*以下は、岩波『科学』2021年6月号の特集「被曝影響評価をめぐる問題群」に掲載されたものである。転載禁止。
福島県の甲状腺検査についてのファクトシート(2021年4月アップデート版)
福島第一原子力発電所事故から10年が過ぎ、開始から9年半となる甲状腺検査は、現時点で5巡目が進行中である。本誌2017年10月号に最初のファクトシートが掲載されてからの3年半、様々な問題が浮上している。受診率が低下し続ける一方、25歳時節目検査への移行により3巡目以降の対象者が減少するという検査自体の問題。2019〜20年には「県民健康調査」検討委員会(以下、検討委員会)の開催が年4回から3回に減り、結果としてデータ公表に遅延がみられているという、運営上の問題。集計外症例データの存在や1〜2巡目のベースライン化など、前回触れられていた事象の顕在化。2巡目の検査結果を検討すべく招集された甲状腺検査評価部会(以下、評価部会)においては、データの非開示や解析の不透明さ、過剰診断論の横行が際立った。これらの多くは、甲状腺検査により診断された甲状腺がんに放射線被ばくの影響があるかについての公明な評価を阻むものである。現在、評価部会では3巡目の検査結果が検討されているが、2巡目と同様、不明瞭な解析の単なる報告会と化している。以下に、前回以降の経緯と現状を整理する。
甲状腺検査の経緯と現状
2021年4月時点で公表されている最新データは2020年3月か6月末のもので、2021年1月15日に開催された第40回検討委員会で報告された。第29回検討委員会(2017年12月25日開催)以降、参考資料「甲状腺検査結果の状況」として、各検査回の一次検査と二次検査の結果や、悪性ないし悪性疑いと判定された人数及び手術症例がまとめられており、膨大なデータが少しは把握しやすくなっている。
2011〜3年度に実施された1巡目の結果には、2016年度追補版[1]以降の動きはないが、2014〜5年度実施の2巡目では、手術症例数が、2017年追補版[2]で2人、第39回検討委員会(2020年8月31日開催)でさらに2人が追加[3]されている。
2016〜7年度に実施された3巡目結果の確定版は、第15回評価部会(2020年6月15日開催)で最初に公表されたが、第39回検討委員会の資料[4]にも含まれているので、第8回評価部会での公表後に検討委員会で独立した資料として報告されなかった2巡目結果の確定版とは異なり、公式英訳が出るはずである。
2018〜9年度に実施された4巡目は、一次検査・二次検査共に数字に動きがあるため、2020年6月末時点で結果は確定していない。2020〜1年度に実施予定の5巡目は、2020年初めに発覚し3月にパンデミック宣言されたCOVID−19による休校措置などのために大幅に遅れており、実施期間が2022年度まで延長されている。
対象者数は、1巡目の367,637人から、2巡目では、事故当時胎児だった人らを含む2011年度生まれの人たちも対象となったため、381,244人に増えた。それ以降は、25歳時節目検査の対象となる人たちが除外され始め、3巡目では336,670人(1992〜3年度生まれを除く)、4巡目では294,240人(1992〜5年度生まれを除く)、5巡目では252,821人(1992〜7年度生まれを除く)に減っている。この減少は、図1の年齢分布グラフの右部分の空白に反映されている。
一次検査の受診率は、1巡目の81.7%から下がる一方で、2巡目は71.0%、3巡目は64.7%、4巡目は61.5%、進捗が遅れている5巡目は0.2%、25歳時節目検査に至っては、わずか8.4%である。2〜4巡目では、特に、18歳以上の受診率の低さが際立つ。1巡目では事故当時年齢16〜18歳の受診率が52.7%であったところ、2巡目では検査時年齢18歳以上で25.7%、3巡目では16.9%、4巡目では12.4%、5巡目では0.5%と、低下が続く。(5巡目は、学校検査の遅れのため、18歳以上の受診率の方が全体よりも大きくなっている。)
2021年4月時点での最新データ
現時点で把握できている甲状腺がんデータを表1に示した。“集計内”の公式データを小計とし、そこに後述の集計外データとがん登録データを入れて合計とした。1〜5巡目と25歳時節目検査の結果は、悪性ないし悪性疑いは252人(1巡目116人、2巡目71人、3巡目31人、4巡目27人、25歳時節目検査7人)だった。このうち203人(1巡目102人、2巡目54人、3巡目27人、4巡目16人、25歳時節目検査4人)で手術が施行され、202人が甲状腺がんと確定している。病理組織所見は、199人が甲状腺乳頭がん、1巡目の1人が低分化がん、25歳時節目検査の1人が濾胞がん、2巡目の1人がその他の甲状腺がんである。集計外の手術症例35人(甲状腺がん19人)、福島県がん登録情報から算出された24人(甲状腺がん24人)も含めると、悪性ないし疑いは311人、うち甲状腺がんと確定しているのは245人となる。(ちなみに、細胞診の最終結果を示した論文[5]によると、1巡目の116人中106人が悪性、10人が悪性疑いで、2巡目の71人中65人が悪性、6人が悪性疑いだったので、16人が未手術だが細胞診で悪性と診断されたことになる。実際の甲状腺がん症例数は、実質、261人である。)
表1 2020年6月30日時点での結果(集計外データは2018年末、がん登録データは2017年末時点)
検査回/ 受診率 (%) |
細胞診による悪性ないし悪性疑い数 |
手術 症例数 |
甲状腺 がん 確定数 |
甲状腺 乳頭 がん |
甲状腺 低分化 がん |
甲状腺 濾胞 がん |
その他の 甲状腺 がん |
1巡目/81.7 |
116*1 |
102*1 |
101 |
100 |
1 |
0 |
0 |
2巡目/71.0 |
71 |
54 |
54 |
53 |
0 |
0 |
1 |
3巡目/64.7 |
31 |
27 |
27 |
27 |
0 |
0 |
0 |
4巡目/61.5 |
27 |
16 |
16 |
16 |
0 |
0 |
0 |
5 巡目/ 0.2 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
25歳*2 /8.4 |
7 |
4 |
4 |
3 |
0 |
1 |
0 |
小計 |
252 |
203 |
202 |
199 |
1 |
1 |
1 |
集計外*3 |
35 |
35*5 |
19 |
16 |
0 |
2 |
1 |
がん登録*4 |
24 |
24 |
24 |
不明 |
不明 |
不明 |
不明 |
合計 |
311*5 |
262*6 |
245 |
215 |
1 |
3 |
2 |
*1 1巡目で手術後に良性結節と診断された1例を含む。
*2 今回は2017-9年度に25歳となる受診者の検査結果。
*3 福島県立医科大学で手術が施行されたが、甲状腺検査結果の集計から漏れていた症例。
*4 2012-7年の福島県がん登録情報より。
*5 手術後に良性と診断された16例を含む。
*6 手術後に良性と診断された計17例を含む。
