ワシントン州海産会社の魚介類の放射能測定結果:放射性ストロンチウムと放射性セシウム


ワシントン州の海産会社であるヴァイタル・チョイス・ワイルド・シーフード・アンド・オーガニックス社は、2012年以来、太平洋で捕獲される魚介類の放射能検査を行って来た。今回、キングサーモン、ソックアイサーモン(紅鮭)とビンチョウマグロのストロンチウム検査結果が公表されたので、許可の下、ここに公表する。

ストロンチウム不検出
2014年1月9日付けの記事 
結果PDF 
「去年の夏、ストロンチウム90という長命核種が福島第一原発から漏れていることを示唆する報告が出始めた。安全性を確認するために、2013年秋に、何種類かの魚をストロンチウム90の検査に出した。」

(注:ストロンチウム検査は、ペース・アナリティカル・サービス社によって行われ、SGSノースアメリカ社によって検証された。)

検体受け取り日 2013年10月30日
検査実施日 2013年11月12日

ソックアイサーモン(紅鮭) -0.00130 ± 0.0210 pCi/g (検出下限値 0.0513 pCi/g)、または -0.0481 ± 0.777 Bq/kg   (検出下限値 1.8981 Bq/kg)
キングサーモン                       0.0228 ± 0.0292 pCi/g (検出下限値 0.0635 pCi/g)、または 0.8436 ± 1.0804 Bq/kg (検出下限値 2.3495 Bq/kg)
ビンチョウマグロ                  -0.0151 ± 0.0167 pCi/g (検出下限値 0.0456 pCi/g)、または -0.5587 ± 0.6179 Bq/kg (検出下限値 1.6872 Bq/kg)

※ 測定結果は、「放射能濃度 ± 不確定さ」として報告されている。また、測定結果が pCi/g だったので、わかりやすいように Bq/kg に換算して併記した。
※ 結果には記されていないが、ヴァイタル・チョイス社にメールで問い合わせた所、検体は、皮と骨を含む魚全体だった。ストロンチウムは骨に蓄積するので、骨が含まれているのは重要。
※ 検出下限値は、MDC(minimum detectable concentration)または、MDA(minimum detectable activity)と呼ばれる。(注1)


なお、ヴァイタル・チョイス社の魚介類捕獲区域はこのページに記載されている。(下記に該当部分を引用)

「鮭、オヒョウ、タラ、車海老、エビ、ダンジネスクラブ、 ムラサキイガイ、ハマグリなどの太平洋の魚介類すべては、福島第一原発から東に4,000ー5,000マイル(6,400ー8,000km)離れた、アラスカ州、ワシントン州、オレゴン州とブリティッシュ・コロンビア州の沖合で捕獲または漁獲される。」
「唯一の例外は、ビンチョウマグロとキングクラブで、ビンチョウマグロはミッドウェイ島沖、キングクラブはベーリング海で捕獲される。両方とも、福島第一原発からおおよそ2,500マイル(4,000km)東に位置する。」

  
また、ヴァイタル・チョイス社は、これまでにヨウ素131とセシウム134とセシウム137の測定を3度行っている。

テスト1:2012年3月29日公表
「ユーロフィン・ラボラトリー社が、15種の魚介類でセシウム134、セシウム137、ヨウ素131の検査を行い、何も検出されなかった。」

セシウム134: 不検出〜微量(検出下限値 1.0 Bq/kg)
    ほとんどの魚介類  <1.0 Bq/kg
    ビンチョウマグロ 1.4 Bq/kg
    オヒョウ 1.3 Bq/kg

ビンチョウマグロとオヒョウから検出された微量のセシウム134は、魚に平時に見つかるセシウム137と134の合算値最大値の10Bq/kgの15%以下である。(注2)
そして、この微量の数値は、セシウム137と134合算のFDA基準値のDIL(懸念レベル)である1,200 Bq/kgのわずか0.1%だった。(注3)

セシウム137: 不検出 (検出下限値 1.0 Bq/kg)
ヨウ素131: 不検出 (検出下限値 2.0 Bq/kg)
これは、分析された魚介類すべてが、ヨウ素131のFDA基準値のDILである170 Bq/kgの1.2%以下ということになる。ヨウ素131は、発生後2週間で安全な形状に崩壊する。(注3)

テスト22012年9月公表
「ユーロフィン・ラボラトリー社は、当社の太平洋産ビンチョウマグロとアラスカ産オヒョウ、紅鮭とタラを検査した。セシウム134とヨウ素131は検出されず、検出できるかできないかの、ごく微量で明らかに安全な量のセシウム137がタラから検出された。」

セシウム134: 不検出 (検出下限値 1.0 Bq/kg)
セシウム137: タラ 1.2 Bq/kg (検出下限値 1.0 Bq/kg)
ヨウ素131: 不検出 (検出下限値 2.0 Bq/kg).

