*末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節、のう胞)が、まとめて公式発表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。
2024年8月2日に第52回「県民健康調査」検討委員会(以下、検討委員会)が、 会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された。
今回公表されたのは、5巡目と6巡目の 3ヶ月分および25歳時と30歳時の節目検査の6ヶ月分のデータで、2024年3月末時点のものになり、2023年度の最終データである。このブログでは、議事録などの公式情報のみでは察することが困難な「その時のリアルな印象」なども含め、備忘録的に記録することを目的としているが、今回は個人的事情からオンライン中継の視聴が叶わなかったため、簡略化した記録に留めることにする。今回の記事では、新たに公表されたデータをまとめた上で、更新情報のない1〜4巡目のデータも記載している。
甲状腺検査の結果について
今回報告されたのは5巡目、6巡目、25歳時の節目検査、30歳時の節目検査の 2024年3月31日時点のデータである。
今回は6巡目の二次検査結果が初めて公開された。新たに悪性ないし悪性疑いと診断されたのは 5巡目で 1人 、6巡目で6人、30歳時節目検査で1人の計8人、新たに手術で甲状腺がんと確定したのは 5巡目で 6人、25歳時と30歳時の節目検査で1人ずつの計8人である。これまでの悪性ないし悪性疑いは 338人(うち良性結節 1人)、手術で甲状腺がんと確定したのは 284人となった。
各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数、平均年齢と平均腫瘍径、および各年度ごとの手術症例の人数は「参考資料 3 甲状腺検査結果の状況」にまとめられている。
なお今回、1巡目と5巡目の年齢・性分布グラフでそれぞれ男性1人の年齢が訂正されている。(資料)
以下の表でも示されているが、公式データに含まれていない集計外症例も加えると、現時点での悪性ないし悪性疑いは416人(うち良性1人)、手術で甲状腺がんと確定したのは346人となる。
**********
現時点での結果
これまでに発表された集計外症例数を含む、現時点での結果をまとめた。
註:がん登録データの43人は、2018年までの地域・全国がん登録データとの突合で見つかった人数(第19回評価部会 資料2)で、第16回評価部会で公表されてこの記事に収録された24人(資料)に、第18回評価部会で判明した3人(資料)と第19回評価部会で2018年データから追加された16人(資料)が加わっている。集計外症例 35人(うち甲状腺がん 19人)は、甲状腺外科医の鈴木眞一氏が 2019年から国内外の学会などで報告し、「福島県立医科大学における手術症例の報告」として公表されている。データが突合されていないので実証は不可能ながら、これまで公式に集計外症例と公表されている11人(福島医大の横谷進氏らによる英語論文で報告されており、すべて甲状腺乳頭がん)も、この19人に含まれていると推定される。
5巡目検査の結果
5巡目検査は 2020年度から開始され、COVID-19パンデミックによる遅延のため、通常の 2年間ではなく2022年度までの 3年間で実施されて来たが、数字の動きからほぼ終了に近いと思われる。参考として、2019年度までの実施予定だった 4巡目結果の確定版は、2022年6月末時点での集計データとして 2022年度終了間際の2023年3月20日に公表された。
2024年3月31日時点での一次検査受診者は9人増えて 113,959人(うち 7,970人が県外受診)で、うち2人が県外受診者である。結果判定数 113,950人、結果判定率 100%なので、一次検査は実質終了している。受診率は45.1%から変わらず、4巡目の 7割ほどにとどまっている。
二次査対象者は 1,346人のままだが、うち新たに16人が二次検査を受診し、3人が細胞診を受診した結果、2021年度対象市町村で浜通り在住で事故当時 6歳の男性1人が新たに悪性ないし悪性疑いと診断され、5巡目での悪性ないし悪性疑いは 46人となった。4巡目での判定はA2結節だった。
まとめると、5巡目の悪性ないし悪性疑いは 46人(4巡目より7人増)となり、4巡目での結果は、A判定が34人(A1が 11人、A2結節が1人、A2のう胞が 20人、A2結節&のう胞が 2人)、B判定が 6人、未受診が 6人だった。