前回検査の結果
前回検査の結果は、2巡目で悪性ないし悪性疑いとされた71人ではA1判定が33人、A2判定が32人(結節7人、のう胞25人)、B判定が5人、未受診が1人だった。3巡目の31人では、A1判定が7人、A2判定が14人(結節4人、のう胞10人)、B判定が7人、未受診が3人だった。4巡目の27人では、A1判定が5人、A2判定が16人(結節4人、のう胞12人)、B判定が5人、未受診が1人だった。25歳時節目検査の7人では、A2判定が1人(結節かのう胞かは未公表)、B判定が1人、未受診が5人だった。2巡目以降の悪性ないし悪性疑い136人中、68%にあたる92人で、前回検査では、がんや前がん病変が疑われるような超音波所見がみられず、10人が未受診だったことになる。集計外症例では不明だが、がん登録の24人では3人が未受診だった。
集計外症例について
集計外症例とは、福島県立医科大学(以下、福島医大)病院で手術が施行されたが公式データに集計されていない症例である。本誌電子版2020年3月号[6]では2017年6月末時点での12人(うち甲状腺がん11人)について説明しており、本誌2021年3月号に資料として掲載されている最新データに含まれているのはこの数字である。一方、表1に示した35人というのは、2018年12月末までに手術が施行された180人のうち、甲状腺検査“以外”で発見された症例数である。この35人中、術後診断で甲状腺がんと確定した19人が、集計外の甲状腺がん症例ということになる。データ集計時期から推測すると、この19人に前述の11人が含まれていると推測されるので、ここでは集計外症例を35人とした。
12人の集計外症例は、第10回評価部会(2018年7月8日開催)で学内調査の“速報”結果として報告され、2020年1月9日に福島医学会の英文学術誌 『Fukushima Journal of Medical Science』 に福島医大の横谷進氏を筆頭著者として論文掲載[7](以下、横谷論文)された。一方、180人データは、福島医大の甲状腺外科医・鈴木眞一氏が、2019〜20年の国内外の学会等で発表したもので、第16回評価部会(2021年3月22日開催)の資料5「福島県立医科大学における手術症例の報告」[8]として、やっと“公式”となった。
この2データを表2にまとめたが、若干、整合性が取れない点がある。横谷論文の11人のうち、1人はびまん性硬化型乳頭がんと診断されているのだが、180人データの19人には、びまん性硬化型という組織型が見当たらないのである。後日、他の組織型に再分類されたと考えることもできるのだが、19人の中に11人が包括されない可能性もある。そもそも、“速報”後に調査が続けられて、“続報”が報告されていれば、第三者がデータの突合に悩む必要もないのだが、横谷論文には、「集計外症例よりも甲状腺検査でみつかる甲状腺がんの方がはるかに多いため、集計外症例を入れようが入れまいが、福島県における小児とAYA世代の甲状腺がんの全貌は変わらない」という記述があり、集計外症例の正確な把握は切り捨てているようである。
表2 2つの集計外データ(年齢、腫瘍径、病理組織所見は、甲状腺がん症例のデータ)
データソース |
横谷論文 |
鈴木眞一氏の180人データ |
データ集計時期 |
2017年6月30日 |
2018年12月31日 |
集計外症例全数 |
12 |
35 |
甲状腺がん症例数 |
11 |
19 |
男性:女性 |
4:7 |
5:14 |
事故時年齢(平均と範囲)(歳) |
13.8 ± 4.0(未公表) |
13.9 ± 3.6(4〜18) |
診断時年齢(平均と範囲)(歳) |
18.3 ± 3.8(未公表) |
19.4 ± 3.9(9〜24) |
腫瘍径(平均と範囲)(mm) |
14.0 ± 5.1(6.3-24.6) |
21.6 ± 12.1(7〜43) |
病理組織所見(組織型) |
乳頭がん11(古典型9、濾胞型1、びまん性硬化型1) |
乳頭がん16(古典型12、濾胞型4)、濾胞がん2、その他1* |
*結節性硬化症に合併する好酸性細胞型乳頭がん
甲状腺がんの臨床データ
臨床データは、本来なら、臨床医らが甲状腺検査の結果について議論する場である検討委員会や評価部会で、当然共有されるべきものである。鈴木眞一氏は2015年3月以降、検討委員会や評価部会に一切姿を見せなくなったが、それ以前は、少しは共有され、質問への答えも得られていた。しかし今では、委員らが繰り返し要望しても、学会や論文で発表された内容ですらなかなか公表されず、たとえされたとしても詳細まで至らないことが多い。実際、180人データが評価部会で報告されたと言っても、単に2020年2月に開催された第2回放射線医学県民健康管理センター国際シンポジウム報告書の要旨から転載されたもので、術後病理データの詳細に欠けている。報告自体、横谷氏が読み上げただけで、現場の医師不在の中、合併症などについての臨床医らからの質問にも答えられない有様だった。
それに反し、放射線影響を否定するような論文は、検討委員会や評価部会でしっかりと“論文報告”され、公式資料の一部となる傾向があり、国外への情報発信の偏向がうかがえる。現在、甲状腺検査サポート事業から経済的支援を受けた患者らの臨床情報を収集する調査も進行中のようだが、これとて、はたして詳細がどこまで共有されるのか、公式データと突合されるのかも疑問である。
前回のファクトシートでは、2012年8月〜2016年4月に手術で甲状腺がんと確定した132人(1巡目102人、2巡目30人)のうち、福島医大で手術が施行された125人(残りの7人は他施設で手術[9])の外科的・病理的特徴について解説した。ちなみに、2巡目以降は他施設での手術症例は報告どころか把握すらされていないので、この125人のうち30人が2巡目、残りの95人が1巡目での診断となる。現時点の最新臨床データは前述の180人データであるが、公表されているデータは限定されている。そこで、以下には、公式データおよび180人データの学会発表での詳細を整理した。
まずは、公式データから分かる範囲内での基本情報を表3にまとめた。
表3 悪性ないし悪性疑い症例の性別、年齢、腫瘍最大径(2020年3〜6月時点)
検査回(症例数) |
1巡目 (116) |
2巡目 (71) |
3巡目 (31) |
4巡目 (27) |
25歳(7) |
女性:男性 (性比) |
77:39 (2.0:1) |
39:32 (1.2:1) |
18:13 (1.4:1) |
16:11 (1.5:1) |
5:2 (2.5:1) |
事故時年齢 (歳) (範囲) (歳) |
14.6 ± 2.6 (6-18) |
12.6 ± 3.2 (5-18) |
9.6 ± 2.9 (5-16) |
8.0 ± 3.0 (0-12) |
17.1 ± 0.7 (16-18) |
検査時年齢 (歳) (範囲)(歳) |
17.3 ± 2.7 (8-22) |
16.9 ± 3.2 (9-23) |
16.3 ± 2.9 (12-23) |