テスト32013年9月公表
「ユーロフィン・ラボラトリー社が、当社の鮭(ピンク、キング、紅鮭、銀鮭)、マグロ、タラ、オヒョウとギンダラでセシウム134、セシウム137とヨウ素131の検査を行ったが、不検出だった。」

セシウム134: 不検出 (検出下限値 1.0 Bq/kg)
セシウム137: 不検出 (検出下限値 1.0 Bq/kg)
ヨウ素131: 不検出 (検出下限値 2.0 Bq/kg)

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さらに、ワシントン州シアトル市のロキ・フィッシュ社が、独自の放射能検査結果を公表した。ファミリービジネスであるロキ・フィッシュ社は、アラスカ南東部とピュージェット湾(シアトルの西)から野生の鮭とオヒョウを漁獲する漁業会社である。

ロキ・フィッシュ社の2014年1月7日の記事
「北太平洋の鮭の検体では放射能の上昇値は検出されなかった」

検査結果 

記事からの引用
「アラスカ南東部からのピンクサーモン、ケタサーモン(白鮭)、コーホーサーモン(銀鮭)、ソックアイサーモン(紅鮭)とキングサーモン、そしてピュージェット湾からのピンクサーモンとケタサーモンが検査された。」

ユーロフィン・ラボラトリー社による測定(注3)

セシウム134: アラスカ産ピンクサーモン 1.2 Bq/kg (検出下限値 1.0 Bq/kg)
セシウム137: アラスカ産ケタサーモン 1.4 Bq/kg (検出下限値 1.0 Bq/kg)
ヨウ素131: 不検出 (検出下限値 2.0 Bq/kg)

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注1)参考のために、水産庁の放射能測定結果では、ストロンチウム検出下限値は、0.01−0.04 Bq/kgだった。

注2)この平時のセシウム最大値がセシウム134とセシウム137合算で10 Bq/kgというのは本当なのか?そもそも、魚からセシウム134が「平時に」検出されるべきか?この情報の出所をヴァイタル・チョイス社に問い合わせた所、ユーロフィン社だということだった。しかし、この2012年に公表されたクロマグロの研究論文によると、2008年の太平洋産クロマグロでは、セシウム134は不検出、セシウム137は1.4 Bq/kgだった。

注3)米国の基準値DILによると、どの食品でも、ストロンチウム90の基準値は160 Bq/kg、ヨウ素131は 170 Bq/kgで、セシウム134と137は合算で1,200 Bq/kgである。日本のセシウム基準値は、魚介類が適用される一般食品では100 Bq/kg(乳児用食品と牛乳では50 Bq/kg)であり、これにはストロンチウムやプルトニウムも含まれている。これらの基準値は、内部被ばく線量による健康影響が同等の外部被ばく線量よりも大きいと主張する人達にとっては過剰とみなされている。フードウォッチとドイツIPPNW(国際核戦争防止医師会議)の報告書では、EU(欧州連合)の一般食品のセシウム基準値の600 Bq/kgを16 Bq/kgに、乳幼児食品と乳製品の基準値の370 Bq/kgを8 Bq/kgに下げることが推奨されている。

さらに、ヴァイタル・チョイス社の情報ページには、「放射線専門家によると、心配する理由はない。」というセクションがあり、「福島原発事故による海洋生物相と人間の魚介類消費者への放射線被ばく量および関連したリスクの評価」という研究論文が言及されている。

アブストラクトより抜粋和訳:
「米国において、フクシマ由来放射性物質によって汚染された太平洋産クロマグロを消費する人間に加算される被ばく量は、平均的な消費者には0.9マイクロシーベルト、生活の糧とする漁師では4.7マイクロシーベルトとなると推計された。このような被ばく線量は、すべての人間が日常的に晒されている、多くの食物に含まれる自然発生の放射性物質や、医学的治療、航空機での旅行や、その他のバックグラウンド放射線源からの被ばく線量と同等であるか、あるいはそれより少ない。低線量の電離性放射線への被ばくによる人間への発癌リスクの評価には不確定さはあるが、太平洋産クロマグロを生活の糧としている漁師による消費における被ばく線量からは、1000万人の同様に被ばくした集団での癌死が2人増えると推定される。」

まず最初に、放射線感受性は年齢や性別によって異なるのに、内部被ばく量をマイクロシーベルトで表現し、一般集団に適用するのは適切だろうか。また、放射性セシウムのような人工核反応生成物を、バナナに含まれている放射性カリウムのような自然放射線核種と比較することは、核反応生成物の環境での存在を黙認そして肯定するようであり、誤解を招く。「そもそも放射性セシウムがそこにあるべきか?」と問うべきである。また、医療診断・治療用の放射線(内部照射および外部照射)は、厳密にはバックグラウンド放射線ではないし、この 研究論文で言及されているように、無害というわけでもない。航空機での旅行は外部被ばくであるので、セシウム摂取による内部被ばくとは比較できない。

放射能汚染された食物を消費するかどうかについて知的な判断を下すためには、このような、しばしば都合良く曖昧にされてしまっている問題点を理解する必要がある。安全な量の放射線というものは存在しないということを心に留めつつ、最終的には、リスクを引き受けるかどうかは個人の選択である。しかし、赤ちゃん、幼児、子ども、妊婦や妊娠する可能性がある女性などの、放射線感受性が高い特定の集団のことを考慮するべきである。

