Fukushima Voice original version   Fukushima Voice version 2 English

2014年9月25日木曜日

隠されていた情報:ハンフォードでの何十年にもわたる欺瞞


”Decades of deception at Hanford”(「ハンフォードでの何十年にもわたる欺瞞」)は、ワシントン州シアトルのTV局、KING5のサイトに、2014年6月23日に掲載されたインベスティゲティブ・リポートである。一読してその重要性に感銘を受け、ただちに和訳を開始した。しかし、諸事情により、半分以上終えた所で中断したままになっていた。数日前に、残りの和訳をやってしまおうと、元記事に引用されていた関連文書を確認しに行ったら、記事そのものが削除されていた。(URLはこれである⇒http://www.king5.com/news/investigators/Decades-of-deception-at-Hanford-264328171.html)(アーカイヴはこちら

幸い、記事本文はコピーしてあったが、非常に残念なことに、引用されていた重要関連文書はダウンロードしておらず、記事が転載されているサイトの記事内のリンクもデッドリンクとなっていた。

ニュース記事の筆者は、KING5のチーフ・インベスティゲティブ・リポーターSusannah Frame氏である。




彼女がこの記事内容をリポートしているニュース動画(英語)はこちらである。



ここでは、削除されている記事の完全和訳を、この動画内の該当部分のスクリーンショットと共に紹介する。


***


ハンフォードでの何十年にもわたる欺瞞



ハンフォードサイトで毒性化学物質、あるいは放射性物質に曝露される作業員は、サイト内の診療所で直ちに処置を受けることができ、またそこでは通常の健診を受ける事もできる。この診療所は、これまで様々な民間会社によって運営されてきたが、全米で最も汚染されているサイトをクリーンアップする責任を持つ全作業員にとって、重要なリソースである。



しかし、「KING5 インベスティゲーター」によると、診療所を受診する作業員は、必ずしも毒性化学物質の影響についての真実を知らされるわけではないことが分かった。これは、1940年代のプルトニウム製造の初期の頃にさかのぼる欺瞞のパターンである。

ハンフォードで24年間勤務したベテランであるドン・スラウ氏のケースは、エネルギー省から雇われている医療供給者がどのようにして作業員から重要な情報を隠してきたか、という例である。



スラウ氏は健康物理学技術者で組合の安全委員でもあるが、作業中に2度、有毒な蒸気の曝露を受けたことがある。スラウ氏は、1996年に起こった最初の曝露の時には、立っていることもできなかったと述べた。

「要するに、化学物質に圧倒されたのです。そして、同僚がその場から引きずって移動させてくれたのを覚えています」とスラウ氏は最近のインタビューで述べた。


スラウ氏は、サイト内の診療所に連れて行かれたが、診療所のスタッフは、後に、その曝露による長期的な影響はなかったと説明した。

「この蒸気の吸入により私の肺にいくつかの点ができたと決定はされましたが、その当時は、大丈夫だと言われました」とスラウ氏は述べた。


しかし、スラウ氏は大丈夫ではなかった。吸入した化学物質のせいで、反応性気道疾患という不治の肺の病気になっていた。現在、スラウ氏の肺機能は50%しか残されておらず、就寝時には酸素吸入が必要である。



「酸素ボンベなしにはどこにも行けません」とスラウ氏は述べた。

スラウ氏は、ずっと後まで、自分が曝露を受けた蒸気が、体に永久的な損傷を与えたことを知らなかった。しかし、サイト内の診療所は知っていたが、その事を10年間隠していた。

スラウ氏は、シアトルのハーバービュー・メディカルセンターの医師が自分の医療カルテを見直すまで、自分の病状がどれほど酷いのかを知らなかった。


スラウ氏のケースに関する2005年のカルテ記述で、当時ハーバービューの職業・環境医学部の部長だったジョーダン・ファイヤーストーン医師は、「当時(1996年)、彼(スラウ氏)は、最初の曝露の後の(肺への)残存影響について認識していなかった。しかし、後述のように、後の職業検診時に、ハンフォードサイトのメディカルディレクターによって、(業務に戻るための)呼吸器機能のメディカルクリアランス(訳註:医師による健康状態の確認)のための肺活量測定(呼吸検査)が行われた所、ちょうどその頃に、彼の肺活量測定値が悪化した(肺疾患を示した)ことが明らかである。」

「私は、この医師らが責務を果たさなかったと感じます。(医師としての)誓いを破ったのです」とスラウ氏は述べた。「慢性の肺感染症や気管支炎を患っていた間ずっと、何が起こっているのか全然分かりませんでした。裏切られた気持ちです。これは冗談のようです。でたらめです」