16.2 ± 3.0 (9-20) |
25.3 ± 1.0 (24-27) |
腫瘍最大径 (mm) (範囲) (mm) |
13.9 ± 7.8 (5.1-45.0) |
11.1 ± 5.6 (5.3-35.6) |
12.9 ± 6.4 (5.6-33.0) |
12.8 ± 6.1 (6.1-29.4) |
22.6 ± 15.6 (10.8-49.9) |
性比については後述するが、通常よりも男性の割合が大きい。検査回が進むにつれ、事故時年齢がかなり低くなってはいるが、手術時年齢の変動が小さいことからも、時間経過とともに発症しているのだと思われる。2021年9月の国連総会への報告に先行し3月に公開されたUNSCEARの2020年報告書[10]に、「最もリスクが高いのは最初の被ばく時に胎児〜5歳だった女性である」と記述されているが、図1で示されているように、4巡目の悪性ないし悪性疑いの中に、事故当時0歳、2歳と4歳の女性が1人ずつと、5歳未満が3人いる。
なお、図1のグラフが左寄りで右部分に不自然な余白があるのは、2018〜9年度に実施された4巡目では、2018〜21年に25歳時節目検査の対象となる1992〜5年度生まれと1996年度生まれの一部の人が除かれているためである。検査回が進むごとに、この余白部分が大きくなってくる。
図1 4巡目の悪性ないし悪性疑い27人の事故当時年齢と性分布
(第40回検討委員会 参考資料4「甲状腺検査結果の状況」より転載)
腫瘍径
腫瘍最大径は、25歳時節目検査の7人で平均22.6 mmと大きくなっている。(この7人中5人は、これ以前に甲状腺検査を受けていなかった。)手術症例のみの腫瘍径データは非公表なので、参考として表4の甲状腺がん症例180人のデータと比較すると、1〜3巡目の悪性ないし悪性疑い症例よりも、甲状腺がんと手術確定した症例での腫瘍径の方が大きいこともわかる。表4のがん症例での腫瘍径の最大値は、1巡目では15mm、3巡目では2.2mm大きい。鈴木眞一氏によると、集計外がん症例19人での腫瘍最大径がやや大きめなのは、濾胞性腫瘍が含まれているからである。
表4 甲状腺がん症例180人の性別、年齢、腫瘍最大径(2018年12月末時点)
検査回 |
1巡目 (94) |
2巡目 (52) |
3巡目 (15) |
集計外(19) |
合計(180) |
男性:女性 (男女比) |
32:62 (1:1.9) |
22:30 (1:1.4) |
9:6 (1:0.7) |
5:14 (1:2.8) |
68:112 (1:1.6) |
事故時年齢 (歳) 範囲 (歳) |
14.6 ± 2.7 (8-18) |
12.6 ± 3.3 (5-18) |
10.9 ± 3.0 (6-16) |
13.9 ±3.6 (4-18) |
13.3 ± 3.3 (4-18) |
手術時年齢 (歳) 範囲(歳) |
18.0 ± 2.9 (9-23) |
17.5 ± 3.4 (10-23) |
17.3 ± 3.0 (13-23) |
19.4 ± 3.9 (9-24) |
17.9 ± 3.3 (9-24) |
腫瘍最大径 (mm) 範囲 (mm) |
15.8 ± 9.8 (5.9-60.0) |
13.7 ± 6.5 (6.4-35.6) |
17.8 ± 6.9 (10.3-35.2) |
21.6 ± 12.1 (7-43) |
16.0 ± 9.3 (5.9-60.0) |
180人データでは、術後のリンパ節転移(pN1)、甲状腺周囲組織浸潤(pEx1)と肺転移(cM1)は、それぞれ、138人(76.7%)、84人(46.7%)、 3人(1.7%)だった(表5)。125例での97人(77.6%)、49人(39.2%)、3人(2.4%)と比べると、pEx1の割合が大きい。(しかし、2019年12月にpEx1から微少浸潤が外されている。後述参照。)
表5 180人データのpTNM所見(TNM分類第7版、甲状腺取扱い規約第7版による)
(2018年12月末時点)
検査回 |
1巡目 (94) |
2巡目 (52) |
3巡目 (15) |
集計外 (19) |
合計 |
% |
pT1a |
17 (18.1) |
20 (38.5) |
1 (6.7) |
1 (5.3) |
39 |
21.7 |
pT1b |
33 (35.1) |
7 (13.5) |
2 (13.3) |
6 (31.6) |
48 |
26.7 |
pT2 |
3 (3.2) |
0 |
0 |
1 (5.3) |
4 |
2.2 |
pT3 |
41 (43.6) |
25 (48.1) |
11 (73.3) |
11 (57.9) |
88 |
48.9 |
pT4 |
0 |
0 |
1 (6.7) |
0 |
1 |
0.6 |
|
||||||
pN0 |
24 (25.5) |
7 (13.5) |
3 (20.0) |
2 (10.5) |
36 |
20.0 |
pN1a |
53 (56.4) |
42 (80.8) |
11 (73.3) |
9 (47.4) |
115 |
63.9 |
pN1b |
17 (18.1) |
3 (5.8) |
1 (6.7) |
2 (10.5) |
23 |
12.8 |
pN1 |
70 (74.5) |
45 (86.5) |
12 (80.0) |
11 (57.9) |
138 |
76.7* |
pNX (所属リンパ節転移の評価が不可能) |
6 (31.6) |
6 |
3.3 |
|||
|
||||||
pEx0 |
54 (57.4) |
26 (50.0) |
3 (20.0) |
11 (57.9) |
94 |
52.2 |
pEx1 |
40 (42.6) |
25 (48.1) |
11 (73.3) |
8 (42.1) |
84 |
46.7 |
pEx2 |
0 |
0 |
1 (6.7) |
0 |
1 |
0.6 |
pExX |
0 |
1 (1.9) |
0 |
0 |
1 |
0.6 |
(甲状腺外浸潤の評価が不可能) |
||||||
cM0 |
91 (96.8) |
52 (100.0) |
15 (100.0) |
19 (100.0) |
177 |
98.3 |
cM1 |
3 (3.2) |
0 |
0 |
0 |
3 |
1.7 |
* 鈴木眞一氏の学会発表や評価部会の資料では72%だが、学会発表データの数字から計算すると76.7%となる。
手術方法
180人中173人(96.1%)は甲状腺の片側、7人(3.9%)で両側に腫瘍が見つかり、術式は、甲状腺全摘が8.9%、片葉切除が91.1%と、いずれも125人データとほぼ同じ割合である。集計外がん症例19人のうち片葉切除は17人で、うち濾胞性腫瘍が疑われた5人が内視鏡手術を受けている。リンパ節郭清は、125人すべてが中央領域、さらに19.2%が外側領域でも実施されていたのと比べ、180人データでは、中央領域は82.8%、外側領域は14.4%、内視鏡手術を受けた前述の5人(2.8%)ではリンパ節郭清は行われなかった。(この5人は、リンパ節転移の評価が不可能であるpNXに入っている。)なお、原発事故から76ヶ月時点(2017年7月)で、片葉切除164例の7%、つまり11例で“再手術”が行われているが、あくまでも、“再発”ではなく“再手術”であることが強調されている。