注4)ヴァイタル・チョイス社とロキ・フィッシュ社の測定どちらもで、魚によってはセシウム137が不検出なのにセシウム134が検出されたケースがあった。大気圏内核実験由来のセシウムはセシウム137のみであり、セシウム134がセシウム137と共存するのがフクシマ事故のシグネチャーとみなされているはずなので、セシウム134のみの検出というのは、不思議である。ヴァイタル・チョイス社にこの件で問い合わせたが、返事は、「当社では分かりません。ユーロフィン・ラボラトリー社は放射性物質検査の専門家です。」だった。

IPPNWの共同代表ティルマン・ラフ医師の講演内容書き起こし和訳


131106 国連科学委員会(UNSCEAR)福島レポートをどう読むか~IPPNWの共同代表・ティルマン・ラフ博士を迎えて~
イベント情報はこちら
動画はこちら(00:44:18〜1:30:00)
講演スライドのPDFはこちら


ティルマン・ラフ氏は、オーストラリアの感染症・公衆衛生専門家の医師である。核戦争防止医師会議(International Physicians for the Prevention of Nuclear War、またはIPPNW)の共同代表であり、IPPNWオーストラリア支部である、戦争防止医師会Medical Association for Prevention of War、またはMAPW)オーストリア支部の国際顧問でもある。
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講演内容書き起こし和訳

こんにちは。今日は、皆さんと午後を一緒に過ごし、現在も進行している、大変重要な問題についての国際公衆衛生からの視点をお話するためにお招きして頂いて大変ありがとうございます。



フクシマの話をするにあたって私が最初に述べるべきだと思うのは、皆さんへのお詫びです。その理由は、非常に残念なことに、フクシマとそれ以外の地域を汚染しているフォールアウトはオーストラリアで採掘されたウランから来たものだからです。




そして、そのウランは、ウラン鉱山がある土地の伝統的な管理者たちの強くて首尾一貫した反対に反して採掘されたものです。なので、それについて本当に申し訳なく思っています。


そして、健康における技術的なトップ機関はWHOだとご存知だと思いますが、WHOの内部では、放射線と健康についての専門的知識はあまりありませんが、専門家の招集力は非常に大きいです。そして、WHOの健康リスク評価の報告書は、2011年9月までだけの推定被ばく量に基づいていますが、今年の2月に発表されました。もうご存知だと思いますが、特に、汚染が最もひどかった地域の子供たち、そして作業員において、固形癌と白血病のリスクがかなり増加すると推定されました。



健康についての世界のトップの技術的機関として、WHOの言葉は本当に最終勧告であるべきです。正直、この時点では、私はUNSCEARなどなければいいのに、と思います。どうしてそう思うか分かりますか?

最初に、WHO報告書にかなり保守的な傾向が見られるにしても、それは例えば、屋内退避を考慮していないというようなことですが、リスクがかなり過小評価されているという理由も、またあると思います。



もちろん、この報告書は、2011年9月までのデータしか含んでいないので、続行中の放出は除外されています。それ以降の作業員はこれからも福島第一原発での作業に従事しなければいけないかもしれませんが、その方たち全員の被ばく量は除外されています。消防士、警察官や自衛隊員などの緊急対応要員が除外されています。皆さんの方がご存知だと思いますが、かなり遅くまで避難されなかった方達がいるにも関わらず、強制的避難区域である20キロ圏内の住民が除外されています。そして、とても重要なことですが、WHOが推計した近隣5県の被ばく線量推測値の幅が、福島県の汚染があまりひどくなかった地域と実質あまり差がないにも関わらず、これらの県の住民の被ばく量が除外されています。そして、日本の残りの地域の住民の被ばく量が除外されています。

UNSCEARについて少しだけお話しますが、公表されている文書、すなわち、あの短いサマリーのみにコメントを留めます。理由は、実際の報告書(付属書)がまだ完成されていないと思われるからです。まず、UNSCEARとは何かについて、いくつかの側面を追加して強調する価値はあると思います。



UNSCEARは、随分前に設立され、国連総会に直接報告します。そして、放射線の被ばく量と影響についてかなり広範囲の権限を持っています。しかし、政府が設立したものです。そして、すべての国の政府が含まれているわけではありません。核保有国のほとんどが含まれており、原子力発電所があったり、ウラン鉱山を通して核連鎖にかなり関与している国々への強いバイアスがあります。したがって、各国の代表が、核活動に大規模かつ多額の投資をしている政府から推薦されるために、概して独立した意見が欠けています。半ばクラブのような感じです。



5月の会議に参加したカナダ代表団のメンバーの1人が、低線量放射線は体に良いという、過激としか言えないような見解の持ち主であり、その考えをオーストラリアで勧めるために、ウラン採掘会社によってオーストラリアに招聘されていたということに驚きました。

なので、一般的に、国連機関や、他の機関がその意見に従う傾向の強いIAEAについては、必要以上に、政府と原子力産業の利害関係に対して、原子力推進目的のバイアスがあると思います。