作業員はまだ危険にさらされている

今年の3月中旬以来、37人のハンフォード作業員が、核廃棄物入りの巨大タンクから漏れた化学物質の蒸気に曝露された後で、サイト内の診療所、あるいはリッチランド市の最寄りの病院へ送られた。



政府の調査では、タンク内には、第二次世界大戦と冷戦時代のプルトニウム生産という汚染業務の残物である、約2,000の有害化学物質が見つかっている。




ハンフォードサイトの原子炉のウラン燃料棒を溶かすために苛性化学物質が使われ、そして少量のプルトニウムが溶かされた燃料から取り除かれたのである。




このプロセスから生じた廃棄物は、177のタンクに入れられた。それから何十年も経った今、この廃棄物は極めて有毒なままであり、技術が発達して永久廃棄が可能になるまで、有毒でありつづけるだろう。この廃棄物は、放射性崩壊による放射能を帯び、不規則な間隔で有毒な蒸気を発生する。特別なフィルターのおかげで放射能はタンクから漏れないが、有毒ガスが漏れ、何にも止められずことなく、タンクファームの周囲の大気中に拡散するのである。


情報は最初から隠されていた

プルトニウム生産プロセスによる危険は最初から知られていた。しかし、文書によると、連邦当局は、作業員を心配させて生産を遅らせることへの懸念から、安全リスクを過小評価するように勧められた。

1948年に書かれたとあるメモでは、もしも作業員らが自分らの安全を「疑うかなりの理由」があると知ったら、「士気を打ち砕くような影響」があるかもしれないと言う事で、ある放射線影響の研究を秘密にすることを主任らに促していた。もしも研究が公表されたら、従業者らが「特別危険手当」を要求し、全作業員の間の恐怖が政府に対しての「苦情の数を増やす」可能性があるとメモに述べられていた。

「士気を打ち砕くような影響」

「疑うかなりの理由」

「特別危険手当」「苦情の数を増やす」

1947年に書かれたまた別のメモは、主任らが健康リスクについての文書を改ざんすることを推奨していた。(メモの)著者は、政府に対しての「苦情を奨励する」可能性を持つ情報は、「言い回しを変えるか削除すべきである」と述べていた。


もっと最近では、ハンフォードサイトでの毒性物質への少量の曝露でさえも癌や他のを引き起こす可能性があると警告した1997年の科学研究論文が、政府によって隠されていた。その研究論文は、米国エネルギー省下請け業者によって運営されている、リッチランド市パシフィック・ノースウェスト国立研究所の科学者らによって執筆されたものだった。

放射性廃棄物政策に関する元大統領顧問のボブ・アルバレズ氏は、この1997年の研究論文は、自分の元に届けられ、そして作業員らと共有されるべきだったと述べた。1997年当時、アルバレズ氏は、エネルギー省本部のシニア職員としてハンフォード問題に直接取り組んでいた。


「我々は、この研究論文について何も知りませんでした。隠されていたのです。」とアルバレズ氏は述べた。「(前略)これらの有毒な蒸気への曝露の結果、作業員らの潜在的な疾患のリスクが驚くほど高くなると述べている研究論文があるということは、今やっていることをすべてを中断してこの問題を直さなければいけない、という本当に強いシグナルのようなものです。」

エネルギー省は、研究結果が公表されなかった理由は、他の科学者が研究に欠点があることを見つけたからだと述べている。「報告書の利点を考えたとしても、概念と過程における重大なエラーがあるため、その価値が疑わしくなってしまう。」と、メルビン・ファースト氏は、ハーバード大公衆衛生学部のレターヘッドに記述した。KINGは、ファースト氏が随分前にハーバード大から退職しており、パネルの他のメンバーの中でもハーバード大と関連を持つ人はいなかったことを突き止めた。また、ファースト氏は、タバコ業界での雇われ人としても知られており、受動喫煙が無害であるという記事を書いたこともある。

作業員らは、化学物質の測定値が高いことを知らされていなかった

長年の間、ハンフォードの放射性廃棄物の処理を任された下請業者は、作業員らに、化学物質の蒸気が突然放出されるのは避けられないが、放出された蒸気に含まれている毒性物質はごくわずかであり、「許容曝露限度よりずっと少ない」と言って安心させてきた。



しかし、KING5は、2005年から2009年の蒸気の測定データを入手したが、そこには、蒸気内の危険な化学物質の濃度が曝露限度よりずっと高いことが示されていた。


その期間中、脳損傷の原因となる可能性を持つ毒性金属である水銀は、

* 2009年に、作業曝露限度を473%超えていた。 
* 2006年に、作業曝露限度を342%超えていた。
* 2006年に、作業曝露限度を223%超えていた。

