メモ:2016年6月6日発表の甲状腺検査結果の数字の整理および関連情報
2016年6月6日に開催された第23回県民健康調査検討委員会で発表された、甲状腺検査結果の数字をメモ的に整理した。データは2016年3月31日時点のものである。また、本格検査で悪性ないし悪性疑いとされた57人の先行検査結果についても、簡単にまとめた。
今回、先行検査結果の追補版(平成27年度)が出され、2015年8月の確定版以降の追加データが公表された。(悪性ないし悪性疑いは、前回のメモですでに追加データが反映されている。)先行検査の二次検査受診者2128人中、結果が確定していない人が42人いるが、追加結果はまた追補版で報告されるらしい。二次検査未受診者168人に関しては、そのうち60人が本格検査で二次検査を受診しているとのこと。追補版では、確定版で低分化がんと確定診断された3人中、平成23年度と平成24年度からそれぞれ1人ずつが、乳頭がんと再診断されている。これは、2015年11月に出版された「甲状腺癌取扱い規約 第7版」での低分化がん診断基準の変化によるものであると説明された。第7版の変更内容の概論は、2016年5月末に開催された第35回日本乳腺甲状腺超音波医学会学術集会の予稿集で閲覧できる。
本格検査(資料はこちら)では初めて、事故当時5歳男性が悪性ないし悪性疑いとされた。この症例の詳細は公表されなかったが、細胞診結果と市町村別二次検査実施状況から、いわき市の男児と思われる。平成27年度実施対象市町村の受診者の4割を占めるいわき市の二次検査は、対象者322人の105人しか受診しておらず、そのうち74人で結果が確定している。つまり、二次検査対象者の4分の1でしか結果がわかっていない。(ちなみに、2011年3月末に行われた小児甲状腺被ばく調査「1080人調査」で甲状腺被ばく線量が最大だったのは、いわき市の137人(0〜14歳)の1人だった。この調査の経緯を記録した資料はこちら。)
検討委員会はこれまで、福島県で事故当時5歳以下の症例がないことを、放射線影響でないという理由のひとつとして挙げてきた。しかし、検討委員会の前委員長の山下俊一氏と甲状腺検査の臨床部門責任者の鈴木眞一氏が共著者に名を連ね、2014年10月に米国甲状腺学会の学術誌”Thyroid”に投稿されたエディターへのレター(和訳はこちら)では、ウクライナで事故当時5歳以下での甲状腺がんが増え始めたのは、事故後4年以降であるとされている。(ゆえに、福島原発事故後の最初の3年間で事故当時5歳以下の症例が見られなかったことは、必ずしも放射線影響でないという論拠となるわけではない。)今回、事故後4年目の本格検査で事故当時5歳男性が甲状腺がんの疑いがあるとされたことを受け、検討委員会の星北斗座長や高村昇委員は記者会見で、「チェルノブイリでは0〜5歳の年齢層でがんが多発した。福島ではまだ1人。すぐに放射線の影響が出たとなるわけではない」と発言した。(発言内容は、朝日新聞記事より引用。)
先行検査(一巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人
手術症例 102人(前回の口頭発表から1人増)(良性結節 1人と、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
手術待ち 14人
本格検査(二巡目)
悪性ないし悪性疑い 57人(前回から6人増)
手術症例 30人(前回から14人増)(甲状腺がん 30人:乳頭がん 30人)
手術待ち 27人
合計
悪性ないし悪性疑い 173人(良性結節を除くと172人で、この数字がよく報道されている)
手術症例 132人(良性結節 1人と、甲状腺がん 131人:乳頭がん 130人、低分化がん 1人)
手術待ち 41人
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本格検査で悪性ないし悪性疑いと診断された57人の先行検査結果
A1判定:28人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:25人(前回の22人中、結節 7人、のう胞 15人。今回の3人が結節かのう胞かは不明)
B判定: 4人(先行検査では2人が細胞診をしている)
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