それでは、この国連総会への短い報告書の中のいくつかの点で、私が懸念を持つ、または整合性がないと思ったことを指摘させて下さい。



最初の方で、非常に大量の放射性物質が放出されたと述べられていますが、どういうわけか、この非常に大量の放射性物質の公衆への影響は、低い、または非常に低い被ばく量です。そして、「識別し得る発症率の増加」というような表現に一番良く当てはまる言葉というのは、英語だとdisingenuous(不誠実)、というのだと思います。影響がないと言っているのではありません。恐らく影響を見つけることができないだろうと言っているのです。そして、もちろんそれは、どれくらい良く物事を見ることができるかによります。さらに、甲状腺癌のリスクの増加は予期されると述べられています。これはあまり整合性がありません。

広島と長崎のデータに基づいた予測を見ると、何十ミリシーベルト(ここではミリグレイ)の範囲だと、健康影響を見るのには、何百万人という、非常に大人数のデータが必要となります。しかし、注意深く探せば、もっと小規模の研究でもかなりの影響を見る事ができます。



米国のスリーマイル島事故では、1ミリシーベルトという比較的少量の放射線が周辺に放出されたと思われています。



しかし、その地域での癌の発症の調べた注意深い研究では、肺癌の発症率と汚染の度合いに非常に明らかな相関性が見られました。それは、大変強い、そして統計学的に非常に有意である相関性でした。




チェルノブイリに関しては、推定被ばく量に基づいて、どのような影響も識別するのが困難であると、(フクシマと)似たようなことが言われました。そしてもちろん、あまり計画的に行われなかった追跡調査をもってしても、小児甲状腺癌が劇的に増加したのが分かりました。


また、最近の、廃炉作業員における白血病のリスクの増加についてのかなり説得力のあるデータを含む、様々な他の影響の証拠も増えています。


原子力産業労働者において実施された最大規模の研究は、国際がん研究機関によって行なわれた15ヶ国研究です。40万人以上の労働者の研究で、そのほとんどにおいて、原子力施設での労働からの被ばく量は、推奨最大被ばく限度よりかなり少なく、平均年間被ばく量は19.4ミリシーベルトでした。しかし、推奨職業被ばく限度内のこれらの被ばく線量において、とても明らかで、かつ統計的に非常に有意な増加が、すべての癌と白血病で見られました。






通常運転されている原子力発電所周辺の住民もまた、非常に低い線量の放射線に被ばくすると推定されている。しかし、実際には今ではかなりの量の証拠があり、その中で一番優秀な研究は、原子力発電所から5キロ以内に住む小児での白血病のリスクが倍であることを示した、このドイツの研究です。



そして、もしも多くの人々が少しの線量に被ばくしたら、その影響は些細ではないかもしれない。日本の人口が大雑把に1億だとして、1ミリシーベルトにつき1万人に1人に癌が過剰発生するという非常に標準的で保守的なリスク推計を用いたら、日本全体で1万人に癌が過剰発生することになります。これを検出することはできないでしょうが、1万人が癌になるということは、些細な事ではありません。



物事は、探そうとしなければ、見つからないものです。そして、これについては、皆さんの方が私より詳しいはずですが、最近発表された日本の専門家による権威のある報告書によって、癌登録の状況があきらかになりました。日本のほとんどの都道府県では癌登録がなく、福島県では2010年に設定されたばかりです。なのでこれは、長期的な癌の影響を見つけようとしているのなら、問題となる可能性があります。すなわち、長期的な発癌の影響をみつけることができるほど敏感なシステムが存在しないかもしれないということです。



私が特に必要だと考えることのひとつは、国際がん研究機関が今でもチェルノブイリでも実施されるべきであると推奨しており、日本でも推奨を待たずに行うべきことですが、被ばくした住民の、推計被ばく量の適切な人口登録です。大まかな推計値でも構いません。そうすれば、どこに住んでいても、推計被ばく量の情報を癌や死亡や出生時の影響などの長期的な健康影響と結びつけることができます。

私が懸念している次の問題は、UNSCEAR報告書内で、被災者を責めるような傾向が見られるということで、少し不穏に感じます。被ばく量が平均より多かった住民は、食べるのを止めるように言われた食べ物を食べたとか、避難区域に住み続けたというようなことが示唆されています。その人達が悪いのだと示唆しています。また、健康への悪影響の中には、放射線への根拠のない不安に関連しているものがあるとも示唆しています。とてもひどいことが起きたというより、ちゃんと理解していないからだということです。放射線が問題でないということを分かっていない、というのです。自分自身の問題だというのです。何かとてもひどいことが起こってしまったという事の理解が欠けているのです。崎山医師が委員を務められた国会事故調査委員会のとても優れた報告書が結論づけたように、事故への対応と管理においては、うまく行なわれなかったことがたくさんあります。そういうことは、UNSCEAR報告書では、少なくともサマリー版では、まったく認識されていません。