甲状腺乳頭がんの組織型について
乳頭がん199人全例の組織型は不明ながら、福島医大で手術が施行された症例では、1巡目の甲状腺がん101人中94人のうち、乳頭がんと診断された93人では、84人が古典型、3人が濾胞型、2人が充実型、4人が篩型・モルラ型である。2巡目の甲状腺がん54人中52人のうち、乳頭がんと診断された51人では、48人が古典型、1人が濾胞型および充実型、2人がびまん性硬化型である。3巡目の甲状腺がん27人中15人はすべて古典型の乳頭がんで、4巡目の甲状腺がん16人はすべて乳頭がんであるが、組織型は公表されていない。なお、検討委員会では報告されていないが、予後不良の高細胞型乳頭がんが1〜2巡目の2人(診断時年齢15〜18歳)でみつかっていることが、後で紹介する論文のひとつ(2020年論文)からわかっている。
2巡目結果についての見解
2017年11月30日の第8回評価部会を皮切りに、新任期の部会員らによる2巡目の検査結果の検討が始まったが、前部会長の甲状腺外科医である清水一雄氏は部会員として再任すらされず、新任の鈴木元氏が部会長に任命され、大阪大学の髙野徹氏が検討委員と評価部会員を兼任(日本甲状腺学会により推薦)するという、異例の展開となった。2012年から線量再評価の研究を担っていた鈴木元氏は、部会長就任の1ヶ月前の第28回検討委員会(2017年10月23日開催)で、甲状腺被ばく線量推計値がUNSCEARの推計値を大幅に下回ったと報告[11]したばかりだった。その鈴木元氏が部会長に任命され、臨床現場での理解が深い清水氏が外されたため、評価部会の方向性が危ぶまれた。
しかし、議論は思わぬ報告に転がり出した。髙野部会員(独自の芽細胞発がん説を提唱)が、過剰診断説を推し出し、同じく大阪大学の祖父江友孝部会員と、がん検診そのものの利益・不利益、心理的・社会的影響という面での早期発見・治療の不利益、学校検査の強制性や同意書の不十分さを声高に訴え続けたため、2巡目結果の検討どころでなくなったのである。甲状腺検査や手術が妥当であるとする甲状腺外科医の吉田明部会員や小児科医の南谷幹史部会員らとの意見の対立が、6回の評価部会を経ても平行線のまま、鈴木元部会長が2巡目についての見解をまとめる形となった。その経緯については、本誌2019年7月号電子版で詳しく説明している[12]。
第35回検討委員会(2019年7月8日開催)で正式に公表された2巡目の部会まとめ[13]の結論は、甲状腺がんの発見率に線量反応が認められないから、「現時点において、甲状腺検査本格検査(検査2 回目)に発見された甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」というものだった。
性比と被ばくの関係については、「今後の課題」と先送りし、2巡目のデータで地域差があるように見えていることに関しては、「検査実施年度、先行検査からの検査間隔など多くの要因が影響しており、それらの要因を考慮した解析を行う必要がある」とお茶を濁している。今後は、受診率低下や集計外症例に対応するために、がん登録を活用して甲状腺がん罹患状況を把握した上で、詳細な推定甲状腺被ばく線量を用いた症例対照研究などにより、線量と甲状腺がん罹患率との関連を検討する必要性があると締めくくっている。
しかし、部会員らからは、この部会まとめに対する疑問の声が多く、その意見をまとめた文書[14]も同時に公表された。元々、問題視されていた、線量反応解析の非科学的手法および、素データや交絡因子の調整方法の非開示のみならず、後日、その解析が論文発表[15]された際には、評価部会での解析とはデータが異なっているという有様だった。事前了承なく謝辞に含まれていた統計の専門家、祖父江部会員と片野田耕太部会員が、「(謝辞記載について)聞いていない」「せめて投稿前に見せてデータを確認させてほしかった」と口を揃えるなど、論文発表でも科学的な手続きすら踏んでいないことが露呈したのだ。その論文での批判を受け、第16回評価部会で報告された3巡目の結果の解析では解析手法を変えており、祖父江部会員と片野田部会員から解析方法を変え続けることについて批判されていた。
その他の臨床データ:125人データ由来の論文
2012年8月〜2016年4月の福島医大での手術症例125人データを元にした論文が2つ、2018年[16]と2020年[17]に出ている。厳密には、125人データから10人(篩型・モルラ型の4人およびデータがレビュー不可能の6人)を除いた115人のデータを解析したものである。結論から言うと、どちらの論文も、いささか強引に、福島の甲状腺がんは放射線影響ではないと推論している。一方、かなり詳細な病理組織的解析が行われており、興味深い臨床データであるのだが、いずれも検討委員会や評価部会に報告されていない。以下、各論文について簡単に解説し、注目すべき情報をまとめた。
2018年論文
2018年論文では、115人のデータ(15歳未満が15人、15歳以上19歳未満が44人、19歳以上が56人)を、手術時期で事故後4年未満(78人)と4年以降(37人)に分け、さらに年齢グループ(15歳未満、15歳以上19歳未満、19歳未満、19歳以上の4グループ)で分けた上で、がんの病理組織的・侵襲的特徴の経年変化を解析したものである。甲状腺がんの潜伏期間は4〜5年という前提で放射線影響が否定されて来ているが、ここでは、事故後4年未満を早期発生、4年以降を遅発性とみなし、この2グループでは、チェルノブイリでのように、病理組織的および侵襲的な形態的特徴に発生時期による違いがみられないので、放射線影響ではない何か他の共通した病因があるのだろうという結論である。
チェルノブイリでは、事故後平均6年目と12年目に手術を受けた人たちを比較した結果、潜伏期が短いほど侵襲性が高いことが示されている[18]。福島の115人は2012年8月〜2016年4月の手術症例なので、事故後4年以降のグループに含まれる37人は、事故から4〜6年目に相当する2015〜6年に手術を受けたことになる。つまり、最初の4年と次の2年の比較となるわけだが、チェルノブイリで事故後6年目と12年目を比較したことを考えると、福島の2グループが似ていても不思議はなく、このような比較が有意義なのかという疑問がわく。
2020年論文
2020年論文では、同じ115人のデータ(2012〜6年の手術症例:14歳以下が15人、15〜18歳が44人、19〜23歳が56人)を、日本の非被ばく群223人(隈病院での1983〜2016年の手術症例:14歳以下が42人、15〜18歳が118人、19〜23歳が63人)と比較し、さらにウクライナの被ばく群245人(1990〜2015年の手術症例:14歳以下が121人、15〜18歳が66人、19〜23歳が58人)と非被ばく群[脚注*1]165人(1997〜2015年の手術症例:14歳以下が60人、15〜18歳が54人、19〜23歳が51人)を比較したものと比べている。この4グループのうち、スクリーニングで診断されたのは福島の症例のみである。
