メモ:2021年7月26日に公表された甲状腺検査結果の数字の整理など

  

*末尾の「前回検査の結果」は、特にA2判定の内訳(結節かのう胞)が、一箇所では公式に公表されておらず探しにくいため、有用かと思われる。

 2021年7月26日に第 42 回「県民健康調査」検討委員会が開催された。前回から2ヶ月での開催となったが、検討委員らの2年間の任期が7月末までのため、任期最後の委員会として開催されたと思われる。6月21日には、こちらも任期最後の第17回甲状腺検査評価部会が開催されており、3巡目の結果について大量に公表された解析結果のまとめも出されたが、中間取りまとめを出すまでには至っていない。なお、本年度は、3回しか開催されなかった昨年度とは異なり、運営要領で決められている「年4回」の開催となりそうである。

公表された結果は2021年3月31日時点のもので、前回の公表データに6ヶ月分のデータが一気に追加された。2019年以降は、4ヶ月ごとに開催される検討委員会で3ヶ月ごとの結果が公表され続けており、開催日とデータ日の乖離が深まる一方であったが、今回ようやく追いついた

今回、報告されたのは、進捗中の4〜5巡目に加え、6ヶ月ごとに結果が報告される25歳時節目検査と、2巡目の2020年度更新版3巡目の2020年度追補版である。パンデミックの影響で諸々の進捗が滞っているためか、悪性ないし悪性疑いや手術症例の人数の動きは小さい。

2巡目と3巡目では、一次検査と二次検査の数字に若干の動きがみられ、悪性ないし悪性疑いの人数に変化はないが、手術症例が2巡目で1人、3巡目で2人増えている。4巡目では新たに3人が悪性ないし悪性疑いと診断され、2人が手術で甲状腺乳頭がんと確定した。5巡目は進捗が相変わらず遅く、二次検査の結果は、実施数が極めて少ないために公表されなかった。25歳時節目検査では、新たに1人が悪性ないし悪性疑いと診断されたが、新たな手術ではなかった。

 各検査回の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数、平均年齢と平均腫瘍径、および各年度ごとの手術症例の人数は、参考資料 5 甲状腺検査結果の状況」にまとめられている。 

 全体的には、前回の公表データ(第 41 回検討委員会で公表された参考資料 7 甲状腺検査結果の状況を参照)と比べると、悪性ないし悪性疑い例は4人増えて260人(良性1人含む)に、手術で甲状腺がんと確定された症例は5人増えて218人となっている。

 なお、この回の議事録は、2021年9月21日に公開されている。


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現時点での結果

 これまでに発表された集計外症例数を含む、現時点での結果をまとめた。前記事で説明したように、2021年3月22日に開催された第16回甲状腺検査評価部会で公表された福島県のがん登録情報から見つかった24人と、甲状腺外科医の鈴木眞一氏が2019年から国内外の学会などで報告しており、ようやく福島県立医科大学における手術症例の報告」として公表された集計外症例35人(うち甲状腺がん19人)も含まれている。データが突合されていないので実証は不可能ながら、これまで公式に集計外症例と公表されている11人(福島医大の横谷進氏らによる英語論文で報告されており、すべて甲状腺乳頭がん)も、この19人に含まれていると推定する。



2巡目検査の結果

 2巡目では、これまでに出ている結果確定版において、一次検査受診者の女性の割合を示すべきところ、検査対象者全体の女性の割合が記載されていたなどの訂正事項が報告され(資料5-1)、結果概要の2020年度更新版が公表された。なお、同様の誤りがあったにも関わらず、1巡目の結果の更新版は出ていない。(2021年10月7日追記:1巡目の結果の更新版は、2018年6月18日に開催された第31回検討委員会の ”資料 3-1 県民健康調査「甲状腺検査(先行検査)」結果概要” を後日訂正する形で公表されている。)