次にお話したいのは、子供たちについてです。

少し矛盾を感じます。サマリー版の同じページ内で、一方では、6年前に、小児の放射線の発癌影響への感受性は、一般大衆の2−3倍だと結論づけたと述べてあります。しかし同じページの後の部分では、小児期における放射線被ばくの影響を一般化しないようにと述べてあります。これらの供述はちょっと整合し難いと感じます。



また、少なくともサマリー版では、住民の防護のための行動という、肝心なことに関しての勧告がありません。

国会事故調査委員会の報告書でも使われていましたが、ここに、米国科学アカデミーからの大変有効な証拠があります。すべてのデータを合わせたら、長期的な発癌リスクは、小児においてよりずっと多く、また、男児よりも女児においてよりずっと多いということが明らかに示されています。



さきほどCTスキャンの研究が言及されていましたが、私はちょっとこの研究を誇りに思っているのでお話したいと思います。この研究の研究者は、年を取っています。退職するべきような年齢です。なのに、この、まったくすばらしい研究を行ったのです。これは、これまで行なわれた小児におけるCTスキャンの研究、あるいは、実際のところ、小児における低線量被ばくでの最大規模の研究と言えるでしょう。69万人と言う、非常に大人数のCTスキャンを受けた小児を平均して9年間追跡調査しました。並外れた統計的正確さにより、CTスキャンを一度受けたあとの9年間での発癌リスクが24%増加したことが示されました。CTスキャンの回数が1回増える度に、発癌リスクが16%増加しました。注意深く推計された平均被ばく量は、福島県の多くの住民の推計被ばく量と大変近いのです。もちろん、この人達(福島県の住民?)の生涯リスクはその数倍となります。また興味深いことに、1ミリシーベルトごとの相対リスクは、広島と長崎の研究よりもほぼ10倍高く、統計的パワーもより大きかったのです。





UNSCEAR報告書について私が非常に嬉しくない問題があるのですが、実質、とても無関心を示しているような感じがしたので、怒りを感じました。報告書は確かに短いのですが、動植物への影響について、とても無関心です。もちろん、そんなに多くの研究が行われていないので、証拠が多いわけではありません。しかし、研究でわかっていること自体は、非常に説得力があります。


これは事故後、2011年の夏のものですが、赤で表示されているのは、植物の光合成活性の減少で、放射能汚染が多い区域とまったく整合しています。福島県の汚染区域の植物全部の活性が、あの夏には減少していたのです。




また、ティム・ムソーという並外れた教授が、汚染が最もひどい地域のいくつかで、鳥と昆虫の調査をされました。



そして、チェルノブイリとまったく同じような傾向が見られたのですが、このグラフでは変化があまり分からないかもしれませんが、対数グラフなので見た感じよりもずっと大きな影響を表しています。チェルノブイリ、そして同様に福島県で、汚染度が増すにつれて、鳥の数が明らかに減少するのが見つかりました。


皆さんは良くご存知かもしれませんが、この、特定の種の蝶の研究では、広範囲に及ぶ異常が、複数の世代にわたる影響として見つかっています。



昆虫の放射線感受性は人間よりずっと少ないのです。多くの様々な異常が、蝶の羽根や眼や色々な部位で見られました。



もちろん、福島原発の現在の状況は安定しておらず、一般に、何かがニュースの話題になるたびに、状況が悪化しているように見えます。私は特に、作業員の方達の事が心配ですが、これは皆さんもご存知のことと思いますが、UNSCEARやWHOは、初期の推計被ばく量をが作業員の被ばく評価に用いたであろうと思われますが、2−3ヶ月前に、実は甲状腺被ばく量が100ミリシーベルトを超える作業員の数が、当初の10倍であると報告されました。


IPPNWは、フクシマについて色んなステートメントを出しましたが、ここにその情報を入れてあります。そして、お手元には、国際支部の多くが賛同した論評の概要があると思います。今、それについて詳しくは説明しませんが、最後に、何が優先されるべきであるかという私のまとめの概要を紹介してこの講演を終わらせて頂きたいと思います。実際、このような報告書というのは、証拠をもってして何らかの結果をもたらすことを助長するべきなのですから。



まず最初に申し上げたいのは、明らかに、原子力産業の擁護や賠償金額の低減、あるいは他の利害関係ではなく、公共衛生と安全および環境保護が第一義的事項であるということです。福島県だけのアプローチでなく、全国でのアプローチが必要です。先ほど登録制度についてお話しましたが、これは、影響を検出するためだけではなく、実際に、一番必要な人が医療を受けれるようにするためにも重要だと思います。多くの国々では、原子力労働者の放射線被ばくの生涯登録制度があります。どこで仕事をしても、被ばく量が登録システムに加算されるのです。それがなぜ日本で実施されていないのか理解できません。そして、皆さんの方が良くご存知だと思いますが、今、この「子ども・被災者支援法」の実施と予算確保について重要な問題があるようです。「子ども・被災者支援法」が全国規模で実施され、十分な予算を受けるように求めることを私達が推奨するのは、重要なことです。



UNSCEAR報告書の中で我々に対して警告を鳴らしていることがひとつあると思うのですが、それは、子どもの推計被ばく量がずっと多いということです。そして、子ども達を守る事は、本当に不可欠な優先順位を持ち、まだまだやらなければいけないことがあります。