ウクライナの被ばく群と非被ばく群では、腫瘍形態や侵襲的特徴について明らかな違いがみられる一方、隈病院と福島では、性比、平均腫瘍径、11〜20mmの腫瘍の頻度以外には有意な差はみられなかった。福島のデータはウクライナ被ばく群とは異なり、被ばく影響のない隈病院データと似ている、ゆえに福島の甲状腺がんは放射線影響ではないと推論されている。しかし、表6に示したように、甲状腺外浸潤やリンパ節転移の割合は、隈病院データも福島データもウクライナとの比較では、被ばく群同様に高いということになるように思われる。
表6 リンパ節転移と甲状腺外浸潤(すべて)の割合
|
ウクライナ 非被ばく群 |
ウクライナ 被ばく群 |
隈病院 |
福島 |
リンパ節転移 |
38.8% |
54.7% |
79.4% |
80.0% |
甲状腺外浸潤(すべて) |
26.7% |
53.9% |
49.3% |
41.7% |
pT3の再分類
2018年から適用されているTNM分類の第8版では、T3がpT3a(甲状腺に限局し最大径が40 mmを超える)とpT3b(前頸筋群に浸潤)に再定義されているため、第7版でpT3(甲状腺に限局し最大径が40 mmを超える、あるいは腫瘍径に関係なく甲状腺外への軽度な進展を伴う)と診断された1cm以下の微少浸潤がんは、第8版ではpT1aに再分類されることとなった。2018年論文では、115人のうち、pT3と診断された49人中47人が、腫瘍最大径によりpT1a、pT1b、あるいは pT2に移行することに言及されており、2020年論文では、表7に示したように、T分類が第7版と第8版の両方で行われている。(表5では、第7版で分類されている。)
表7 TNM分類第7版と第8版によるT分類、甲状腺外浸潤の人数
|
14歳以下(15人) |
15〜18歳(44人) |
19〜23歳(56人) |
合計(115人) |
||||
TNM |
第7版 |
第8版 |
第7版 |
第8版 |
第7版 |
第8版 |
第7版 |
第8版 |
pT1 |
6 |
11 |
20 |
36 |
35 |
49 |
61 |
96 |
pT1a |
0 |
0 |
6 |
16 |
14 |
19 |
20 |
35 |
pT1b |
6 |
11 |
14 |
20 |
21 |
30 |
41 |
61 |
pT2 |
1 |
4 |
2 |
7 |
2 |
6 |
5 |
17 |
pT3 |
8 |
0 |
22 |
1 |
19 |
1 |
49 |
2 |
pT3a |
|
0 |
|
1 |
|
1 |
|
2 |
pT3b |
|
0 |
|
0 |
|
0 |
|
0 |
pT4 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
甲状腺外浸潤 |
8 |
8 |
22 |
21か22 |
19 |
18か19 |
49 |
48 |
第7版でpT3とされていた49人のうち、第8版でpT3と分類されるのは、pT3aの2人(腫瘍径40.5 と 51 mm)のみで、35人がpT1(pT1aが15人、pT1bが20人)に、12人がpT2にダウングレードされている。また、Ex1とされていた49人中、甲状腺外への微少浸潤が理由でpT3に分類されていたのは48人であることから、pT3aと再分類された2人のうち1人にも微少浸潤がみられていたことになる。
2019年12月に出版された日本の甲状腺癌取扱い規約第8版も、TNM分類の第8版への改訂に連動して変更され、pT3がpT3a(甲状腺に限局し最大径が40 mmを超える)とpT3b(前頸筋群に明らかに浸潤する)に分けられた他、上縦隔リンパ節転移がpN1bからpN1aに変更された。さらに、甲状腺外進展を示す日本独自のEx分類は残されたが、第7版では周囲組織への微少浸潤とされていたEx1が、第8版ではpT3bに相当するように変更された。つまり、TNM分類でも甲状腺癌取扱い規約でも、鈴木眞一氏が手術症例で報告してきた甲状腺外への微少浸潤が含まれなくなったのだ。
鈴木眞一氏が2018年論文で、微小がんについて、4年以内・以降いずれも決しておとなしいタイプではなく、甲状腺被膜外進展とリンパ節転移がみられているため手術は妥当であった、微少浸潤も侵襲度の解析で考慮されるべきだと主張し、2020年論文では、“すべての”甲状腺外浸潤が別項目として記されているのは、微少浸潤が軽視されることへの懸念の表明と言えるかもしれない。
性比について
2020年論文では、性比(女性:男性)において、隈病院と福島の15〜18歳(隈病院8.8:1、福島1.8:1)と全例(隈病院4.2:1、福島1.7:1)、およびウクライナの14歳以下(非被ばく群4.5:1、被ばく群1.5:1)と全例(非被ばく群3.5:1、被ばく群1.8:1)で有意差がみられた。福島での男性の割合が圧倒的に多い(隈病院19.3%、福島36.5%)ことについて、スクリーニングでは、男性も女性も等しく受診できるためだろうと考察している。さらに、1996年の甲状腺微小乳頭がんのレビュー論文[19]を引用し、剖検データでは、1〜1.5 cmという小さな潜在がんでは性差がみられず、年齢による保有率の違いも大きくないことから、福島での性比である女性:男性=1.7:1こそが、小児・AYA世代での甲状腺乳頭がんの“真の性比”である可能性を提唱している。
小児データがほとんどない剖検データを議論に持ち込むこと自体、不適切であることは言うまでもないが、そもそも、剖検データで見つかる、一生取らなくていい可能性のあるがんの大半は5mm以下、その多くは1 mm以下であることが知られている。ゆえに、甲状腺検査では、5mm以下の結節は二次検査にならないような、過剰診断を抑制する基準が設定されている[20]。「微小がんであっても決しておとなしいタイプではなく、甲状腺被膜外進展とリンパ節転移がみられているため手術は妥当」と言いながらも、性比は「生涯おとなしい」ために死後までみつからない甲状腺微小がんの性比に相当すると主張するのは、詭弁にしか思えない。
この1.7:1というのは、日本における1985〜2012年のがん登録の5〜29歳での性比の平均値である3.7:1の約半分である。福島では臨床的に発見される甲状腺がんよりも男性の割合が大きいことについて、検討委員会や評価部会では懸念が示されてきた。チェルノブイリでも男性の割合が多かったからである。現に、1.7:1というのは、ウクライナの被ばく群での性比1.8:1と同じくらいである。甲状腺がん患者の内部被ばく線量再構築のために聞き取り調査をすべきではないかと、フリーランスのジャーナリスト、おしどりマコ氏が再三質問しているにもかかわらず、そのような動きはなかった。2巡目の部会まとめでは先送りにされた性比の問題は、福島での性比をニュー・ノーマルとすることで解決されるのだろうか?
