*末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節かのう胞)が、一箇所では公式に公表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。
2021年10月15日に第 43回「県民健康調査」検討委員会が開催され、初期から委員を努めた春日文子氏を含む6人が解任され、新任の6人を含む18人が、2021年8月1日から2023年7月31日までの2年間の任期を開始した。”議論の継続性のために”という委員の推薦により、星北斗委員が座長として再任された。今回解任された春日氏よりも長く、第1回から継続して委員を務めてきた星氏が解任されることなく、あまつさえ座長に再任され続けることに、検討委員会の方向性を垣間見ることができる。甲状腺検査評価部会の今期の部会員構成に変わりはなく、おそらく鈴木元氏が部会長に再選されて議論の”継続性”とやらを保つのであろう。
今回、報告されたのは、進捗中の4巡目と5巡目の2021年6月30日時点のデータで、前回から3ヶ月分の結果である。パンデミックの影響が継続していることもあり、数字の動きは大きくないが、5巡目の二次検査の結果が初めて公表された。4巡目と5巡目いずれでも新たに3人が悪性ないし悪性疑いと診断され、4巡目では2人、5巡目では1人が手術で甲状腺乳頭がんと確定した。また、前回、25歳時節目検査における悪性ないし悪性疑い 9人の前回検査について、実施概要での記載が口頭発表と一致しなかった件について、実施概要の訂正版が公表され、口頭発表のデータが正しかったことが分かった。
各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数、平均年齢と平均腫瘍径、および各年度ごとの手術症例の人数は、「参考資料 4 甲状腺検査結果の状況」にまとめられている。
全体的には、前回の公表データ(第 42 回検討委員会で公表された「参考資料 5 甲状腺検査結果の状況」を参照)と比べると、悪性ないし悪性疑い例は6人増えて266人(良性1人含む)に、手術で甲状腺がんと確定された症例は3人増えて221人となっている。
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現時点での結果
これまでに発表された集計外症例数を含む、現時点での結果をまとめた。過去記事で説明したように、2021年3月22日に開催された第16回甲状腺検査評価部会で公表された福島県のがん登録情報から見つかった24人と、甲状腺外科医の鈴木眞一氏が2019年から国内外の学会などで報告しており、ようやく「福島県立医科大学における手術症例の報告」として公表された集計外症例35人(うち甲状腺がん19人)も含まれている。データが突合されていないので実証は不可能ながら、これまで公式に集計外症例と公表されている11人(福島医大の横谷進氏らによる英語論文で報告されており、すべて甲状腺乳頭がん)も、この19人に含まれていると推定する。
4巡目検査の結果
2018年4月1日から開始されている4巡目(25歳節目検査対象者は除外)では、新たに 54人が一次検査を受診し、受診率は62.3%を保持している。二次査対象者は 8人増えて 1,391人となり、うち新たに二次検査を受診したのは7人のみで、5人が細胞診を受診した結果、3人が新たに悪性ないし悪性疑いと診断された。
この 3人は、事故当時年齢が8歳と14歳の男性2人と、同じく9歳の女性である。2人が中通り、1人が浜通りの住民で、男性2人が2018年度対象市町村、女性1人が2019年度対象市町村の住民である。この 3人の 3巡目の結果は、A2のう胞が 1人とBが2人である。
4巡目の悪性ないし悪性疑いは 36人となり、前回結果は、A1が 6人、A2のう胞が 13人、A2結節が 5人、A2のう胞&結節が1人、Bが 8人、未検査が 3人となる。
手術症例は、2019年度実施市町村で 2人増え、4巡目で甲状腺がんと確定されたのは合計 29人となった。この 29人全員が甲状腺乳頭がんだった。
5巡目検査の結果
2020年度から開始されている 5巡目検査は、COVID-19パンデミックのために県内学校での検査が一部延期、医療機関での検査も一部制限されたことから、通常の 2年間での実施が困難となり、小学校、中学校と特別支援学校では 3年間(2020年度分を 2年間、2021年度分を 2022年に繰り越し)、高等学校では 2021〜2年度の 2年間(2020年度実施校を除く)で実施されることになっている。
2021年6月30日時点での一次検査受診者は前回から8,992人増えて32,404人(うち 4,416人が県外受診)で、受診率が前回の 9.3%から12.8%に上がった。年齢階級別受診率は、8〜11歳で前回の 16.4%から 24.2 %、12〜17歳で 9.7%から 13.1%、18歳以上で 4.2%から 5.2%に上がっており、学校検査が進捗していることがわかる。