2番目に、明らかに、損傷を受けた原発からの放射能漏えいおよび汚染の漏えいがひどくなるリスクをコントロールするために必要なことを実行するということです。そして、もちろん、他の原子力施設全部からのさらなる漏えいを防ぐことは、これらの原子力施設が停止したまま、そして廃炉にされるのであれば、とても効果的になります。

では、最後に、簡単で現実的な提案をしたいと思います。

国会事故調査委員会は大変すばらしい仕事をしたと思いますが、解散してしまったのは本当に残念です。このような委員会は、私から見ると、現状および何が必要であるかについて定期的なモニタリングとレビューを行なうという、非常に有益な役割を果たします。国連機関に調査を一度依頼するのでなく、再度モニタリングとレビューを行い、継続した注意を払い、フクシマ事故がまだ収束しておらず、安定していないと言う事実に焦点を当てることもまた重要です。フクシマ事故についての独立した研究結果を定期的に発表できる場所も大変役立つと思います。



この2−3年間、かなり定期的に日本に来て、福島県を訪問し、これらの問題の話をしてきましたが、医師の多くが、この問題に関して、言わば静かにさせられ、また沈黙するように脅されているということにとても懸念を持っています。国会事故調査委員会は、非常に不穏なことに、原子力産業が日本のICRPメンバーの旅費を援助していたと述べていました。これは明らかに汚職であり、利益相反です。電事連が、放射線と健康について独立した勧告を出すことになっている立場の人達に資金援助していたのです。残念ながら、日本の原発ムラは、また、その影響を大学および医師や科学者にも及ぼしていると思います。そのようなことをもっと包括的に記録に残していくのはとても役立つと思います。

そして、日本に決定したオリンピック誘致に対して、安倍首相が、フクシマの状況は安定しており、放射能汚染も限られていると述べたことが正直でなかったとしても、この際、オリンピックを利用するといいと思います。オリンピックのために、これから7年間、日本と安全とフクシマで何が起こっているかということについて国際的な注目を受け続けるわけであり、それは実際に安定化させる外圧となり得ると思うので、使わない手はありません。

長く話し過ぎたので最初に続いて最後にもまた謝らなければいけませんが、遠方から話をしにきたので、どうぞお許しください。





和訳:Yuri Hiranuma
和訳校正:




ドイツTV動画「なぜ福島災害は無害化されているか」 ドイツIPPNW公式日本語字幕動画のナレーションの書き起こし(英語・日本語併記)


2013101日ドイツのテレビ局3sat"nano"という番組で放映された、フクシマ原子力事故の健康影響が過小評価されていることに関する動画。ドイツIPPNWの理事会員である小児科医のアレックス・ローゼン医師は、UNSCEAR2013年フクシマ報告書論評(論評の和訳はこちら。論評の概要の和訳はこちら)を手がけた人物の1人だが、ドイツではUNSCEAR報告書への関心が強く、ローゼン医師へも早々とインタビューの依頼が来ていたと聞いている。

既に日本字幕付きバージョンも出回っているが、ローゼン医師自身によるドイツ語ナレーションの英訳の和訳が日本語字幕となっている、ドイツIPPNW公式版を紹介する。また、ナレーション書き起こしの英訳と和訳を下記に書き起こしとして掲載した。

インタビューされた人達。
アレックス・ローゼン、小児科医、IPPNWドイツ支部
ヴォルフガング・ホフマン、疫学研究者、グライフスヴァルト大学
マーク・モリトール、ベルギーTVのジャーナリスト、UNSCEARベルギー代表についての記事の著者(その記事の和訳はこちら
キース・ベイヴァーストック、放射線生物学者、元WHOの放射線リスク研究部門の部長

3sat nano: Warum die Katastrophe von Fukushima verharmlost wird

(3sat "nano" なぜ福島災害は無害化されているか)




ナレーション書き起こし

While contaminated water flows into the ocean near Fukushima and experts anticipate that the removal of the three melted fuel cores would not be finished for at least 40 years, good news seem to appear for a change.
汚染水がフクシマ近海に流出し、溶融した3つの燃料炉心の除去が最低40年間は終わらないと言われる中、趣向を変えて、朗報が出て来たようだ。

The harbinger of these good news was Wolfgang Weiss, the representative of the German UNSCEAR delegation. 
この朗報のメッセンジャーは、UNSCEARドイツ代表団団長のヴォルフガング・ヴァイス氏だった。

UNSCEAR is the United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation.
UNSCEARは原子放射線の影響に関する国連科学委員会である。

"Statistically, we do not see any direct risks or health effects for the Japanese public due to Fukushima."
「フクシマ事故に起因する、日本国民への直接のリスクや健康影響は、統計学的に現れていない。」

Regrettable, none at UNSCEAR wanted to talk to us – appearently for good reasons...
残念ながらUNSCEARのどの委員も我々の取材に応じなかったが、それには良い理由があるようだ・・・

(Dr. Alex Rosen, German IPPNW)
(アレックス・ローゼン医師、IPPNWドイツ支部)

