016年9月に公表された鈴木眞一氏の発表データが日本語に直され、「手術の適応症例」として資料にされていた。
  福島県立医科大学の甲状腺・内分泌センター長である横谷氏の説明によると、2016年3月31時点での手術症例132例のうち、医大での手術症例が126例だとされていたのは、実は2016年4月に入ってからの手術例1例が含まれていたために間違いであり、3月31日時点での医大での手術症例は132例中125例で、他施設での手術症例は、2015年と同じく7例であるということだった。訂正資料では、スライド3の数字を2016年3月31日時点のものとして調整し、医大での手術例を126例から125例、うち甲状腺がん124例と訂正し、スライド4「福島県立医科大学における甲状腺がん125例の特徴」には、「2012年8月から2016年4月までの甲状腺がん手術症例」という注釈が追加されている。

  この125例の特徴については、データが公表された国際専門家会議の内容をまとめた英語書籍 "Thyroid Cancer and Nuclear Accidents"(山下俊一 & Gerry Thomas編集)にも収録されている。さいわい、その書籍での内容は、上記の集計ミスには影響されていないが、現場にいる本人が、国際会議での発表にあたり、データの整合性を取っていないことは驚きである。
  この他施設での手術症例7例については、甲状腺検査部門長の志村氏から口頭で追加情報が出されたが、その内容は、1巡目に関しては、知り得た範囲で医大以外の症例を含めて手術症例を報告しており、他施設での手術症例7例を含めたが、それ以降は、「研究倫理や個人情報保護に関する社会の考え方を反映し、他施設での手術症例は含んでいない」ということだった。さらに、記者会見でのおしどりマコ氏の質問の答えから、2巡目以降の他施設での手術症例を、福島医大は把握していないということが明らかになった。これは、現時点で悪性ないし悪性疑いとされた202人中、手術を受けていない37人が、仮に他施設で手術を受けて甲状腺がんと確定されていたとしても、その結果が公式発表には反映されていない可能性を示唆している。

  また前回、「甲状腺検査集計外症例の調査結果の速報」として2017年6月30日時点での集計外症例が公表されたが、その報告の確定版および更新について、アワプラネットTVの白石草氏から質問があった。驚くべきことに、「速報」としておきながら、実質、その報告が最終版とみなされており、2017年6月30日以降の集計外症例を把握する予定もないことが明らかになった。

メモ:2018年6月18日発表の甲状腺検査結果の数字の整理など


2018年6月18日に、第31回「県民健康調査」検討委員会が開催され、2018年3月31日時点での3巡目の結果(新たに2例が悪性ないし悪性疑いと診断)が公表された。1巡目は、結果概要が、2巡目では、2017年度追補版が公表された。4巡目の検査は2018年5月1日から開始されており、次回の検討委員会で実施状況が報告される見込みである。

1〜3巡目の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数・年齢・性分布、および各年度ごとの手術症例の人数などは、「参考資料3 甲状腺検査の状況」にまとめられている。

今回、甲状腺検査部門長が大津留晶氏から志村浩巳氏に変わっていることが判明した。なお、当日朝の大阪での地震の影響のため、大阪大学の髙野徹委員は急遽、欠席となった。

1巡目の結果
今回公表された結果概要は、一次・二次検査結果、B・C判定数と悪性・疑い数の地域別データ、悪性・疑い判定数と手術症例データをまとめた3ページにわたる。2016年度追補版とほぼ同内容ではあるが、なぜか、一次検査では対象者数が12人減って、結果判定数が1人減り、二次検査では結果確定数が1人増えている

2巡目の結果
2巡目の2017年度追補版では、第8回甲状腺検査評価部会での確定版の公表後に口頭発表された2例の手術症例(甲状腺がんの診断が確定)が追加された。

3巡目の結果
2016年5月1日から開始されている3巡目では、一次検査受診率が前回より7.4%増えて64.3%となり、結果判定率は0.8%増えて94.2%になった。1巡目と2巡目での受診率(それぞれ81.7%と71.0%)よりも低く、特に、検査年度4月1日時点での年齢が18歳以上の受診率は、前回より2.2%増えて15.9%となったものの、かなり低いままである。

二次検査対象者は前回より168人増えて1367人となり、受診者数は144人(平成28年度対象市町村で30人、平成29年度対象市町村で114人)増えて803人、受診率は3.7%増しの58.7%となった。結果確定数は平成28年度対象市町村で23人増えて517人(92.0%)、平成29年度対象市町村で93人増えて172人(71.4%)と、全体的には689人となり、全体的な結果確定率は1.1%減って85.8%になった。平成28年度対象市町村から3人、平成29年度対象市町村から1人の計4人が新たに細胞診を受診し、平成28年度対象市町村から2人(男性1人、女性1人)が悪性ないし悪性疑いと診断された。この2人の事故当時年齢は、女性が11歳、男性が16歳である。また、この人の2巡目での判定結果は、1人がA1で、2人が2巡目を未受診だった。手術症例は2例増えて9例となった。

3巡目以降の二次検査実施状況は、市町村別ではなく地域別でしか公表されなくなっている。「別表5 地域別二次検査実施状況」によると、二次検査受診率は、避難区域等13市町村と中通りで70%前後、浜通りと会津地方ではそれぞれ33.2%と34.0%であり、1巡目(92.9%)と2巡目(84.1%)と比べて低くなってはいるが、少なくとも、浜通りと会津地方での二次検査は続行中と思われる。またこの別表によると、細胞診実施者4人はすべて中通りの住民であることがわかる。

