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2014年4月30日水曜日

掲載拒否されたエディターへの手紙:マンガノ、シャーマン&バズビー共著のフクシマ事故後のカリフォルニア州での先天性甲状腺機能低下症論文について

この英語記事内で言及されている筆者からエディターへの手紙の和訳を掲載する。Open Journal of Pediatrics (OJPed)のエディターは、手紙は掲載できないし、一旦掲載された論文を下げることもしない、と述べた。過去にも著者らの関連論文に対しての手紙の掲載を拒否された例があったので想定内ではあった。理由を尋ねると、手紙は掲載しないが、ケース・スタディーなどを投稿するなら掲載する、と言う答えが返って来た。その後のやり取りから、無料では何も掲載しない、という意図が明らかになった。

著者らの承前の関連論文を批評したスティーブ・ウィング氏によると、「『Open Journal of Pediatrics』は、実は、営利目的を持つPredatory journal、すなわち、『(研究者を)食い物にする雑誌』として知られており、真剣な科学的ピアレビューの過程を持たないようである。」

コロラド州の司書であるジェフリー・ビオール氏は、そのような『研究者を食い物にする雑誌』の調査を随時行っており、この手紙掲載拒否の件も記事にしている。

また、手紙の内容および、著者らのフクシマ事故後に米国での死亡率が上昇したという論文に関してのイアン・ゴッダード氏のビデオはこちら(英語)である。



なお、共著者の1人で統計担当らしいクリストファー・バズビー氏は、論文に記された所属機関であるJacobs Universityに実際に所属していないことが分かっている。

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2014年4月14日

オープン・ジャーナル・オブ・ピディアトリックス(オープン小児科ジャーナル)のエディターへの手紙

「フクシマ核メルトダウン由来の環境フォールアウトの相関関係としての、カリフォルニアでの先天性甲状腺機能低下症の確定およびボーダーライン症例数の変化」という論文で、マンガノ、シャーマンとバズビーは、調査集団における先天性甲状腺機能低下症の確定診断数を、間違っている上に選択的なデータ解釈に基づいて結論づけている。

著者らは、カリフォルニア州公衆衛生局(CDPH)の先天性甲状腺機能低下症の新生児スクリーニングデータを入手した。これには、2009年から2012年の診断確定数およびスクリーニングを受けた新生児の人数が含まれており、新生児の人数は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって分類されていた。著者らの結果を再現する試みのため、同じデータをカリフォルニア州公衆衛生局に要請した。

カリフォルニア州では、先天性甲状腺機能低下症のスクリーニングのTSH値のカットオフ値は29 mIU/Lであり、これは、2013年9月11日付けの「新生児スクリーニングのカットオフおよび基準値範囲」に記載されている。

しかし、著者らは、「このプログラムでは、29 μIU/ml以上のTSH値だけに基づいて先天性甲状腺機能低下症の診断を確定する。この基準を超えた子どもには全員、普通の身体的・精神的発達を促すために、甲状腺ホルモンが処方される。2011年1月1日に、カリフォルニア州は、TSHを算出する分析方法を変えた。ほとんどの新生児で数値が上がったため、先天性甲状腺機能低下症の症例数も増加した。」と誤った供述をしている。(注:μIU/mLは、mIU/Lと同等である。)

著者らはこの論文で、前述の供述を筆頭に、いくつかの間違いをした。

まず最初に、新生児スクリーニングプログラムによって検出されるのは、TSH全血値の上昇であり、これにより先天性甲状腺機能低下症が診断されるわけではない。先天性甲状腺機能低下症の診断には、さらに臨床的検査が行われる。29μIU/ml以上のTSH値は、スクリーニングが「陽性」という意味しかない。故に、この基準を超えた子ども全員がホルモン補充療法を受けるのではない。

カリフォルニア州公衆衛生局の遺伝的疾患スクリーニングプログラム内の、「プログラムと対策部門」のチーフ代理であるRobert J. Currier氏とのメールのやり取りの中で、Currier氏は次のように述べた。