"We are very critical of the UNSCEAR report, due to be released in October, of which we have a draft copy, because we see it as an attempt to downplay the effects of Fukushima."
「我々の手元には、10月に発表される予定のUNSCEAR報告書の暫定報告書がありますが、フクシマの影響を過小に見せようとしていると思われるため、我々は非常に批判的です。」

The physician Dr. Alex Rosen has been studying the health effect of radiation on children and future generations for a long time and is a board member of the German section of the International Physicians for the Prevention of Nuclear War (IPPNW).
アレックス・ローゼン医師は、小児と将来の世代への放射線による健康影響を長年研究しており、核戦争防止国際医師会議(IPPNWドイツ支部の役員である。

(Dr. Alex Rosen, German IPPNW)
(アレックス・ローゼン医師、IPPNWドイツ支部)

"Despite better knowledge, the Japanese government refused to distribute stable iodine tablets to children in order to avoid mass panic. 
「日本政府は知識があるにも関わらず、集団パニックを避けるために、子供達に安定ヨウ素剤を配布することを拒否しました。

We know that children who are exposed to radioactive iodine have a greater risk of developing thyroid cancer. 
放射性ヨウ素に被ばくした子供は、甲状腺癌になる確率が高いことがわかっています。

And we already have a higher number of thyroid cancers in children than expected."
そして、既に、予期されたより多くの小児甲状腺癌が見つかっています。」

Mass screening in Fukushima children revealed a high number of thyroid abnormalities.
福島県の子供達の集団スクリーニングでは、甲状腺異常が多く発見された。

“Mass screening just detects more cases” is the official explanation. So can all these cases be explained by mere statistics? 
「集団スクリーニングを実施すれば、より多くの症例が見つかるものだ。」というのが公式見解である。

So can all these cases be explained by mere statistics? 
それでは、これらの症例全部が、統計学だけで説明がつくのだろうか?

According to Dr. Rosen, the UNSCEAR report is based on several faulty assumptions.
ローゼン医師によると、UNSCEAR報告書は、いくつかの誤った仮定に基づいている。

(Dr. Alex Rosen, German IPPNW)
(アレックス・ローゼン医師、IPPNWドイツ支部)

"For example, they insist that the unborn child has the same level of vulnerability to radiation as a small child. 
「例えば、胎内の子供の放射線感受性は、幼い子供と同等だと主張されています。

This, however, goes against basic radiation biology. 
しかしこれは、基本的な放射線生物学に反しています。

Of course, the unborn child has a much higher sensitivity to radiation. 
当然のことながら、胎内の子供の放射線感受性は、はるかに高いのです。

The high rate of tissue growth and mitosis leads to more pronounced effects of radiation and to more mutations.
体組織の発達や細胞分裂のスピードが高いため、放射線被ばくへの影響が大きく、突然変異をより起こしやすいのです。」

We meet the epidemiologist Dr. Wolfgang Hoffman of the University of Greifswald. 
グライフスヴァルト大学の疫学者ヴォルフガング・ホフマン博士に会いに行った。

As an expert, he also has doubts about the UNSCEAR report and draws parallels to past cover-ups, such as the case of Chernobyl.
彼も、専門家としてUNSCEAR報告書に疑問を持っており、チェルノブイリ事故のような過去の隠蔽と比較している。


(Dr. Wolfgang Hoffman, University of Greifswald)
(ヴォルフガング・ホフマン博士、グライフスヴァルト大学 )

"To make a prognosis about future developments at this point is not serious science, especially when the report says that there will be no risk. 
「現時点で今後の展開を予測するのは、特に報告書が被害が出ないだろうと述べるのは、真面目な科学とは言えません。

This is obviously not the case.
これは明らかに事実と異なります。

There will certainly be a higher cancer incidence."
癌の発症率は確実に高くなるでしょう。」

Dr. Hoffman knows the possible consequences of the UNSCEAR report: Critics can be accused of raising panic - and potential compensation lawsuits can be prevented in advance.
ホフマン博士は、UNSCEAR報告書の効果がどういうもので有り得るかを知っている。批判する者はパニックを煽ると非難される。そして、起こり得る補償訴訟もあらかじめ回避することが出来る。

(Dr. Wolfgang Hoffman, University of Greifswald)
(ヴォルフガング・ホフマン博士、グライフスヴァルト大学 )

"We should not underestimate the tremendous pressure that is being exerted on this committee from various sides.
UNSCEAR委員会に様々な分野からかかっている多大な圧力を過小評価するべきではありません。

And, of course, critically thinking experts would never have a chance to be accepted in this body in the first place.
そしてもちろん、批判的な専門家は最初からこの委員会に受け入れられることはありません。」

(Dr. Alex Rosen, German IPPNW)
(アレックス・ローゼン医師、IPPNWドイツ支部)

"Many of the UNSCEAR members have had careers in nuclear agencies and regulatory bodies in various countries, in the International Atomic Energy Agency (IAEA), an organization who sees its purpose in the worldwide promotion of nuclear energy, or even in nuclear energy companies that make their money building and operating nuclear power plants."
UNSCEARメンバーの多くは、様々な国の原子力機関および規制機関、原子力エネルギーを世界に推進することを目的に掲げている機関であるIAEA(国際原子力機関)、あるいは原子力発電所の建設と運営で利益を得ている原子力会社においてさえ、勤務経験があります。」

So have we let the foxes guard the henhouse? 
これは、“ネコにかつお節の番をさせている“ということか?

