日本が東日本大震災と津波、そしてその後の福島原発事故から3年目を迎える直前の2014年3月4−7日に、ドイツのフランクフルト市から車で25分の山の中で国際会議が開催された。この会議「原子力災害の自然環境と人体の健康への影響」は、国際核戦争防止会議(IPPNW)ドイツ支部と、ヘッセン=ナッサウ・プロテスタント教会の共催だった。(ドイツ語のプログラムPDFはこちら)
コメディアンでフリーランスのジャーナリストであるおしどりマコ氏が、2014年3月6日に、その国際会議での記者会見に参加した。日本語音声の動画はこちら。おしどりマコ氏の記者会見は、5分20秒頃に始まる。記者会見には複数のドイツメディアが参加し、このドイツ語記事では、おしどりマコ氏の記者会見内容が主に取り上げられた。
おしどりマコ氏は、コメディアンになる前に、”新たな時代の医学の発展に貢献すべく生命現象における基礎的な真理の探求を行うとともに最先端医療を支える技術創生を推進する教育・研究を行う”鳥取大学医学部生命科学科で3年間、医学研究について学んだ。(筆者注:研究で放射性物質が使用されることがあるので、医師よりも研究者の方が放射能に関しての知識があるかもしれない。)東電記者会見では、鋭く粘り強い質問で定評がある。東電側の「マコちゃんは適当にカットしてください」というメモの存在は、おしどりマコ氏本人により発覚した。
以下、書き起こし。
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My name is Mako Oshidori. I am sorry I speak in Japanese. (私の名前はおしどりマコです。すみませんが、日本語で話させていただきます。)
このような機会を与えていただいて、IPPNWとプロテスタント教会とドイツのみなさんにとても感謝しております。なぜなら、現在、日本国内では原発事故の現状を大きく報道する機会が与えられていないからです。ですので、今回ヨーロッパに来て大変驚いたことは、ヨーロッパのみなさんが日本を民主主義の自由な国だと思われていることです。
私は東京電力の記者会見に実は最も(多く)参加している記者です。まだ若いですがベテラン記者になっています。そうしますと、メディアで報道するときに色々な圧力がかかってくるんです。私が原発事故の記事を書くマガジンに私の記事を1回載せるなら、電力会社の団体から原発推進の記事を3回載せろという圧力がかかり、私の記事が載らなくなったこともありました。そして、テレビで私が東京電力の原発事故についてしゃべるときに、スポンサーから圧力がかかり、私にテレビで原発事故と東京電力という単語を一切使わせるなと、そういう圧力がかかり、出演できなくなったこともありました。
そして、まあ、日本の電力会社は原子力を使いたがるのですが、去年の秋から日本政府が原子力を使っていくと再稼動を決めたときから、政府の監視が私につきました。これは私の友人の研究者やそして政府の関係者から聞いたことです。どのような監視がついたかといいますと、ちょっと私が隠し撮りに成功しましたのでお見せします。
次に2012年に原発事故のあと福島第一原発で看護士をしている方に取材をしましたので、少しその話しをしたいと思います。
皆さんに原発作業員の現状を聞いていただきたいと思います。彼は2012年に福島第一原発で看護士をしていました。2013年に東京電力の社員をやめたのですが、その時にインタビューをしました。
現在、原発の作業員は何人も亡くなっているのですが、それは仕事中に作業中に亡くなった作業員だけ発表があります。仕事をしていないとき、たとえば週末や夜寝ているときに、急に亡くなったりする作業員もいるのですが、それは一切発表されません。そして、数えられてもいません。たとえば、たくさん被ばくをして、50ミリシーベルトや60ミリシーベルトや70ミリシーベルトや、それだけ被ばくをして作業員を辞め、一ヵ月後に亡くなる方もいますが、それも発表されませんし、数えられてもいません。これが原発作業員の現状です。彼らを調査をして私がこの記事を書こうとすると、やはり色々な圧力がかかりますので、この情報を知っている日本国民も少ないのではないかと思います。
次に簡単に、福島県の母親の方々を取材したときの話しをしたいと思います。
彼女たちの子どもたちが学校給食で福島県のものを食べさせないでほしいというアピールをして、署名活動をしています。現在、福島県の生産物は残念ながら、みなさん汚染をこわがって購入する人が少ないため、まず子どもたちに福島県のものを食べさせて安全性をアピールしていこうという政策がとられています。福島県はもともと7割の(学校で)福島県のものが学校給食に使われています。もともと事故前に福島県のものを食べていなかった地域でも、原発事故のあと安全性をアピールするために子どもたちに食べさせようという動きになっています。彼女たちはそれに反対して、なんとか汚染されていない地域のものを食べさせてほしいという主張をしています。それについてはいろんな議論があるのですが、きちんと検査をするとか。しかし、そうではなく子どもたちに安全性のアピールをさせるということ自体が間違っているのではないかと彼女たちは主張しています。
