マルコ・カルトーフェン「日本のハウスダストの中の高放射能粒子」ポスタープレゼンテーションの和訳


ウースター・ポリテクニック研究所 原子力科学・工学部のマルコ・カルトーフェン氏の博士論文 ”High Radioactivity Particles in Japanese House Dusts”「日本のハウスダストの中の高放射能粒子」のポスタープレゼンテーション

英語オリジナルの画像




仮説
福島第一事故は、非常に高濃度で吸入可能で埃の粒子を放出し、この粒子は長距離を移動した。

はじめに
2011年の日本北東部での地震とその後の津波は、福島第一原子力発電所の原子炉6基のうち4基の損傷を引き起こした。放射性物質は、原発の原子炉から汚染されたガス、エアロゾルと粒子の大気プルームとして、そして汚染廃棄水として放出された。

大気ダストは、高濃度の放射性同位体を含む、単離した個々の粒子として、放射性物質を輸送することができる。核反応廃棄物や撒き散らされた核燃料粒子と関連したアルファおよびベータ放出体は、吸入または経口摂取すると危険である。放射性物質で汚染された環境ダストは、室内空間で蓄積可能であり、吸入、皮膚とのコンタクト、そして経口摂取により、かなりの放射線被ばくを起こす可能性がある。これらの不均一に分布されたホットパーティクルは、検出して測定するのが困難な可能性があり、汚染地域の住民の被ばく量を計算するのも困難である。

方法
福島関連の核反応生成物で汚染されたダストの検体が、ガンマ線スペクトロメトリを用いて同定された。高濃度のホットパーティクルがオートラジオグラフィーとエアフィルター媒体で同定されたホットスポットの物理的分離により、ハウスダストから単離された。単離後に、ホットパーティクルは、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析 (SEM/EDS)により分析された。

東京の車のエアフィルター(左)とそのオートラジオグラフィー(右)


結果
日本のハウスダスト84検体の放射能量の中央値は2.5k Bq/kgで、平均値は71.6 kBq/kg(σ=339 kBq/kg)だった。検出された放射能のほとんどは、セシウム134、セシウム137、コバルト60、ラジウム226によるものだった。短命核種のヨウ素131は、ガンマ線スペクトル測定後に、ホットパーティクルの分析が完了する前に崩壊した。セシウム同位体の濃度比は、フクシマ放出を確定するものだった。

平均値と中央値の大きな違いは、放射能濃度が1.0 MBq/kg以上の2検体(訳者注:そのうちの1検体はこの記事で言及)および、1.0 PBq/kg以上のミクロンレベルの粒子ひとつの寄与によるものだった。この粒子は、福島原発事故現場から460 km離れた、日本の名古屋の家屋から採取されたものだった。ガンマ線スペクトロメトリで測定された放射能は310 Bqだった。ベータ放射能は285 Bqだった。核反応生成物とウラン238の崩壊物質の両方がパーセントレベルで含まれていた。X線微量分析では、最大48.0%の様々な濃度のテルル、セシウムが最大15.6%、ルビジウムが最大1.22%、ポロニウムが最大1.19%、ジスプロシウムが最大0.18%と、微量のスズ、鉛、ニッケル、鉄とクロムが見られた。この高濃度のホットパーティクルの容積は、最大で0.0012 mm3だと計算される。走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析 (SEM/EDS)により測定された構成に基づくと、密度は約3.6 g/cm3である。

名古屋ホットパーティクルの走査電子顕微鏡画像

名古屋ホットパーティクルのスペクトル分析


NaIガンマ線スペクトロメトリとエネルギー分散型X線分析(EDS)によると、ホットパーティクルから最もよく検出されたγ線放出核種は、ラジウム226、セシウム134、セシウム137、アメリシウム241とトリウム230だった。オートラジオグラフィーによるγ線スペクトル分析と、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析 (SEM/EDS)の結果によると、ダストの検体25%に、質的に似通った粒子が含まれていた。この25%の検体には原子炉事故に特有の放射性汚染物質であるセシウム134も含まれており、また、オートラジオグラフィーによってホットパーティクルも検出された。走査型電子顕微鏡の分析によると、これらのホットパーティクルのほとんどのサイズは10μmかそれ以下なので、吸入可能であるということになる。

結論
吸入可能なサイズの放射性ホットパーティクルは、日常的に検出されており、ひとつは放出場所から460kmも離れた所でも検出された。
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研究サポート:Safecast、D.C. Medich, Ph.D.、C.H.P.、Microvision Labsと、日本の茨城県の大西淳氏(訳者注:浪江町の道路ダストの検体提供者。原文には「浪江町」と間違って掲載。)
このポスタープレゼンテーションは、ウースター・ポリテクニック研究所で2014年3月19日に発表、ルイジアナ州ニューオーリンズ市の米国公衆衛生学会の2014年定例学会での講演に招聘。(カルトーフェン氏のメールによると、米国公衆衛生学会誌にアクセプトされたとのこと)

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