「(先天性甲状腺機能低下症)陽性だと推定される乳児は、血清TSH検査および、主治医により任意に選択される、遊離T4(遊離チロキシン)のような他の検査を受ける。乳児はまた、州が認定する内分泌科クリニックに紹介され、内分泌専門医に受診する。必要に応じてフォローアップを繰り返す。乳児で先天性甲状腺機能低下症の診断が確定されたら、毎年、内分泌科クリニックで再診することになる。」

この供述から分かるように、著者らの「先天性甲状腺機能低下症の診断確定症例」の定義は間違っている。それにも関わらず、著者らは、スクリーニング「陽性」を診断確定数として間違って数えている。

2番目に、2011年1月1日に始まった新分析法の結果増加したのは、著者らの主張の「先天性甲状腺機能低下症の診断数」ではなく、TSHのカットオフ値である。Currier氏は続いて次のように述べた。

「2011年以前は、先天性甲状腺機能低下症の陽性推定のカットオフ値は25 μIU/mlだった。我々のラボでは、2011年初めに新しいTSH検査法を取り入れた。その結果、人口ベースでTSH値が変わったため、2011年4月にカットオフ値を29 μIU/mlに調整した。すなわち、2011年4月以前には、スクリーニングのTSH値が25 μIU/ml以上であれば先天性甲状腺機能低下症陽性であると認識された。この(新検査法の)情報も、ジョー・マンガノに提供された。」

3番目に、著者らはさらに、「注意深く選んだ範囲である19.0−28.9 μIU/ml」を「ボーダーライン症例」と定義しており、その「ボーダーライン症例」を先天性甲状腺機能低下症全体の推定に加えている。しかしながら、そもそも先天性甲状腺機能低下症の診断は、フォローアップ時の臨床的観察および追加検査の後にしか確定されないので、この定義は無意味である。

実際、Currier氏は次のように述べている。

「『ボーダーライン症例』の定義というものは、皆無である。TSH検査は単にスクリーニング法であり、臨床的に診断された先天性甲状腺機能低下症の症例のみが、『先天性甲状腺機能低下症』とみなされている。」そしてCurrier氏は、「滅多にないことだが、確定症例のTSHがカットオフ値以下であり、後日臨床的に診断されたという可能性もある。」と付け加えた。

著者らが、カリフォルニア州では「この疾患の定義に一貫性がある」と宣言しながらも、「ボーダーライン」という間違った定義のカテゴリーを生み出し、単なるスクリーニング「陽性」症例と合わせたということは、バイアスを実にひどい形で導入したことになる。

これにより、2011−2012年の先天性甲状腺機能低下症全症例が、658症例から4670症例に増え、統計的分析でのp値が誇張されたようである。(「確定症例数とボーダーライン症例数の合計」のp値 < 0.00000001) 「ディスカッション」のセクションで、著者らは、「ボーダーライン症例を恣意的に定義しなければいけなかったにも関わらず(中略)カリフォルニア州では、ボーダーライン症例数(TSH値が19.0−28.9 μIU/ml)を確定症例数(TSH値が29.0 μIU/ml 以上)に加えると、症例数が7倍以上になる。」と考察している。この供述は、データ選択にバイアスがあり、著者らが「ボーダーライン」とスクリーニング「陽性」が先天性甲状腺機能低下症の「確定症例」であるとみなしていることの確証になる。

Currier氏は、また、著者らが受け取ったのと同じ2セットのデータ(表1と表2を参照のこと)および、先天性甲状腺機能低下症スクリーニングプログラムの追加詳細情報を提供してくれた。

Currier氏は、確定症例数の表のデータは、著者らが受け取ってからアップデートされたと述べた。それは、「滅多にないことだが、診断ミス、もしくは診断にある程度の不確実さがあった赤ちゃんが、後日、本登録から削除される可能性がある。」からだと言う。しかしながら、Currier氏は、それでも著者らが当初受け取ったデータにとても近いはずだと請け合った。Currier氏は、また、「マンガノ氏は記事内でこの表(注:表2)のデータを使わなかった。」と言及した。