2021年度対象市町村から6人が新たに手術を受け、その他の甲状腺がんと診断された1人以外は甲状腺乳頭がんの確定診断を受けた。まとめると、5巡目では42人が甲状腺がんと確定し、41人が甲状腺乳頭がん、1人がその他の甲状腺がんだった。
6巡目検査の結果
2023年度から始まった6巡目検査では、節目検査に移行する1998〜9年度生まれが外されたことで、 対象者は5巡目から 41046人少ない 211,892人となっている。2024年3月31日時点での受診者は 42,416人で、受診率は3.7%増えて 20.0%となった。このうち 96.2%の 40,791人で結果が判定されており、新たに200人がB判定を受け、結果判定数の 1.4%となる582人がB判定となった。
今回初めて二次検査の結果が公表された。対象者582人中243人が受診、171人で結果が確定し、7人が穿刺吸引細胞診を受診し、6人が悪性ないし悪性疑いと診断された。年齢・性分布や地域別分布は未公表であるが、2人が男性、4人が女性で、事故当時年齢は0〜9歳である。前回検査の結果は未公表である。
まとめると、6巡目では6人が新たに悪性ないし悪性疑いであることが初めて報告された。 手術は未実施である。
25歳時の節目検査の結果
2017年度から開始されている25歳時の節目検査の結果は、通常の甲状腺検査とは別に、6ヶ月ごとに公表されている。今回の報告データは2024年3月31日時点のもので、新たに1998年度生まれが追加され、1992〜8年度生まれの対象者におけるものである。(受診は対象年度にとどまらず、次回の30歳時節目検査の前年まで可能で、追加の受診データも随時報告されていくことになっている。)
今回の対象者は1998年度生まれが加わり前回より20,837人増えた149,843人となり、736人が新たに一次検査を受診し、受診者数は 12,603人(うち県外受診者4,453人)となった。分母が増えたため、見かけ上の受診率は前回の9.2%から8.4%に下がった。結果判定数は前回から 428人増えて 12,286人となった。なお、2022年度から30歳時節目検査の対象となる1992〜3年度生まれからの受診者数は、一次検査では増えておらず、二次検査では1人増えたのみである。B判定は 30人増え、二次検査対象者は 677人となったが、この30人中26人が1998年度生まれで、今回の二次検査結果には含まれていないため、二次検査の対象者数は651人となっている。
新たに4人(受診率 85.1%)が二次検査を受診し、計 554人の受診者中 546人で結果が確定(確定率 98.6%)している。今回は新たに細胞診を受診した人がいないため、細胞診受診者数は 49人と変わらず、新たに悪性ないし悪性疑いと診断された人もいなかった。
まとめると、25歳時節目検査における悪性ないし悪性疑い例は23人のままで、前回検査は、A1が1人、A2結節が1人、A2のう胞が3人、Bが4人、未受診が14人となる。
新たに1人で手術が施行され甲状腺乳頭がんと確定診断された。25歳時節目検査の手術症例は18人となり、うち17人は甲状腺乳頭がん、1人は濾胞がんである。
30歳時の節目検査の結果
2022年度からは、1992年生まれの22,625人を対象として、二度目の節目検査となる30歳時の節目検査が開始されており、今回は1993年度生まれの21,864人を追加した2024年3月31日時点での結果が報告された。
一次検査の受診者は650人増えて2,221人(うち県外受診者609人)となったが、分母が増えたために、見かけ上の受診率は 1.7%減り 5.0%となった。新たに62人で結果が判定しており、うち 9人がB判定とされ、二次検査の対象者は 143人となった。この9人中4人が1993年度生まれで、今回の二次検査結果から除外されているため、二次検査の対象者は139人となっている。
新たに11人が二次検査を受診し、二次検査受診者は 118人となり、受診率は 5.0%増えて 84.9%となった。このうち新たに 15人で結果が確定し、結果確定数は 111人となった。穿刺吸引細胞診の受診者は 3人増えて16人となり、この3人中 1人の女性が新たに悪性ないし悪性疑いと診断された。この女性の事故当時年歳は18歳、前回検査の結果はA2のう胞である。
まとめると、30歳時の節目検査の悪性ないし悪性疑いは6人となり、すべて事故当時18歳の女性である。前回検査の結果は、A2のう胞が2人、Bが1人、未受診が3人である。
新たに1人で手術が施行され、30歳時の節目検査の手術症例数は4人となり、4人すべてで甲状腺乳頭がんの診断が確定している。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
1〜6巡目と25歳時および30歳時節目検査の結果のまとめ
同情報は、「参考資料 3 甲状腺検査結果の状況」の 9ページ目にもまとめられている。