肺への損傷と緑内障の原因となる可能性を持つアンモニアは、

* 2005年に、作業曝露限度を1,856%超えていた。
* 2005年に、作業曝露限度を1,595%超えていた。 
* 2005年に、作業曝露限度を643%超えていた。

そして、発癌物質であることが知られているジメチルニトロソアミンは、

* 2005年に、作業曝露限度を3,731%超えていた。
* 2006年に、作業曝露限度を4,880%超えていた。 
* 2006年に、作業曝露限度を13,866%超えていた。

ハンフォード・サイトで26年間勤務した後に2013年に退職したマイク・ゲフリー氏は、このような数値は見た事ない、と述べた。




「なんてこった!私は、この測定日に、これらのタンクファームで作業をしていました。ここに出て来るタンクファームの測定日に、ひとつのこらず、そのタンクファームで作業をしていました。」と驚愕した。「『一体誰が、この情報を手にしていたのに作業員から隠していたのか?』と、ただひたすら考えています。」とゲフリーは述べた。



「誰かがこの情報を見て、作業員に知らせないでおこうと決めました。その人は、牢屋にぶちこまれるべきです。いいですか?作業員には話さないでおこうと決めた人物は、文字通り、犯罪者として裁かれるべきです。」とゲフリ氏ーは述べた。



政府からの返答

月曜日の午後、エネルギー省のメディア担当者が、KING 5 に、測定値について、そして測定値が作業員と共有されなかった事実についての文書を送って来た。




「KINGがエネルギー省への質問内で引用した統計は、作業員への曝露の可能性を持つレベルを表しているのではなく、タンクのヘッドスペースや排気筒内のように、作業員にはアクセスできないエリア内でのレベルである。このエリアに近接して作業が行われる場合、事前に、曝露の可能性を低減するための詳細な計画が立てられ、作業員の防護のために個人防護装備一式の使用が考慮される。

2005年以降、59,700以上の個人の検体および、作業員が実際に曝露を受ける可能性があるエリアの検体が採取されてきたが、作業曝露限度(OELs)を超えたものはない。この検体採取プロセスは、米国内で適用される業界の標準と同じものである。さらに、タンクファームの作業曝露限度は、学術界と政府の専門委員会が行った、詳細な毒性学研究に基づいている。」

しかし、長年の間ハンフォードで作業に従事してきて、サイトでの大気サンプリングについて何十年もの専門的知識を持つ人物は、実際、その測定値は作業員へのリスクを示している、と述べた。

「『ソース』内でこのような測定値が存在すること自体、これらの同様の化学物質が、作業員が呼吸するエリアに存在する絶対的な可能性があるということを意味する。このレベルが作業曝露限度より少ないとエネ省が言うのは間違ってはいないが、一度の検体採取で測定された数値が、最悪のシナリオを代表すると言う仮定はできない。別の検体採取で、これと同じ化学物質や蒸気でもっと高い数値が見られるかもしれない。」と、その専門家は述べたが、仕返しを恐れて匿名を希望した。

ドン・スラウ氏は、作業から肺へのダメージを受けたにも関わらず、まだハンフォードで雇用されているが、タンクファームで作業していた際、化学物質のガスの危険性について聞いた覚えがないと言う。




スラウ氏の妻ヴァーナさんは、スラウ氏のような作業員が、危険の可能性を知らされずに作業場に送り出されていたのは不公正である、と言う。



「何も知らない人を作業場に送り出すのは不公正です。」とヴァーナさんは述べた。「そのようなエリアで作業をすることがどれほど危険なのかと言う情報を入手する必要があります。」

ヴァーナ・スラウさんは、「ハンフォード関係者は、作業員が人間であることを考える必要があります。そして、作業員にどんな影響を与えているのかを考える必要があります。お金でなく、人間のことを考える必用があります。」と付け加えた。

ドン・スラウ氏は、ハンフォードでの作業による体調の悪化後、他の作業員の代弁者となった。スラウは、現在、サイトの安全委員である。「他の人が自分のような経験をするのを見たくないですが、しかし、残念なことに、もっと多くの人の体調が悪くなってきています」とスラウ氏は述べた。