今回、やっと二次検査の結果が公表され、B判定291人のうち175人が受診し、7人が細胞診を受診した結果、女性 3人が悪性ないし悪性疑いと診断された。この 3人については、人数が少ないために、年齢や平均腫瘍径は公表されず、2人が2020年度対象市町村、1人が2021年度対象市町村の住民であることしか分かっていない。この 3人の前回結果も公表されなかった。なお、2021年度対象市町村の住民である1人は手術で甲状腺乳頭がんと確定している。
25歳時節目検査の結果の訂正について
前回、25歳時節目検査における悪性ないし悪性疑い 9人の前回検査について、実施概要での記載が口頭発表と一致しなかったが、実施概要の訂正版が公表された。口頭発表のデータが正しいとして、9人の前回検査の結果は、A2が1人、Bが 2人、未受診が 6人となる。また、A2の1人がのう胞であるか結節であるか、はっきりと述べられていなかったが、今回、結節であることが判明した。
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1〜5巡目と25歳時節目検査の結果のまとめ
同情報は、「参考資料 4 甲状腺検査結果の状況」の5ページ目にもまとめられている。
先行検査(1巡目)(結果確定版の2016年度追補版はこちら)
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例 102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例 14人
本格検査(2巡目)(結果確定版の2020年度更新版はこちら)
悪性ないし悪性疑い 71人(前回から変化なし)
手術症例 55人(前回から 1人増)(甲状腺がん 55人:乳頭がん 54人、その他の甲状腺がん**1人) 未手術症例 16人
本格検査(3巡目)(結果確定版の2020年度追補版はこちら)
悪性ないし悪性疑い 31人(前回から変化なし)
手術症例 29人(前回から変化なし)(甲状腺がん 29人:乳頭がん 29人)
未手術症例 2人
本格検査(4巡目)(結果概要はこちら)
悪性ないし悪性疑い 36人(前回から 3人増)
手術症例 29人(前回から 2人増)(甲状腺がん 29人:乳頭がん 29人)
未手術症例 7人
本格検査(5巡目)(実施状況はこちら)
悪性ないし悪性疑い 3人
手術症例 1人(甲状腺がん 1人:乳頭がん 1人)
未手術症例 2人
25歳時の節目検査(実施状況はこちら)
悪性ないし悪性疑い 9人(前回から変化なし)
手術症例 6人(前回から変化なし)(甲状腺がん 6人:乳頭がん 5人、濾胞がん 1人)
未手術症例 3人
合計
悪性ないし悪性疑い 266人(良性結節を除くと265人)
手術症例 222人(良性結節 1人と甲状腺がん 218人:乳頭がん 215 人、低分化がん 1人、濾胞がん1人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例*** 44人
注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年 11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第 7 版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。
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前回検査の結果
2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 71人の 1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞 25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低 2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人
3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 31人の 2巡目での判定結果
A1判定:7人
A2判定:14人(結節 4人、のう胞 10人)
B判定:7人
2巡目未受診:3人
4巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 36人の 3巡目での判定結果
A1判定:6人
A2判定:19人(結節 5人、のう胞 13人、結節&のう胞1人)
B判定:8人
3巡目未受診:3人
25歳時節目検査で悪性ないし悪性疑いと診断された9人の前回検査での判定結果
A1判定:0人
A2判定:1人(結節 1人)
B判定:2人
未受診:6人