2021年3〜5月に開始されているはずの公式データとがん登録情報による症例対照研究では、2021年4月末までに対象者における内部被ばく線量の推計を実施することになっている。特に、診断時年齢が15〜18歳(事故当時小学校高学年〜高校生)の人たちで男性の割合が有意に多いということは、吸入被ばく線量に関連した野外活動についての行動記録調査が重要となってくるが、すでに10年が過ぎており、聞き取り調査で得られる情報の精度が危惧される。
表8 性比と男性の割合
|
14歳以下 |
15〜18歳 |
19〜23歳 |
合計 |
||||
|
隈病院 |
福島 |
隈病院 |
福島 |
隈病院 |
福島 |
隈病院 |
福島 |
女性/男性(人) |
36/6 |
10/5 |
106/12 |
28/16 |
38/25 |
35/21 |
180/43 |
73/42 |
女性:男性 |
6:1 |
2:1 |
8.8:1 |
1.8:1 |
1.5:1 |
1.7:1 |
4.2:1 |
1.7:1 |
男性の割合(%) |
14.3 |
33.3 |
10.2 |
36.4 |
39.7 |
37.5 |
19.3 |
36.5 |
NIFTP
2016年に、被包性濾胞型甲状腺乳頭がん(encapsulated follicular variant of papillary thyroid carcinoma、略称EFVPTC)が、乳頭癌様核を有する非浸潤性甲状腺濾胞性腫瘍(noninvasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features、略称NIFTP)と改名された[21]。つまり、それまでは甲状腺がんと診断されていたEFVPTCが、浸潤性がないなどの条件を満たせばNIFTPと呼ばれ、良性甲状腺腫瘍とみなされることになったのである[22]。第4版内分泌腫瘍WHO分類(2017年)では境界病変という概念が提起され、EFVPTCの一部がNIFTPに含まれた。この改名により、これまでの甲状腺がん手術は本当に必要だったのかという疑問が発生するかもしれないが、今の所は、福島県の甲状腺がんの中でNIFTPに該当する症例は見つかっていない[脚注*2]。
がん以外の甲状腺疾患
甲状腺がん以外の疾患のデータは少ないのだが、この論文によると、甲状腺がん33人で慢性甲状腺炎(橋本病)の併発がみられている。33人を年齢グループで分けると14歳以下15人中7人、15〜18歳44人中14人、19歳以上56人中12人と、14歳以下の半数が慢性甲状腺炎となる。
細胞診の最終結果の論文5によると、穿刺吸引細胞診で良性だった人(1巡目310人、2巡目94人)の所見で最多だったのは濾胞性結節の380人(1巡目289人、2巡目91人)で、次に多かったのが慢性甲状腺炎の15人(1巡目12人、2巡目3人)だった。悪性・良性と合わせると、1〜2巡目で慢性甲状腺炎とわかっているのは48人ということになる。
組織型の矛盾
2018年論文の115人はすべて乳頭がんであるが、組織型は古典型104人、濾胞型5人、充実型4人、びまん性硬化型3人とされている。(人数が合わないのは、1人が濾胞型および充実型と重複しているからだと思われる。)125人データでは、123人が乳頭がんで、組織型は古典型100人、濾胞型4人、充実型2人、びまん性硬化型3人だった。115人の方が、濾胞型が1人と充実型が2人多く、2つのデータで整合性が取れない。この理由は、125人データが日本の甲状腺癌取扱い規約に従って分類されている一方、115人データはWHOの基準を用いており、チェルノブイリの研究者が病理スライドをレビューしたからということである。
しかし、同じ115人データを用いた2020年論文では、びまん性硬化型が2人、高細胞型が2人(診断時年齢15〜18歳)とも記述されており、初めて高細胞型が言及されている。
過剰診断論の促進
過剰診断とは、がん検診などで、無症状で生涯おとなしく、治療も必要としない小さな腫瘍を発見することにより、がんの見かけ上の罹患率が上昇する現象である。しかし、どのがん症例が過剰診断の結果であるかを個別に判別することはできない。さらに福島では、過剰診断を抑制する診断基準が設けられている上、たとえ微小がんでも甲状腺外浸潤もリンパ節転移の割合が高く手術適応となり、遠隔転移も3例出ており、とても過剰診断と言えない状況である。それにもかかわらず、放射線影響ではなく、スクリーニング効果で潜在がんを見つけているだけの過剰診断だ、集団スクリーニングはすべきでないというのが、後述する国際機関の見解ともなっている。これに、福島医大の並々ならぬ研究活動が大きく貢献していることについては、本誌2019年7月号電子版で詳細に解説した。
実は、福島医大は、2巡目について評価部会での議論も進んでいないうちから、1巡目と2巡目を比較した上で、2巡目でも放射線の影響は考えにくく、潜在がんを見つけているだけだと論文発表している。これに深く関わっているのは、過剰診断論のキープレイヤーとも言える、大津留晶氏と緑川早苗氏である。2 巡目の部会まとめが出る10ヶ月も前に受理された“大津留論文[23]”では、2巡目で見つかった甲状腺がんは、もともと多く存在する非臨床がん・潜在がん保有者が、年齢が高くなるにつれて超音波検査で検出されただけだと説明し、「事故後5年間」がベースラインとされてしまっている。(かの山下俊一氏も、2019年9月の内分泌外科学術総会で、2巡目までがベースラインだと公言していたと言う。)そして、この説明では、1巡目での一次検査と二次検査の間の結節の成長にもとづいた試算により、8年で結節の成長が停止するとした緑川氏が筆頭著者の論文(以下、緑川論文[24])が言及されている。
いずれの論文でも、福島での過剰診断を抑制する診断基準や、転移・浸潤を示す術後病理診断データは考慮されていない。それどころか、大津留氏と緑川氏は、がんの成長はいずれ停止するのだから、リンパ節転移も病理学的な甲状腺外浸潤も予後の指標とはならない、とまで主張している[25]。福島では、いずれは成長停止するおとなしい潜在がんが見つかっているだけだという、根拠のない過剰診断論は、国際機関の報告書にも盛り込まれている。さらに、その不完全で歪んだデータや議論にもとづく福島の知見を拡散し、小児期・思春期の子どもには多くの潜在がん保有者が存在するという仮説を、「小児における甲状腺がんのエビデンス」として国際的に確立しようとする動きさえあるのだ[26], [27]。
そもそも、小児で甲状腺潜在がんが多く存在するというエビデンスはない。2019年4月には、米国の小児で大きな腫瘍や局部進展(リンパ節転移や甲状腺外進展)をともなう腫瘍が増えており、小児甲状腺がんの真の増加がみられているという論文が2つ出ている。福島医大は、『JAMA』掲載のスタンフォード大学論文[28]は、『Cancer』掲載の米国国立がん研究所の論文[29]のどちらにも反論している[30], [31]。スタンフォード大学論文に対しては、大きい腫瘍でも成長停止するから真の増加ではなく過剰診断だと噛み付いてさえいる。しかし、著者らの返答で、緑川論文は平均追跡期間が6ヶ月未満と短すぎて甲状腺がんの自然史のエビデンスとはならない、そもそも大きな腫瘍径も局部進展もおとなしい甲状腺がんの特徴ではなく、局部進展はむしろ死亡率を下げるために治療すべきだと言える、過剰診断を避ける重要性には同意するが、診断不足や治療不足もまた罹患率増加につながる可能性がある、と一蹴されている。甲状腺がんはいずれ成長停止するから福島の甲状腺がんは過剰診断であるという主張は、通常の学術界では通用しないのだ。
今では他機関に所属する緑川氏(宮城学院女子大学)と大津留氏(長崎大学)は過剰診断の周知活動を続けており、「県民健康調査結果の解析者は過剰診断・過剰治療についてミスリードすべきでない」と、福島医大との対立をうかがわせる発言までしている[25]。また両者は、大阪大学の髙野氏の研究室に所在する過剰診断グループ「若年型甲状腺癌研究会」のコアメンバーとして、SNSなどを通しても積極的に活動している。(ちなみに、この研究会のコアメンバーには、現検討委員の津金昌一郎氏と現評価部会員の祖父江氏も名を連ねており、国際アドバイザリーメンバーの一人、Deborah H Oughton氏は、後述のSHAMISENプロジェクトの共編者でもあった。)髙野氏も甲状腺検査について持論を展開した論文投稿に余念がなく、福島医大が「福島県の甲状腺検査の正確な状況」について反論[32]しなければいけないという事態にまでなっている。