 また、2巡目では、2017年度追補版以降に新たに受診および結果が判明したものとして、一次検査と二次検査の数字に若干の動きがあった以外に、1人が手術を受けて甲状腺乳頭がんと判明した。これで、2巡目の悪性ないし悪性疑い71人中55人が手術を受け、54人が乳頭がん、1人がその他の甲状腺がんと診断されたことになる。

3巡目検査の結果

 3巡目では、2020年3月末時点の結果確定版第16回甲状腺検査評価部会(2020年6月15日開催)で最初に公表され、第39回検討委員会(2020年8月30日開催)でも共有されているが、それ以降に新たに受診および結果が判明したものにより若干の数字の動きがあり、2020年度追補版として報告された。2人が手術を受けて甲状腺乳頭がんと診断され、悪性ないし悪性疑い31人中29人が手術を受け、29人すべてが乳頭がんと診断された。

4巡目検査の結果

 2018年4月1日から開始されている4巡目(25歳節目検査対象者は除外)では、新たに 442人が一次検査を受診し、受診率は 0.2%増え 62.3%となった。二次検査対象者は 9人増えて 1,383人となり、うち86人が新たに二次検査を受診し、8人が細胞診を受診した結果、3人が新たに悪性ないし悪性疑いと診断された。

 この 3人は、事故当時年齢が8歳と9歳の男性2人と、同じく9歳の女性である。1人が中通り、2人が浜通りの住民で、男性1人が2018年度対象市町村、他の2人が2019年度対象市町村の住民である。この 3人の 3巡目の結果は、A1が 1人、Bが2人と、未検査が 1人である。

 4巡目の悪性ないし悪性疑いは 33人となり、前回結果は、A1が 6人、A2のう胞が 12人、A2結節が 5人、A2のう胞&結節が1人、Bが 6人、未検査が 3人となる。
 
 手術症例は、2018年度実施市町村で1人、2019年度実施市町村で 1人増え、4巡目で甲状腺がんと確定されたのは合計 27人となった。この 27人全員が甲状腺乳頭がんだった。
 
5巡目検査の結果

 2020年度から開始されている 5巡目検査は、COVID-19パンデミックのために県内学校での検査が一部延期、医療機関での検査も一部制限されており、引き続き、検査の実施にあまり大きな進捗はない。そのため、通常の 2年間での実施が困難となり、小学校、中学校と特別支援学校では 3年間(2020年度分を 2年間、2021年度分を 2022年に繰り越し)、高等学校では 2021〜2年度の 2年間(2020年度実施校を除く)で実施されることになっている

 2021年3月31日時点での一次検査受診者は 20,342人(うち 2,076人が県外受診)で、受診率が前回の 1.2%から 9.3%に上がった。年齢階級別受診率は、8〜11歳で前回の 1.1%から 16.4%、12〜17歳で 0.7%から 9.7%、18歳以上で 2.0%から 4.2%に上がっており、学校検査が少しは進捗していることがみてとれる。

 B判定は228人出てはいるが、一次検査の進捗が始まったところで、二次検査の実施数が極めて少ないため、今回も二次検査の結果は報告されなかった。

25歳時節目検査の結果

 2017年度から開始されている25歳時節目検査の結果は、通常の甲状腺検査とは別に、6ヶ月ごとに公表されている。今回から1995年度生まれの21,065人が対象者に加わっており、報告データは、1992〜5年度生まれの対象者における、2021年3月31日時点のものである。(受診は対象年度にとどまらず、次回の30歳時節目検査の前年まで可能で、追加の受診データも随時報告されていくことになっている。)

 一次検査の受診者は 1,667人増えたが、受診率は相変わらず低く、分母となる対象者総数が増えたために、前回より 0.2%下がった 8.7%となっている。二次検査対象者は 78人増えて359人となったが、実際に受診したのはわずか 18人で、239人の受診者中 227人で結果が確定している。新たな細胞診受診者は1人のみで、これまでの細胞診受診者は17人となり、この女性1人が、新たに悪性ないし悪性疑いと診断された。この女性の前回検査の結果については情報が食い違っており、口頭発表の情報にもとづくと未受診となるが、実施状況の情報ではA2となる。この点に関して、記者会見で指摘があり、次回、正しい情報が報告される見込みである。

