*末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節かのう胞)が、一箇所では公式に公表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。
2021年1月15日に4ヶ月半ぶりに開催された第 40 回「県民健康調査」検討委員会では、2020年6月30日時点の結果が公表された。3巡目は確定版が7ヶ月前に公表されているため、今回、数字の動きがあったのは、実質、4巡目のみで、新たに6人が悪性ないし悪性疑いと診断され、3人が手術で甲状腺乳頭がんと診断された。2020年4月から開始されている5巡目の結果も公表はされたもの、パンデミックによる休校のために学校検査が実施されず、わずか564人が一次検査を受診するにとどまっている。
各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数、平均年齢と平均腫瘍径、および各年度ごとの手術症例の人数は、「参考資料 4 甲状腺検査結果の状況」にまとめられている。
全体的には、前回の公表データ(第39回検討委員会で公表された「参考資料 1 甲状腺検査結果の状況」を参照)と比べると、悪性ないし悪性疑い例は6人増えて252人(良性1人含む)に、手術で甲状腺がんと確定された症例は3人増えて203人となっている。
**********
現時点での結果
これまでに発表された集計外症例数を含む、現時点での結果をまとめた。
*集計外症例の甲状腺がん11人の病理組織診断については、福島医大の横谷進氏らによる英語論文(こちら)から、11人すべてが乳頭がんであることが判明している。
4巡目検査の結果
2018年4月1日から開始されている4巡目(25歳節目検査対象者は除外)では、新たに 435人が一次検査を受診し、受診率はわずか 0.1%増えた 61.5%となった。二次検査対象者は 35人増えて 1,362人となり、うち 78人が新たに二次検査を受診し、15人が細胞診を受診した結果、6人が新たに悪性ないし悪性疑いと診断された。
この 6人は全員が女性で、事故当時年齢は 0歳、2歳、6歳(2人)、10歳、11歳と、今回、初めて、事故当時 0歳と 2歳だった人たちが診断された。2人が中通り、1人が浜通り、3人が会津地方の住民で、1人が2018年度対象市町村の住民、残りの5人は2019年度対象市町村の住民である。この 6人の 3巡目の結果は、A1が 1人、A2が 2人(のう胞 1人、結節 1人)、Bが 1人、未検査が 1人である。
4巡目の悪性ないし悪性疑いは 27人となり、前回結果は、A1が 5人、A2のう胞が 12人、A2結節が 4人、Bが 5人、未検査が 1人となる。
手術症例は、2019年度実施市町村で 3人増え、4巡目で甲状腺がんと確定されたのは合計 16人となった。この 16人全員が甲状腺乳頭がんだった。
5巡目検査の結果
2020年度から開始されている 5巡目検査は、COVID-19パンデミックによる休校措置などのために進捗が大幅に遅れている。そのため、通常の 2年間での実施が困難となり、小学校、中学校と特別支援学校では 3年間(2020年度分を 2年間、2021年度分を 2022年に繰り越し)、高等学校では 2021〜2年度の 2年間(2020年度実施校を除く)で実施するという、実施計画の変更案が公表された。
2020年6月30日時点での一次検査受診者は 564人(うち 80人が県外受診)に留まり、うち 487人が 18歳以上(315人が 2020年度実施対象市町村、172人が 2021年度実施対象市町村)の住民だった。結果はまだ 41人でしか判定されておらず、うち 1人がB判定だった。この時点では、まだ二次検査は実施されていなかった。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
1〜5巡目と25歳時節目検査の結果のまとめ
同情報は、「参考資料 4 甲状腺検査結果の状況」の6ページ目にもまとめられている。
先行検査(1巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例 102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例 14人
本格検査(2巡目)
悪性ないし悪性疑い 71人(前回から変化なし)
手術症例 54人(甲状腺がん 54人:乳頭がん 51人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例 17人
本格検査(3巡目)
悪性ないし悪性疑い 31人(前回から変化なし)
手術症例 27人(前回から変化なし)(甲状腺がん 27人:乳頭がん 27人)
未手術症例 4人
本格検査(4巡目)
悪性ないし悪性疑い 27人(前回から 6人増)
手術症例 16人(前回から 3人増)(甲状腺がん 16人:乳頭がん 16人)
未手術症例 11人
本格検査(5巡目)
悪性ないし悪性疑い 0人
手術症例 0人
未手術症例 0人
25歳時の節目検査
悪性ないし悪性疑い 7人(前回から変化なし)
手術症例 4人(前回から変化なし)(甲状腺がん 4人:乳頭がん 3人、濾胞がん 1人)
未手術症例 3人
合計
悪性ないし悪性疑い 252人(良性結節を除くと251人)
手術症例 203人(良性結節 1人と甲状腺がん 202人:乳頭がん 199人、低分化がん 1人、濾胞がん1人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例*** 49人
注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年 11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第 7 版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
前回検査の結果
2 巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 71人の 1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞 25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低 2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人
3 巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 31人の 2巡目での判定結果
A1判定:7人
A2判定:14人(結節 4人、のう胞 10人)
B判定:7人
2巡目未受診:3人
4 巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 27人の 3巡目での判定結果
A1判定:5人
A2判定:16人(結節 4人、のう胞 12人)
B判定:5人
3 巡目未受診:1人
25歳時節目検査で悪性ないし悪性疑いと診断された7人の前回検査での判定結果
A1判定:0人
A2判定:1人(結節かのう胞の内訳は未公表)
B判定:1人
未受診:5人