国際機関の勧告
チェルノブイリと福島の知見をもとに、将来の核事故後の甲状腺がん集団スクリーニングは非推奨となった。2017年7月に公表された、核事故後の医学・健康サーベイランスの改善についてのEUプロジェクト、SHAMISEN[脚注*3]の勧告[脚注*4]は、科学的な分析をベースとしながらも、むしろ心理・社会・経済的影響を優先した「政治的な施策決定への提言」を特色としている(本誌2018年1月号参照)。2018年9月には、甲状腺モニタリングに特化した提言が、国際がん研究機関(IARC)国際専門家グループ「TM-NUC」(Thyroid Monitoring after Nuclear Accident)[33]から出ており、核事故後の甲状腺がんの集団スクリーニングは非推奨とする一方、よりリスクの高い個人(甲状腺吸収線量が100〜500 mGy)や低リスクの希望者には、利益・不利益について十分に周知した上で長期の甲状腺健康モニタリングを提供することを推奨している[脚注*5]。TM-NUC報告書の英語原版と邦訳版は、資金を拠出した環境省のウェブサイト[34]からアクセスできる。
SHAMISENもTM-NUCも、偏って不完全な福島のデータがベースで、さらに根拠のない過剰診断論を鵜呑みにしている。SHAMISEN勧告に至っては1巡目の結果しか考慮されておらず、勧告の作成自体、長崎医大・広島医大・福島医大による「トライアングル・プロジェクト」が主導していたという情報もある[35]。SHAMISENプロジェクトの論文[36]が2021年1月に出ているが、集計外症例は無論、鈴木眞一氏の術後病理データも考慮されておらず、はたまた、福島では放射線影響が見つかっていないとする引用文献の中に、放射線リスクを示唆する論文[37],[38][39]まで入れてしまっている。さらに、被ばく歴のある高リスクの小児でのスクリーニングについては、被ばく後5年から触診を始めて5年ごとに繰り返し、臨床研究の場でなら超音波検査を考慮しても良い、と記している。はたしてこれが、小児における現代の医療水準を満たすのか、あるいは被ばくした市民に受け入れられるのか、非常に疑問である。
評価部会での混乱と同時進行していたTM-NUCは、2018年1月に福島県で現地訪問を行なった際に、検討委員・評価部会員との意見交換会でメンバーが発表したが、環境省内部でもできるような文献レビュー程度の内容で、成人における過剰診断の低減に終始し、目新しい知見はほとんどなく、小児に関してはわからないとまで明言する始末だった。しかも、半分は隈病院の研究報告が英語でされるというお粗末さだった。(本誌2018年3月号参照)
TM-NUCが「よりリスクが高い」とする”100〜500 mGy”という数字については、最新の低線量プール研究[40]で、より小さな線量でも甲状腺がんリスクが上昇すると報告されているにもかかわらず、TM-NUCメンバーの意見にもとづいて決められており、科学的とは程遠い。TM-NUC提言は福島の甲状腺検査についてのものではないと最初から念を押されているのに、検討委員会や評価部会では、その提言を甲状腺検査の同意書に組み込もうとする動きさえあった。今でも、福島の線量はもっと低いからTM-NUC提言の集団スクリーニングに相当する、甲状腺検査はやめるべきだ、との主張が止まない。この動きは、前述の「若年型甲状腺癌研究会」メンバーを寄稿者に含む、日本甲状腺学会雑誌2021年4月号の過剰診断特集にも反映されている。髙野氏の「甲状腺癌の自然史」についての寄稿は、第11回評価部会(2018年10月29日開催)での、「文献の読み方に少しバイアスがかかっている」「国際的な流れと少しズレがある」という、鈴木元部会長が髙野氏に向けた発言(本誌2019年2月号電子版[41]参照)を彷彿とさせるものだった。大津留・緑川両氏に至っては、TM-NUC提言について、それが福島に適用されるものではないという事実には触れもせず、都合の良い解釈を紹介し、「集団スクリーニングを行ってはいけない(提言1)だけでなく,福島の線量においては長期のモニタリングプログラムを検討するレベルではない(提言2)ということになる」と誘導すらしている。しかし、大津留・緑川両氏が言及していないTM-NUC報告書2には、今後の福島のデータ活用や課題についての提案さえも含まれており、福島の甲状腺検査がモニタリングであるというのは、TM-NUCメンバーのみならず、福島医大の鈴木眞一氏や志村浩己氏の共通認識となっている。
放射線影響についての見解
2巡目の部会まとめでは、甲状腺がんの発見率に線量反応が認められないため、現時点において2巡目に発見された甲状腺がんと放射線被ばくとの関連は認められていない。しかし、牧野淳一郎氏が本誌の連載で取り上げているように、福島医大による線量反応解析[15][42][43](“大平論文シリーズ”)の統計的手法の正当さには大きな疑問がある。これまでの放射線影響否定の常套手段は、地域差がみられないことと、チェルノブイリとの比較で、「線量が低い、5歳未満の低年齢での症例が少ない、遺伝子変異が異なる、充実型がない」というもので、UNSCEAR 2020年報告書のパラグラフ223と224にも、同様のことが記述されている。
しかし線量については、実測データが不十分である上、汚染食品の流通は無視されており、回答率の低い基本調査による事故後4ヶ月間の外部被ばく線量推計値の信頼性という問題がある。2巡目結果の検討に用いられたUNSCEAR 2013年報告書の甲状腺吸収線量推計値は、鈴木元部会長の研究班による避難者の線量再構築の貢献により、UNSCEAR 2020年報告書では、1歳児で最大83 mGyから30 mGyへと大幅に下方修正されている。(ちなみに、その再構築論文[44]の筆頭著者は、SHAMISENプロジェクトでの福島側の担当者である福島医大の大葉隆氏である。)この線量再構築では、日本人の甲状腺へのヨウ素取り込み率が修正され、甲状腺への吸収線量を下げているが、実際には、現代の食生活でのヨウ素の摂取は十分と言えない[45]。現に、福島近辺の子どもたちでは約2割がヨウ素不足で、特に放射線リスクの高い未就学児でヨウ素不足のリスクが高かった[46]。
低年齢の症例が少ないことに関しては、UNSCEAR 2000年報告書では、1〜4巡目で事故当時4歳以下が1人しかいないと記述されているが、実際には最新データでは3人(事故当時0歳、2歳、4歳の女性)で、集計外症例でも事故当時4歳の男性が判明しており、集計から漏れている症例数が一定数あると思われる。チェルノブイリより少ないことは確かであるが、福島の公式データの不完全さも考慮されるべきであろう。
チェルノブイリではRET-PTC再配置、福島ではBRAF点変異が多いことは、“福島はチェルノブイリとは異なる”理由のひとつとして福島医大が掲げている。しかし、RET-PTCは若年者、BRAFは成人で多いこと、チェルノブイリで多かったRET-PTC3は若年者の充実亜型で高率に検出されることが知られている[47]。2021年2月にオンライン開催された福島医大の国際シンポジウムでは、ジェリー・トーマス氏が鈴木眞一氏の質問に対し、福島でBRAFが多いのは患者の年齢層のためで、BRAFが多いから放射線に関係ないということにはならない、福島で古典型が多くチェルノブイリで充実型が多かった(今では福島でも充実型が2人、もしくは4人出ていることが分かっている)というのも年齢に依存しており、放射線は関係ない、と答えている。UNSCEAR 2020年報告書でさえ、BRAF変異が多かったことについて、福島の甲状腺がんの多くが、低年齢ではなく思春期や成人期初期でみつかったことを反映していると思われると記述している。