 25歳時節目検査における悪性ないし悪性疑いは 9人となり、前回検査は、口頭発表では、A2結節が 1人、Bが 2人、未受診が 6人、実施状況の報告では、A2が2人、Bが 2人、未受診が 5人となる。なお、これまでのA2の 1人については、のう胞か結節か未公表だったが、今回、口頭発表でA2結節が1人いることが判明した。(2021年10月15日追記:第43回検討委員会で、口頭発表のデータが正確だったことが公表され、実施状況の訂正版が公表された。)

 新たな手術症例はなく、手術で甲状腺がんと確定したのは 6人のままで、5人は甲状腺乳頭がん、1人は濾胞がんである。


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1〜5巡目と25歳時節目検査の結果のまとめ

同情報は、「参考資料 5  甲状腺検査結果の状況」の5ページ目にもまとめられている。

先行検査(1巡目)(結果確定版の2016年度追補版はこちら
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から変化なし)
手術症例      102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例      14人

本格検査(2巡目)(結果確定版の2020年度更新版はこちら
悪性ないし悪性疑い 71(前回から変化なし)
手術症例      55人
(前回から 1人増)甲状腺がん 55人:乳頭がん 54人、その他の甲状腺がん**1人)                                   未手術症例     16人 


本格検査(3巡目)(結果確定版の2020年度追補版はこちら
悪性ないし悪性疑い 31(前回から1人増)
手術症例      29人(前回から2人増)(甲状腺がん 29人:乳頭がん 29人)
未手術症例       2人

本格検査(4巡目)(結果概要はこちら
悪性ないし悪性疑い 33(前回から 3人増)
手術症例      27人(前回から 2人増)(甲状腺がん 27人:乳頭がん 27人)
未手術症例     6人

本格検査(5巡目)(実施状況はこちら
悪性ないし悪性疑い 0人
手術症例      0人
未手術症例     0人

25歳時の節目検査(実施状況はこちら
悪性ないし悪性疑い 9(前回から1人増)
手術症例      6人(前回から変化なし)甲状腺がん 6人:乳頭がん 5人、濾胞がん 1人)
未手術症例     3人

合計
悪性ないし悪性疑い 260人(良性結節を除くと259人
手術症例      219人(良性結節 1人と甲状腺がん 218人:乳頭がん 215 
人、低分化がん 1人、濾胞がん1人、その他の甲状腺がん**1人)

未手術症例***      41人

注**「その他の甲状腺がん」とは、2015年 11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第 7 版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。
注*** 未手術症例の中には、福島県立医科大学付属病院以外での、いわゆる「他施設手術症例」が含まれている可能性があるため、実際の未手術症例数は不明である。

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前回検査の結果

2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 71人の 1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞 25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低 2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人

3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 31人の 2巡目での判定結果 
A1判定:7人
A2判定:14人(結節 4人、のう胞 10人)
B判定:7人
2巡目未受診:3人

4巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された 33人の 3巡目での判定結果  
A1判定:6人
A2判定:18人(結節 5人、のう胞 12人、結節&のう胞1人)
B判定:6人
3巡目未受診:3人

25歳時節目検査で悪性ないし悪性疑いと診断された9人の前回検査での判定結果  

(2021年10月15日追記:第43回検討委員会で、口頭発表のデータが正確だったことが公表され、実施状況の訂正版が公表された。)


A1判定:0人
A2判定:結節 1人(口頭発表)、あるいは 2人(実施状況に記載、少なくとも1人は結節と公表)
B判定:2人
2巡目未受診:6人(口頭発表)、あるいは 5人(実施状況に記載)


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