表1:カリフォルニア州の最初の新生児スクリーニングのTSH値分類表、2009年−2012年



表2:カリフォルニア州の一次性先天性甲状腺機能低下症の診断確定症例数、2009年−2012年




ドイツの元物理学者で、独立した疫学コンサルタントであるアルフレッド・ケルプライン氏が、先天性甲状腺機能低下症の10万人あたりの「確定」症例数をグラフ化した。(図1)この図から、2011年3月17日から12月31日の期間の確定症例数増加には、他の時期と同様の変動が見られるのが分かる。

図1:先天性甲状腺機能低下症の確定症例数の発生率、2009−2012年




4番目に、著者らは、「結果」のセクションの最後で、「単なる確定症例数よりもっと大きなサンプルサイズがあれば、真の変化をもっと良く理解することが可能になる。」と述べている。この論文の著者らがより大きなサンプルサイズを欲していること自体が、著者らがカリフォルニア州での先天性甲状腺機能低下症スクリーニングプログラムを良く理解していないことを示唆する。

結論として、マンガノ氏、シャーマン氏とバズビー氏による研究には重大な欠点がある。

1)スクリーニング陽性(29 μIU/ml以上のTSH値)の生データを先天性甲状腺機能低下症の確定症例数として誤用し、カリフォルニア州公衆衛生省から送付された、先天性甲状腺機能低下症の実際の確定症例数の正しい数字を無視している。 
2)スクリーニングプログラムにも医療現場にも根拠のない、「ボーダーライン」症例という無意味な診断カテゴリーを定義している。
3)自分達が作り出したニセの発症率(スクリーニング陽性の結果プラス「ボーダーライン」スクリーニング結果)が、正当なものであると主張している。
4)2011年の(著者らの定義による)先天性甲状腺機能低下症の増加が統計的に有意であると主張しているが、実際に臨床的に確定された2009−2012年の症例数のグラフ化では有意な増加がみられていない。

誠意を込めて、

ユリ・ヒラヌマ、 D.O.
社会的責任を果たすための医師団、放射線と健康委員会委員

2014年4月21日月曜日

UNSCEAR 2013 報告書:付録E セクションII.C. 公衆の健康影響についての委員会のコメント内の甲状腺癌関連パラグラフ和訳

原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の2013年報告書(フクシマ報告書)が、2014年4月2日に公表された。日本国民の関心度の高さのためか、過去のUNSCEAR報告書とは異なり、今回のフクシマ報告書の公式日本語版は2014年4月末に公表予定だと記者会見時にアナウンスされた。

ここでは、付録E「作業員と公衆への健康影響」内の、「公衆の健康影響についての委員会のコメント」の中から、甲状腺癌に関連したいくつかのパラグラフを和訳した。

ちなみに、付録C「公衆被ばくの評価」は、study2007氏によって仮訳されている。また、2013年10月に国連に提出されたサマリー報告書の部分和訳はこちら、PSRとIPPNWによる注釈付き論評の和訳はこちらである。

UNSCEAR 2013 Report: "Sources, effects and risks of ionizing radiation"
Volume I
Scientific Annex A: 
Levels and effects of radiation exposure to the nuclear accident after the 2011 great east-Japan earthquake and tsunami

APPENDIX E. HEALTH IMPLICATIONS FOR THE PUBLIC AND WORKERS
II. HEALTH IMPLICATIONS OF RADIATION EXPOSURE OF THE PUBLIC RESULTING FROM THE FDNPS ACCIDENT
     C. The Committee’s commentary on health implications for the public 
          1. Population of Japan and of Fukushima Prefecture

UNSCEAR 2013 報告書「電離放射線の線源、影響とリスク」
第1巻 
科学的付属書A:東日本大震災と津波の後の原子力事故による放射線被ばくの程度と影響

付録E:公衆と作業員における健康影響
II. 福島第一原発事故の結果の放射線被ばくによる公衆における健康影響
     C. 公衆の健康影響についての委員会のコメント
          1. 日本の住民と福島県の住民

p.253(253ページ)

E29. Thyroid cancer. During the first year, incorporated radioiodine from the accident led to higher absorbed doses to the thyroid than to other organs and tissues. For adults in areas that were not evacuated, the district-average absorbed doses to the thyroid were less than 20 mGy in the first year after the accident (table C10). Available evidence indicates that the thyroid is not particularly sensitive to such doses during adulthood. 