2014年9月20日土曜日

山下俊一氏「将来像の考察」

告知もほとんどなく、2014年7月25−27日に、ほぼ非公開の形で開催された、「第2回 福島県立医科大学・IAEA国際学術会議」の資料が、「ふくしま国際医療科学センター 放射線医学県民健康管理調査」の英語サイトに掲載されていた。久し振りの山下俊一氏の英語講演から、少し紹介する。(全体の書き起こし和訳は、時間の都合で断念)
ちなみに、この資料は、日本語のサイトでは紹介されていない。学術会議に関しては、首相官邸災害対策ページの、「原子力災害専門家グループからのコメント:第六十九回 福島原発事故後の国際協力支援―国境を越えた被災者同士の絆―(平成26年9月10日) 佐々木 康人」という記事で少し紹介されている。



***

第2回 福島県立医科大学・IAEA国際学術会議
講演者動画・資料

第3日 2014 年 7 月 27 日(日)

「将来像の考察」 山下俊一 長崎大学  英語動画 日本語同時通訳動画


山下氏の講演パワーポイントスライドのいくつかの和訳


福島医科大学・IAEA学術会議「放射線、健康と社会
医学職業教育にとっての福島事故後の含意
20131121−24
  • 1日目:リスクコミュニケーションについての講演
  • 2日目:精神衛生についての講演
  • 3日目:医学放射線教育とSTS(科学技術社会論)
  • 4日目:精神衛生とリスクコミュニケーション



サマリー1:放射線と健康(山下氏が201311月当時に書いたもの)

  • 多次元的で複雑な311災害は、現存する社会においての人命の価値に対する感じ方や、公衆のリスクに対する自覚や認識などの、既存の問題および潜在性を持つ新たな問題を変える可能性がある。
  • STS(科学技術社会論)の医学教育カリキュラムを含む、医学教育の改革が重要な問題となる。
  • 放射線リスクについて互いにコミュニケーションを取り、社会的信頼および個人的信頼度を得るための、共通の言語が必要である。
  • 原子力事故を含む複合災害の複雑さを処理するための人材の訓練と開発も、また必要である。



サマリー2:健康(リスク)と社会について
  • STSの重要性について実りの多い議論や相互理解があったにも関わらず、われわれはまだ、人の命全体の、様々なそして多次元的側面を理解し、信頼できる対策を実施する混乱の真っただ中にいる。「群盲象を評す」である。
  • 普遍的なアドバイスに従う必要がある。「正直さは最善の方策である」(福島県出身の野口ヒデオ博士の言葉)
  • IAEAと福島医科大学は、現在、主要な専門家と海外と国内の関連研究機関と協力し、放射線教育と精神ケアとリスクコミュニケーションの新たなパラダイムシフトを確立するための分岐点に立っている。


科学のコミュニケーション
  • 科学の理解:放射線生物学・化学・物理学・規制など
  • 科学者の役割(専門家)
  • 教育者の役割
  • 科学翻訳者と科学通訳者
  • 危機、危機後と平時という、災害サイクルの様々な段階での
    リスクコミュニケーション

この福島医大・IAEA学術会議の結果は、特に、
統合されたSTS概念の導入および、
STSの医学教育カリキュラムへの多次元的な履行への挑戦において
福島事故後の復興の医学と医療システムにとっての
マイルストーン(画期的な出来事)となるだろう。


日本学術会議を通して推奨


山下俊一氏の講演より、興味深い供述を書き起こし和訳


山下氏:「群盲象を評す」という言葉がある。これが我々の状況である。その意味は、我々はいつも正直になる、である。正直さは、信頼を得るために重要な鍵である。(「正直な」は、多分信頼を得るために発行された、とても重要な鍵である。)ここで良い例を挙げる。それは、ここ福島の主要な科学者である。名前はノグチ・ヒデオ博士。だから、ノグチ博士の特別な言葉を学んでほしい。「正直さは最善の方策である」
(英語原文書き起こし:This is our situation. It means we always become honest. Honest is a very important key issued, probably to get trust. So we have the good exampled, and the leading scientist here in Fukushima. The name is Dr. Hideo Noguchi. So, please learn his special word, “Honesty is best policy.”)

(訳注:ノグチ・ヒデオ博士とは、野口英世博士のことだと思われる)
 
***

山下俊一氏の〆の言葉の大意:福島医科大学のスローガンは、「福島の悲劇を福島の奇跡に変えよう!」と「健康と医科学研究で、ふくしまから一緒にはじめよう。」である。最終ゴールは、福島県を日本一の長寿県に変えること。この事業をどのようにして継続するか。チェム氏は8月でIAEAから退職する。日本政府は3年間の資金援助を約束しているが、それも来年で終わる。どうか、ボランティアとして、継続して福島を支援しに来てほしい。(と、会場に訴える)