先行検査(1巡目)(結果確定版の2016年度追補版はこちら)
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例 102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん 100人、低分化がん1人)
未手術症例 14人
本格検査(2巡目)(結果確定版の2020年度更新版はこちら、手術症例更新版はこちら)
悪性ないし悪性疑い 71人(前回から変化なし)
手術症例 56人(前回から 1人増)(甲状腺がん 56人:乳頭がん 55人、その他の甲状腺がん**1人) 未手術症例 15人
本格検査(3巡目)(結果確定版の2020年度追補版はこちら)
悪性ないし悪性疑い 31人(前回から変化なし)
手術症例 29人(前回から変化なし)(甲状腺がん 29人:乳頭がん 29人)
未手術症例 2人
本格検査(4巡目)(結果確定版はこちら)
悪性ないし悪性疑い 39人(前回から 変化なし)
手術症例 34人(前回から 変化なし)(甲状腺がん 34人:乳頭がん 34人)
未手術症例 5人
本格検査(5巡目)(実施状況はこちら)
悪性ないし悪性疑い 46人(前回から 1人増)
手術症例 42人(前回から 6人増)(甲状腺がん 42人:乳頭がん 41人、その他の甲状腺がん1人)
未手術症例 4人
本格検査(6巡目)(実施状況はこちら)
悪性ないし悪性疑い 6人(初出)
手術症例 0人
未手術症例 6人
25歳時の節目検査(実施状況はこちら)
悪性ないし悪性疑い 23人(前回から 変化なし)
手術症例 18人(前回から 1人増)(甲状腺がん 18 人:乳頭がん 17人、濾胞がん 1人)
未手術症例 5人
30歳時の節目検査(実施状況はこちら)
悪性ないし悪性疑い 6人(前回から 1人増)
手術症例 4人(前回から 1人増)(甲状腺がん 4人:乳頭がん 4人)
未手術症例 2人
合計
悪性ないし悪性疑い 338人(良性結節を除くと 337人)
手術症例 285人(良性結節 1人と甲状腺がん 284人:乳頭がん 280 人、低分化がん 1人、濾胞がん 1人、その他の甲状腺がん**2人)
未手術症例*** 53人(変化なし)
注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年 11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第 7 版 内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
前回検査の結果
2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 71人の 1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞 25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低 2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人
3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 31人の 2巡目での判定結果
A1判定:7人
A2判定:14人(結節 4人、のう胞 10人)
B判定:7人
2巡目未受診:3人
4巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 39人の 3巡目での判定結果
A1判定:6人
A2判定:20人(結節 6人、のう胞 13人、結節&のう胞 1人)
B判定:9人
3巡目未受診:4人
5巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 46人の 4巡目での判定結果
A1判定:11人
A2判定:23人(結節1人、のう胞 20人、結節&のう胞 2人)
B判定:6人
4巡目未受診:6人
6巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 6人の 5巡目での判定結果
A1判定:NA
A2判定:NA
B判定:NA
5巡目未受診:NA
25歳時節目検査で悪性ないし悪性疑いと診断された 23人の前回検査での判定結果
A1判定:1人
A2判定:4人(結節 1人、のう胞 3人)
B判定:4人
未受診:14人
30歳時節目検査で悪性ないし悪性疑いと診断された 6人の前回検査での判定結果
A1判定:0人
A2判定:2人(結節 0人、のう胞 2人)
B判定:1人
未受診:3人