パラグラフE29
甲状腺癌。1年目には、事故により取り込まれた放射性ヨウ素が、他の臓器や組織によりも、甲状腺により高い吸収線量をもたらした。非避難区域の成人における事故後1年目の地域平均の甲状腺吸収線量は、20mGy以下だった。(表 C10)入手できる証拠によると、成人期の甲状腺は、そのくらいの線量には特に感受性が強くないことが示されている。


(注:表C10の和訳版は、study2007氏による付録Cの和訳より転載)

E30. In contrast, for 1-year-old infants who were evacuated after the accident, the Committee estimated settlement-average absorbed doses to the thyroid to be up to about 80 mGy (table C12). In the areas that were not evacuated, district-average doses to the thyroid were up to about 50 mGy (table C10). For example, the Committee estimated that about 35,000 children in the age range of 0−5 years lived in districts where the average absorbed dose to the thyroid was between 45 and 55 mGy.

パラグラフE30
その反面、事故後に避難した1歳児においては、委員会は、市町村平均の甲状腺吸収線量は最大で80 mGyであると推計した。(表 C12)非避難区域では、地域平均の甲状腺吸収線量は最大で50 mGyだった。(表 C10)例えば、委員会は、0−5歳の子ども約35,000人が、甲状腺の平均吸収線量が45−55 mGyである地域に居住していたと推計した。


(注:表C12の和訳版は、study2007氏による付録Cの和訳より転載)

E31. The Committee previously evaluated the risk of thyroid cancer from an absorbed dose to the thyroid of 200 mGy at age of ten years [U14]: the lifetime risk of thyroid cancer was estimated to be approximately doubled by the exposure. However, even for a hypothetical exposure of 10,000 children with such a dose to the thyroid, the uncertainty of the risk estimate is large, ranging from a relative risk of about 1.15 to about 4.0. The WHO estimates of the risk of thyroid cancer due to radiation exposure [W12] were consistent with those of the Committee, if the risk dependence on dose to the thyroid were assumed to be linear from several hundred milligrays down to the levels of dose received after the accident. 

パラグラフE31
委員会は、過去に、年齢が10歳での甲状腺吸収線量が200 mGyの場合の甲状腺癌リスクを評価した。甲状腺癌の生涯リスクは、被ばくにより大体2倍になったと推定された。しかし、仮に10,000人の子どもがそのような甲状腺線量に被ばくをしたとしても、リスク推定の不確かさは大きく、相対リスクは1.15から4.0の幅を持つ。WHOの放射線被ばくによる甲状腺癌のリスク推定は、もしもリスクの甲状腺被ばく線量への依存性が数百mGyからそれ以下の事故後の被ばく線量まで直線的であると仮定されるのであれば、委員会のものと一致していた。


E32. From an estimate of absorbed dose of 50 mGy to the thyroid of infants, and assuming that the risk of thyroid cancer could be extrapolated down to these dose ranges using a linear dose–response function, a relative lifetime risk of thyroid cancer due to the exposure over the baseline risk could be inferred to be about 1.3. Such an increase in principle ought to be discernible if the effect of increased detection rate due to sensitive screening and other factors could be isolated, although most of the increased incidence would be expected to appear several decades after the exposure. Furthermore, direct measurements of radioiodine content in the thyroid have suggested that actual doses to the thyroid for some individuals might be lower than the average doses estimated by the Committee using environmental measurements and modelling, although there are some questions about how representative the thyroid measurements generally were. A detailed re-evaluation of the absorbed doses to the thyroid taking into account all available information relevant to thyroid exposure including the thyroid measurements, their quality assurance and information on individual protective measures is highly desirable. 