2021年4月22日に『Science』に掲載された最新論文[48]でも、放射線誘発性甲状腺がんに特有の「放射線シグネチャ」は存在しないことが示されている。また、この論文では、チェルノブイリでは、より低年齢でより高い線量に被ばくした人たちで、DNA二重鎖切断後の修復時に非相同末端結合が起きやすいことが示された。放射線誘発性の甲状腺がんでの初期の発がんイベントがDNA二重鎖切断であることが、初めて、実際の甲状腺がん患者で示されたことになる。なお、非被ばく群や低線量では点変異が起きやすかった。
ここで、UNSCEAR 2020年報告書のパラグラフ221に注目したい。最も影響を受けやすいサブグループである、被ばく時に胎児〜5歳だった女性(3巡目で1人、4巡目で3人がこのサブグループに該当)では、リスクモデルによっては放射線起因の甲状腺がんが16〜50例ほど見つかる可能性があると述べられている。しかし、このサブグループでは、集団スクリーニングなしでも福島県で生涯にわたり約650例の甲状腺がんが観察されるであろうこと、市町村のような小さな地理単位での発生率のばらつきから生じる統計的なノイズが放射線リスクの識別能力を限定することから、統計的検出力分析では50例以下の過剰発生は検出できないであろう、と説明されている。つまり、放射線被ばくに関連する甲状腺がんが発生しないのではなく、たとえ発生していたとしても、それが放射線被ばくによるものだと「識別できない(not discernible)」というのである。
もともと歪んでいる福島のデータから、さまざまな歪んだ解析論文が出て、さらに歪んだ解釈から「福島の甲状腺がんは潜在がんの過剰診断」という新たな歪みが生まれ、それが国際機関の勧告に取り込まれて拡散されるという、甲状腺がんをめぐる歪みの連鎖については、本誌2019年6月号で解説した。この歪みの根源とも言える情報が、福島医大の非公開議事録にある(本誌2020年7月号、麻田真衣氏)。事故直後から構想されていた県民健康調査には、広島・長崎の原爆訴訟が意識されており、(県民健康調査)データは原爆訴訟と同様に貴重な訴訟資料となりうる、発がんリスクが1%あれば他要因での発がんでも裁判では原告勝訴となる、という発言(発言者不明)が記録されている。
県民の健康を見守るための調査だと言いながら、最初から訴訟の際の証拠として捉えられている。どうしても、放射線の影響はあってはならないのだ。その視点から考えると、データの不透明さや不完全さ、それから生じる議論の歪みも筋が通る。結論ありきの調査というわけだ。しかし、放射線影響を否定するあまり、さらに歪みが生じていることに福島医大は気づいていないのか、福島の甲状腺がんと肥満に関連があったと報告する論文[49]が、“大平論文シリーズ”に加わっている。
第三者の研究者らが中立的にデータを検討しようにも、データ提供はまだ検討中で、国内に限定される試行期間すら始まっておらず、海外機関への提供は及び腰である。さらに、データ利用の審査基準として、「研究成果が県民の健康の維持、増進その他県民の利益につながるものか」という点が考慮される[50]ことから、福島医大の意向に沿わない研究結果が出た場合に、その結果が日の目を見るのかさえ不明である。
歪みの連鎖:偏った解釈のための“エビデンス”
これまでの各回の検査率から見た見解では、 1)全般的に“検査時18歳以上”は受診率が著しく低く、統計の対象にならない (また、原発事故時18歳未満であっても、"節目検査"という仕組みにより、データの均一性をさらに複雑化させている)、2)新型コロナウイルスのパンデミックによる検査の大幅遅延のため"5巡目以降"は参考データにしかならない (パンデミックの影響により、4巡目の完遂率にも疑問が残り注意が必要)。 また、"集計外症例"が全体の1~2割も存在(福島医大でだけでも1割超、県外など他施設も含めたと仮定)する以上、"集計内データ"だけによる疫学調査を行ったところで、真意が問われる結果しか出てこないであろう。 横谷論文で言うところの「集計外症例を入れようが入れまいが、福島県における小児とAYA世代の甲状腺がんの全貌は変わらない」と言うのは明らかな間違いであり、むしろミスリードである。 これらが、福島医大で行っている甲状腺検査による放射線影響調査においての「研究の限界」であり、「研究デザイン」となっている。 早期に、長崎大学の山下俊一氏がWHO傘下のIARCに疫学調査への支援を求め、助言を得ていながらこの体たらくである。 大変遺憾ではあるが、それを踏まえて検討委員会や評価部会での報告、福島医大から発表される論文などを読み解かねばならないのである。
福島では、発見率が大きいことはスクリーニング効果とし、放射線影響は現時点で否定している。1〜2巡目では自然発生の潜在がんを検出しているだけで、男性の割合が多いのは、被ばくの影響ではなく性差のない剖検データに近いからで、福島の性比が小児やAYA世代での甲状腺がんの真の性比であるとまで示唆している。その剖検データで多いのは5 mm以下、多くは1 mmの微小がんであることを考慮した上で過剰診断を極力抑えるような診断基準が、甲状腺検査では設定されており、わずか3例を除き、過剰診断・治療を裏付けるような術後病理結果も出ていない。それでもなお、主に社会・心理的視点から過剰診断の主張は続き、それが海外での知見となりつつさえある。福島から出ているのは、もはや、“被ばく影響を隠すためのエビデンス”とさえ言え、それをもとに、次の核事故後の小児のスクリーニングは“被ばくから5年後の触診”で十分だという専門家の意見まで出ている[51]。福島の甲状腺検査の不透明・不完全なデータによる偏った解釈を紐解くのは簡単ではない。福島に関して中立的な情報発信を“宣言”している日本甲状腺学会でさえも、過剰診断特集を組むという有様である。言わずもがな、国内外の研究者らのほとんどは、公式データや論文を鵜呑みにしている。それを逆手に取ったかのように、福島医大は論文発表に余念がなく、検討委員会や評価部会での検討に必要な実数データや臨床データも、論文投稿前ということで公表されないものが多すぎる。過剰診断論者は、学校検査を廃止し、甲状腺検査は希望者のみに縮小したいようであるが、当事者らは反対している。いずれにせよ、強力な訴訟資料となり得るデータ収集をやめるわけには行かない。歪みの連鎖は続くのである。
[*1] 1987年1月以降生まれが対象のため、1986年4月26日のチェルノブイリ事故当時に胎児だった人も含まれている可能性がある。
[*2] 2018年論文では、事故後4年以内に手術を受けた19歳以上の4人で被包性乳頭がんがみつかったが、いずれもNIFTPの診断基準を満たさなかった。
[*3] Nuclear Emergency Situations Improvement of Medical and Health Surveillanceの逆頭字語。
[*4] SHAMISENについては、日本国内において公式な説明も無く、ましてや存在そのものが国民に全く知らされていなかった。今では、英語での情報ですら公式サイトから削除されており、一時は公開されていた勧告の日本語版も見つからないが、以下からアクセスできる。英語原文 https://www.isglobal.org/documents/10179/5808947/SHAMISEN%2bRecommendations%2band%2bprocedures%2bfor%2bpreparedness%2band%2bhealth%2bsurveillance%2bof%2bpopulations%2baffected%2bby%2ba%2bradiation%2baccident%2bEN/f3df29c3-1c00-4004-91fc-3b0750d5458e
日本語版
https://drive.google.com/file/d/1fyPr2EIDgYCikapqHS7Mr4B_lcTEA2Aa/view
[*5] TM-NUCについては、本誌2018年1月号でメンバー構成と進捗状況、同2019年6月号で設立経緯や報告書・提言について詳しく解説している。