Or are German physicians simply smarter than 72 international experts who stand behind the report unanimously?
それとも報告書を全会一致で支持する72人の国際的な専門家よりも、ドイツの医師の方が賢いだけなのか?

But appearantly, the support was not as unanimous as it may seem. 
しかし、実は、全会一致の支持というわけでもなかったようだ。

We discover a news story that the Belgian delegation initially refused to sign the report.
UNSCEARベルギー代表が当初、報告書にサインするのを拒否したと言う新聞記事を発見した。

So was there an internal conflict within UNSCEAR? 
では、UNSCEAR内で内紛があったのだろうか?

We pose this question to the head of the Belgian delegation, Dr. Hans Vanmarcke, but he declined to provide us with information.
ベルギー代表団団長のハンス・ファン=マルケ博士に尋ねてみたが、情報を提供してもらえなかった。

 So instead, we contact the journalist responsible for the article by video conference.
そこで代わりに、記事を書いたジャーナリストに、ビデオ会議でコンタクトを取った。

(Marc Molitor, Belgian TV)
(マルク・モリトール/ ベルギーTV)

"Members of the delegation told me that the report was written in such a way as to downplay the consequences of the catastrophe. 
「報告書はフクシマ事故を影響を小さく見せるために書かれたのだと、代表団のメンバーが私に話してくれました。

And that they acted as if the experiences and studies of Chernobyl simply did not exist. 
そして、チェルノブイリでの経験や研究が単に存在しなかったかのように振る舞ったということでした。

They fought over this.”
これについて、論争があったのです。」

This goes very well together with another fact: a large part of the data on which the report is based came from the World Health Organization (WHO). 
これはまた別の事実とも一致する。
報告書のベースとなったデータの大部分は、世界健康機構(WHO)から来ている。

A 50-year old gag order by the IAEA prevents the WHO from unrestricted reporting on radiation-related health risks.
しかし50年前のIAEAによる箝口令のために、WHOは放射線関連の健康リスクについて自由に報告することができないのだ。

(Dr. Alex Rosen, German IPPNW)
(アレックス・ローゼン医師、IPPNWドイツ支部)

"There is no department in the WHO that deals with the health effects of radiation. 
WHOには放射線による健康影響を調査する部署はありません。

On this field, the WHO relies solely on the knowledge and expertise of the IAEA."
この分野に関してWHOは、IAEAの知識と専門的経験のみに頼っているのです。」

However, such a department did exist in the past: The British radiation biologist Keith Baverstock directed a team of WHO researchers investigating radiation risks. 
しかし、そのような部署はかつては存在した。
英国の放射線生物学者キース・ベイヴァーストック氏は、放射線リスクを調査するWHO研究者チームの指揮を取っていた。

In 2001, the department was closed without a reason, and Baverstock, who is currently doing research in Finland, was transferred. 
2001年に、部署は理由なしに閉鎖され、現在フィンランドで研究をしているベイヴァーストック氏は、転任させられた。

We are able to contact him through a video call.
彼とビデオ電話でコンタクトを取ることができた。

(Dr. Keith Baverstock, Finland)
(キース・ベイヴァーストック博士、フィンランド)

"The IAEA was not very happy with the findings of my program. 
IAEAは、私が指揮を取っていた研究プログラムの調査結果が気に入らなかったのです。

It was, if I may say so, not controlled by the WHO headquarter in Geneva, as our office was independent and free standing. 
研究プログラムは、言って見れば、私達の事務所がジュネーヴのWHO本部から独立して分かれていたため、WHO本部にコントロールされていませんでした。

Generally speaking, the WHO had little control over what we published, and I think they were unhappy about that."
一般的に、WHOは我々の研究結果をコントロールできなかったため、IAEAには気に入らなかったのだと思います。」

Prevented research?
妨害された研究?

Experts with conflicts of interest?
利益相反を持つ専門家達?

Downplaying of the catastrophe?
大惨事がそれほど重大でないと主張する?

Just like in Chernobyl...
チェルノブイリの時と同じだ・・・

Apparently, the lessons were not learned.
明らかに、教訓を何も学ばなかった。

Or... there was no will to do so.
あるいは・・・学ぶつもりがなかったのだ。
    

和訳:Yuri Hiranuma
和訳校正:

(2013年11月20日に、動画を、ドイツIPPNW公式英語字幕版から、ドイツIPPNW公式日本語字幕版に差し替えた。)




メモ:2024年5月10日に公表された甲状腺検査結果の数字の整理

  *末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節、のう胞)が、まとめて公式発表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。 2024年5月10日に 第51回「県民健康調査」検討委員会 (以下、検討委員会) が、  会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された。  今...