パラグラフE32
乳児の甲状腺吸収線量推計値の50 mGyから、甲状腺癌のリスクが直線線量反応関数を用いてその線量域まで推定可能であると仮定し、被ばくによる甲状腺癌の生涯相対リスクがベースラインリスクの約1.3倍であると推測できる。そのような増加は、原則としては、増加のほとんどが被ばくから数十年後まで現れないと予期されるにしても、感受性の高いスクリーニングによる検出率の増加や他の要因の影響を分離することができるのであれば識別可能であるべきである。さらに、甲状腺内の放射性ヨウ素の実測値は、その甲状腺測定値が一般的にどれほど代表的と言えるのかについての疑問がいくつかあるにしても、個人の甲状腺の実際の被ばく線量が、委員会が環境測定値とモデリングを用いて推計した平均被ばく線量よりも低い場合があるかもしれないことを示唆している。甲状腺実測値およびその精度保証と、個人の防護対策についての情報を含む、甲状腺被ばくに関して入手できる情報をすべて考慮した上での甲状腺吸収線量の詳細な再評価が非常に望ましい。


E33. The Committee estimated that the doses to the thyroid varied considerably among individuals, indicatively from about 2 to 3 times higher or lower than the average for a district. It considered that fewer than a thousand children might have received absorbed doses to the thyroid that exceeded 100 mGy and ranged up to about 150 mGy. The risk of thyroid cancer for this group could be expected to be increased. However, it would be difficult, if not impossible, to identify precisely those individuals with the highest exposure, and risks at these low doses have not been convincingly demonstrated; moreover, as noted above, the lower dose values suggested by direct thyroid measurements on some populations should be reviewed, as well as their associated uncertainties. Information on dose distribution and uncertainties was not sufficient for the Committee to draw firm conclusions as to whether any potential increased incidence of thyroid cancer would be discernible among those exposed to higher thyroid doses during infancy and childhood. 

パラグラフE33 
委員会は、甲状腺被ばく量が、直接法で地域平均よりも2−3倍高いか低いかと、個人によってかなり異なったと推定した。委員会は、1000人弱の子どもたちが、100 mGyを超え、約150 mGyまでの甲状腺吸収線量を被ばくしたかもしれないと認識した。このグループでの甲状腺癌のリスクは増えると予測できる。しかし、被ばく量が最大である個人を正確に同定することは、不可能でないにしても困難であり、これらの低線量でのリスクは、説得力を持って証明されていない。さらに、承前のように、甲状腺の実測値測定で示唆される、より低い線量の値が、それと関連した不確定さと共に再検討されるべきである。線量分布と不確定さは、乳児期と小児期の間により高い甲状腺被ばく量を受けた人たちの間で起こり得る甲状腺癌発生率増加が識別可能であるかについて、委員会が確実な結論を導くには不十分だった。

2014年4月18日金曜日

マルコ・カルトーフェン「日本のハウスダストの中の高放射能粒子」ポスタープレゼンテーションの和訳

ウースター・ポリテクニック研究所 原子力科学・工学部のマルコ・カルトーフェン氏の博士論文 ”High Radioactivity Particles in Japanese House Dusts”「日本のハウスダストの中の高放射能粒子」のポスタープレゼンテーション

英語オリジナルの画像




仮説
福島第一事故は、非常に高濃度で吸入可能で埃の粒子を放出し、この粒子は長距離を移動した。

はじめに
2011年の日本北東部での地震とその後の津波は、福島第一原子力発電所の原子炉6基のうち4基の損傷を引き起こした。放射性物質は、原発の原子炉から汚染されたガス、エアロゾルと粒子の大気プルームとして、そして汚染廃棄水として放出された。