これは2012年にベラルーシの研究者、ベルラド研究所のアレクセイ・ネステレンコという所長がいるのですが、彼と一緒に福島県を取材したときのものです。
彼が一番おどろいていた場所がこの小学校なのですが、福島県の伊達市というところの小学校で、プールの横のフェンスのすぐわきの部分がみえますでしょうか、27.6μSv/hという地点です。
彼にこの小学校の子供達は避難しているのかと聞かれたのですが、私は今授業を受けているところと答えました。彼は非常に驚いて、ベラルーシではこれは子供たちがすぐに強制避難させられているレベルの数量だと。日本は豊かな国だと思っていたが、なぜ子供たちはここで普通に授業を受けているのだといわれました。これは本当に特別に線量が高い地域でもあるのですが、このようなポイントも福島にはあるということです。
続いて健康調査について、福島県ではどのようになっているのかの話しをしたいと思います。これは2012年の12月に福島県とIAEA、平和的ですが原子力の推進機関であるIAEAが原発事故の健康調査やさまざまな情報に関して協力していこうという覚書を交わしたときのものです。
この健康調査や汚染地域の除染に関することで協力していこうというものなのですが、このときの説明会で福島県の住民の方々は原子力の推進機関であるIAEAに自分達の健康調査はまかせたくないと強く反対しました。そして、私はこの会見が終わったあと、直接福島県の知事に質問したのですが、住民の方々は半数以上がIAEAと福島県が協力しあっていくことに反対しているが、県知事としてどう評価するのかと聞きました。そうすると、県知事は住民の方々には理解してもらうほかないというふうに答えました。
IAEAと福島県の調査も問題なのですが、もうひとつの問題のある文書があります。これは2011年の5月に、厚生労働省と文部科学省から全国の大学と学会と研究機関に出されている文書です。日本語のみで本当に失礼します。
これは東日本大震災のあと、被災地や汚染地域で実施されている健康調査について、いろいろな調査研究についての文書なのですが、住民の方々に負担にならないようにという理由があるのですが、許可なく詳しい調査をすることのないようにという意味あいの文書です。実際にこの文書が出る前、2011年の5月に出ているのですが、3月、4月は福島県の飯館村やその他汚染が強い地域にいろいろな大学の研究者や研究機関が入っていたのですが、この文書が出たことによって調査をやめ、福島県からでていったチームがいくつもありました。現在、健康調査は日本では福島県立医科大学という国が指定した機関のみ、おおがかりにおこなわれています。その他の調査はみなほとんどがおこなわれていないという現状です。
続いて最後ですが、特定秘密保護法ということについてお話したいと思います。昨年の12月に特定秘密保護法というものが国会で決まったのですが、これは非常に問題のある法律なのです。というのは、この法律は特定秘密というテロに関するものが多いというふうに政府は説明していますが、政府が指定した特定秘密を漏らした官僚や国立の研究者に罰則が与えられる。そしてそれを教えてほしいとそそのかした人間にも、罰則が与えられるというような内容の法律になっています。どこが問題かといいますと、何が特定秘密になるのか、それをもらすとどういう罰則になるのかというのが、一切決まっていないことです。それを一年ぐらいかけてこれから決めていくというのですが、中身が何もきまらないまま、秘密をもらした人間には罰則を与えるということだけが決まりました。このように、これは原発事故だけに関することではないんですが、これは特定秘密保護法のときに、日本国民が反対したときのデモです。
毎晩かなりの人間が、これ少しおもしろい写真だったので、ドイツの方々におみせするのはどうかと思ったのですが、今の政権はナチスに似ていると。実際去年の8月に、麻生という副総理がナチスのようにあまりみつからないように憲法をかえていこうと発言したのです。
それをもじって、今の政権は非常に問題があるのではないかというふうなデモがたくさんおこりました。
このように現在の日本では、民主主義が守られて、そして人権が尊重されているとはとても言えません。そして、それを報道すると圧力がかかってきてしまうというのが現状です。でも、今回このような機会をIPPNWに与えていただいて、そしてドイツのみなさんにお話しすることが出来て本当にありがたく思っております。
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書き起こし:Takashi Mizuno