25歳節目検査の結果

今回、3巡目結果概要の末尾で、平成4年度生まれの対象者22653人における25歳節目検査の結果が公表された。
注:2巡目対象者数には、甲状腺検査未受診の25歳節目検査対象者が計上されたが、3巡目では、25歳節目検査対象者(平成4年度、5年度生まれ)は別途計上となるために対象者に入っておらず、3巡目の一次検査対象者数は、2巡目よりも44576人少なくなっている。

一次検査の受診率は、わずか8.4%とかなり低い。うち、97.1%にあたる1846人で結果が判定されており、A2判定が1012人(5.0mm以下の結節が38人)、B判定は80人(5.1mm以上の結節が79人、20.1mm以上ののう胞が1人)だった。一次検査受診者1846人の約3分の1である577人が甲状腺検査を未受診だった。B判定80人の前回検査結果は、A1判定が3人、A2判定が21人、B判定が28人、未受診が28人だった。B判定80人の35%が前回検査未受診だったことになる。

二次検査は、対象者80人中41人が受診し、うち31人で結果が確定している。細胞診実施者数は0人で、31人全員がA1&A2相当以外と判定され、「概ね6ヵ月後または1年後に診療(予定)となる方およびA2の基準値を超えるが次回検査となる方」だった。31人すべてで細胞診が実施されなかったことから、甲状腺がん以外の何らかの甲状腺疾患であると思われる。

志村氏によると、25歳節目検査対象年度に検査を受診しなかった場合は、希望すれば、次回の30歳節目検査の前であっても節目検査を受けることが可能であるということだが、対象者にもその事実が周知されているかどうかは不明である。

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以下は、「参考資料3 甲状腺検査の状況」の4ページ目にも、まとめられている。

先行検査(1巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人
手術症例      102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例      14人

本格検査(2巡目)
悪性ないし悪性疑い 71(前回から変化なし)
手術症例      52人(甲状腺がん 52人:乳頭がん 51人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例     19人 

本格検査(3巡目)
悪性ないし悪性疑い 12(前回から2人増)
手術症例      9人(前回から2人増)(甲状腺がん 9人:乳頭がん9人)
未手術症例     3人

合計
悪性ないし悪性疑い 199人(良性結節を除くと198人
手術症例      163人(良性結節 1人と甲状腺がん 162人:乳頭がん 160人、低分化がん 1人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例       36人

(**「その他の甲状腺がん」とは、2015年11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第7版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。)

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2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された71人の1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人

3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された12人の2巡目での判定結果
A1判定:2人
A2判定:6人(結節2人、のう胞4人)
B判定:1人
2巡目未受診:3人

*なお、2巡目以降は、一次検査結果の表4で前回検査との比較が示されているが、この表における「前回検査」とは、前回での一次検査の結果であり、二次検査後の再判定が反映された結果でないことが、志村氏の理解であると説明された。

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「別枠」データについて

今回の検討委員会では、二次検査後に通常の保険診療に移行してから甲状腺がんと診断された、いわゆる「別枠」データについての調査報告は、まだ行われなかった。しかし、「資料4 県民健康調査甲状腺検査サポート事業の実施状況について」によると、少なくとも3人が「別枠」に相当することが判明した。

2015年7月10日から開始されたサポート事業については、昨年6月5日の第27回「県民健康調査」検討委員会でも2015〜6年度の実施状況が報告されている。今回は、2017年度の情報が追加されているが、支援金の交付件数は述べ313件、交付された実人数は233名と、前回よりもそれぞれ88件と41名増えており、増加人数はすべて2017年度のものである。手術を含む交付件数は実人数82名で、前回報告された67名に、2017年度の15名が追加されている。82件の病理診断結果は、77件が甲状腺がん(乳頭がん76件、低分化がん1件)、5件が甲状腺がん以外(濾胞腺腫等)である。2017年度に追加された15名は、すべて甲状腺乳頭がんである。

77件のうち、72件が二次検査で悪性ないし悪性疑いと判定され、5件がそれ以外となることが、福島県職員から説明された。この5件の内訳は、「二次検査では悪性ないし悪性疑いと診断されず、別疾患等で通院された後に甲状腺がんと診断された方が3件、二次検査の対象となったが二次検査を受診せず、他の医療機関を受診し甲状腺がんと診断された方が2件」ということであった。この3件が、「別枠」に相当し、残り2件は、甲状腺検査の「枠外」で診断されたことになる。この説明での「他の医療機関」とは、福島県立医科大学と連携している医療機関以外であると思われるが、「県民健康調査甲状腺検査サポート事業支援金申請確認表」によると、他の医療機関での受診であっても、サポート事業開始前に受診した場合は、支援金申請が許可されるようである。

220人の手術症例とこれまで報告されてきた臨床データについて

   2024年11月12日に開催された 第53回「県民健康調査」検討委員会 (以下、検討委員会)および3日後に開催された 第23回「県民健康調査」検討委員会「甲状腺検査評価部会」 (以下、評価部会)で、 220例の手術症例 について報告された。これは、同情報が 論文 として20...