大気ダストは、高濃度の放射性同位体を含む、単離した個々の粒子として、放射性物質を輸送することができる。核反応廃棄物や撒き散らされた核燃料粒子と関連したアルファおよびベータ放出体は、吸入または経口摂取すると危険である。放射性物質で汚染された環境ダストは、室内空間で蓄積可能であり、吸入、皮膚とのコンタクト、そして経口摂取により、かなりの放射線被ばくを起こす可能性がある。これらの不均一に分布されたホットパーティクルは、検出して測定するのが困難な可能性があり、汚染地域の住民の被ばく量を計算するのも困難である。

方法
福島関連の核反応生成物で汚染されたダストの検体が、ガンマ線スペクトロメトリを用いて同定された。高濃度のホットパーティクルがオートラジオグラフィーとエアフィルター媒体で同定されたホットスポットの物理的分離により、ハウスダストから単離された。単離後に、ホットパーティクルは、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析 (SEM/EDS)により分析された。

東京の車のエアフィルター(左)とそのオートラジオグラフィー(右)


結果
日本のハウスダスト84検体の放射能量の中央値は2.5k Bq/kgで、平均値は71.6 kBq/kg(σ=339 kBq/kg)だった。検出された放射能のほとんどは、セシウム134、セシウム137、コバルト60、ラジウム226によるものだった。短命核種のヨウ素131は、ガンマ線スペクトル測定後に、ホットパーティクルの分析が完了する前に崩壊した。セシウム同位体の濃度比は、フクシマ放出を確定するものだった。

平均値と中央値の大きな違いは、放射能濃度が1.0 MBq/kg以上の2検体(訳者注:そのうちの1検体はこの記事で言及)および、1.0 PBq/kg以上のミクロンレベルの粒子ひとつの寄与によるものだった。この粒子は、福島原発事故現場から460 km離れた、日本の名古屋の家屋から採取されたものだった。ガンマ線スペクトロメトリで測定された放射能は310 Bqだった。ベータ放射能は285 Bqだった。核反応生成物とウラン238の崩壊物質の両方がパーセントレベルで含まれていた。X線微量分析では、最大48.0%の様々な濃度のテルル、セシウムが最大15.6%、ルビジウムが最大1.22%、ポロニウムが最大1.19%、ジスプロシウムが最大0.18%と、微量のスズ、鉛、ニッケル、鉄とクロムが見られた。この高濃度のホットパーティクルの容積は、最大で0.0012 mm3だと計算される。走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析 (SEM/EDS)により測定された構成に基づくと、密度は約3.6 g/cm3である。

名古屋ホットパーティクルの走査電子顕微鏡画像

名古屋ホットパーティクルのスペクトル分析


NaIガンマ線スペクトロメトリとエネルギー分散型X線分析(EDS)によると、ホットパーティクルから最もよく検出されたγ線放出核種は、ラジウム226、セシウム134、セシウム137、アメリシウム241とトリウム230だった。オートラジオグラフィーによるγ線スペクトル分析と、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析 (SEM/EDS)の結果によると、ダストの検体25%に、質的に似通った粒子が含まれていた。この25%の検体には原子炉事故に特有の放射性汚染物質であるセシウム134も含まれており、また、オートラジオグラフィーによってホットパーティクルも検出された。走査型電子顕微鏡の分析によると、これらのホットパーティクルのほとんどのサイズは10μmかそれ以下なので、吸入可能であるということになる。

結論
吸入可能なサイズの放射性ホットパーティクルは、日常的に検出されており、ひとつは放出場所から460kmも離れた所でも検出された。
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研究サポート:Safecast、D.C. Medich, Ph.D.、C.H.P.、Microvision Labsと、日本の茨城県の大西淳氏(訳者注:浪江町の道路ダストの検体提供者。原文には「浪江町」と間違って掲載。)
このポスタープレゼンテーションは、ウースター・ポリテクニック研究所で2014年3月19日に発表、ルイジアナ州ニューオーリンズ市の米国公衆衛生学会の2014年定例学会での講演に招聘。(カルトーフェン氏のメールによると、米国公衆衛生学会誌にアクセプトされたとのこと)